あざみside
柊木さんと別れた後、富入さんの運転で富入さんの言う"とある場所"に向かっていた。
そういえばジャスミンさんはどうしたんだろう?
「富入さん、ジャスミンさんはどうしたんですか?」
「・・・止木さんはSAMEZIMAの管理人の罠によって10mの高さから鉄板と一緒に落下して昏睡状態に陥り、今病院で治療を受けてます」
「え!そんな!今すぐ病院に!そ、その前に柊木さんに連絡しなくちゃ!」
急いでスマホを取り出し柊木さんに電話を掛けようとすると富入さんの手が私のスマホの画面を遮った。
「落ち着きなさい。それが今本当にあなたがやるべきこと?」
「うぅぅ、富入さん。私いったいどうしたらいいんでしょう・・・」
柊木さんもジャスミンさんもいない状況での調査に思わず富入さんに不安を漏らしてしまった。
そんな私に富入さんは優しく喝を入れてくれた。
「いい?仕事は振り分けるものよ、私はあなたの身を守るのが仕事。貴方に何かあればあの子にもさっきの彼にも怒られてしまうわ」
「ジャスミンさん・・・柊木さん・・・」
「その2人はあなたにどうしても欲しいと思う?今、この場に居たらなんて言うかしら?」
「それは・・・」
このまま逃げる?私には無理?いや、違う!
2人なら目の前の事件から逃げたり諦めたりしないよね!
2人の顔を思い浮かべると不思議と勇気が湧いてくる。するといつの間にかさっきまでの不安が消えていた。
それを悟ったのか富入さんはニヤリと笑い話を続けた
「いい顔になったわね。さすがあの子が見込んだことだけあるわ。そんなあなたにはこれからあの子の痕跡を追ってもらう、何を調べて何に気がついたのか。何故貴あなたにお願いしたのかその理由も着いたら説明するわ」
「は、はい!分かりました!ジャスミンさんの痕跡を追う、私が今やるべき事!」
「その調子よ、ああ、そろそろ着くから降りる準備よろしくね」
そうして富入さんが運転する車は警視庁へと入っていった。
庁内に入り、婦警さんからの身体検査を受けると人目から隠す様に設置されたエレベーターに富入さんの跡を追う様に乗り込んだ
「福来さん、"非解決事件"ってなんだか分かる?」
「え?解決できなかった、じゃなくてですか?」
「そう、解決"するべきではない"事件。何らかの理由で捜査を打ち切られた事件を非解決事件と我々は呼ぶの」
「そ、そんな事件があるんですか!」
「警視庁にはそれらの資料を保管する機密の場所がある。通称"クローゼット"」
「クローゼット・・・」
「止木さんはクローゼット行きになった事件の資料を調べていたの」
「もしかして7枚目に関する情報もそのクローゼットで!」
「ああ、1つ言っておきますがこれから行く場所の事は私とあなただけの秘密にしといて欲しいの。もちろんさっきの彼にも」
「え!!柊木さんまでにもですか!」
「ええ、約束してもらえるかしら?」
「わ、分かりました!」
エレベーターを降りると薄暗く埃ぽい空間が姿を現した。
その空間には天井に届きそうなくらいの高さの棚がいくつもあり、それぞれに番号が振られていて、その棚にはダンボール箱が入れられていた。どうやらここはPCデータではなく全て紙の資料を保管している場所のようだ。
「ここが、クローゼット・・・」
なんだろう、こんな空間、怖くてもいいはずなのに何故か微塵も感じない。それどころか笑みが溢れてくる。
どうしたんだろう私・・・ううん、今は調査に集中しないと!
「・・・事件が起きれば調査し、解決する。当たり前の事。私達警察は誇りを持って捜査している。でもね、その誇りを捨ててでも守らないといけない秩序ってのがあるらしいわ」
「秩序?」
「そんなおかしな話しがある?事件を正しく解決する事以外に大切なことってなに?だから私はここが好きになれない」
「・・・もしかして、事実と求められた真実が違うからここに行き着くんですか?」
「なかなか鋭いこと言うのね」
「あ、いえ、以前、柊木さんがそんなことを言ってたんです。人は都合のいい真実を求めようとするって」
「都合のいい真実、そうかもしれないわね」
「あ、すいません。警察の人に」
「気にしないで。とにかく、あなたにはここで止木さんの痕跡を追ってほしいの。あなたのそのチカラで」
「でも、なぜジャスミンさんの行動を?」
「ここで得た情報を報告してもらう前に止木さんは倒れちゃったから。例の謎解きの答えがイルミナカードに関係しているのであれば、あの子が辿りついた7枚目のことについての情報が何かあるはず。分からないことがあればあそこの司書にも声を掛けてちょうだい」
「分かりました。"7枚目の情報"と"謎解きに関係しそうな情報"ですね」
司書というのはエレベーターのそばの机に居た小柄のメガネをかけた男の人のことだろう。後で話を聞いてみよう
ジャスミンさんの痕跡を辿る為、メガネを掛けると色んな棚を調べているジャスミンさんの影が複数体現れた。
現れた影を順に追っていくとまずはD98と記された棚に辿り着いた。
うーん、影を追ったのはいいけど・・・資料が多すぎてどれを見たらいいか分からないよぉ・・・って、あれ?一箇所だけ飛び出た資料がある、読んでみよう。
資料を手に取り資料名を見てみると「"ナターシャサイン"によるハッキング事件」と書いてあった。
事件の詳細はこうだ、
●ナターシャサインによるハッキング事件、その被害規模は777億円以上に上り、世界中に衝撃を与えた。
●「ナターシャサイン」はハッキングに使用されたツールで天才的知能を持つ開発者本人、または特定のコードを知っている人間のみにしか使用できないとみられる。
●「ハッピー777億流出事件」について
資産家や政治家が利用するSNS「ハッピー」がハッキングされ、ハッピー内で行われていた非合法なマネーロンダリングが暴露され暗号通貨が流出。ハッキングの痕跡は追跡不可能に終わった。また、ハッピー利用者には警察幹部も含まれており事件の詳細はクローゼットに保管。
ナターシャサイン、ハッキング、凄腕のハッカー、たしか柊木さんから貰った資料の中にSAMEZIMAの管理人は凄腕のハッカーって書いてあったけどもしかしてこの事件もSAMEZIMAの管理人がやったのかな??
・・・とりあえず次の棚を調べよう。
資料を元の場所に戻して次のジャスミンさんの影を追うとD99番の棚に辿り着いた。
ジャスミンさんはこの棚も調べていたみたいだけど・・・あれ?!一箇所箱が抜けてなくなっている!司書さんなら何か知っているかも、早速聞いてみよう。
無くなった箱について司書さんに尋ねると司書さんはぶつぶつと"独り言"を口にした。
「あの棚の箱、恐らく廃棄となったファイル。もうこちらでは調べられない。しかし関連情報であればE04の棚にあったはず。まぁ、どうでもいいか」
「あ、ありがとうごさいます!」
早速E04の棚を調べるとまるで目印の様に折れ目のついた資料があった。
えっと・・・「松田リョウトを容疑者として事情聴取」ってもしかして異界ツアーにいた松田さん!?詳しく見てみよう!
●松田リョウトは殺害された野村健吾の同僚であり野村を殺害する動機あり。
聞き込みの結果、松田には事件当時のアリバイが成立。
●本件は黒沢副総監の判断により捜査終了。クローゼット行きとする。
野村健吾・・・こ、これって上野天誅事件のことだ!!それに黒沢副総監って、またあの黒沢さんのお父さん!?
とりあえず富入さんに報告しよう!
「松田リョウト、ツアーのことは止木さんから報告を受けてます。たしか、上野天誅事件の被害者、野村健吾の同僚でもある」
「そうなんです、でもなんでジャスミンさんはこの資料を見ていたんでしょう?」
「この資料、最後まで読んだ?」
「い、いえ、まずはジャスミンさんがこの資料を見ていたことを共有しておこうと思って・・・いったい、なんて書いてあるんです?」
「この資料の最後のページを見て」
「えーと、『上野天誅事件不確定情報』?」
「この事件は良くも悪くも世間の目を引いた。そのせいか様々な情報が警察に寄せられたの。まあ、殆どイタズラに過ぎなかったみたいだけど。その情報を念のため記載しているのがそのページ」
「なるほど・・・」
資料に指を刺しながら一つ一つ見ていると、とある文に指を止めた。
「『犯人の結末』?」
「その情報だけど、上野天誅事件から4ヶ月くらい経って警察に寄せられたらしいわ」
「え?4ヶ月経って?」
「ええ、でも事件はとっくにクローゼット行きになっていたからイタズラとして処理されたみたいだけど」
「そうなんですか・・・」
「それと4ヶ月後といえばもう一つ」
「まだ何かあるんですか?」
「SAMEZIMAのサイトが開かれたものそのくらいの時期だったわね。偶然かしら?」
偶然?どうなんだろう?落ち着いて考えてみよう。
両手を頬に当てて考える。
SAMEZIMAのサイトが開かれた、つまりこの時にイルミナカードの情報が出回った。
でもなぜか7枚目の情報だけ極端に無かった。いや、"なかった"ではなく"もうすでにあったとしたら"どうだろう?
・・・もしかして資料にあった"犯人の末路の予言"が7枚のこと?うん!きっとそう!
犯人の末路、つまり7枚目のカードは管上野天誅事件の犯人のことを示しているのかも!
ということ管理人は7年前の上野天誅事件をきっかけに今事件を起こしているってことになるよね・・・
もしかして、クチニ出シテモ存在シナイモノって・・・"黒沢征二さんが捜査を中断させた上野天誅事件"ってこと?うん、きっとそうだよ!
この事件は元々物凄い話題で誰もが知っていたから口に出すことはできる。でもクローゼット行きとなり、事件自体無かったことにされた、それがクチニ出シテモ存在シナイモノ・・・
うん、間違いなさそう!!富入さんに報告しよう!!
「富入さん、謎かけの答えが分かったかもしれません!」
「聞かせてちょうだい」
「答えは"上野天誅事件"ではないでしょうか?7枚目が出回った事件、でもこの事件は誰もが知っていたにもかかわらず無かったことにされた、だから口に出せても存在しない」
「なるほど、ここの存在を知らなければまず解けない問題ってわけね」
「これで崩壊と審判を止められるでしょうか?」
「分からない、とにかくやってみるしかないわね」
「はい!」
クローゼット内は場所が場所だけにネットから完全に遮断されている為、唯一使える司書さんのパソコンを借りて答えを入力することになった
SAMEZIMAのサイトを開くと謎かけと答えを入力するページのリンクが貼ってあったのでそのページに飛び、答えを入力した
えっーと、《上野天誅事件》っと
答えを入力しすると画面が急に切り替わりそこには大きくfabulousの文字が浮かび上がった。しかしカウントダウンは止まらない
「ど、どうしましょう!富入さん!カウントダウン止まりません!」
「ちょっと待って、その画面、下にスクロールしてみて、何か書いてあるわ」
富入さんの言う通り画面を下にスクロールすると管理人からのメッセージが書かれていた
『おめでとう、私に辿り着いたらどうしたい?私は如月努の無念を晴らしたい。私の問いに正解したあなたはどうしたい?私に問えるのは私と私の理解者だけ」
「富入さん、これってどういう意味でしょう?」
「如月努の無念を晴らしたい?それに私に問えるのは私と理解者だけって・・・後者の意味はよく分からないけど前者ならまだ分かりそうね」
「言葉通りなら管理人の一連の計画は如月努の無念を晴らす為ってことになりますね」
「でも、管理人はクローゼットの事を知らないはず、にもかかわらず如月努の無念を語るということは、管理人は上野天誅事件と関係がある人物?」
「もしかしたらその関係者に関わる資料がここにあるかもしれませんね、如月努に関する情報と一緒に探してみます」
「ええ、頼んだわね」
よし、もう一度ジャスミンさんの影を追ってみよう!
眼鏡をかけてジャスミンさんの影を見てみると先程までE-04の棚にいたジャスミンさんの影が隣のE-03の棚に移動していた。
影が示す箱の中を調べてみるととある資料を見つけた
「『犬神大学助教の如月努。上野天誅事件の容疑者として事情聴取』こ、これだ!なになに・・・」
『上野天誅事件発生から1ヶ月後、インターネットを中心に如月が犯人であるという噂が多数見られたので念のため事情聴取を行うも事件当日にはアリバイあり。被害者男性の妹である野村朋子と飲食店に居たことを店内の防犯カメラで確認』
ほ、ほんとにネットの噂だけで容疑者になったってこと?そんなことある?
『しかし如月が犯人であるという世論は多く見られマスコミまでもが如月犯人説を支持。当の本人は事件発生から3か月後、自宅にて自死』
そんな、アリバイがあったはずなのに世間が犯人扱いをやめなかったなんて・・・つまりこの時にすでにこの事件はクローゼット行きになってたのかな・・・
もしそんなことがなければ今こんなことにはならなかったのかもしれない、そう思いながら次のページをめくった。
『尚、如月は独自調査をしており犯人に関する仮説など、多数の情報協力を得る』
も、もしかして犯人も特定する為の情報が残っているかも!保管場所は・・・D99、早速調べてみよう
資料にあったD99の棚を調べるも目的の資料を見つけることはできなかった。
どうしよう、資料見つからないよ・・・もしかしてジャスミンさんが何処かに持って行ったのかな?影を追ってみよう!
眼鏡をかけるとE-02の棚の前でしゃがみ込んでいるジャスミンさんの影が現れた。どうやら何かを差し込んでいるみたいだった
眼鏡を外し、差し込まれた場所を見ると如月努に関する資料がまとめられていた
もしかしてジャスミンさんが残してくれたのかな?ありがとうございます!ジャスミンさん!
『如月は調査で集めた情報を全て紙に記録している模様。彼が助教として所属している研究室へ入り回収を試みるも同大学教授らの抵抗により回収困難。これ以上の続行は不可能。ネット上にある関連情報は一部削除」
え?回収を試みる?勝手に持っていこうとしたの?でも如月努の同僚によってそれは回避できたみたい、良かった!
・・・だけどいくらクローゼット行きだからってここまでするのかな?それと、如月さんがどんな情報を得ていたのか知ることができればいいんだけど今は何処にあるのかな?考えてみよう・・・
如月努が独自に調査した資料は警察が回収しようとしたら同僚に阻止されたんだったよね・・・もしかしてまだ"犬神大学の如月努の研究室"にあるのかも!ってことは私の大学にあるってこと!?と、とにかく富入さんに伝えてよう!
「富入さん!もしかしたら私が通う大学、犬神大学にあった如月さんの研究室に事件の調査資料が残っているかもです!」
「いい考えだけど時間が経ち過ぎているし、恐らくそこにも隠蔽の手は回っていると思うわよ」
「そのことなんですけど、どうも当時の大学教授が守ってくれたみたいなんです!それに今の私なら念視で何かを見つけられるかもしれません!警察は当時、念視での調査はしましたか!?」
「確かにその方法での調査はしていないわね。分かったわ、車を回すからついてきて!」
「は、はい!お願いします!」
柊木side
あざみと別れた後、俺はとある人物に会うため、車を運転していた。
その道中、車のカーナビの画面が急に砂嵐に見舞われたかと思えばSAMEZIMAの管理人が映し出された。どうやら先ほどと同様電波ジャックによる配信のようだ。
「答エヲ出シタ者ガ現レマシタ。素晴ラシイ!存在シナイモノヲ捉エル回答者サン、アナタハ私達ノ良キ理解者デス」
回答者か1人しかいないよな。あざみ、やったんだな!
「シカシ、崩壊ト審判ハ約束サレタ未来。カウントダウンガゼロニナル瞬間ヲ見守リマショウ。ゲストノ皆様ト共ニ!」
ゲスト、そう管理人が言うと袋のようなものを被せられた5人の人影が映し出された。人質ってことだろう。
「グレートリセットマデ、アト、6時間。イヨイヨデス。グレートリセットガ達成サレタトキドウナルカ、楽シミニシテイテ下サイ」
管理人の放送が終わるとちょうど目的地に辿り着いた。
外階段を登りとある部屋の玄関の扉の前に立ち、インターフォンを鳴らす、しばらくすると中から住人が出てきた。
「あ、ど、どうも・・・」
「こんにちは、お久しぶりですね。佐藤美桜さん」