柊木side
調査を終えて、あざみとジャスミンが帰った後、俺はセンター長と久しぶりに2人っきりで話をしていた
「いよいよ大詰めですね、柊木さん」
「ですね、やっとここまで来れましたよ」
長かった・・・7年、だもんな、それがあと少しで終わろうとしている。そうなればこのセンターも無くなってしまうだろう。センター長も感じているのか今日は何だか憂鬱気味になっている。
センター長は深く息を吐き、ゆっくりと口を開いた
「柊木さんはセンターが無くなった後はどうするおつもりですか?彼女とどこかにいってしまうのでしょうか?」
「そのつもりです。ですがその前にやるべき事があります」
「あざみさんのことですね」
「・・・はい。正直、まだ迷ってます。俺がやろうとしている事は正しいのか・・・」
「・・・柊木さん、あざみさんはきっと受け止めてくれますよ。柊木さんがどんな思いでやったのかを伝えればきっとね」
視線を下に向けて思い悩む俺に、センター長は右手を俺の頬に当てて優しく声をかけてくれた。
「・・・そうですね。ありがとうございます」
・・・・あざみがどんな選択をするのかは俺にも分からない。もしかしたら恨まれるかもしれない、それがずっと怖かったがセンター長のお陰で少し気が楽になった。
なんだかんだでセンター長はずっと俺の事を気にかけてくれていた、まぁ、無茶ばっかり押し付けてきたのも事実なんだけど・・・
初めて出会った時は都市伝説の話を一日中聞かされたっけ・・・懐かしいなぁ。
「急にニヤけてどうしましたか?」
センター長に指摘されて咄嗟に口を手で隠した
「い、いえ、別に」
「そうですか、私は初めて貴方と会ったときの事を思い出してましたよ、あれは実に楽しい時間でした」
・・・お互いの認識の違いはあれど殆ど同じことを思い出していたことに手で隠した口角がさらに上がった。
「・・・まあ、その楽しい時間もここが無くなればできなくなりますけどね」
「え?どうしてですか?」
「私と貴方は上司と部下の関係です、センターが無くなればただの赤の他人になってしまいます、非常に残念ですが・・・私はまた1人になってしまいますね」
「センター長・・・」
上司と部下の関係、本当にそう思っているのだろうか?否、そんなはずはない。センター長は1人で業を背負おうとしているに違いない。俺に背負わせない為にワザとそんな風に言ったのだろう、でも残念ながらそうはさせない。その為ずっと思っていたことを今、伝えよう。
「なら・・俺たち、親友として始めませんか?」
「親友・・・ですか?」
「ええ、貴方は1人じゃありません。覚悟してください、親友としての俺は色々としつこいですから、1人でなんでも背負うなんて言わせませんよ」
俺がそう言うとセンター長は目を見開き、爽やかに笑った
「ふ、親友ですか・・・悪くない響きです」
「でしょ?」
「それにしても貴方はよく恥ずかしがらずにシラフでそんなことを言えますね。羨ましい限りです」
「それが俺の良いところですから!ってのは冗談で、ただ大切な人にはちゃんと気持ちを伝えときたいんですよ、後悔しないようにね」
あの人が亡くなってから俺はそのことを痛感している。伝えたいことは沢山あったのに恥ずかしがって言えなかったから・・・
「そうですか・・・なら、私もちゃんと伝えないといけませんね」
そう言うとセンター長は自分で車椅子を動かして俺の前に移動してきた
「・・・柊木さん、私は貴方が居てくれて本当に良かったと思ってます。・・・ありがとう」
「センター長・・・」
「そして、さっきの親友という言葉、出来ればずっと取り消さないでくれると嬉しい限りです」
「もちろんですよ!あ!これからは渉とでも呼んだ方がいいですかね?」
それを聞いたセンター長は少し引き気味に答えた
「そ、それはまだこそばゆいですね。もうしばらくはセンター長でお願いします」
「あ、そうですか」
ありゃ、まだその段階に入るには少し早かったみたいだ
「その代わりと言っては何ですが、親友として親睦を深めるために私から提案があるのですが」
「なんでしょうか?」
そう聞き返すとセンター長は机に戻り、引き出しから沢山のDVDや本を取り出した
「実はずっと話したかったオカルト話があるのですよ!皆さん中々聞いてくれませんから話題がたまりに溜まっているのです、まずはこの半魚人のについてなんですが・・・」
ペラペラと早口で喋り始めたセンター長を見てつい笑ってしまった
「ハハハ、センター長は相変わらずですね!良いですよ!今夜は語り尽くしましょうか!」
「よろしいのですか?今夜・・・では済まないかもしれませんよ?」
「望む所です!あ!どうせなら何か飲み食いしながらやりません?俺、買ってきますよ」
「お願いしますね、経費で落としますから」
「なに言ってんですか!これは親友から奢りですよ!」
そう言いながらエレベーターに向かった
「ありがとうございます、柊木さん・・・本当に」
小さく呟いた親友の言葉を胸に刻みながら