キミの支えになりたくて   作:飯即斬

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30話 遊園地で あざみ編

 

 

柊木side

 

今日はあざみの1人で調査したいという要望を聞く条件としてジャスミンが出した試験、2人で遊園地に行く、を達成するために待ち合わせ場所であるセンターに車で音楽をかけながら向かっていた。

 

交差点を右に曲がり、センターがある直前道路にでるとセンターの前にあざみの姿が見えたのでクラクションを鳴らして到着したことを伝えると手を大きく振り無邪気に笑ってきた。

 

「おはようございます!柊木さん!!」

 

「おはよう、ごめん、遅くなった」

 

「いえいえ!私も今来たところなんで大丈夫です!」

 

定番のやり取りを交わした後、あざみを助手席に乗せて遊園地へと車を走らせた

 

道中コンビニに寄ると、車の中であざみがニコニコしながらカバンから手帳を出した

 

「柊木さん見て下さい!私、昨日今から行く遊園地のことを調べたんです!」

 

目の前に広げられたページを見るとこれから行く遊園地のアトラクションについてや、園内で食べられるスイーツの情報がびっしりと書き記されていた

 

「ずいぶんキレイにまとめたね」

 

「えへへ、楽しみでつい!」

 

「アトラクションについてよりスイーツについての方がまとめられている数多いけどね」

 

「だ、だって、どれも美味しそうだったんで、つい」

 

今にもよだれを垂らしそうな顔であざみは言った。今頃頭の中はスイーツでいっぱいだろう

 

・・・あざみはこれが試験だってわかってんのかな?と不安になりながらコンビニを出て、そこから10分程で遊園地の駐車場に着いた

 

 

駐車場に車を停め、チケットを購入してゲートを潜る、土曜日ということもあり多くの人で園内は溢れており、その影響で殆どのアトラクションは大行列となっている

 

「さて、どこから周ろうか」

 

人混みに嫌悪を抱きながらあざみに尋ねると腰に手を当て、誇らしげにさっき見せて貰った手帳を取り出した

 

その姿はまるでどこかの未来から来たロボットさながらである。

 

青いし、たぬきっぽいし、以外と・・・

 

イメージした姿に吹き出しそうになるのをこらえて、あざみの解説の聞くことに集中する

 

「この時間帯はですね・・・あのジェットコースターが空いているそうですよ!」

 

「え?ジェットコースターなんて定番中の定番でしょ?空いてんの?」

 

「実はですねぇ、この時間は定期清掃の時間で、その時間は並ぶのは禁止されているんです!ここからなら終わる頃にちょうど着くはずです!」

 

「なるほどねぇ、じゃあ、早速向かいますか!」

 

「はい!行きましょう!」

 

 

横並びで雑談しながらジェットコースターへと向かうとあざみの予想通り清掃が完了したタイミングで到着し、最前列で乗ることができた。

 

 

 

ジェットコースターを堪能した後、昼食を摂るためにフードコートに向かっていると黒いロープに身を纏ったおばさんに

 

「そこのお二人さん、どうやら他の人とは違う特殊な運命を迎えようとしているね。どうだい?その運命、占っていかないかい?お代は結構だよ」

 

と、不気味な笑い声をあげながら話しかけられた。

 

俺自身はあまり乗る気ではなかったが、あざみがやってみたいとのことなので占ってもらうことに

 

あざみが、お願いします!と言うとおばさんは机の上の水晶玉に呪文のような声を呟きながら両手をかざしはじめた。

 

 

「ふむふむ、なるほどねぇ〜」

 

「な、なんですか?いったい何が見えたんですか・・・?」

 

眉間のシワを寄せて考え込むおばさんにあざみが不安そうに尋ねる

 

少し考え込み、おばさんは口を開いた

 

「・・・アンタはいずれ大きな決断をする事になるみたいだね」

 

「大きな決断ですか?」

 

不安そうにあざみは聞き返す

 

「そう不安な顔をしなさんな、ふむ、一つだけアドバイスだ。大切な人が居るなら自分の気持ちをはっきりと伝える事だね。それがどんな結末を迎えようとも」

 

「自分の気持ち・・・」

 

抽象的ではあるものの、あざみにとっては思う所があったらしい

 

「さて、本命はそこのアンタだよ、前においで」

 

そう言われて俺が机の前に立つとさっきと同じ動作で占いはじめた

 

「・・・やっぱりねぇ、アンタの心はどこかの時間で止まったまま、いや、誰かのためにあえて停めているのかねぇ・・・いずれにせよ、いずれ時を進めなければ・・・ふむ、これ以上は見るのはやめておいた方が良さそうだね」

 

かざした手を膝の上に置き、おばさんは話を続ける

 

「今見たのはアンタ達の運命の一部だよ、その先の未来は自分達で見ることだね」

 

そう言って席を立ち、おばさんは何処かに行ってしまった。

 

「なんだったんでしょうか?」

 

「さぁ?考えても仕方がないからとりあえずフードコートに行こうか」

 

「あ!そうでした!早くしないと限定クレープが無くなっちゃいます!」

 

 

クレープを食べ終えて食後の運動というとこで2人で園内を歩いていると大きな歓声が聞こえてきた。どうやらヒーローショーをやっているようで、5人の戦士と5体の悪の組織の怪人が戦っていて、なかなか本格的なアクションで盛り上がっている。

 

懐かしいな、昔よくごっこ遊びしたな・・・あんなヒーローものではなかったけど

 

つい見入っているとピンクの戦士1人と怪人5体というピンチな場面に、司会のお姉さんが観客に応戦を頼み込んだ。

 

へぇ、あんな感じで子供たちに楽しんでもらうのか

 

そんなこ事を考えていると司会のお姉さんが、キミだー、とこちらの方向に指をさし、俺たちの前にいた観客全員が振り向いてきた。

 

どんな子が出るのだろうとキョロキョロしているとあざみが肩をちょんちょんとしてきた。

 

「あ、あのー、柊木さんを指名しているんじゃ・・」

 

「はぁ?んな、馬鹿な」

 

半笑いで舞台を見ると明らかに司会のお姉さんと目が合った

 

え?マジで?なんで俺なの?

 

突然の事に動揺しているとスタッフの人達に半ば強引にステージへと連れ去られ、ピンクヒーローの横に立たされた。

 

「さぁ、今回の助っ人は〜、カップルでお越しのこちらのお兄さんにお願いします!!」

 

「頑張れよ!にいちゃん!」「ヒューヒュー」「リア充め!頑張りやがれ!」「素敵ー!」「お兄ちゃん!頑張れー!」

 

こ、これはなかなか・・・

 

チラッと観客席を見るといつの間にか最前列に来ていたあざみが顔が見えなくなるように両手で覆っていた

 

分かるよ、俺も今メッチャ恥ずかしいもん・・・

 

そんな事はお構いなく司会のお姉さんから海賊がよく使うカトラスを受け取ると剣を持った怪人が襲いかかってきた

 

ちょっ!いきなりだな!

 

こちらも応戦し、鍔迫り合いになると怪人からマイクに乗らない小声で話しかけてきた

 

「今から軽く貴方を後ろに吹き飛ばすのでカッコいいセリフをお願いします」

 

え!そんな急に言われても・・・でもやるしかないのか・・・

 

言われた通りピンクヒーローの横まで吹き飛ばされる、そして・・・

 

かっこいいセリフ、カッコいいセリフ・・・頭をフル回転させ考える、えーい!ままよ!

 

「・・・えっーと、女の子1人に5人がかりとはお前達の組織も堕ちたもんだな!」

 

「ほう、言うじゃないか、ならばまず貴様から倒してやろう!」

 

さっきとは別の怪人が襲いかかってくる。再度鍔迫り合いに入るとまた小さく話しかけてきた。

 

「ここからは簡単な殺陣をお願いします。全員右、左の順で攻撃した後武器を振り上げますのでそこを付いてください。最後の1体には上手い事吹き飛ばされてくださいね」

 

「・・・分かりましたよ」

 

指示通りに1体、また1体と倒していき、残すはあと1体となり、タイミングを見て吹き飛ばされる

 

「くっははは!これでトドメだ!」

 

最後の怪人が倒れた俺に武器を振り下ろそうとするとピンクヒーローが見事なドロップキックで怪人を倒した

 

その見事なアクションで会場は大盛り上がりし、無事ショーは終了した。

 

舞台裏に案内されるとショーに出演していた人達から称賛の声をいただいた。

 

少し雑談した後、ショーの人達が控え室に戻っていったのだが、さっきのピンクヒーローだけがその場に残っていた。

 

周りに誰も居ないことを確認し、さっきのショーで気づいたことをジリジリと距離を詰めながら尋ねた

 

「お前、ジャスミンだろ」

 

「・・・やっぱし気づかれたか」

 

そう言いながらマスクを外すと見慣れた顔が姿を表した

 

「こんなところで何やってんの?偶然じゃないよな」

 

「バイトついでにアンタ達が上手くやっているか見てやろうと思ってね」

 

「あっそ、それで?ジャスミンから見てどう思った?」

 

「あざみーはもう試験のことなんてすっかり忘れてそうだし、もう大丈夫だと思うけどね」

 

「やっぱし?でもまた同じ事を言いかねないよ」

 

「そこでラギッチの出番!2人でしっかり話し合え!」

 

「はぁ?ジャスミンの提案でここにいるんだけど・・・まさか最初から俺に説得させるつもりだったな!」

 

「せいかーい!じゃ!頑張れよ!」

 

肩ををバシバシ叩きジャスミンは控え室に行ってしまった

 

まったく、しょうがないな・・・

 

ヒリヒリする肩をさすりながら戻るとスマホを構えたあざみが待っていた、どうやらショーを撮影していたようだ

 

「柊木さん!お疲れ様でした!カッコよかったですよ」

 

「う、うん、ありがと。凄く恥ずかしかったよ」

 

「お客さん達大盛り上がりでショーが終わった後、私も褒められちゃいました!へへへ」

 

「褒められた?あざみが?なんて褒められたの?」

 

「そ、それは・・・秘密です!」

 

人差し指を口の前に立て、嬉しそうに誤魔化した。

 

 

次の行動を決めようとしていると周りからの視線を感じた。どうやらさっきのショーが原因らしい。あざみも気づいたらしく気まずそうにしている。

 

「・・・何処か落ち着くところに移動しようか」

 

「そ、そうですね」

 

「どこがいいかな?」

 

「あそこなんてどうですか?」

 

そう言いながらあざみが指差したのは観覧車だった。確かにあそこなら2人しか居ないし、いいかもしれない。

 

 

観覧車に乗り込み対面して座る。夕暮れ時の空をしばらく眺めているとさっきの占いについてあざみが聞いてきた

 

「柊木さん、さっきの占いなんですけど・・・どう思いますか?」

 

「気になってるの?」

 

「はい・・・大きな決断ってなんなんでしょうか。それにアドバイスの大切な人にはちゃんと思いを伝えろって・・・」

 

「・・・俺にもわかんない。でも決断するって何も悪いことではないと思うよ。むしろ前に進むために必要なことなんじゃないかな?」

 

「前に進むため・・・ですか?」

 

「うん、それに未来を気にするのもいいけど今を楽しむのも大切だよ」

 

「!!そ、そうですね!私、つい占いとか信じちゃうんです、ありがとうございます、柊木さん!」

 

良かった、元気になったみたいだ

 

「柊木さんは占いって信じますか?」

 

「俺?うーん、そもそも占いって嫌いなんだよね」

 

「そうなんですか?」

 

「その日の運勢くらいなら見たりするけど、運命占いとかはそんなに」

 

「・・・なんで嫌いか聞いてもいいですか?」

 

「簡単だよ、運命が決まっているなんて冗談じゃないからね」

 

運命が決まっているのなら、あの出来事も必然だったってことになる、そんなのは納得できない

 

 

暗い雰囲気になってしまったので試験について話すことにした

 

「あざみ、今日はどうだった?」

 

「凄く楽しかったです!今度はセンターのみんなで来ましょうね!」

 

「そうだね、それはいいとして忘れてない?これが試験だってこと」

 

「・・・あ!そうでした!どうしましょう!何もしてないです!」

 

やっぱり忘れてたか・・・

 

「じゃあ、結果発表・・・今回は不合格。目的を忘れているようじゃあ、1人で調査なんて無理」

 

「そんな!お願いします!もう一度チャンスを下さい!」

 

頭を深々と下げて必死に訴えてくる

 

「1人で調査してる時もそう言うつもり?チャンスを下さい!って」

 

「そ、それは・・・そうですよね、私なんかが1人で調査するなんて無理ですよね」

 

シュンと肩を下げて落ち込んでしまった。

 

ちょっと意地悪が過ぎたかな

 

「誤解しないでほしいんだけどさ、俺はあざみがダメな調査員なんて思ってないよ。むしろいつも助かってる」

 

「・・・ほんとうですか?」

 

「うん、でも1人で調査するってのはあざみが思っている以上に危険で大変なんだ。1人でなんでもやらなきゃならない、それに下手したら襲われたり、怪我をすることもある。そんな目にあってほしくないんだよ」

 

あざみは俯いたまま黙って俺の話を聞き続ける

 

「俺とジャスミンの役に立ちたいって気持ちは凄く嬉しい。でもね、俺としては側で一緒に調査してくれた方がもっと嬉しいんだ」

 

「柊木さん・・・・」

 

涙目になりながらも顔を上げてこちらの方を向いてくれた。そんなあざみに優しく微笑みながら話を続ける

 

「だからさ、俺とジャスミンそしてあざみ、3人で力合わせて頑張っていこうよ・・・ね?」

 

「・・・・はい」

 

涙をポロポロ溢しながらも笑いながらあざみはそう答えた。

 

 

観覧車が一周する頃にはあざみはすっかり泣き止んでいて、スッキリしたのかその顔つきは晴々としていた。

 

ゲートを出て駐車場に戻ってくると俺の車のところにジャスミンが待っていた。

 

「あ!ジャスミンさん!来ていたんですね!」

 

「おー、あざみーじゃん、試験はどうだった?」

 

「はい!不合格でした!」

 

ジャスミンの問いにニコニコしながらあざみは答えた。

 

「それにしては嬉しそうじゃん?」

 

「へへへ、最初は1人で調査出来るようになる事が2人のためだと思ってたんですけど、柊木さんの言葉でそうじゃないって気づいたんです!!」

 

「そっか、やるじゃん、ラギッチ」

 

「まぁね、って痛い痛い!」

 

ジャスミンは肩をグリグリさせながら、からかってきた

 

「さてと!せっかくだから3人でご飯でも食べに行きますか!」

 

「いいですねぇ!!」

 

「お!ジャスミンが奢ってくれるなんて珍し!」

 

「何いってんの?ラギッチの奢りにきまってしょ!」

 

「えっ!!・・・ったく、しょうがないなぁ、ほら、2人とも乗った乗った!」

 

「やりー、焼肉ね焼肉!」

 

「はいはい、わかったわかった」

 

 

 

 

???視点

 

「さて、貴方に頼んだことはやってくれましたか?」

 

「はいぃぃぃ!ご命令どおりあの男に例の物を運んでまいりました!」

 

「ぼ、ぼくも手伝いましたぁぁぁぁぁ!」

 

「よろしい、その働きを私は評価します。よくやりましたね」

 

「「はいぃぃ!ありがとうございますぅぅ!!」」

 

 

これで順番は整いました。後は手筈通りに事が進めば・・・

 

 

グレートリセットはもうすぐ訪れる。

 

 

 

ジャスミンside

 

あざみーとラギッチの3人で焼肉を堪能した後、アタシはある人物が運転する車の中で今日の報告をしていた

 

 

「実際にこの目で見たけど・・・あの2人にアヤシイ動きはなかったわね」

 

「ええ、マークしていたラギ・・・柊木も」

 

「でも只者じゃないのは確かよ。あえて今日の警察主催のショーに立たせたけど、そんな時でも辺りを警戒していたわね」

 

「ええ、ショーが終わった後、控え室で正体もバレましたし、相変わらず掴みどころがない奴です。どこから抜けているように見えてもしっかりと物事の本質を見ている」

 

「それと廻屋との関係も未だ見えてこないわ。分かっているのはセンターを一緒に立ち上げたって事だけね」

 

「何度か聞き出そうとしましたがそのたびに話をはぐらかされます。裏を返せば何かがあると見て間違いないかと」

 

「分かりました。それに関しては引き続き調査をお願いするわ」

 

「・・・了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

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