柊木side
「柊木さん、顔色悪いですよ?それに夢を見て泣くなんて・・・やっぱり休んだ方がいいんじゃあ・・・」
「大丈夫だって。タチの悪い夢を見ただけだから」
「でも・・・」
参ったな、ずいぶん心配を掛けてしまってる。俺自身も夢を見て泣くなんて久しぶりだし・・・
どうあざみを説得したもんかと頭を悩ませているとそれを察したジャスミンがあざみを説得してくれた。
「本人が大丈夫だって言っているんだしとりあえずは信じてあげるのも優しさだぞあざみー」
「ジャスミンさん・・・」
「そんでもってさ、もし倒れでもしたら元気になった後にお仕置きしてやればいいじゃん!」
「・・・ですね!柊木さん!もし倒れたらスイーツ奢ってもらいますからね!」
「フッ、分かったよ。さ、そろそろ現場に向かおうか」
今回の現場はサーバー室。ユーテックプライオリティの顧客のデータを保管・管理しているところらしい。そんな重要なところに1週間前にドッペルゲンガーが現れていたことが分かったと黒沢さんから連絡があった。
社員の人の案内でサーバー室に入ると黒沢さんが出迎えてくれた
「どうも、ここが1週間にドッペルゲンガーが出たとされるサーバー室ですか」
「ええ、今のところ何かが取られたり壊されたりはなかったと報告を受けてます」
「なるほど。ではここにドッペルゲンガーが現れた目的を調べればいいですか?」
「ええ、お願いします。ところで例のHDDはそちらで取り戻してもらえるんですよね?まずはそっちのすぐ進捗報告をしてもらいたいんですけど」
「え?いえ我々はあくまで都市伝説、今回のケースで言えばドッペルゲンガーの捜索が業務で、紛失物の捜査はちょっと・・・」
「あー、どうやらこっちの依頼内容と御社の業務に差異があるようですね」
ちっ、やっぱりこうなるか。
「おかしいですね。紛失物捜査の依頼が追加されているか上に確認をさせてください。ですが、もしされていなければウチの上司がそれは警察に届けるべきだと判断して盗難届を出すかもしれませんけど」
「え!・・・いやぁ、申し訳ない。少々混乱してしまってまして、HDDのことは一旦忘れていただいて結構です。ここで起こったことはサーバ担当者も警備員に聞いてください」
「わかりました」
ふぅ、とりあえずは分かってくれたか。
「では、これから調査を開始致します」
「あ!その前にちょっといいかな?」
気を取り直して捜査を開始しようとすると黒沢さんに呼び止められた。
「なんでしょうか?」
「君たちには不思議なチカラがあるってのは本当かい?」
俺とあざみを吟味するような目つきでそう尋ねてきた。
「それがどうかしたんですか?」
「実は今朝、ここで万年筆を落としたみたいでさ、君達のチカラで探して貰えないかな?それくらいはいいだろう?」
「え、まぁ、それくらいなら」
「よろしく頼むよ」
あざみside
サーバ室の調査をする前にまずは黒沢さんが無くした万年筆を探すことになった。
闇雲に探すより影の痕跡を辿った方が良さそうだよね。
眼鏡を掛けると4体の影が現れた。
部屋の出入り口の1番近くにある戸棚には黒沢さん本人の影が戸棚にある工具箱に指を刺している。
残りの3体の影は2つのサーバーに等間隔で並んでいて、こちらを見ている。
この3体は柊木さんのサイコメトリーでもいつもと違う見え方をしているようで、これらはドッペルゲンガーの影と見て間違いないそうだ。
「万年筆、どこにあるんでしょう?」
「そーだなぁ、怪しいのは黒沢さん本人の影が出ている戸棚じゃないかな?」
「ですよね、私もそう思います」
眼鏡を一旦外して、戸棚にある工具箱をあけると中に万年筆が入っていた。
「あ!ありましたよ!柊木さん!」
「だね、・・・・でもちょっと変じゃない?」
「そうなんですよ。落としたっていうより隠してあったみたいですよね」
「とりあえず黒沢さんに報告しようか。考えるのは後にしよう」
「わかりました!」
「黒沢さん、万年筆見つけましたよ」
「おお!助かりましたよ。やっぱり本当なんですねぇ、・・・・これなら」
「?どうかしました?」
「いやいや!なんでもない。とにかく見つけてくれて助かりましたよ!引き続き調査の方もお願いしますね」
「は、はい。分かりました」
なんだったんだろう?一瞬不気味に笑ったような・・・まぁ、いいや!調査に戻らないとね!まずはここの管理者に話を聞こう!
「あの!お話しいいですか?」
「ええ、まぁ・・・」
ここの管理をしているエンジニアの中田さんにまずは1週間前に起きたことを尋ねた。
1週間前の夜、中田さんは毎月定例会のサーバーメンテナンスをしていたそうで、夜中の0時を回った頃に黒沢さんがやってきたとのことだった。
中田さんが挨拶すると作業中の中田さんを気遣うように手振りで挨拶を返してきたららしい。
「つまり、直接会話したりはしていないと」
「まあ、そうです」
ドッペルゲンガーは会話ができないみたいだからここに現れたのはドッペルゲンガーで間違いなさそう。だとしたらドッペルゲンガーは何をしにここに来たのかな?もう一度影の痕跡を追ってみよう!
再度眼鏡を掛けてドッペルゲンガーの影を見て見ると私達と中田さんがいるすぐ側のサーバにドッペルゲンガーが触れているのが見えた。
眼鏡を外してサーバを見てみると鍵がかかっていた。
ドッペルゲンガーはここのサーバを狙っていたってことかな?中身はなんなんだろう?中田さんに聞いてみよう!
「中田さん、ここのサーバの中身ってなんなんですか?」
「え?いやぁ、それは社長の許可が無いとお答えできないですね」
「そうですかぁ、ちょっと聞いてきますね」
一度話を切り上げて黒沢さんに許可を取りに行こうとするとちょうど柊木さんが黒沢さんとの会話を終えてこっちにやって来た。
「中田さん、黒沢社長からの許可貰えましたよ」
「そうですか」
「でも、黒沢さん中田さんの事を不審に思ってましたよ、何故ドッペルゲンガーのことを報告しなかったのかって」
「え?私をですか?・・・・正直確かにあの日の社長はちょっと変だとは思いましたけどまさかニセモノとは思わず・・・」
「ですよね。しょうがないですよ、中田さんは中田さんの仕事があったんですから」
「分かってくれますか!貴方なら信じてくれると思ってましたよ」
「それはどうも。あの、このサーバーの中身なんですけど・・・・」
「ああ!そうでしたね。このサーバーの中身は警視庁の情報システムが入っております」
「け、け、警視庁!?」
そんな凄い情報が入ってるなんて!!
「くれぐれもこの事は内密にお願いします。まぁ、特殊な認証が必要になるので情報を取り出す事はできなかったはずです」
「それは外部からのハッキングにも強いって事ですか?」
「ええ、そうです」
「でも、ここから直接のハッキングには弱いのでは?」
「まあ、そうですね」
「なるほど・・・・」
「柊木さん?どうしてそんな事を?」
「ん?いやちょっと気になっただけだよ。それより奥のサーバなんだけどさ、そこにもドッペルゲンガーの影が居たよね?」
「あ!そうでした!もしかして見てきてくれたんですか?」
「うん、こことは違って鍵とかはかかっていなかってなくて、ドッペルゲンガーはケーブルを挿して何かやっていたみたいだった」
「え!大変です!中田さん!奥のサーバが大変かもです!」
「え?奥の?・・・ああ、あれは大丈夫ですよ。中身は空ですから」
「あ、そうなんですね。よかったです」
中田さんに聞けるのはこのくらいかな?今度は警備員の人に話を聞いてみよう!
「すいません、お話いいですか?」
「ええ、はい!もちろんです!」
すごくハキハキと喋る警備員の井上さん。彼も1週間前の夜にここでドッペルゲンガーに遭遇したらしい。
詳しく聞いてみたものの、殆ど中田さんが見たことと同じだった。
聞いたことをまとめているとさっきとは裏腹に弱々しく井上さんが話しかけてきた。
「あの、私はやはり何かまずいことをしたんでしょうか?」
そんなことを言う井上さんに柊木さんが肩に手を当てて答えた
「そんなことないですよ。井上さんはご自身の仕事を全うされたじゃあないですか!そのおかげで貴重なお話しも聞けたんですから」
「おお!そんなことを言ってくださるとは!ありがとうございます」
「いえいえ」
柊木さん、優しいなぁ。私じゃあなんて言っていいか分からなかったよ。
井上さんの話を聞いた後、一度ジャスミンさん達と合流した。
「ジャスミン、今回のドッペルゲンガーだけどあんまりオカルトぽくないとは思わない?」
「確かにな、今回はサーバー室で自宅の方はHDD、そして社長室ではカード型のデバイスを盗んでたよね」
「ん?社長室で盗ませたのは赤いカード型の何かって話じゃなかったか?」
「あー、ごめんアタシの早とちりだったかも」
「・・・そっか」
ジャスミンさん、何か心当たりがあるのかな?いや、それよりもこのサーバ室にある中身のことを共有しておかないとね。
「柊木さん、あの事もジャスミンさんに伝えておいた方がいいですよね?」
「ああ、そうだね」
「あの事?なになに?気になるじゃん」
「あのですねぇ、実はサーバの中身は警視庁の情報システムみたいなんです」
「警視庁!?」
「ジャスミンさん!しぃーーー!」
「で、でも、サーバからは何も盗まれていないんだよね?」
「はい。そもそも情報にアクセスするには特殊な認証が必要みたいで」
「ふーん」
警視庁の情報の事をジャスミンさんに伝えるとジャスミンさんは何かを考え始めた。
「2人とも、アタシ分かっちゃったかもドッペルゲンガーの目的」
「え!?本当ですか!」
「うん。ラギッチは分かる?」
ジャスミンさんが柊木さんに話を振ると柊木さんはいつものように手に頬を当てていた。
「そもそもドッペルゲンガーはさ、怪異とかじゃなくて、テロを企てているジマーなんじゃないかな?」
「ラギッチもそう思う?テロの計画のために警視庁の情報を盗もうとしたのが1週間前。でもできなくて、さらには赤いカード型のデバイスが必要だと分かった。だから社長室から盗み出していった。そんな感じだと思う」
「あの、ジャスミンさん。盗むためにデバイスが必要ってのは?」
「とにかくアタシを信じてよ。デバイスの話をすれば絶対話すはずだから」
「わ、分かりました」
大丈夫かなぁ?でもジャスミンさんが言うんだから大丈夫だよね!
どう話したらものか考えながら黒沢さんに話しかけた。
「黒沢さん!サーバーの中身なんですけど」
「悪いけどあまり話せないんだよ、そんな事より侵入者の目的を調べてよ」
「侵入者がジマーでその目的がテロの為だとしてもですか?そんな人達に盗まれたんじゃ大変ですよね?」
「ま、待ってください!サーバーの情報の入手には特殊な認証が必要なんです」
「え、えっと、その」
物凄い腱膜で喋る黒沢さんについたじろいでいると柊木さんが代弁してくれた
「でもその認証に必要な赤いカード型のデバイスが盗まれたんですよね?それってかなりまずいのでは?」
少し煽り気味に柊木さんが言うと黒沢さんはどこか安心したように口を開いた。
「ふぅ、まさか君達がここまで辿りつくとはね。あの中には要人警護の情報が入っているんです」
「要人警護・・・」
「ええ、国内の政治家や有力者、海外からの来賓してきた要人、それらの警護に関する情報です」
「それを元にジマーはテロを起こそうとしていたんですね」
「そう。参ったね、君達をみくびっていたようだ」
・・・とりあえずジャスミンさんに報告しよう!
「ジャスミンさん!大変です!情報の中身が分かりましたよ!」
「おお、一旦落ち着けー、それで?なんだった?」
「どうやら要人警護に関する情報みたいです!」
「要人警護・・・なるほど、ジマーは藪から棒にテロを起こしているわけではないってことね」
「ジャスミンさん、柊木さん。今、物凄くやばい状態なのでは・・・」
「だね、警察にとってもそうだし、これを知ってしまったアタシ達もヤバいかも」
「そんな!私達は別にジマーさん達と敵対する気はないのに!」
「計画をしっただけでも十分狙われる理由になるでしょ。それとセンター長の動きも気になる。ラギッチは何か聞いていない?」
「いや、特に何も。抜け目ない人だから心配する必要はないと思うけどね」
「だね。いずれにせよ、ジマーは目的を達成しているはず。あとは警察とアタシ達がどう動くかだな」
「ですね」
「さて!今日はここまで。帰りの挨拶をして帰ろ!」
「ああ」
「ですね!」