柊木side
センター長からの頼まれごとを終わらせ、今はツアーの3つ目のスポットである雑居ビルの前で上野の地下についてSNSで調査をしていた。
・・・やっぱり鬼門の位置にある上野の地下といえば"鉄の結界"が有名だよな、軍事施設説と山手線説、色んな説が飛び交ってるし
他には・・・駅に関しても盛り上がっているな、駅の異界といえば"きららぎ駅"か、昔秋葉原から乗り継ぐ方法を何回も試した事あるけど結局成功しなかったんだよね。懐かしいなぁ
その後も気になった事を手帳にまとめ続けた
・・・こんなもんか、よし、あざみ達の後を追おう
雑居ビルの中にあるエレベーターに入り、特殊な手順でボタンを押すと階数をモニターには表示されていない地下4階に着いた。
エレベーターの扉が開くと陸軍の地下廃施設に着いた。壁には陸軍第6号坑道と書いてある
・・・棚とかを見るかぎりツアーの仕掛けを解いてあざみ達は奥に行ったのかな?ならここに居る必要はないな、よし、先に進も・・・
「イテッ!」
先に進もうとすると何かに足を引っ掛けて転んでしまった。
「イタタタ、なんだ?これって・・・朋子さんのだよな」
どうやら朋子さんの持っていたカバンに引っかかって転ろんだみたいだった、なんでこんなところに・・・一応、持っていくか
朋子さんのカバンを手に取り先ある真っ暗な坑道を進み始めた。
ん?この匂い・・・もうガスも発生しているな、これくらいなら"まだ"人体に影響は無いだろう
先に進むにつれて酷く暗くなってきたので小型の懐中電灯を使いながら進んでいると誰かの声が聞こえてきた。
「誰だ!そこで止まれ!!」
この声は・・・ジャスミンか!
「ジャスミン!俺だよ!俺!」
「ラギッチ!?どうやってここに?」
「センター長からの指示通りに来たらここに辿り着いたんだ、ジャスミンこそなんでここに?それになんで藤原さんを拘束してるの?」
「あー、これには訳があってね」
ジャスミンから俺が居ない間の事を教えてもらった、朋子さんが途中でカバンを残して居なくなってしまったこと、あざみが仕掛けを解いてこの坑道を進んでいると急に藤原さんが抜け出そうとしたこと、あざみ達は先に進んだこと、他にも聞きたいことがあったがそんな時間はなさそうだった。
「なるほどね、よし、ジャスミンは先にあざみ達の元に向かって!藤原さんは俺が連れてくから、ほら、予備の懐中電灯渡すから」
「助かる!アタシの分、あざみーに貸しちゃったから困ってたんだよね、ところでそのカバンはもしかして・・・」
「うん、木村さんのカバン、一応持ってきたんだ」
「なるほどね、よし!アタシは先に行ってからそいつのことしっかり見とけよ!」
そう言ってジャスミンは渡した懐中電灯で足元を照らしながらあざみ達の元に走って行った。
「さぁ、俺達も行きますよ藤原さん、聞きたいこともありますし」
「聞きたいこと?我に問いていいのはもはや既にあの方々だけである!貴様に話すことは何もない!」
「そう言わずに聞いてくださいよ、歩きながらでいいですから」
あざみside
木村さんが居なくなってしまい動揺しながらもなんとか仕掛けを解いて暗い坑道を進んでいると廃れた駅にたどり着いた。ジャスミンさんに貰った懐中電灯は駅に着いた瞬間切れてしまったのでジャスミンさんに返そうと後ろを向くがジャスミンさんは居らず、藤原さんと一緒に消えてしまう。
助けを呼ぼうにも地下のせいか携帯は使えず、ガスもさっきより濃くなって怖かったけど、参加者全員が持っていた"水神堂の小判"という物のおかげでなんとか駅の問題を解くことに成功・・・したのはよかったんだけど出口を見つけることはできなかった。
これからどうしようかとみんなで相談しているとおーい!と声が私達が最初来た方から聞こえてきた、この声は・・・ジャスミンさんだ!
「はあ、はあ、やっと追いついた」
「ジャスミンさん!心配しましたよ!何があったんですか?」
「ああ、実はね・・・」
ジャスミンさんが居なくなったのは坑道でこっそり抜け出そうとした藤原さんを取り押さえていたかららしい。あれ?でもその藤原さんはどうしたんだろう、気になったのでジャスミンさんに聞いてみた
「ああそれね、あざみーにとっては嬉しい報告になるよ」
「嬉しい?何故です?」
「藤原はなんと今ラギッチがここに連れてきているよ」
「柊木さんが!ここに来ているんですか!?」
「お!いっきに元気になったな!多分そろそろ来ると思うよ」
柊木さん本当にすぐ来てくれたんだ!危険な時に約束を守って来てくれる、なんか昔描いた漫画を思い出しちゃった!普段なら黒歴史を思い出して悶えるけど今は嬉しさでいっぱいだなぁ
そんな事を考えていると私のスマホが鳴った、センター長さんからだった、なんで?ここ電波届かないはずなのに・・あ!あそこの通気口の近くなら電波が届くんだ!
「もしもし!福来です!」
「どうやら無事だったようですね、心配していました」
「センター長さぁーーーん!」
「落ち着いて下さい、ここから出るためにも解体といきましょう」
「はい!」
「せっかくの楽しいツアーが終わってしまうのは悲しい事ですが、そうも言ってられないようですね、全てを見極めよ、天眼錠!」
うぅぅ、ガスが濃くなってる・・・でも柊木さんもそこまで来てくれているんだ!私も頑張らないと!
「ではあざみさん、最初の質問です。このツアーに参加されたメンバーはどのような方々だったでしょう?」
ツアーの参加者、最初は抽選で選ばれた運のいい人達と思っていたけど・・・
「曖昧な答えになるんですけど・・・少なくともツアーに参加する理由や関係がある人達でした」
「great!そうです、その事実こそこのツアーの正体に辿り着くスタート地点です。このまま2つ目の質問に入ります、ツアーに用意されていた全てのアトラクションはある共通点がありました、それは一体なんでしょう」
共通点・・・おそらくだけど
「未解決事件である上野天誅事件の犯人を探しているんだと思います」
「excellent!そう、つまりこの異界は野村健吾さんにまつわる空間という事になるのでしょうかね。続けて3つ目の質問ですと言いたいところですがどうやら来たようですね」
「え?来たって誰が?あ!もしかして!」
振り返るとそこには藤原さんを連れた柊木さんがこちらに向かって来ていた。
「柊木さん!無事だったんですね!」
「ああ、約束通りすぐ来たよ」
そう言って柊木さんは藤原さんを床に座らせた
「ああ、我はついに成し遂げた!これで神に褒めて頂ける!グレートリセット!グレートリセット!」
「ふ、藤原さんどうしたんですか?」
「わかんない、ここに連れてくる途中急にこんな風になって・・・ってそれより今は解体を先に終わらせよう」
「ですね!」
「では気を取り直して、3つ目の質問です。参加者に共通している点、それはなんでしょうか?」
きっと駅の問題のヒントになったアレだよね
「みんな水神堂の小判を持っていました!」
「brilliant!さて、いよいよ大詰めですよ、あざみさん、ツアー資料が1セット足りなかった件についてです、この事についてどう思いますか?」
「ガイドさんは主催者から渡された物をそのまま配ったので間違いは起こらないはずだと思いましたけど・・・」
「ということは、資料が足りないのではなく参加者が多い、つまり、ツアーに招待されていない人物が紛れ込んでいる、ということです」
「そ、そんな人いるんですか!?」
「あざみさんはツアーに招待されていない人物とは誰のことか分かりますか?」
招待されていない人物・・・・あれ?あれあれ?もしかして!
「もしかして、私たちですか?!」
「bingo!!!これ、ずっと言ってみたかったんですよ。あなたたちの招待DMは私が偽造したものです、私の手元にはSNSのアカウントを拝借できる便利なツールがあるのですよ」
「え?ハッキングしたってことですか?」
「それは今どうでもいいことです」
な、流された・・・・
「最後の質問です、このツアーにはあざみさん達を除き他の参加者とは共通の特徴を持ち合わせない人物がいるのです、それは一体どなたでしょう?」
共通の特徴を持ち合わせていない人?もしかして・・・
「木村さん・・・ですか?私とジャスミンさんを除いたら女性は木村さんだけです、でもそんなことって」
「fabulous!!あざみさんは集合場所で声を掛けましたよね?」
「確か、ツアーの集合場所はここですか?って」
「それに彼女はなんと?」
「多分違いますよって、でもそれは!」
「ツアーの部外者を見分けることが出来るのはツアーの主催者だけです」
「そんな!!」
「そう、彼女こそがこのツアーの主催者であり異界の住人、木村さん、いえ、"野村朋子"さん。全てが解き明かされる」
体ー
ー解
柊木side
野村朋子、その名前を聞いた松田さんは動揺していた。どうしたのか尋ねようとするとシャッターが降りていた階段の方から冷たい声が聞こえてきた。
「まさか私のことを突き止める人が出てくるなんてね」
声のした方向を見るとライターを持った野村さんが居た。
「あんまり近づかないでくれる?ここにはガスが充満するように仕込んであるの、かなり濃くなってきているからこれに火をつけたら・・・」
その言葉に松田さんは激怒する
「野村の妹?逆恨みもええ加減にせえよ!?なんのつもりやねん!」
松田さんの怒鳴り声にも一切表情を変えず野村さんは答えた
「もちろん兄を殺した犯人を炙り出すためだよ、犯人は兄を殺したとき私がプレゼントした水神堂の小判を持って行った。ねぇ、誰が持って行ったの?今、手を挙げてくれてもいいんだけど」
誰も手を挙げることなくしばらくの沈黙が続く、呆れたようにため息をついて野村さんは松田さんにシャツの腕を捲るよう指示した。
野村健吾さんは死に際に犯人には腕にアザがある、そう言ったらしい。最初は渋っていた松田さんだったが、野村さんが火を点ける素振りを見せると焦ったように腕を見せた。
全員で確認するが松田さんの腕にアザは無かった。野村さんは松田さんが犯人だと確信していたせいかアザがない事実を受け入れられないようだった、その後もガスマスクさん、ガイドさん、藤原さんと順に腕を見せたが誰もアザは無かった。
「そ、そんな、どうして・・・」
「野村さん!もう辞めましょうよ」
あざみが必死で呼びかけるが効果は無い
「うるさい!私がこの7年感どういう気持ちで過ごしたか分かる!?世間は騒ぐだけ騒いで私達遺族の事は気にして無い!如月努が怪しいとなればその如月さんを人殺しみたいに扱って!彼が自殺したら今度は過剰な報道が原因だと責任転嫁!騒ぐだけ騒いで飽きたら終わり?冗談じゃない!!」
その気持ちは痛い程分かる、そう思っていると野村さんはこちらに近づいてきた。
「・・・きて、あなた達2人とも」
「俺とあざみですか?」
「いいから、早く!!」
「柊木さん・・・・」
「ここは野村さんの言う通りにしよう」
「はい・・・」
あざみside
シャッターの降りた階段の側で止まるとさっきまでとは違い優しい声で野村さんは話しかけてきた。
「これで邪魔なく話せる。あなた達なら私の話、わかるもの。さっきはごめんね」
「朋子さん、これあなたのカバンです」
柊木さんがここに来たときから持っていたカバンを野村さんに渡した、どこかで見たことあると思っていたけど野村さんのだったんだ
「ありがとう、やっぱり気のせいじゃなかったんだね」
気のせい?なんのことだろう・・・
「朋子さん、どうしても復讐したいですか?」
柊木さんが少し冷たく野村さんに尋ねる
「私は忘れられない、妹だから、野村健吾の妹だから、私、また次のイベントを開催しなきゃ、ねぇ、あざみちゃんだよね?あざみちゃんなら私の事分かってくれるよね?」
「え?私・・・」
「ここから3人で地上に戻ろう?これ、シャッターの鍵だよ」
「え?なんで!」
「もちろん!あざみちゃん達だからだよ!皆には死んでもらってこれから3人で・・・どうしたの?柊木君!あざみちゃんが・・・」
「あなたは聡明な女性だと思いましたが何もかも不十分でしたね」
「え?え?なんで?どうして?」
「腕にアザのある男が盗んだ小判をすぐ売っていたら?犯人が複数犯だったら?何年もかけた結果がこれですか」
「そんな!私は!兄のために!あぁぁぁ!」
「はっ!え?と、朋子さん?どうしたんですか?」
センター長さんの言葉で何かが壊れたのか野村さんはその場に倒れ込んでしまった。倒れた野村さんを柊木さんが運び、私達は無事に地上に戻ることができた。
地上に出て野村さんと藤原さんはジャスミンさんが警察に連れて行ってくれるとのことなので、代わりに柊木さんの車で送ってもらっていた。
「あの、柊木さん、如月努は結局犯人ではなかったんでしょうか?」
「朋子さんの言っていた事が気になる?」
「はい・・・もし本当に犯人では無かったとしたら・・・」
「・・・ネットに飛び交う情報は時に真実を生み出す、自分達の都合の良いようにね、7年前必要とされたのは犯人は如月努という真実だったってことだよ。もし、とか、ひょっとしたら、とかネットの奴らは考えていないよ」
「必要とされた真実・・・ですか?」
「ああ、ホント冗談じゃないよ」
一瞬、ほんの一瞬だけど柊木さんは今まで感じたことのない怒りを見せた。
ジャスミンside
「つまり、イルミナカードは予言のカードではなく、予告のカードであると思われます」
「それはやはりジマー達によるものなのかしら?」
「ええ、ジマー達による破壊計画と結論付けて良いかと」
「SAMEZIMAの管理人の方はどう?」
「やはり簡単には尻尾を出さないでしょうね」
「そう、分かりました。あなたは引き続きセンターで調査を、廻屋と柊木には引き続き警戒を」
「了解しました・・・C.U.T.U.本部局長」
???side
私は今、ツアー中に仕掛けた餌に掛かった獲物を捕えるために上野の雑居ビルの地下で身を潜めていた。
しばらく待っているとその獲物が現れた
「お待ちしておりましたよ、山田ガスマスクさん」
「な!お前は!どうしてこんなところに!」
「大人しくしてくださいね、お仲間も待っていますから」
「いったい何の話・・・もがっ!」
薬で彼を眠らせて外に待機していた人間に例の場所に運ばせた後、ガスマスクとツアー中に使用した遺影の後ろに入れておいた3枚目のイルミナカード"辺獄への階段"をビルの管理人に発見させるためにエレベーター内に残してその場を後にした。
さて、そろそろ配信が始まる頃ですね・・・・
柊木side
あざみをセンターに送り自宅に帰っている途中、彼女を拾ってとある公園の高台に寄り道をしていた。
遅い時間帯なので辺りには誰も居らず、鈴虫の鳴き声がよく響いている
俺と彼女はただベンチに座って星を眺めている。
ふと、彼女を見ると静かに、そしてゆっくりと涙を流していた。
「どうしたの?」
そう言われて彼女はハッとした様子で涙を拭った。
「ごめん、ちょっと思い出しちゃって、気づいたら泣いてた・・・」
「うん、俺も今回色々思い出しちゃったよ、楽しかったあの日々を」
「・・・ごめんね、全部片付くまでもう泣かないって決めてたのに」
「え、そんなこと思ってたの!?」
「だってキミに迷惑をかけてしまうしね」
「迷惑だなんて思うわけないだろう、悲しみも憎しみも全部俺が受け止めてやる、いや、受け止めさせてほしい!」
「・・・・フフ、そういえばキミってそういう奴だったね、普通なら恥ずかしい事を平気で言う」
少し目を点にした後彼女はそう言ってきた。
「別に誰に対しても言ってる訳じゃないよ」
「そうだよね、だってキミ、私のこと大好きだもんね」
「な!そ、それは・・・」
やばいやばい、顔が赤くなっているのが自分でも分かる、何か反撃しないと
「そ、そういうキミだって、俺のこと大好きだろ?」
「いいや、別に?」
「え!」
自分への好意を否定され落ち込んでいると、ねぇ、と声を掛けられたので顔を上げると彼女の両手に顔を覆われる。そして彼女の白い顔が寄ってきて互いの唇が重なり、柔らかくて力強い感触がしばらく続いた。
「ぷはぁ・・・フフ、冗談だよ、好きじゃなきゃこんなことしない、他の女なんかに渡しはしない、キミは私のものだからね」
「・・・そっか、良かった」
「顔、真っ赤だよ?」
「う、うるさいなぁ、絶対いつかその顔を真っ赤にしてやるから!」
「ふーん、それは楽しみだね」
「ああ、覚悟しとけよ!」