柊木side
高級住宅街でも一際目立つマンションの一室のインターフォンを鳴らすと中からサラサラヘアーの綺麗な顔立ちをした男性、依頼者の眉崎さんが出迎えてくれた
「お邪魔します、都市伝説解体センターから来ました。センター長の廻屋は車椅子で動けないので代理として俺達が伺いました」
「え?本当にキミたちで大丈夫なの?」
眉崎さんは心底残念そうにしていたので、俺がセンター設立と同時に調査員として働いている事や呪物鑑定の実績がある事、リモート形式で鑑定する事を伝えると納得してくれた。
「まぁ、よろしく頼むよ。おい!リナ!客来たからお茶出して!ったく、ごめんよアイツ気が利かなくてさ、ささ、キミたちも座ってくれ」
ポケットに手を突っ込んで歩いている眉崎さんについて行き、眉崎さん、俺、あざみ、ジャスミンの順で高そうなソファーに座った。
全員ソファーに座ったタイミングで腰まで綺麗に髪を伸ばした女性、リナさんが全員分お茶と大皿に乗っけてお菓子を出してくれた。
有り難くいただきたいところだがまずは話を聞かないとな
「それにしても安心しました。眉崎さん元気そうで」
「ん?まぁ、俺はね。彼女のリナには呪いが出ちゃってるみたいだけど」
「え!?そんな状態なら無理にお茶を出して貰わなくても・・・」
「いいって、大した事ないでしょ」
・・・いや、呼吸も荒いし、少し冷や汗もかいているしとても大丈夫には見えなかったがこちらが何を言っても無駄そうなので話の続きをようとしているとインターフォンが鳴った。
「おい!リナ、配達物が来たから受け取ってくれ」
・・・流石に我慢できない
「あの、荷物受け取るだけなら代わりに俺が」
「余計な事しないでもらえる?大事な商品を部外者に触らせたくないんだよね」
「・・・でも体調が悪くて荷物落とされるよりマシでは?」
「はぁ、わかったよ、そこまで言うなら好きにすればいいさ。その後は調査するんでしょ?俺はあそこの机で仕事してるから好きに調べてよ」
「分かりました。ありがとうございます」
机に向かっている眉崎さんの背中にお礼を言うとリナさんと一緒に玄関に向かった
あざみside
柊木さんと眉崎さんがソファーを離れた後も私とジャスミンさんはまだソファーに座っていた
「ビューティー呪われてはなさそうだけど・・・アタシあのキャラちょっと無理かも。見てよあのさっき届いた荷物、結構量あるし重そうじゃん。ラギッチがいなかったら1人で運ばせてたぞきっと」
ジャスミンさんが軽蔑した目で私だけに聞こえるよう、小さな声で話してきた。
「だ、ダメですよ!そんなに気持ち入れちゃうと調査が偏っちゃいますよ!」
「お!言うようになったな?」
「ひとまず呪いの症状や例の箱を手に入れた経緯を聞いてみます!」
と、その前にリナさんが出してくれた美味しそうなお菓子を・・・あれ?!無くなってる!
「ああ、ごめん、美味しくて全部食べちゃった。お酒が効いているのかな?香りも良かったし」
「そんなに美味しかったんですか!私も食べたかったですぅ!・・・あれ?でもお酒が効いているなら帰りはどうするんですか?」
「あ・・・まぁ、ラギッチにさせればいいっしょ」
いいのかなぁ?まぁ柊木さんなら全然オッケーしてくれそうだよね
とりあえず呪いの症状の事について知りたいからまずはリナさんに話を聞こうかな。ちょうど荷物受け取り終えたみたいだし
柊木side
配達員の伊藤さんから荷物を受け取り終えるとちょうどあざみがやって来た。どうやらリナさんに呪いの症状について聞きたいことがあるようだ、俺も一緒に話を聞こうかな
次の荷物を届けるために会社の倉庫へと一度帰って行っていく伊藤さんを見送ってあざみと合流した
「あ!柊木さん!荷物運び終えたんですね!」
「うん、思ったより数も重量もあって疲れたよ」
首をグリグリさせながらあざみの横に並びリナさんの正面に立った
「さ、さっきは助かったわ。ありがとう」
さっきよりも辛そうなリナさんは落ち着くからとタバコを吸いながらお礼を言ってくれた
「いえいえ、あの、お菓子とお茶ありがとうございました。ウチのが美味しそうに食べてましたよ、お酒の香りが良いって」
「そう、私も最近食欲無くてアレしか食べてないの」
やっぱりそうとう参っているなリナさん、それでも話を聞かないとな。
「あの、体調が悪いのに申し訳ないんですが、お話いいですか?」
「え、ええ、いいわよ」
「ありがとうございます。まず呪いについてんですがいつ頃からその症状が出始めたんですか?」
「1週間前のあの箱が届いた頃からよ、最初は少し気分が悪いなってくらいだったんだけど日に日に悪化していくし、それに・・・」
「それに?何かあったんですか?」
「ダメ!言えない!頭おかしいと思われる」
両手で頭を抱えてガクガク震えているリナさん、そんな様子にあざみもオロオロしている
「ど、どうしましょう柊木さん、これ以上聞くのは難しそうですよ」
「大丈夫、任せといて。リナさん、もしかして何か不思議なのもが見えているんじゃないですか?」
「え!どうしてそう思うの?」
「以前、別の呪物鑑定をした時も同じようなことを言っていた人がいたんです。変なものが見えるって、結果的にそれが呪いを解くヒントになってその人はその後無事元気になったんですよ。なのでリナさんが見えているものがヒントになるかもしれないんです。教えてくれませんか?力になりたいんです」
拳を前で握りしめ、リナさんの顔を真っ直ぐ見ながら言うとタバコを深く吐き答えてくれた
「蛇・・・あの箱の模様の蛇が何度も何度も目の前でうごめくの!箱開けていないのに!」
「箱を開けていないのに蛇が・・・分かりました。ありがとうございます」
・・・こんなもんかな、よし次は眉崎さんに話を聞こうか
部屋の奥で机に向かっている眉崎さんに声をかけると、早く鑑定してよ、と急かされるも正確な情報があればあるほど価値が付くと説明すると話を聞いてくれる事になった
眉崎さんは美容食品のネット販売をやっていてここは自宅兼企画室として使っているそうだ。また、自身も美容に大変気遣っているらしくジャンクフードや酒やタバコは一切口にしないらしい。
そんな眉崎さんが今開発中なのが"
定期購入で買わされそうになったがお断りした。
さて、本題に入ろうか。まずはリナさんの体調についての報告から
「あの、リナさんなんですけど・・・やっぱり呪われてるかも知れないです」
「そうなんだ!ならこれもっと高値つくよね、本物みたいでよかったよ」
・・・マジかコイツ、自分の彼女だろ?もっと心配してやれよ・・・と、今は調査に集中しないと、次は箱のことについて聞いておこうか
「眉崎さん、あの赤い箱について聞きたいんですけどいいですか?」
「あれについて?むしろ俺が聞きたいんだけど?まぁいいや、何を聞きたいの?」
「あの箱はどんな経緯で手に入れたんです?」
「どんなって・・・仕入れ先の知り合いから貰ったんだ。言っとくけど誰から貰ったかは企業秘密だから」
「そう・・・ですか。ちなみに中を開けたりしてないですよね?」
「いや、するわけなくない?「封」の札が貼ってあるし、何よりあーゆーのって未開封だとさらに値がつきそうじゃん?だから必要以上に触ってもないよ」
「なるほど、分かりました、ありがとうございます」
「礼なんていいからさっさと鑑定してよ」
「も、もう少し待ってくださいね」
「はぁ、頼むよ」
大きなため息を吐いて眉崎さんは別の部屋に行ってしまった。
眉崎さんから話を聞いた後、あざみと積み上げられたダンボールを調べることに、よく見てみるとお世辞にも綺麗な梱包とは言えないダンボールが沢山あった
「送り状を見れば箱が何処から送られたかわかると思ったんですけど・・・いろいろあってこれじゃあ分かりませんね」
あざみが一つ一つダンボールを見ていると、荷物を受け取っている時に配達員の伊藤さんが言っていたことを思い出した
「さっきの配達員さんが言っていたんだけどさ、最近特徴的なダンボールが3つあったんだって」
「特徴的なダンボールですか?」
「うん、3日前に持ってきた一部だけ破れたのと、1週間前に持ってきたガムテでぐるぐる巻きのやつ、そして3週間前に持ってきたへこみのあるやつだって、そこにあるかな?」
「えーとですねぇ・・・あ!3つともここにあります!」
「でかした!おそらくこの3つのどれかだと思うけど、あざみはどれだと思う?」
「そうですねぇ・・・」
あざみは例の如く両手で顔を覆って考え始めた。
「・・・分かりました!ぐるぐる巻きになっているダンボールです!」
「ふむ、なんでそう思った?」
「このダンボールが届いたのが1週間、リナさんの体調が悪くなったのも1週間前。時期が一致するからです!」
「おお!正解!日に日に逞しくなってるね!greatだよ、あざみ!」
「へへへ〜!もっと褒めてくれても良いですよ!」
「ん?例えばどんな風に?」
「ふぇ!・・・そ、それは、その、・・・いや、それはまだ早いと言いますか・・・いや嬉しいんですけど・・・その・・・」
下を向き、モジモジしているあざみ、1人の世界に入ってしまっていでしばらく帰ってきそうにないのでひとりでぐるぐる巻きのダンボールの送り状を調べた
送り状の名前には西谷と書いてあり、ちょうど奥の部屋から戻ってきた眉崎さんに声をかけて前の送り主について確認する
「あの箱の前の持ち主って西谷って人ではないですか?」
「え?よく分かったね。鑑定の実績があるって嘘じゃなかったんだ、これは期待できそう。いいよ、教えてあげる」
眉崎さんによると西谷という人は少し前から仕事をするようになったらしく、あの赤い箱もおまけとして貰おうとしたら何かグズグズ言っていたそうだ。
失礼を承知で、赤い箱は個人的な恨みがこもっているのではないかと訊ねると西谷は陰湿なところがあると言って納得していた。
西谷って人のことを眉崎さんに聞いた後、一度情報を整理する為赤い箱の近くにいるジャスミンの下へ向かった
「お疲れラギッチ、どう?情報は集まった?」
「うん、そろそろセンター長から電話があってもいいところまできたよ・・・って、あざみは?」
「あそこ」
ジャスミンが指を差した方を見るとまださっきのダンボールのところに突っ立ていた
「なにやってんの?あざみは」
「ラギッチ、なんか変なこと言ったんじゃないの?」
「変なことってなんだよ、もっと褒めてくれてもいいですよって言われたから例えばどんな風にーって聞いてみただけだよ」
「原因それじゃねえか、ったく、ちょっと待ってて、呼び戻してくっから」
そう言ってジャスミンはあざみのところへ向かい猫騙しの要領であざみの顔を前で手を叩く、するとあざみは顔をハッとさせた。
どうやらこっちに戻ってきたようだ、すいませんとぺこぺこしながらこちらに向かってきた
「柊木さん、ごめんなさい。調査を疎かにしてしまいました」
さっきまでのほほんとしていたのにすっかりへこんでしまったみたいだ
「うん、次からは気をつけてね」
「はい、すいませんでした」
「ちなみに何を考えてたの?」
「え!そ、それは・・・」
「ラギッチ、それセクハラだぞ」
「そうです!セクハラです!」
拳をポキポキさせているジャスミンとプンスカなあざみ、これ以上は面倒臭いことになりそうなのでやめておくことにした
ふぅ、危うくセンターをクビになるところだった
そんなことを考えているとあざみのスマホに電話がかかってきた
いよいよ特定始まるようだ、眉崎さんとリナさんを呼んでおこう
あざみside
やってしまった・・・柊木さんにどんな風に褒められたいかと聞かれてつい、いろんなことを想像してしまった。どんなことを考えていたのか聞いてきた柊木さんにジャスミンさんはセクハラだと言って私を助けてくれたけど、勝手に頭でいろんなことを想像していた私も同じかもしれない・・・
心の中で反省回をしていると私のスマホが鳴り響いた。
センター長さんからだ!!
「もしもし!福来です!」
「どうも、お疲れ様です。元気そうですね、その様子ならまだ呪いが広まるような事は起こっていないようですね」
「はい!私達には何も起こってません!」
「それはよかったです」
「あの、眉崎さんが相当箱の値段を気にしているみたいですよ」
「ふむ、どうやら銭勘定をしている場合ではないことを分かっていないようですね」
「え?どういうことですか?」
「先に警告しておきます。あざみさん、それはいわゆるヤバい代物です」
「や、ヤバい代物・・・」
「柊木さんが眉崎さん達を呼んでくれたようのでこのまま特定をはじめましょうか」
「は、はい!」
「まずは箱の外見からいきましょうか。そもそも呪物は呪いの目的によってチカラを宿らせる対象が変わります。つまり呪物の形状を見れば呪いの目的も推測できるのです。そこであざみさんに質問です、今回の呪物である赤い箱はどんな状態でしたか?」
これは見たまんまのことを答えればいいよね
「封、と書かれたお札が貼られていて誰も開けてない状態です!ただ眉崎さんもリナさんも少しだけ触ってしまったそうです」
「great!箱を開けなかったのは不幸中の幸いですね。次の質問にいきましょう、赤い箱にはどのような呪いの伝承がありましたか?」
たしかSNS調査のときにそんな話があったよね
「とある村の"一族を根絶やし"にした・・・と聞きました!」
「excellent!最後の質問です。この箱の近くにいた人間にはすでに呪いの効果が現れています。その影響を受けているのは誰でしょうか?」
「考えるまでもなく、リナさんです。物凄く具合が悪そうで、箱から蛇みたいなものが這い出して体の中に入ってくると言ってました」
「brilliant!そう、この部屋ではリナさんだけが呪いにかかってます。"女性"に効果のある呪いと"箱"、とある村の"一族を根絶やし"にしたという伝承、そんな呪物はアレしかありません!それは・・・」
ー特定ー
「コトリバコです」
柊木side
特定によりあの赤い箱が"コトリバコ"だと判明。元々はネットの怪談で話題になった都市伝説でその出来の良さから本当にあるとされているとまで噂されたこともあった
その怪談の内容はこうだ、
激しい差別を受けていた集落の人間が庄屋一族を根絶やしにするために増えすぎた子供の指を入れてある箱を作った。その箱の近くにいる女性や子供だけを呪いの対象とし、呪いを受けると内臓が捻り切れて死に、男性は呪われない・・・それがコトリバコ。
内臓が捻り切れて死ぬ・・・いつ聞いても恐ろしいな、リナさんもすっかり怯えてしまっているし、眉崎さんは・・・箱が本物そうで嬉しそうだな。なんて奴だ。
とにかく、センター長の言う通りにここから離れて西谷って人の家に向かった方が良さそうだ
「あざみ!ジャスミン!そろそろ・・・」
そろそろ次の現場に向かおう、そう伝えようとするとジャスミンがふらついて寄りかかってきた
「ご、ごめん、ラギッチ。ちょっと肩貸してくんない?」
「え?どうした?なんかあった?」
ジャスミンの顔を見てみると目が虚になっていて汗もかいていた。
「じ、実はあの箱ちょっと触っちゃってさ、それからなんか気分悪いってゆうか・・・」
「な、なんで触っちゃったんだよ!」
「は、ははは、や、ヤバいかな?」
「と、とにかく今日はもう上がろう。俺が運転して家まで送るからさ」
「う、うん、助かるよ」
「あざみ!センター長にこのことを説明して!調査はもう明日にするって」
「は、はい!分かりました!」
「と、いうことなので眉崎さん、今日は失礼します。もっと詳しく調べれば価値も上がると思いますので時間をいただけますか?」
「いいよ!キミには期待しているからね」
「どうも、それからリナさん」
「な、なにかしら?」
「辛いと思いますが呪いの原因とその対処法は必ず見つけますからそれまでもう少し耐えてください」
「え、ええ、お願いね」
2人にそう言って、ジャスミンを支えながら車へと向かい今日の調査は終了。道中ドラッグストアで必要になりそうな物を買い真っ先にジャスミンを家に送った。