キミの支えになりたくて   作:飯即斬

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46話 管理人の痕跡

 

あざみside

 

如月さんの研究室を後にして私はブラッディメアリーの調査で訪れた公園にタクシーで向かっていた。

 

タクシーに乗っている間先程の管理人の配信についてSNS調査をすることに。

 

よし、あの配信は沢山の人が見てたはずだからなにか手掛かりがあるかも・・・あ、この投稿はジマーの人のだ!

 

「くる、ついにくるぞ!これで世界が変わる!この日の為に私はずっと計画の手伝いをしてきたんだ!GR」

「俺も!最初は不安だったけど今はあの人達の力になれたことが嬉しい。GR」

 

計画の手伝い?あの人達?うーん、よく分からないけどこの2つのワードを使って更に検索して・・・と、あ!色々出てきた!

 

「今だから言うけど実は俺はこの計画の協力者の1人だ。あの人達に頼ってもらえて嬉しかったGR」

 

「私もあの人達に会ったことがある。でも私の頭では理解することができなかった。それが悔しかったけど今思うとそれで良かったのかもしれない」

 

「なんと勿体ない!あの人達達と出会えること、そして頼りにされること、これ以上の祝福はない!あぁ!また会いたい!GR」

 

「分かる!自分はダメな奴だって思ってたけど、そんなことない、貴方は十分よくやってるって元気づけてくれた!GR」

 

・・・管理人って相当慕われているんだ。それにこの元気づける感じ、なんとなくだけど何処かで感じたような気がするなぁ。

 

それからもしばらくジマーの投稿を追っていると見覚えのある単語が出てきた。

 

ハッピー777億事件?これって確か管理人が引き起こしたかもしれない事件だよね?なになに・・・・

 

「ハッピー777億事件の噂、あれはおそらく本当だと思う。友達から聞いたけどあの事件の後、世界中の孤児院に多額の寄付があったらしい」

 

「証拠が無いので信じてもらえないかもしれませんがその説は事実です!そのお陰で身寄りのない子供達に素敵な環境で過ごしてもらうことができました!今噂の管理人さんがやったのならあの人は悪い人ではないと信じてます!!」

 

・・・言いたいことは分かる、けどだからといって今の事件を起こしていい理由にはならないよ・・・

 

ハッピー777億事件の投稿が終わるとまた管理人の手伝いをしたと思われる投稿が流れてきた

 

「俺もあの人達に言われて上野の地下にガスとか運んだ!理由は教えてくれなかったけど頼られて嬉しかった!GR!」

 

「やや!同志発見!!我もあの方達に言われてツアーに潜入しますぞ!共にグレートリセットを成しましょうぞ!」

 

「僕もあの人達が教えてくれた通りにやったら嫌いな奴に復讐できた。奥歯を幾つか抜かれたけど惜しくない。むしろあの人に触れられて嬉しい。早くあの人達が望む世界が来て欲しい!GR」

 

「お宝ハンター西ちゃんです!今日訪れた廃れた教会に行きましたがお宝はありませんでした。その代わり偶然そこにいたあの人のお陰で良い気持ちです!」

 

「私はあの人の言う通りに恋人を連れ去る協力をしたわ。これで私達は幸せになれる」

 

こ、これって!今まで私達が調査してきた事件のことだよね!?上野オカルト&ダークの時の異界に、眉崎さんのときのコトリバコ・・・もしかしてこれ全部管理人が関わっているの!?そうだとしたらやっぱり今まで調査した現場になにか手掛かりがあるかしれない!そろそろ公園に着くから着いたらさっそく痕跡を探してみよう!私のこのチカラで!

 

 

 

 

ブラッディメアリーの事件で訪れた公園はあの時と変わらず小鳥の鳴き声が心地よく響いていた

 

そういえば富入さんと初めて出会ったのはこの公園だったよね。もっと普通に話しかけてけれたら良かったのに。いや、今思うと結構優しく話しかけてけれていた気もするなぁ、あの不気味な笑顔は・・・

 

懐かしさを感じつつ公園に入り、管理人の痕跡を探す為にメガネを掛ける。すると2体の影が街灯の下に姿を現した。そのうちの1体は白装束を着たSAMEZIMAの管理人で2体の影は何やら話し込んでいるようだった。

 

 

白装束で出歩くなんて大胆にも程があるよ・・・それともう1人は・・・ああ!ヒナタさんだ!ヒナタさんは管理人に会っていたんだ!でもヒナタさんにはもう話を聞けないし、他に誰か話を聞けそうな人はいないかな?

 

目撃した人がいないか辺りを見回していると後ろから声を掛けられた。

 

「おや?アンタまた来たのか」

 

振り返るとブラッディメアリーの調査のときに話を聞いたこの公園の管理人のおじいさんが居た。

 

「あ!管理人さん!お久しぶりです!」

 

「アンタが1人で来るなんて初めてじゃないか?今日はどうしたのかな?」

 

そうだ!管理人さんなら何か目撃しているかも!聞いてみよう!

 

「あの!ここで白装束の人見たりしてませんか?ヒナタさんと話してたはずなんですけど」

 

「白装束?例の動画に映っていたみたいなやつか?」

 

「まさしくそれです!その動画に出ていた人を探してまして」

 

「うーん、悪いが見たことないな。いつもここにいるわけではないしな」

 

「そうですか・・・」

 

うーん、何か分かると思ったんだけどなぁ、しょうがないか。

 

管理人のおじいさんにお礼を言って調査に戻ろうとすると管理人さんがベンチに座りながら私を呼び止めた。

 

「ああ、そういえば小耳に挟んだんだが、例の奴は如月努と関係があるそうだがそれは本当かい?」

 

「え!如月努を知っているんですか?」

 

「知っているものなにも彼が高校生くらいの頃に会ったことがあってな」

 

「そうなんですか!?いったいいつどこで会ったんですか!?」

 

「もう10年前くらい前になるかな。当時は配達業をやっていて給食や学校で使う備品なんかを運んでたんだ。学校以外にも孤児院なんかにも配達していて、彼とはそこで会ったんだよ」

 

「孤児院?そ、それどこにあるか分かりますか!」

 

「いやぁ、なんせ10年以上前の話だからなぁ。どこかの教会と併設していたってことは覚えとるんだがなぁ」

 

「そうですか・・・でもよく如月さんのこと覚えてましたね」

 

「ああ、それは搬送中にいきなり赤い目ん玉が描かれている小僧達が出てきて声をかけられてな」

 

赤い目ん玉?それってもしかして秘密結社の計画書のことかな?

 

「そのうちの1人に色々聞かれたよ。学校の授業で先生はどんな風に教えているのかとか。しばらくするとその子のお兄さんらしき人がやってきて、仕事の邪魔をしてはいけないよ、ってその子に言い聞かせていたよ」

 

「もしかしてそのお兄さんが如月努さん?」

 

「ああ、彼が有名になって思い出したよ。亡くなられて残念だった」

 

「そうだったんですね」

 

如月兄弟はどこかの教会に併設された孤児院で育ったのか。でもどこの教会なんだろう・・・ん?そういえばおじいさんさっき努さんの弟と会った話の時に気になることを言ってたよね?確か・・・小僧(・・)

 

「あの、孤児院で会った子供って努さんの弟さん1人ですよね?」

 

「ん?違う違う。ワシが会ったのは2人だ」

 

「え!え!2人!?」

 

どういうこと!?如月兄弟は2人兄弟のはずじゃなかったの!?

 

「そ、そのもう1人の子供のこと聞かせてください!」

 

「うーむ、そう言われてもなぁ。さっきの弟みたいに直接話したわけではないし・・・あぁ、でも顔はみたな。はっきりとは覚えとらんが。それに如月努の弟は1人で間違いないはずだ、そんな会話を当時した覚えがあるよ。多分もう1人は弟の友達かなんかじゃないか?」

 

「もしかしてその子供、短髪の男の子だったりしませんか?」

 

「おお!そうそう!確かそんな感じだった」

 

やっぱり!さっき研究室で見た写真に映っていたもう1人の男の子のことだ!でもそうだとしてもSAMEZIMAの管理人は如月努さんの弟だから関係ないのかな?でも一応メモしておこうかな。

 

今まで聞いたことを手帳に書き、ふと管理人のおじいさんを見ると何やら考え込んでいるのが見えた。

 

 

「どうしました?」

 

「・・・この前一緒に来ていた男は今日は来てないのか?」

 

「この前?あ、柊木さんですか?そうなんです、今は別行動してまして。それがどうかしましたか?」

 

「いやぁ、この前会った時からどっかで会ったような気がしていてな。あれからずっと考えていたんだ」

 

そういえばそんなこと言ってたっけ。柊木さんは人違いだって言ってたけど。

 

「今思い出したよ、如月努の弟と一緒にいた子と雰囲気が似ていたもんでそう思ったんだ」

 

「え!?・・・いやでも当時子供だったんですよね?気のせいじゃありませんか?」

 

「別に同一人物とは言っとらん。あくまで雰囲気が似てると言ったんだ」

 

「そ、そうですよね」

 

び、びっくりした〜、そんなわけない・・・よね。

 

「あの、色々お話しありがとうございました!私はこれで失礼します」

 

「ああ、落ち着いたらまた遊びに来なさい」

 

「はい!」

 

 

管理人のおじいさんにお礼を言って次の現場に向かうためにタクシーを呼んだ。

 

タクシーを待っている間、次の行動を決めることにした。

 

次はどこに行こう・・・イルミナカードの順番でいけば次は上野の地下かな、よし!ちょうどタクシーも着たし行ってみよう!

 

 

オカルト&ダークの調査で訪れた上野の地下にある廃れた駅につながる扉は封鎖されていたが警察に連れて行かれる前に野村朋子さんから受け取っていた鍵を使って入ることが出来た。

 

うぅ、勢いで来たけどやっぱり怖い!で、でも調査しないと!とりあえずメガネを掛けて影を調査しよう!

 

メガネを掛けると公園の時と同じく白装束姿の管理人の影が現れた。

 

現れた影の近くにはベンチとその真上には鉄格子で塞がれた通気口が設置されている。

 

あの鉄格子、ツアーのときから外れそうで気になってたんだよね。ベンチを使って調べてみよう。

 

ベンチに登り、鉄格子に手をかけると思いのほか簡単に取り外すことができた。

 

あれ?通気口の中になにかあるな。これってボイスレコーダーだ、奥にあるのは何かの装置?多分ガスを発生させる為のやつかな?

 

通気口の奥にある装置は取り出せそうになく手前に置いてあったボイスレコーダーだけを手に立ってベンチから降りた。

 

なにが録音されてるのかな?聞いてみよう

 

『・・・あなたの復讐を手伝います。・・・ええ、犯人の目星は付いています。・・・小判を盗み取った犯人には腕にアザがあります。

・・・今日はそのために来てもらったんです。大丈夫です。きっと上手くいきます。あなたの気持ちは痛いほど分かりますから』

 

こ、この声!配信のときの管理人の声と一緒だ!でもガタンガタンって音のせいで聞きづらい・・・これって電車の音かな?

 

それからも最後まで録音を聞くも結局はほとんど電車の音で聞こえなかった。

 

これって野村さんの計画にもSAMEZIMAの管理人が手を貸していたってことだよね。それにこの電車の音。もしかして管理人は近くを電車が通る教会に居るってことかな?んーここにいてもこれ以上分かりそうにないなぁ、よし!次の場所に向かおう。

 

 

 

次に向かったのはコトリバコの調査で訪れた西谷さんの家。なんと家の鍵は掛かっておらず部屋の中も調査のときに訪れたままの状態だった。

 

うぅ、お酒臭い・・・でも我慢しなきゃ。ここにも管理人の影は出るかな?確認してみよう

 

メガネを掛けて影を見てると今度は管理人ではなく別の影が2体現れた。

 

これって・・・柊木さんと伊藤さん?あ!そうか調査のときに荷物の受け渡しを頼んだったけ。きっとそのときの影だ!ってことはここには管理人は来てないのかぁ。そういえば西谷さん如月努さんの本を持ってたよね?他にも何かないか本棚を調べてみようかな

 

本棚を調べると調査なときに見つけた完全呪いマニュアル上巻が置いてあった。

 

あった。念の為これは持って行こう。他には何かないかな・・・あ、なにこれ?"お宝帳簿"?ちょっと見てみよう。

 

本棚で見つけたお宝帳簿、そこにはこれまで回った場所とこれから回ろうとしているお宝の場所が書き記されていた。

 

あ、日付や天気まで書いてある。西谷さんズボラそうにみえてこういうところは几帳面だったのかな?字はあまり綺麗じゃないけど・・・

 

最後に行ったのは・・・教会?もしかして!詳しく読んでみよう!

 

『その日は久しぶりの大雨の日だった。目的の場所が駅近だったので珍しく電車で現場に向かった。教会なんて初めてだったから期待していたが売れそうなものは無かった。でもそこにはヤバい人が居た。顔は見れなかったけど運命の出会いと言ってもいい』

 

『気づいたら色んなことを話していた。この人にならなんでも話せる、そんな気持ちになった。そして俺の話をマジになって聞いてくれた。復讐の仕方を教えてくれた、手伝ってくれた。ウチによく来てくれる配達員の伊藤さんも同志だった。そして2人で奴に復讐しますることを決めた。この引き合わせにも感謝したい。本当に神様みたいな人だ。GR』

 

駅近の教会、そこで出会った人、やっぱりここに書かれている人って管理人のことだよね

よし、この日記も持っていこう。

 

 

西谷さんの日記をカバンに入れて次の現場へと向かった。

 

 

やってきたのはドッペルゲンガーの調査で訪れた黒沢優弥さんの自宅。西谷さんの家と同じく鍵は掛かっていなかった。

 

し、失礼しまーすぅ。やっぱり誰もいない・・・誰もいなけど緊急事態なんで!お邪魔します!!

 

こそっと玄関に上がると壁に飾られたトロフィー達に目が止まる。

 

部活などのトロフィーの他にも動画配信サービスの再生ボタンが掘られたトロフィーが飾ってある。

 

あ!これってBoo Tubeの登録者記念トロフィーだ!黒沢さん配信者までやってたんだ。なんて名前で活動していたんだろう?

 

トロフィーに掘られた名前を見てみるとそこには"ファイブ・ソサエティ様"とあった

 

ファイブ・ソサエティ!?これって如月さんのメモに出てきた5ソサエティのことだよね!?上野天誅事件の犯人の!?

 

え、これがここにあるってことは黒沢さんはファイブ・ソサエティのメンバーだった!?

 

お、落ち着け私!とりあえず管理人が居ないか調べないと!

 

メガネを掛けるとPCルームのデスクチェアに座っている黒沢さんの首を絞めている管理人が姿を現した。

 

うぅぅ、生々しいなぁ。でもやっぱり管理人はここに来ていたんだ!そして黒沢さんは管理人によって連れ去られたんだ・・・

 

影を調べ終えてメガネを外すとパソコンの電源がついたままだということに気がついた。

 

そういえばこの部屋から盗まれたっていうHDDって結局なんだったんだろう?うーん、気になるけど今は分かりそうにないなぁ

 

 

黒沢さんの家を出て、これまでの調査をふまえて管理人がどこにいるのがを推理することにした。

 

色んな場所に残っていた管理人とやり取りの痕跡だけど、管理人の居場所を特定する決定的なものは無かった。でもこれまでの情報である程度分かる気がする。

 

いつものように両手で顔を覆い考える

 

・・・"線路が近い廃墟となった教会"にいるのかな?うん、きっとそう。・・・だけどこれだけじゃ足りない。なにか、なにか見落としてる気がする。まだ調べてない場所でもあるのかな?考えてみよう。

 

カウントダウンの残り時間ももう3時間を切っているなか必死に考える。

 

落ち着け、今までの現場は全て管理人に関係していた。でもなんでそう思った?・・・そうだ、これまでの事件は全てイルミナカードによって予言されていたんだった。それが分かったから今までで調査した場所を調べることにしたんだよね・・・あ!

 

そして私はある人物のことを思い出した。私がセンターに入って初めて調査した案件の依頼人。それと同時に私の友達でもある人物。

 

美桜だ。そうだ美桜がいた!そういえばあのとき部屋で別れた時も様子がおかしかった。

 

よし、美桜の家に行ってみよう。と、その前に美桜に連絡しなきゃ。

 

 

久しぶりに話すせいか緊張しながら美桜に電話を掛けるとすぐに出てくれた。

 

今どこに住んでいるのか尋ねると、まだあの部屋に住み続けていることが分かった。

 

今から来てもいいかと聞くと心よく了承してくれたので早速美桜の部屋に向かった。

 

 

 

美桜の部屋の玄関のベルを鳴らすと中から少し元気になった美桜が出てきて中に入れてくれた。

 

「いらっしゃい、あざみ。なんか久しぶりだね」

 

「うん、そうだね。ごめんね、あれから全然連絡しなくて」

 

「ううん、気にしないで。今お茶淹れるから」

 

「うん、ありがとう。でもあまりゆっくりしている場合じゃないんだ」

 

「やっぱり?あざみはすぐ顔に出るからそうなんじゃないかって思ったよ」

 

「本当にごめんね!次来たときはゆっくり、いっぱい話そうね!」

 

「うん!楽しみにしてるね」

 

「それでね、今日来たのはSAMEZIMAの管理人について何か知ってることがあれば教えて欲しいんだ。美桜何か知らないかな?」

 

私がそう尋ねると美桜は少し考えてから部屋の奥の棚から便箋を1冊取り出して私の前に置いた。

 

「これは?」

 

「それはSAMEZIMAの管理人から貰った手紙」

 

「見ていいの?」

 

「うん、あざみならいいよ」

 

「ありがとう!」

 

美桜から受け取った手紙にはベットの下の男の事件の際の行動が事細かに書き記されていた。

 

美桜はこの指示に従って部屋を真っ赤にしたんだ・・・

 

そして手紙の後半はSAMEZIMAの管理人から美桜へのメッセージが書かれていた。

 

『居場所が突然無くなる怖さ、私は分かる。どこに行っても興味の目を向けられ続ける辛さが私には分かる。貴女は自分が間違っていてもいいと思ってる。でもそんなことはない。他人に理解を求めなくてもいい。貴女はもっと素敵な人。自信を持って。それでも辛い時は初めて会ったあの場所でならいつでも話を聞きます』

 

・・・よく見るとこの手紙、しわくちゃになってる。きっと美桜は何度もこの手紙を読んだんだ・・・

 

「ねぇ、美桜。今は管理人との関係を聞いたりしない。でも1つだけ教えて!管理人は今どこにいるの!?お願い!もう時間がないの!」

 

両手を机に置き、前のめりで必死に美桜に尋ねる。美桜は目を瞑り机の下の拳に力をグッと込める。言うべきかどうか悩んでいるようだった。

 

美桜はしばらく悩んだ末ゆっくりと口を開いた

 

「・・・"聖ニコラオ教会"。あの人はそこにいる」

 

「聖ニコラオ教会だね!ありがとう!美桜!行ってくる!」

 

スッと立ち上がり部屋を出ようとすると美桜に呼び止められた。

 

「待って!あざみ!」

 

「どうしたの?」

 

「まだ話していないことがあるの」

 

「え?いったい何を?」

 

「実はね、さっきここに柊木さんが来たの」

 

「え!柊木さんが!どうして!も、もしかして美桜!」

 

「ち、違うよ!柊木さんはね、私の為に来てくれたの」

 

「どういうこと?」

 

「うん、それはね・・・」

 

 

 

柊木side

 

「お久しぶりです、美桜さん」

 

「あ、柊木さん・・・」

 

少し痩せたな、美桜さん。

 

「突然お邪魔してすいません。今日は美桜さんにどうしても話したいことがあって来ました。よろしければ中に入れて貰えませんか?」

 

「・・・どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

事件があった時と同じ部屋に住んでいる美桜さん、真っ赤に染まっていた部屋はすっかり綺麗になっていた。

 

部屋の真ん中に置かれた机の前で座って待っていると美桜さんがお茶を持って来てくれた。

 

「ありがとうございます」

 

「いえ、それよりお礼を言わせてください」

 

「お礼?ですか?」

 

「はい。栄子さんを襲った時、私を止めてくれたじゃないですか。そのお陰で不起訴になって今こうしてここにいられるんです。本当にありがとうございます」

 

「気にしないで下さい。あの時は俺も必死でしたから」

 

「でもそのせいで左腕に怪我を・・・」

 

「ん?ああ、これですか。ナイフが少し掠っただけですよ。大したことないです」

 

「でも・・・」

 

「そんなことより、これを受けって下さい」

 

そう言ってカバンを差し出した。

 

「こ、これは?」

 

「中にはこれから必要になる物を入れてあります」

 

「は、はぁ」

 

美桜さんは不安そうにカバンを受けとり中を確認すると、え!と声を出してある物を取り出した。

 

「こ、これって・・・」

 

「スマホです。中にはアメリカのネットバンクのアプリを入れてあります。そしてこの紙に書いてあるのがアカウント名とそのパスワードです。口座には日本円で1億円程入ってます」

 

「ど、どうしてこんな物を・・・」

 

「実はこの前、美桜さんのご両親に会って来たんです」

 

「どうしてそんなことを!」

 

机をバンッ!と叩く美桜さん。それも当然だろう。あんなことがあってから連絡を取らないようにしていたのに赤の他人が勝手に身内に接触したのだから。

 

ついカッっとなってしまった美桜さんはすいません、と言いながら静かに座り込んだ。

 

「勝手に会いに行ったことは謝ります。怒られるのは当然です。でもまずは俺の話を聞いてください」

 

「・・・両親はなんて言ってましたか?やっぱり怒ってましたよね?」

 

「いいえ、寧ろ心配されてましたよ。連絡が取れなくてどうしたらいいか困ってらっしゃいました」

 

「嘘ですよね?あんなことをしたのに・・・」

 

「ご両親から伝言を預かってます・・・いつでも帰ってこい、そう仰ってました」

 

「で、でも!私が帰ったら余計に周りから迫害されてしまいます!」

 

「ええ、確かにあれから色々あったみたいですね」

 

「・・・やっぱり帰れませんよ」

 

「なので俺からご両親に提案したんです。海外て生活してするのはどうか、って」

 

「か、海外にですか?」

 

「はい。お父さんの会社は海外にも拠点あるようなのでそれを利用してはどうかと言ったんです」

 

「そ、それで両親はなんて答えたんですか?」

 

「娘が、あなたがいいならすぐにでもと、それでまた一緒に暮らせるならとも仰ってましたよ」

 

「うぅ、お父さん・・・お母さん・・・」

 

ポロポロと涙を流す美桜さん。今まで溜め込んでいた分、泣き止むまで少しばかり時間がかかった。

 

「大丈夫ですか?」

 

「・・・はい。もう大丈夫です」

 

美桜さんが泣き止み、落ち着いたところで話の続きを開始した。

 

「それで美桜さんはどうしたいですか?」

 

「私は、両親に会いたいです。でも連絡を取ろうにもスマホはもう解約してしまって手元にないんです」

 

「それならご心配なく。そうだろうと思ってそのスマホを用意したんですよ」

 

「え?じゃあ、このスマホは・・・」

 

「あなた用です。ご両親の連絡先も登録してあります。もちろんご両親には説明済みです」

 

「な、なんでここまでしてくれんですか?」

 

「・・・あなたが、アイツと仲良くしてくれたからですかね」

 

「アイツ・・・もしかして・・・」

 

「・・・さて、俺の用事はこれで済みました。まだやらなきゃいけない事があるのでこれで失礼します」

 

靴を履き、玄関のドアを開けようとすると後ろから美桜さんに呼び止められた。

 

「あ、あの!柊木さん!」

 

「ん?なんですか?」

 

「そ、その、色々ありがとうございました!」

 

深々と頭を下げてお礼を言う美桜さん。そして顔を上げるとそこには明るく笑う姿がそこにはあった。

 

どうやら吹っ切れたみたいだな

 

「いえ、これから大変かもしれませんが頑張ってくださいね」

 

「はい!あ、あの、柊木さん」

 

「はい?」

 

「あ、貴方はもしかして・・・かん・・・」

 

「おっと!それ以上は言わない方があなたの為です」

 

「は、はい。そう、ですね」

 

「それでは、俺はこれで。お邪魔しました」

 

 

あざみside

 

「と、いうことなの」

 

「そう、だったんだ・・・」

 

美桜は柊木さんがここに来た理由を嬉しいそうに話してくれた。

 

柊木さん、美桜にここまでしてくれてたなんて・・・私も後でお礼をしなくちゃ

 

「それで、ご両親とは連絡ついたの?」

 

「うん!もう住む場所も仕事も決まってるって!後は荷物を向こうに送るだけかな」

 

「そうなんだぁ!だから部屋がが綺麗になっているんだね」

 

「うん!」

 

「いつ、出発するの?」

 

「来月の予定だよ」

 

「そっあ、寂しくなるなぁ」

 

「別に永遠の別れってわけじゃないでしょ?落ち着いたら手紙だすね」

 

「うん!楽しみにしてるね!」

 

美桜、本当に明るくなったなぁ!よかったよかった!!もっとお話ししていたいけどそろそろ行かないと!

 

「ごめん美桜!私そろそろ行かないと!」

 

残りのお茶を飲み干して玄関に向かう。部屋の出ようとすると美桜に呼び止められた。

 

「待って!あざみ!」

 

「どうしたの?美桜」

 

「本当に教会に行くの?」

 

「うん、私、管理人を止めないと」

 

「止める?そしたらグレートリセットはどうなるの?」

 

美桜の様子がおかしい。まるで私に管理人を止めてほしくないみたいだ

 

「もしかして美桜は管理人の事情を知ってるの?」

 

「そ、それは・・・」

 

美桜の気持ちも分かる。でもそれじゃあダメなんだ

 

「私もね、少しだけだけど知っちゃった。でもそれでも行かないと」

 

「でもそんな事をしたら!」

 

「・・・自分を理解してくれる人が、支えてくれる人が1人でも側に居ると安心するよね。私も誰かにとってそうでありたいと思う。だからこそ止めないと」

 

「どうしてそこまで・・・」

 

「分からない。でも如月努さんは弟に復讐なんてしてほしくないんだと思うんだ。大切なこの世でたった1人の兄弟だから」

 

「あざみ・・・」

 

「行ってくる!じゃあね!美桜!」

 

「・・・うん、気をつけてね」

 

 

美桜の部屋を出て早速スマホで教えてもらった場所を調べる。

 

聖ニコラオ教会・・・あ!よかった!まだ地図に残ってる!急いで向かおう!!

 

 

 

グレートリセットまで、残り1時間

 

 

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