キミの支えになりたくて   作:飯即斬

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34話 蛭塚村の呪い

 

柊木side

 

西谷さんの家から車で数時間、幾つもの峠を通り山の奥にある蛭塚村に到着した。

 

ジャスミンの体調は少しだけ良くなったが心配なので今回も車で休ませている。

 

車を降りてしばらくあざみと村を歩くもだれ1人として人を見かけることは無かった。

 

「誰も居ませんね・・・どうしましょうか」

 

「うーん、参ったな、小さい村だからすぐ誰かと遭遇すると思ったんだけどなぁ、これじゃどこに但馬家の屋敷があるか分かんないぞ」

 

村の地図も無いし、スマホで調べようにも圏外、いきなり手詰まりかと思っていると後ろから急に話しかけられた

 

「但馬家に用とは何しにきなさった」

 

「「うわぁ!!」」

 

!!ビックリしたぁ!このお爺さんいつの間に俺達の後ろに!

 

「えーと、文化財の調査で伺いまして・・・村の方ですか?お手数ですが但馬家のお屋敷はどちらでしょう?」

 

「・・・・あそこじゃ、村の1番高い所にあるあの屋敷がそうじゃ。今は家主は居らぬが村の若いのが管理しているはずじゃよ、行くのなら用心することじゃな」

 

「ありがとうございます、よし、早速向かおうか、あざみ。ってあざみ?どこ行った?」

 

あざみの姿が見えないので辺りを見渡すと下の方から声がした。

 

「こ、ここですぅ〜」

 

「・・・・何やってんの?」

 

「さ、さっきのでビックリして腰抜かしちゃって・・・」

 

「大丈夫?ほら、掴まって」

 

腰を抜かし立てなくなっているあざみに手を差し出し、立ち上がらせた。

 

「ありがとうござい・・・あ、あれ!?」

 

「どうした?」

 

「さ、さっきのおじいちゃんもう居ませんよ!」

 

「ほ、ホントだ、周りには建物も無いし・・・一体何処に行ったんだ?」

 

「ゆ、幽霊だったりしませんよね?」

 

「どうだろうね、ターボババアならぬターボジジイだったり・・・いや、そんな事より但馬家の屋敷に向かおうか」

 

「は、はい!」

 

一応、後でセンター長にターボジジイのことは報告しておこう。

 

 

あざみside

 

但馬家の屋敷に向かっている途中、柊木さんが何やら難しい顔をしていた。

 

「どうしました?難しい顔をして」

 

「ん?ああ、呪いの箱について考えてたんだ。コトリバコの呪いってのは本来、女性だけに効果があるはずなのに男性の西谷さんにも影響したのはなんでだろうって」

 

「あ!確かにそうですね!性別は関係なくて他に共通点があるってことでしょうか?」

 

「多分ね。それもこれから行く但馬家でわかると良いんだけど」

 

「そうですね!あ!着きましたよ!」

 

「よし、すいません!先程お電話した者です!」

 

柊木さんが屋敷の門に付いている金属製輪っかをドンドンと叩くと中から小柄の男性がで出てきた。

 

「急な連絡にも関わらずご対応頂きありがとうございます。文化調査員の柊木と申します。こちらは福来です」

 

「よろしくお願いします!」

 

「はぁ、どうも。自分はこの屋敷の管理を任されております、畠山(はたけやま)と申します」

 

「畠山さんはずっとこの村で屋敷の管理をされてるんですか?」

 

「10年程前に家主の但馬修蔵(たじましゅうぞう)さんが亡くなられてからですわ。普段は畑仕事をやっとります」

 

「なるほど、屋敷や家財の権利なんかも畠山さんが?」

 

「いえ、それらは海外に居る但馬家の遠縁にあたる人間が持っとります。そうではないのはあそこにある蔵ですな、あれは一応村の共有財産ってことになっとります」

 

 

「そうなんですね、ありがとうござます。早速なんですか文化調査を始めてもよろしいですか?」

 

「ええ、よろしゅうお願いします。何かわからん事がありましたら聞いてください」

 

「ありがとうございます、よし、調査開始といこうか、あざみ!」

 

「はい!頑張ります!」

 

ジャスミンさんやリナさんの為にもやるぞ!私!

 

 

柊木side

 

畠山さんに挨拶と屋敷について話をした後、まずは屋敷のを見させてもらった。

 

縁側から上がることのできる居間以外は家主のプライベート空間のため関係者以外立ち入り禁止だそうなので居間だけを調べることに。

 

居間に上がると壁に飾られた3枚の遺影が目についた。

 

この人達が呪いで亡くなったとされる但馬家の人達かな?

 

「畠山さん、この人達って歴代の但馬家の当主達ですか?」

 

「ええそうです。あの1番左の写真の人が・・・」

 

畠山さんはゆっくりと丁寧に3人の当主について教えてくれた。

 

1番左のゴツい顔の人が先先代の但馬林蔵、戦前に南米との貿易業で財を築き、ここの屋敷や蔵を建てたらしい。また、大酒飲みで気性が荒く敵も多かったらしいが何かの原因で乱心し、心臓の病気で亡くなったそう。

 

真ん中の人が先代当主で息子の修二郎さん。林蔵さんとは真逆で真面目で気の優しい人だったそうだが同じく心臓の病気で若くして亡くなったらしい。

 

最後が修二郎さんの息子の修蔵さん。林蔵さんと同じような性格で遊び人だったそうで酒もよく飲んでいたそう。修蔵さんもやはり心臓の病気で亡くなっていた。

 

「但馬家は3代全員が心臓の病気で亡くなっているのですね」

 

「ええ、そんなことから村の皆は但馬家の呪いだと言っておるのです」

 

「呪い・・・ですか、もしかしてそれって赤い模様の入った箱のせいだったりしませんか?」

 

俺がコトリバコについて畠山さんに尋ねるとさっきまで固かった表情に鋭い目つきが加わった。

 

「どこでその話を聞いたか知らんけどその話はしとうないですな。もしかしてあれか?この間来た西谷とかいう盗人が言いふらしたんか?」

 

うーん、これ以上聞き出すには材料が足りないなぁ、どうしたもんか。

 

畠山さんからコトリバコについて聞き出す方法を模索していると後ろからひょこっとあざみが顔を出し、居間の角にある戸棚について畠山に尋ねた。

 

どうやら眼鏡で見た西谷さんの影があの戸棚から何かの箱を取り出していたらしく、それが例の茶碗ではないかと思ったそうだ。

 

その考えは的中し、権利上の関係で無くなってしまって困っていたそう。

 

これは使えるかもしれない。

 

「畠山さん、文化財調査の職員として茶碗を取り戻すことを約束しますので箱について話してけれませんか?」

 

「な、なにぃ!本当ですかな?・・・分かりました。そういうことならお話ししましょう」

 

赤い箱について畠山さんは縁側に腰を下ろして話しにくそうに語ってくれた。

 

あの赤い箱奥の蔵で先先代の林蔵さんが作った物でその箱のせいで村の人が何人も乱心し、最後には心臓の病で死んでいった、そうおじいさんから聞かされたそうだ。

 

なるほど、呪いの噂の根源はここからきているとみて間違い無いようだ。となると気になるのはあの蔵だよな、今は鍵がかかっているみたいだけど見せてくれるかな?

 

「畠山さん、あの蔵なんですが鍵を開けてもらうことってできませんか?」

 

「鍵なら蔵の側にある小さな祠に祀ってあるから好きにしたら良い。ワシらは鍵も触りたく無いしましてや蔵になんて入りとうもない。祟られたくないのでな」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

畠山さんに教えてもらった祠をあざみと一緒に見てみると沢山の蔓がまるで蛇のように巻き付いていた。

 

祠の中を調べるために蔓を取り除き祠の扉を開けようとしていると隣であざみが念仏を唱えていた。

 

「・・・なんで念仏となえてんの?」

 

「あ、柊木さんが祟られても大事に至らないようにです!」

 

「・・・せめて祟られないように祈ってくんない?」

 

「あ!そ、そうですね!南無阿弥陀〜」

 

「それだと死んでない?ったく、あ!あったあった」

 

祠の中にあった小袋から鍵を取り出して蔵の鍵を開け、立て付けの悪い扉を開けて蔵の中に入った。

 

 

「結構暗いですね、なんか怖いです」

 

「だね、扉は開けっぱなしにしておこうか」

 

ここで箱が作られたのなら呪いの解き方も分かるかもしれない、そう思い蔵に足を踏み入れた瞬間、強い風が吹き、蔵の扉が閉まり真っ暗な空間に閉じ込められてしまった。

 

「ひ、ひひ、柊木さん!どうしましょう!扉が開きません!怖いです!」

 

真っ暗でもあざみが震えているのが伝わってくる。

 

「落ち着け!取り敢えず手探りで壁を調べよう」

 

「は、はい!」

 

そう言うとあざみは俺の手を握ってきた。

 

確かにこの暗さではこうした方がいいかもしれない

 

あざみが俺の手を握ったのを確認しゆっくりと壁をつたって蔵の奥まで進んだ。

 

奥の壁に手を触れるとその壁一面にあの箱の模様が出現した

 

「ひ、柊木さん!う、腕に蛇が!」

 

思わず巻き付いた蛇を追い払うよう腕を振り回していると畠山さんが蔵の扉を開けてくれた

 

扉を開けてくれた畠山さんから小言をもらったあと調査を再開。

 

入り口の側には子供がスッポリ入れるくらいの大きな箱が幾つも置いてあった。中は全て空だったが渋くて良い香りが漂ってた。

 

蔵の真ん中には戸棚があり乳鉢やすりこぎ棒、トレーの上にシワシワの細い枝みたいなのが並んでいた。

 

「ひ、柊木さん、これって人間の指なんじゃあ・・・確かコトリバコは子供の指を使って呪いを掛けたって」

 

「確かにコトリバコはそうだけどさ、それは多分茶葉かなんかだよ、いい香りもするし」

 

「え?あ、本当ですね!良かったー!」

 

子供の指ではなくてあざみは安心したようだ。

 

模様が描かれた壁の側にある机を調べると壁と同じ蛇のような模様が描かれたノートを見つけた、どうやら林蔵さんの日記のようだ。

 

ノートには切断した指を粉々にして煎じて飲むと神様が見えると書いてありそれを見たあざみは恐怖で震え上がっていた

 

「ゆ、指を砕いて!こ、この村ではそんな風習があるんでしょうか?」

 

「どうだろう、多分さっきの指みたいな物のことを言っているんじゃない?」

 

「な、なるほど!きっとそうです!そうであって欲しい!」

 

 

蔵での調査を済ませて外に出る前にずっと思ってたことをあざみに聞いた。

 

「ねぇ、いつまで手を握ってるの?」

 

そう言うとあざみは顔を真っ赤にして素早く手を離した。

 

「わわあ!す、すいません!まだちょっと怖くってつい」

 

「いや離さなかった俺も悪い、ごめん」

 

「いえいえ!柊木さんは悪く無いです!そ、そうだ!畠山さんにここで調べたことについて聞いてみましょう!」

 

そう言うとあざみはそそくさと蔵の外に行ってしまったので跡を追った。

 

蔵を出て縁側に座っている畠山さんに蔵で調べたことについて話を聞いた。

 

まずは蔵の扉の側にあった大きな箱について、あの箱には元々林蔵さんがこしらえた茶葉が大量に入ってたらしくそれを西谷さんがネット通販をしている人間に売るために幾つか持って行ったそうだ。

 

ネット通販・・・もしかして眉崎さんのことか?そういえばあの潤腸活茶の茶葉ってある村で仕入れたって言ってたけど、ここの茶葉だったのか、そして恐らくその時のおまけがあのコトリバコだったんだろう。

 

次に確認したのは壁の模様について、あの模様は先先代、つまり林蔵さんが描いたもので、村の人はその模様を祟り神だと言っているそうだ。その人達によると林蔵さんはあの蔵で模様と何時間も会話していたらしい。

 

最後に聞いたのはノートに書いてあった指について、予想通り指は茶葉のことを指していて、その茶葉は蔵の鍵を入れていた祠に巻き付いている蔓からつけられているそうだ。

 

蔵で調べたことを畠山に確認した後あざみと呪いの正体について考えていた。

 

「柊木さん、呪いの正体のことを考えているんですけど色々あってはっきりと答えが出せません」

 

「そうだなぁ、呪いの共通点について考えてみようか、まず呪いを受けているのは誰だっけ?」

 

「ジャスミンさんに、リナさん、西谷さんです」

 

「それと林蔵さんもね」

 

「林蔵さんもですか?」

 

「うん、この4人は全員蛇のような模様が見えている。それは何故か?林蔵さんのノートにあった神様を見る方法に関係していると思わない?」

 

「あ!あのお茶を飲んだからですね!」

 

「惜しい、それだと眉崎さんにも呪いの影響があるはず、その茶葉を使った潤腸活茶を飲んでいるはずだしね」

 

「確かにそうですね、あれ?でも他に共通点なんてあります?」

 

「よーく考えてみて、眉崎さんの家に行ったときのジャスミンの行動を、もしあのままジャスミンに呪いが出なかったらどうやって帰った?」

 

「それはもちろん、いつも通りジャスミンさんが運転して・・・あ!」

 

「分かったみたいだね」

 

「はい!あの時ジャスミンさんはお酒の効いたお菓子とここの茶葉で作ったお茶を飲んでました!リナさんも同じ物を口にしていますし、西谷さんもお酒を大量に飲んでいました!」

 

「うん、つまり呪いが出る条件は・・・」

 

「"お茶とお酒を同時に口にする事"ですね!」

 

「うん、つまりあの赤い箱の正体は"茶葉箱"だったてことだね、林蔵さんのお茶を飲むのを止めることで呪いは解かれる!早速センター長に報告しよう!あざみ、センター長に連絡してくれる?」

 

「はい!・・・あ!センター長さん!呪いの正体と解き方が分かりましたよ!」

 

あざみが嬉しいそうにセンター長へ調査の結果報告をしてジャスミンの待つ車に戻った。

 

車に戻るとジャスミンは起きていて車に積んでいた俺の本を読んでいた。

 

「ジャスミン!呪いの解き方が分かったよ!」

 

「ま、マジ!?」

 

本を勢いよく閉じたジャスミンに解き方を説明した。

 

「なるほどなぁ、食べ合わせが原因だったか」

 

「よかったですね!ジャスミンさん!」

 

「あざみーありがとね、アタシのために頑張ってくれて」

 

「いえいえ!ジャスミンさんにはいつも助けられてますから!」

 

「フッ、良い後輩を持ったよ。・・・ラギッチもサンキューな、デカい借りが出来ちまった」

 

「気にすんな、大事な同僚のためだ、当然だよ」

 

「・・・そっか」

 

ジャスミンは何やら複雑そうに下を向いた。

 

そんなに落ち込むことないんだけどなぁ・・・まぁ、取り敢えずリナさんに報告しよう

 

スマホを取り出し、リナさんに電話を掛けた

 

「もしもし、柊木です」

 

「も、もしもし。ゴホッ、柊木君?ゴホッ、の、呪いを解く方法は分かった?」

 

リナさんどんどん体調が悪くなってる

 

リナさんに分かったことを全て伝え、呪いが解けると分かると咳が落ち着いたのかさっきよりはスムーズに会話が出来るようになった

 

「ほ、ほんとうにありがとう。もうダメかと思ったわ」

 

「いえ、まだ油断できません。念のため箱はまだ開けないようにお願いします」

 

「え、ええ、もちろんよ、って、潤!何してるの!?」

 

「り、リナさん!?どうしたんですか?」

 

「た、大変!潤が!」

 

どうやら痺れを切らした眉崎さんが箱を開けてしまったようだ。

 

それから間も無く電話の奥から眉崎さんの悲鳴が聞こえ、苦しそうな声も聞こえてきた。

 

「もしもし!何があったんですか?」

 

「潤が箱を開けて急に倒れて・・・ゴホッゴホッ、わ、私もまた苦しくなって・・・」

 

電話はそこで切れてしまった。マズい急がないと

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「・・・眉崎さんが箱を開けてしまったらしい」

 

「え!なんでですか!」

 

「どうやら呪いの箱じゃない可能性が出てきて痺れを切らして開けたらしい。しかも開けたら急に倒れたみたい」

 

「そ、そんな!」

 

「とにかく急いで眉崎さんの家に向かおう!ジャスミン!もう少し頑張ってくれ!」

 

「お、おっけー」

 

「あざみは眉崎さんについてもう一度SNS調査を頼む!」

 

「はい!分かりました!」

 

手遅れになる前に急がないと!

 

 

アクセルを強く踏み込み、出来るだけスピードを出して眉崎さんの家に向かった。

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