キミの支えになりたくて   作:飯即斬

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今回の話から原作における重大なネタバレを含みますのでご注意下さい

特に⚪︎⚪︎⚪︎(漢字3文字)、この中に入る言葉がこの前置きの段階で分からない方は閲覧されない事を強く推奨します。

分からないけど見ようとしてくれた方すいません





47話 崩壊と審判(グレートリセット)

 

あざみside

 

タクシーの中のテレビではSAMEZIMAの管理人の話題で持ちきりだった。

 

管理人の目的、正体、カウントダウンがゼロになったときなにが起こるのか、様々な議論がなされている。

 

しばらくテレビを見ているとタクシーが停まった。どうやら着いたみたいだ。

 

料金を支払い、運転手さんにお礼を言ってタクシーを降りて教会の門の前に立った。

 

「すっかり暗くなっちゃったけどやっと着いた。ここが聖ニコラオ教会・・・・」

 

屋根も外装もボロボロでもう使われてないはずだけど明かりが点いてる・・・ここで間違いない・・・よし!行こう!

 

 

重い教会の扉をやっとの思いで開けて中に入ると配信に映っていた5人の人質がライトで照らされていた。その背後にある大きなモニターにもその様子が映し出されている。

 

「だ、大丈夫ですか!助けに来ました!苦しいですよね!今、マスク取りますね」

 

そう言って、1番手前の人のマスクを取る、するとそこには・・・

 

「く、黒沢さん!ほ、本物ですよね?またドッペルゲンガーなんてことは・・・」

 

「なにがドッペルゲンガーだ!あれはアイツの仕業だろ!!」

 

「な、何言っているんですか・・・って、黒沢さんがここに居るってことは他の人質って・・・」

 

残りのマスクを順番に取っていくと事件の後行方不明になっていた人達の顔が出てきた。

 

「栄子さんにきのこさん、それとガスマスクさんに眉崎さんまで!よかった!皆さん無事だったんですね」

 

「こ、これのどこが無事なんだよ」

 

最初に口を開いたのはガスマスクさん。可哀想に余程消耗しているのだろう。呂律が回ってない。

 

「安心してください!こんなこともあろうかとナイフを持ってきたんです!今、楽にしてあげますね」

 

「ヒィ!ら、楽に!?た、助けて!!」

 

「もう、きのこさん、そういう意味じゃないですよぉ」

 

「触らないで!私はアンタ達のこと絶対に許さないわよ!」

 

「栄子さん・・・まだそんな事言っているんですか?」

 

「ま、待ってくれ!お、俺だけでも助けてくれよ!」

 

「大丈夫ですよ、眉崎さん!皆ちゃんと助けますからね!」

 

よし、管理人がいない今のうちに縄をナイフで切らないと!

 

持ってきたナイフでまずは黒沢さんの縄を切ろうとすると突然モニターの画面が切り替わった。

 

「待ッテイマシタ。正解者」

 

さ、SAMEZIMAの管理人!!

 

「こ、この人達を解放してください!」

 

「・・・私ハ如月努ノ無念ヲ晴ラシタイ。貴女は何ノタメニココニキタノデスカ?」

 

「わ、私は!あなたを、貴方を止めたい!!」

 

「私ヲ理解デキナイ者ニハ私ハ止メラレナイ。ソノ一時的ナ正義感デハネ」

 

「い、一時的なんかじゃないです!わ、私は・・・」

 

必死に管理人に訴えようとすると私のスマホが鳴った。センター長さんからだ。

 

「もしもし!センター長さん!」

 

「視ていましたよあざみさん。よくぞここまで辿り着きましたね」

 

「センター長さん!私は!」

 

「あなたは彼の、管理人の理解者であることを示さねばなりません。崩壊と審判に至る計画を今、管理人の前で解体して見せましょう」

 

「はい!」

 

「と、その前に。SAMEZIMAの管理人はあなたを何処からか見ているようですね」

 

「ですね。会話出来てましたし」

 

「ですので私とのやり取りも伝わるようによろしくお願いします」

 

「わかりました!・・・SAMEZIMAの管理人さん!私はあなたの理解者です!これから調査で得た情報やそこから見えてきた貴方の事を答えていきますから正しく理解できているか聞いていて下さい!」

 

「イイデショウ。セッカクナノデ配信シテ皆サンニモ聞イテマライマショウ。デスガ、正シク理解デキテイナイト分ッタ時ハ・・・」

 

「わ、わかりました。センター長さん!準備オッケーです!」

 

「では、全てを見定めよ!天眼錠(アイ・オープナー)!!」

 

「・・・」

 

ん?今、管理人が反応した?どうして?

 

「あざみさん、今は解体に集中して下さい」

 

「あ、は、はい!すいません」

 

気のせい、だよね

 

「管理人の計画。全ては7枚目から始まった。如月努の死をきっかけに生まれた7枚目は犯人の末路を表していましたね」

 

「はい、如月努さんが亡くなって警察にタレコミがあったそうです」

 

「そうです。SAMEZIMAのサイトを見た層は如月努のことだと解釈したようですね。ではあざみさん」

 

「はい!」

 

「7枚目カードの意味、それは本当に如月努が犯人だと示したものなのでしょうか?」

 

 

「いいえ、上野天誅事件の真犯人の末路、それが7枚目の本当の意味だと思います!」

 

「great!つまり7枚目は真犯人への犯行予告ないし警告文だったのでしょう」

 

あれ?だとしたらどうして7枚目なのかな?始まりなら0枚目とかになりそうだけど・・

 

 

「次は謎解きについて質問です。謎解きの答えは上野天誅事件でしたね。SAMEZIMAの管理人は配信で世間に謎解きを呼び掛けた。問題文は"口に出しても存在しないもの"。なぜその答えが上野天誅事件なのでしょうか?」

 

答えはアレしかないけど・・・配信中に言っちゃっていいのかな?

 

「・・・黒沢局長が捜査を中止させて非解決事件として処理したからです」

 

「excellent!管理人の真の目的は回答者を待つことではなく、配信によって多くの目を集めることだったのでしょう。そうすれば闇に葬られた事を沢山の人がみることになりますからね。では今度はさらに詰めていきましょう」

 

「詰める?いったい何を・・・」

 

「当時の黒沢副総監は何故、捜査を中止させたのでしょうか?事件は複雑なものでも役人などが関わるようなものでもなかったはず。余程重大な事だったのでしょう。それはいったい何だと思いますか?」

 

 

これは如月努さんのノートに書いてあったよね。そして黒沢さんの家で見つけたアレを考えると・・・

 

「自分の息子が犯人の1人だったからです」

 

「brilliant!そうでしょうね。本来は事件の真実は嘘偽りのないものではなくてはならないはずです。しかしそれを都合が悪いと無関係な人間までも真犯人に仕立て上げる。そんな中途半端な正義でよく副総監になれましたね」

 

確かにそうだよ、いくら身内を守る為とはいえ、それで無実の人が苦しんで知らんぷりなんて酷いよ!

 

「さて、そろそろ触れてあげるべきですかね。管理人も待ちきれないでしょう。では、あざみさん」

 

「はい!」

 

「野村健吾氏をターゲットと取り違え殺害し、真相に気づいた如月努までも死に追い込んだ。その犯人とは何者でしょうか?」

 

「・・・当時、世直し系配信者として活動していた5人組の学生集団5ソサエティ。今ここに人質として捉えられている人達です。黒沢さんの家に配信者トロフィーがありました。それに朋子さんが探していたアザのある人物もこの中にいるんじゃないかと」

 

そう私が口にすると黒沢さん達が急に騒ぎ始めた

 

「おい!適当な事を言うな!それ以外何か言うなら訴えてやる!証拠もないくせに!」

 

「そうよ!私達は被害者よ!」

 

「僕のチャンネルで炎上させてやる!」

 

腕に(・・)アザがあったからどうなんだ!今お前にもつけてやろうか!」

 

「いいのかな?このままじゃ君は如月努と同じ末路を辿ることになるだろうね」

 

「ちょ、ちょっと皆さん!落ち着いてください!」

 

ど、どうしよう!!

 

「あざみさん、落ち着いて下さい。どうやら彼らはあなたの言っている事など憶測に過ぎないと言っているようですね。だとすれば」

 

「決定的な証拠を突き出せばいいんですね」

 

「ええ、その通りです。あなたはそれが何か分かるはずです。そして黒沢さんは心当たりがあるようですよ?」

 

「!!お、おい、お前まさか・・・」

 

「どうやら図星のようですね。では、あざみさん。恐らく現在は管理人が持っているであろう犯人を示す動かぬ証拠とはいったいなんでしょうか?」

 

・・・そうか、アレが盗まれたのってそういうことだったんだ!

 

「黒沢さんの家からドッペルゲンガーが盗んだHDDです!きっとあの中には犯行の瞬間が映っているんです!」

 

「fabulous!あざみさん。あなたをセンターの調査員にしたこと誇らしく思いますよ。全てが解き明かされる」

 

 

  体ー

ー解

 

 

解体が終わるとモニターの中の管理人の拍手が聞こえてきた。

 

「素晴ラシイ。7年前カラ現在ニ至ルマデ、私ノ事ヲヨク知ッテ下サイマシタ。ヤハリ、貴女ハ私ノ良キ理解者ノヨウダ。御礼ニHDDノ中身ヲ配信シマショウ」

 

HDDの中身を配信する、その言葉に5ソサエティのメンバーは焦り始めた。

 

「や、やめろ!あれは違うんだ!」

 

「お、おい黒沢、嘘、だよな?」

 

「消してなかったってこと!なんでよ!」

 

「あの時消すって約束したよな!?」

 

「黒沢お前バカか!だから僕は絶対消せって言ったんだ!」

 

「フフフ、アッハハハ!皆サン良イ反応デスネ。7年間ズットソノ顔ガ見タカッタ。サテ、配信ヲ見テイル皆サンニジックリ見テ貰イマショウ。コレガ人気配信者ガオ蔵入リニシタ幻ノ映像デス!」

 

「「「「「や、やめろーーー!」」」」」

 

そうして映し出されたのは身の毛もよだつ残酷な映像だった。

 

『おい!来たぞ!一斉におさえろ!きのこ!ちゃんと撮れているか!?』

『撮れてる!撮れてる〜!はい!天誅!!』

 

黒沢さんの声と一緒に映っていたのはカメラを首から下げた野村健吾さんときのこさん。

 

すると次の瞬間、黒沢さんが健吾さんの首を絞め、その隣で栄子さんは赤く天誅と書かれた白い紙を持ちながらガスマスクさんと眉崎さんと一緒になってこちらにピースサインをしていた。そして半袖の赤いシャツを着ているせいか眉崎さんの腕にアザがあるのが見える。

 

『この犯罪者が!天誅!あはは!』

『コイツ!クズのくせに抵抗すんなよ!』

 

首を絞められ更にはお腹を何度も殴られる健吾さん、必死にもがくも大人4人に敵うはずもなく、すぐに動かなくなってしまった。

 

『お、おい、ちょっとまて、コイツ・・・違うくねーか?』

『え?ほ、ほんとだ!おい!どうするんだよ!コイツ動かねぇぞ!』

『えー、マジでぇ?』

『きのこ!消せ!消せ!』

『お、おう!』

 

動画はきのこさんの手が映ったところで終了した。

 

「く、黒沢さん、これって動かぬ証拠ですよね?観念してください!」

 

「ふ、ふざけるなぁ!!」

 

証拠を突きつけられ激突した黒沢さんは少し切られて緩くなった縄を力ずくで解くと私の首に腕を回してナイフを突き付けた。

 

「きゃあ!」

 

「動くな!さもないとこのナイフでお前を刺す!!」

 

「く、黒沢さん、お、落ち着いて下さい」

 

「うるさい!あれは単なる事故だ!俺達に殺意はなかった!!あそこにいたアイツが悪いんだ!!」

 

黒沢さんの腕の力が徐々に強くなり息苦しくなってくる。

 

「むしろ殺されたのは如月努の方だろ!あの野郎が死んだのは誰のせいだ?アイツを犯人だと決め付けた世間だろ!アイツらは真実なんて求めてない、面白ければそれでいいんだ!だからちょっと情報を操作してやればすぐ食いつくんだ!!悪く思うなよ、コレも全て余計な事に首を突っ込んだお前が悪いんだ!!」

 

そう言って黒沢さんは私を刺そうと持っていたナイフを振り上げた。

 

 

 バァァァン!!

 

もうダメだと覚悟を決めた瞬間、大きな音が鳴り響いた

 

そして恐る恐る目を開けるとそこには・・・

 

「お待たせ、あざみー。遅くなってごめん」

 

「じゃ、ジャスミンさん!!」

 

ナイフを拳銃で撃ち抜かれその反動で手を痛めた黒沢さんから解放されると私はジャスミンさんに抱きついた。

 

「う、うぇぇぇん!ジャスミンさぁぁん!」

 

「おととと、って、痛い!痛い!」

 

「あ、す、すいません」

 

痛がるジャスミンさんを見てそっと離れるとセンター長さんからスマホ越しに名前を呼ばれた。

 

「どうやら警察は間に合ったようですね。ジャスミンも元気そうでなりよりです」

 

「はい!本当に良かったです!!」

 

「さて、管理人と5ソサエティについては彼らに任せましょう。あざみさんは帰ってきてください」

 

「え?こ、これでお終いですか?」

 

「はい。何か問題でも?」

 

「でも!まだカウントダウンは止まってません!それに今の解体、私は納得できません!」

 

「天眼錠は開きましたよ?」

 

「そうでしょうか?」

 

「と、言いますと?」

 

「これまでの解体は都市伝説と思われた怪異現象を解き明かすことで誰が何をしていたのかが明らかになってきました」

 

「今回も明らかになったでしょう?」

 

「そもそもこの解体は誰の為に、何の為にやったんですか?」

 

「決まってるでしょう。あざみさんが管理人の理解者であることを示す為に私が鍵を開きました」

 

「だとしたらやっぱりおかしいです!本当に解体するべきものを解体できていない」

 

「あざみさん、あなたは一体何をするつもりなのですか?」

 

「この鍵は私が開きます!!」

 

「開く?あなたに出来ますか?天眼錠(アイ・オープナー)

 

「やったことはないですけど・・・私は一度この目で直接見ています!」

 

見様見真似だけど・・・よし!

 

「戻れ!天眼錠!!」

 

で、できた!!

 

「ほう、大したものです。ここまでされると私も付き合わないわけにはいきませんね。さて、あざみさんの言う疑問とは何なのでしょうか?」

 

「私の疑問。それは"解体すべきもの"です」

 

「先程の解体ではその対象が違ったと?」

 

「クローゼットによりなかった事にされた上野天誅事件の噂を解体して何があったのかを明らかにしたのは間違ってません。でも大事な事に触れていない」

 

「なるほど。ではあざみさんは解体すべきと思っているものとは一体何なのでしょうか?」

 

それはもちろん

 

「管理人とは何者なのかです。如月努さんの弟だとは分かりましたけどそれ以上は何もわかっていません」

 

「great!素晴らしい!映像でしか見ていない管理人の実態に迫る、その為の解体というわけですね」

 

「そうです」

 

「いいですね!この様な解体は柊木さんと初めて解体したとき以来です!っと、いけませんね。あざみさんの持つ答えを引き出す問いを投げかけなくては」

 

「はい、お願いします」

 

「管理人が起こした事件は今回が初めてではありません。これもまたクローゼット行きとなった事件ですが、彼の存在を証明する大事な事件です。その事件とは一体何でしょう?」

 

「ハッピー777億流出事件です!噂だけSNSに出回っていましたがクローゼットに実際に保管されていました。つまりこれは単なる噂ではなく実際に起きた事件ということになります!」

 

「excellent!では管理人の尻尾を掴む為にさらにこの事件に迫りましょうか。この事件に使用されたハッキングツールは何という名前でしたか?」

 

「ナターシャ・サインです。クローゼットの記録によればこのツールは製作者と特定のコードを知るものにしか使えない、製作者は天才ハッカーであると記されていました。管理人が事件の犯人であれば製作者は管理人で間違いありません」

 

「brilliant!製作者しか使えない、これが逆に犯人のヒントになってしまったようですね。天才というのも考えものです。と、ここまではいいですがこれでは管理人の正体に深く踏み込んでいない」

 

「クローゼットでこれらの情報を見たとき何か引っかかっていたんです」

 

「引っかかっていたですか?」

 

「はい。私はナターシャ・サインが使われた時を知っている気がするんです」

 

「なるほど。ではあざみさんはいつだと思っているのですか?」

 

「上野異界ツアーの抽選です。本来主催者である朋子さんは参加者を含め全て知っているはずでした。でも初めて会った時私達は参加者だとは思われず、人数分用意されていたはずの配布物も足りませんでした。これは朋子さんのアカウントをハッキングして私達を無理矢理参加させたことで起きた現象なんだと思います」

 

「素晴らしいですよ!あざみさん!あなたは本当に逞しくなりました」

 

・・・センター長さん

 

「では最後の質問です。予言のカードで恐怖を煽り、兄の復讐の為にその存在を覆面の管理人という怪異に仕立て上げた人物とは何者なのでしょう!?」

 

その問いに思わず息を呑む。でもここで立ち止まる訳には行かない!

 

「廻屋渉、都市伝説解体センターのセンター長、その人です」

 

「fabulous!あなたは本当に良き理解者ですよあざみさん」

 

「センター長さん・・・鍵が開きま・・・」

 

「ですが、まだ足りない」

 

「え?それはどういう・・・」

 

 

 

 

「止まれ!天眼錠(アイ・オープナー)

 

 

 

 

声のした方向を見てみるとモニターに映った管理人が両手を合わせていた。

 

そ、そんな!天眼錠が、鍵が開かない!

 

どうして?!なんで!?

 

「せ、センター長さん?」

 

「おや、今のは私ではありませんよ?」

 

「え?で、でも今モニター越しに天眼錠を!」

 

「言ったでしょう?まだ足りないと。さぁ、これからが本番ですよあざみさん」

 

一体何がどうなっているの!?まさかモニターに映っているのは・・・

 

突然の事に戸惑っているとジャスミンさんが私の背中をさすってくれた

 

「大丈夫か?あざみー?」

 

「ジャスミンさん・・・ありがとうございます。大丈夫です」

 

両手で顔を覆い深呼吸をしてからモニターに映っている管理人を見る

 

「よろしいですか?まだ貴女に解体される訳にはいかないんですよ」

 

モニターに映る管理人の声は今までの機械的な音声とは違いフード越しに直接喋っているようだ

 

「福来さん。貴女はまだ真相に辿り着いていない。いや、たどり着いていながら気付いていない振りをしている」

 

「そ、それは・・・」

 

「あ、あざみー?」

 

「それを今から解体していきましょう・・・戻れ、天眼錠」

 

天眼錠がまた元に戻った!

 

「では、早速いきましょうか。管理人の正体は廻屋渉、貴女はそう言いましたね」

 

「はい、そうです」

 

「ですが本当にそうなのでしょうか?これまでの調査の中で管理人について何か気になることはありませんでしたか?」

 

そう、実はずっと気になっていた、今回の調査で、いや、もっと前、私がセンターの調査員として活動する中でも違和感を感じることがあった。それは・・・

 

「ジマー達の投稿では時々、神様"達"やあの人"達"とまるで管理人が複数存在するような投稿がありました。1人はセンター長さん、そしてもう1人が今モニターに映っている貴方です」

 

「great!やはり気付いていましたか。では次はそのもう1人、私について迫りましょう」

 

やめて・・・

 

「私が渉の計画を共に遂行した理由は何だと思いますか?」

 

嫌だ・・・

 

「・・・貴方が如月努さんを兄の様に慕っていたからです。そしてその弟であるセンター長さんのことも家族の様に思っていた。なのに突然それが崩された。だから貴方は・・・」

 

「excellent!そう、私にとって彼らが全てでした。命も名前も貰った。沢山の思いでも出来た。しかし7年前、あの事件で変わってしまった」

 

嫌だ、嘘に決まっている

 

「先程貴女は先程私と渉の関係性を示しました。どうして分かったのでしょうか」

 

「・・・犬神大学の如月努さんの研究室で写真や日記を見たからです」

 

「写真や日記、本当にそれだけでしたか?」

 

「・・・手帳がありました。中は何も書かれてはいませんでしたが裏表紙に7枚目のイルミナカードが挟まれていました。それに手帳は研究室に置いてある他の物よりも新しい物でした」

 

「新しい?つまり最近研究室に置かれたってこと?犬神大学の・・・研究室に?まさか!」

 

私の回答に最初に反応したのはジャスミンさん。思い当たる節があるようだった。多分私と同じ考えだ・・・

 

それを見たモニターの管理人は嬉しそうにしている

 

「そうです。そしてその答えに関する3つ目の質問です。その手帳とイルミナカード、それの持ち主は一体誰でしょうか?」

 

「管理人です。この場合の管理人はセンター長さんではなく貴方のことを指します」

 

「brilliant!そう、アレは私が用意した物です」

 

!!やっぱり、間違いないんだ・・・

 

「ま、まってよあざみー、そうだとしたらモニターの中の管理人って・・・」

 

「さて、これが最後の質問です。この私の正体如月努を兄の様に慕い、弟の渉とも深い関係にある。そして最近犬神大学に出入りしたことのある人物、その名前は?」

 

「そ、それは・・・」

 

管理人の最後の問いに思わず息が詰まる。

 

早く答えないと、でもそんなことをしたら・・・

 

もう2度と会えなくなるようなそんな気がした。

 

ふと、スマホの画面を見るとある写真が表示されていた

 

婚活会場へ潜入調査した帰りにあの人と2人で撮った写真だった。

 

改めてその写真を見るとぎこちなくしているピースサインをしている自分が写っていた

 

うう、せっかくのツーショットなのに私ってばなんて顔をしてるんだろう・・・

 

その写真を見て思わず笑みが溢れる。そんな場合ではないのは分かっているのに

 

そして次々に私の脳裏にセンターの調査員として過ごした日々の記憶が流れてきた

 

センター長さんにジャスミンさん、そしてあの人との記憶

 

そりゃあ大変なことや怖い思いもしたけどそれ以上に楽しかった。なによりあの人の笑顔を見るのが嬉しかった。

 

それと同時にあの人への思いを再認識する。

 

ああ、やっぱり私はあの人のことが・・・

だったらこのままじゃダメだ!!

 

深く深呼吸をし、覚悟を決めてモニターに映る管理人を見る

 

「・・・どうやら覚悟を決めたようですね」

 

「はい!!」

 

私が私が止めるんだ!そしてまた貴方と一緒に!!

 

「では、改めて問いましょう。私の正体、それは一体何者なのでしょうか」

 

「都市伝説解体センターの最初の調査員である柊木菊さん、です」

 

「fabulous!・・・よく答えてくれたね、

あざみ」

 

私の名前を呼びながら管理人はフードを取るとそこにはあの人の顔があった。

 

「柊木さん・・・」

 

「そして全てが解き明かされる」

 

 

 

   体ー

ー解

 

 

最後の解体が終わるとセンター長さん達が後悔の念を語り始めた

 

「兄の選択を私達は止めることが出来ませんでした」

 

センター長さん・・・

 

「努さんが自殺してしまった日、あの日最後に努さんに会ったのは俺なんだ。あの時努さんの気持ちに気付いていればこんなことには!」

 

柊木さん・・・

 

「当時、黒沢達に踊らされた世間は如月努犯人説で毎日タイムラインで盛り上がってました。そんな中でも兄は友人の無念を晴らす為に懸命に耐え、戦っていました、しかし」

 

「その誹謗中傷が渉やもうすでにいなかったご両親、そして俺に矛先が向けられた時、あの人は耐えることを止めてしまった。自分がいなくなれば全て丸く収まると思ったんだ」

 

「あの時の私達は無力でした。救うどころか逆に兄を苦しめることになった」

 

「そんなことは・・・」

 

「元気付けようと兄の好きなオカルトや都市伝説の話を私達は良かれとしてしまったのです。おぞましいですよね」

 

「そ、それは違いますよ!如月さんは元に戻りたかったんです。孤児院で過ごしていた時のように・・・でもどうすればいいか答えを出せなかった。3人で楽しんでいたのを歪めたくなかったんです」

 

「そう、だろうね」

 

「ひ、柊木さん?」

 

「俺も同じ気持ちでいた。だから作ったんだ、7枚目のイルミナカードを」

 

「え?」

 

「7枚目、"停止した世界"このカードは俺自身を現している」

 

「で、でもこのカードは上野天誅事件の犯人の末路を現しているんじゃ・・・」

 

「上野天誅事件の犯人だけを示していると言った覚えはないよ。ジマーや警察が勝手にそう解釈したに過ぎない」

 

「な、なんで」

 

どうしてそんな事をしたのか、そう尋ねる前に柊木さんは上を見上げながら答えた

 

「俺には努さん達と過ごしている時間が全てだった。それは今でも変わらない。未来に希望なんてない。叶うのならあの時に戻りたい、そしてずっとその世界に居たい。過去に囚われた哀れな犯人、それが俺だ」

 

「柊木さん・・・」

 

「なら私は自分の兄の好きなオカルトを復讐の道具に利用した愚かな犯人ってところですかね」

 

センター長さんまで・・・ちがう、ちがいますよ!

 

「き、如月さんはそんな事思ってないです!きっと如月さんは2人には楽しく生きていてほしかっただけです!今の2人を見たらきっと悲しみます!5ソサエティの行いは全て明らかになりました!もう誰も如月さんが悪いなんて思いません!だからもう止めてください!」

 

必死に呼びかける。私の言葉を聞いた2人はしばらく黙ったままだった。

 

分かってくれたのかな?だったら次は・・・

 

次の行動を考えているとモニターに映った柊木さんと目が合った。

 

すると柊木さんは手を組み顔を近づけ喋り始めた

 

「確かにソイツらへの復讐は終わった。でもまだ終わりじゃない」

 

「ど、どうして」

 

「さっき黒沢が言ったよな?アイツらは真実なんて求めていない、面白ければいい、情報を操作すればすぐ食いつくって」

 

え・・・

 

「そう、兄を追い込んだのはあの5人だけではありません。兄を殺したのは自分を正義だと思い込んだ一般人です」

 

「そ、それは・・・」

 

「あざみだって経験したよな?」

 

そうだった、美桜の悪い噂を無くそうとしたのに何も変わらなかったんだった・・・

 

「都合のいい真実を作り出し自分こそが正しいと勘違いする。仮に正しく罰せられようが世の中は何も変わらない。こんな恐ろしい怪奇現象を俺たちは他に知らない」

 

「・・・そうかも知れません。でもこんなの間違ってます!こんなことをしても2人は苦しいままですよね!?私は2人が苦しむのをこれ以上見たくありません!だから、だからもう止めて下さい!」

 

「あざみさん、貴女は本当に優しい人ですね。貴女は私達の良き理解者です。・・・ですが」

 

「あざみ、あざみが必死で俺たちを止めようとしたこと、救おうとしてくれたこと、とても嬉しかった、ありがとう。・・・だけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「グレートリセットは止まらない」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え・・・」

 

柊木さんがパソコンのキーを押すと教会の鐘が鳴り響く

 

その音は私の頭の中に深く入り込んできた

 

 

「グレート・・・リセット」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと、やっと終わったよ・・・兄さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・み、・・・・ざみ、あざみー!」

 

「は!ジャスミンさん!」

 

「よかった、急に返事しなくなるからびっくりしたよ」

 

え?もしかして私気を失ってた?って、それどころじゃない!

 

「ジャスミンさん!柊木さんは?!」

 

ジャスミンさんの肩にしがみつくとジャスミンさんは腕を掴んできた。

 

「落ち着けあざみー。ラギッチはまだモニターに映ってる。でも今はそれどころじゃない」

 

「ど、どういうことですか?・・・こ、これはいったい・・・」

 

ジャスミンさんに言われて当辺りを見渡すといつのまにか来ていた富入さんと警察の人達が尋常じゃないくらい慌てていた

 

「いったいどうなっているの!?」

 

「サイバーテロです!!どういう訳か警察の内部データがネット上に漏れています!!」

 

「警視監!た、大変です!!」

 

「今度は何!!」

 

「こ、国民の個人データまでもが次々とネットに拡散されています!!」

 

「なんですって!!」

 

「うわぁ!俺のスマホがぁ!!」

 

「とにかく全員落ち着きなさい!!あなたとあなたは現在の状況の確認、あなた達は人質の身柄を確保。あなたは私と来てちょうだい」

 

「「「「はっ!!」」」

 

こんな状況でも的確に指揮を取る富入さんに1人の隊員が富入さんに駆け寄って来た

 

「警視監!管理人の居場所を特定しました!」

 

「了解、すぐ向かいましょう」

 

「はっ!!」

 

富入さんと一緒に行けば柊木さんに会えるかも!

 

そう思い富入さんを追いかけようとすると柊木さんが高らかに笑った

 

「あっははは!無駄ですよ?富入さん。警察が特定した信号は幾つもあるダミーのうちの1つに過ぎません。忘れたんですか?こちらには天才ハッカーがいることを」

 

「だとしても1つ残らず調査するだけよ」

 

「なるほど。じゃあ俺は念のためここから逃げるとしますか」

 

だ、だめ!!

 

「ま、待って下さい!柊木さん!!」

 

私が呼び止めると柊木さんはこちらに背を向けたまま立ち止まった

 

「イヤです。行かないで下さい柊木さん・・・まだ一緒に居たいです。それにまだ伝えたいことが・・・」

 

「ラギッチ!行くな!頼むからそこで大人しくしていてくれ!頼むよ・・・」

 

ジャスミンさんも続けて柊木さんに訴えかけてくれた。

 

涙で視界が悪くなっていてもジャスミンさんの目が赤くなっているのが辛うじて見える

 

「お願いします!柊木さん・・・」

 

何度も訴えかけても柊木さんはこちらを向くことも、言葉を発することもなく暗闇の中に消えていった

 

そんな・・・柊木さん・・・

 

あまりの事にその場に泣き崩れる。周りに人がいるにも関わらず大声で泣き叫んでしまった

 

そんな私にジャスミンさんはそっと頭に手を乗せてくれた

 

「あざみー、ラギッチは私達警察が絶対見つけてみせる」

 

「ジャスミンさん・・・」

 

「その為に今はあざみーのチカラを貸して欲しい」

 

「私の?・・・」

 

「うん、ラギッチの他にもう1人、話を聞くべき人物がいる」

 

そ、そうか、センター長さんなら柊木さんがどこに居るのか知っているはず・・・

 

「センター長ならまだセンターの中に居る可能性は高い。あの足でそう簡単に移動できるとは思えないからな。それにもしかしたらラギッチが迎えにいっている可能性もある」

 

た、確かに、それならまだ間に合うかも!

 

「・・・行きましょう、ジャスミンさん」

 

涙を拭い、そう答えた

 

「うっし、車は用意してあるから直ぐに向かおう」

 

「・・・はい!」

 

 

ジャスミンside

 

教会を出て助手席にあざみーを乗せてセンターへと車を走らせる

 

道中の車内であざみーはずっとラギッチの名前を呟いていた

 

クソ、ラギッチの奴、あざみーをあんなに泣かせやがって。今度会った時はタダじゃおかねぇ、絶対に見つけ出して一発ぶん殴ってやる。

 

友人がこんな事を引き起こして悲しい気持ちもあるが何より長い付き合いなのに気づけなかった自分に怒りが込み上げてくる

 

・・・・クソっ、どうしたいいんだよ。っと、そろそろ着くな。

 

「あざみー、そろそろセンターに着くよ。準備しといて」

 

「・・・・はい」

 

 

車をセンターのあるビルの前の路肩に停めてエレベーターに乗り込む。このエレベーターに乗るのは初めてセンターに来た時以来だ

 

「にしても、本当に古いエレベーターだな」

 

「ですよね、たまに大きく揺れるのいまだに慣れませんよ・・・それはそうとジャスミンさん、怪我はもう大丈夫そうですか?」

 

自分も色々大変だろうにあざみーはアタシの事を心配してくれた。本当にいい子だ。

 

「だいぶ良くはなったよ。まだ節々が痛む時もあるけどね。そうだ、今度アタシの退院祝いをしてよ、もちろんラギッチも一緒にさ」

 

「ジャスミンさん!そうですね!その時は柊木さんが破産するくらいたくさん食べましょうね」

 

「ああ、もちろん。銀座に良い店があるんだよね」

 

その時の友人の困り果てた顔を想像しているとエレベーターが停まった。

 

「ゴホッ、なんかホコリぽいな。ちゃんと掃除してんのか?・・・え?」

 

エレベーターを降りて見えてきた光景にアタシは困惑した。

 

棚は蜘蛛の巣が蔓延っていてボロボロ、床にはガラスやゴミが散乱、壁は外装が剥がれ中の鉄筋が見えている。

 

な、なんだこれ、これじゃ廃墟そのものだ。いや、そんなはずはない、だって最近までセンター長やラギッチ、それにあざみーも出入りしていたんだぞ・・・ん?あれは?

 

薄暗いセンターの中で机の上にパソコンが電源が付いたままの状態で置かれていた。

 

近寄って画面を見てみるとあざみーの後ろ姿が映っていた。

 

映像が録られた日付はあざみーが初めてセンターに来た日だった。

 

なんでこんな映像が?

 

恐る恐る動画を再生する。

 

『すいませーん、ちょっと相談があってきたんですけどー』

 

『待っていましたよ、福来あざみさん』

 

 

「・・・・・え?」

 

再生した映像を観てアタシは思わず声を出してしまった。

 

確かにこの映像はあざみーが映っている。あざみーがセンターの中に入って誰かいないかと震えた声で尋ねていてそれには当然センター長が答えるものだと思っていた。

 

でもそうじゃなかった。あざみーの声に返答したのは女の声だった。それどころか映像にはあざみーの後ろ姿だけが映っている。

 

いったいどういうことなんだ・・・

 

状況の整理がつかず頭を抱えていると電話がかかってきた。警視監からだった。

 

「た、大変よ!止木さん!」

 

「ど、どうしました?いったい何が・・・」

 

警視監がこんなに焦っているのは初めてのことだった。余程の事があったのだろう。

 

「私は今、如月兄弟が幼少期に通っていたとされる病院に来ていたのだけど、とんでもないことが分かったの」

 

「と、とんでもないこと・・・ですか?」

 

「いい?落ち着いて聞いてちょうだい。まず廻屋渉という人間はこの世に存在しない!」

 

「は?」

 

「如月努には居たのは弟じゃない!福来あざみ、彼女こそが本当の兄妹・・・如月歩(きさらぎあゆみ)だったの!!全ては彼女が引き起こした!」

 

は?妹?歩?あざみーが??

 

突然の報告に思考も言葉を発するのもままならないでいると警視監から再度呼びかけられる

 

「止木さん!福来あざみの身柄を確保して!今直ぐに!!」

 

「っ!は、はい!」

 

警視監からの命令に触発され少し冷静さを取り戻し後ろに居るあざみーに声を掛けながら後ろを振り向くがそこには誰の姿もなかった

 

う、うそ、だよな・・・

 

ホコリぽいから息苦しくなって一度外に出ただけ、そう自分に言い聞かせながら急いで外に出た。

 

外に出て車の中やビルの周り、近くのコンビニなどをしらみつぶしにあざみーと叫びながら探し回った。

 

夜が明けるまで続けたが結局見つかることはなかった。

 

 

それから1週間後、警視庁のとある部屋で警視監からこれまでの報告を受けていた。

 

「つまり、こういうことですか?廻屋渉は最初から存在せず、全ては如月努の妹である如月歩が計画し、実行した」

 

「ええ、兄の自殺をきっかけに復讐計画を開始。その為にまず架空のキャラクターを作り出した、それが廻屋渉と福来あざみ。我々や世間の目を欺くためにそれぞれに役割を与えた」

 

「じゃあ、あの念視力の能力はなんだったんですか?」

 

その問いに警視監は1枚の紙を取り出して答えた。

 

「それは?」

 

「如月兄妹が通っていた病院のカルテです。当時担当医だった医師によれば稀に別の人格を思うがままに操る事が出来る人間がいるそうなの」

 

「・・・話が見えてきません」

 

「つまり、福来さんが事件の調査をするあいだ、歩も同時に推理をする。ギフテッドである歩の推理は福来さんの先を行き、それにより導かれた結果を影として福来さんに視えるようにする。如月努のメガネを介して」

 

「じゃあ、千里眼も?」

 

「ええ、福来さんは無意識のうちに電話を介して渉としての歩と脳内会話していたということになりますね」

 

「・・・あざみーは何も知らなかった。そう考えていいんですよね?」

 

「知らなかったのは間違いないわね」

 

「なぜそう言い切れるんです?」

 

「止木さんも観たでしょう?例の動画の続きを」

 

警視監の言う動画、それはあざみーがセンターに初めて来た時の映像のことで、後日その動画を改めて観てみるとあざみーの服を着た歩が映っていたのだった。

 

『あざみは、あの子は何も知らない。そんなあの子をあなた方はどうする?』

 

真相に辿り着けないであろうアタシ達を嘲笑うような顔をしながら歩はこちらに問いかけた。

 

くそ、歩のヤロー・・・。

 

腹が立ったがあざみーが何も知らなかった事が確定して少しホッとした。

 

でもアイツはそうはいかない。

 

「でも、柊木菊はそうではないですよね?」

 

「・・・ええ、彼も今回のサイバーテロを引き起こした1人。SAMEZIMAの管理人として5ソサエティの面々を連れ去り、ジマーを誘導し事件の手伝いをさせたのは彼でしょうね」

 

「なぜ、柊木は歩の計画に加担したのでしょう?」

 

「さっき話した医者が言っていたのだけど」

 

警視監は歩のカルテをめくると別のカルテを見せてきた。カルテ写真には確かにラギッチの顔が貼ってある

 

「柊木菊、彼は幼い頃大雪の日、如月兄妹が住む孤児院の前に倒れていたそうなの。それを如月努が発見して中に運び込んだ。そして次の日から柊木はその孤児院に住むようになった」

 

「命の恩人だから、ってことですか」

 

「ええ、それからは如月兄妹と本当の家族のように過ごしていたそうよ。その関係性もあって通っている病院に一緒に来るようになったと医者は言っていたわ」

 

「・・・いまだに信じられません。命の恩人の為とはいえ、あんなことをするなんて」

 

「これは私の仮説だけど、彼は如月歩を愛しているんじゃないかと思うの。家族としてはもちろん、異性としても。おそらく歩の方も彼のことを・・・」

 

はっ、アイツそんな一面もあったのかよ

 

友人の意外な一面をこんな形で知るとは思わず、深いため息が出る。

 

「じゃあ、アイツのチカラ、サイコメトリーはなんなんです?あざみーの念視と同じと言うわけにはいかないでしょう」

 

「それに関してはハッキリとは言えないけど、視えるように自分に暗示を掛けていた、もしくは視えるフリをしていた、そのどちらかだと私は考えます」

 

「どういうことですか?」

 

「歩は福来さんに事件の調査をさせ、自身の推理を影として福来さんに視させる。それを元に柊木は福来さんを誘導する。違和感なく福来さんに行動させる為に必要なことだったのではないかしらね」

 

「自分と同じようなチカラの持ち主が導くとさらに信じ込むってわけですね」

 

中々残酷なことするな、よし、次会った時はさらに2、3発殴ってやるか。

 

 

「それにしても彼女達が引き起こしたサイバーテロによる被害は甚大。あの事件が発端とした事件が後を絶たない」

 

そうだ、そのせいでここ数日は大忙しだった。お陰でしばらく家には帰れていない。

 

「警察内部の混乱も落ち着いてはおらず、世間では秘密がバレて、離婚や退職、廃業、懲戒など後を絶たない。それでもSNSは元に戻りつつある、か」

 

警視監の言う通りSNSではグレートリセットによって秘密を暴かれた人々をここぞとばかりに責め立てる動きが多くみられる。

 

きっとこれもアイツらの計算通りなんだろうな・・・

 

「それから5ソサエティの処遇が決定しました」

 

「どうなったんです?」

 

「人違いとはいえ故意に行った殺人と悪質な隠蔽工作に情報操作、日の目を見ることはないでしょう」

 

因果応報、奴らに相応しい最後かもな。

 

「黒沢局長はどうなるんです?」

 

「隠蔽に加担した事が世間に知れ渡った以上、罪には問われるでしょうね」

 

「そう、ですか」

 

新人の頃から色々お世話になった人の末路に心を痛めつつ、アイツらを探す為の捜査に出るため持っていた缶コーヒーを飲み干した

 

「では、私はそろそろ柊木達の捜査に戻ります」

 

警視監に敬礼をしてその場を離れようとすると警視監に呼び止められた

 

「それには及びません」

 

「え?」

 

「如月歩及び柊木菊、この両名の捜査は打ち切られました」

 

「はぁ!?な、なぜです!」

 

そう警視監に訊ねるも頭の中ではなんとなく分かっていた。

 

「上からの指示です。サイバーテロの実行に警視庁のサーバーが利用されたことを公にはしたくないそうよ。つまりクローゼット行きね」

 

くそ、やっぱりかよ!上はグレートリセットで何も学ばなかったのか!

 

「今後一切、何人たりとも彼女達の起こしたサイバーテロについては一切口外禁止です」

 

「はっ、まさに口に出しても存在しないモノ、ってわけですか。都市伝説がまた増えましたね」

 

「そうね、・・・ところで都市伝説解体センターの入っていたビルが取り壊しになることは?」

 

「・・・知ってます。文字通り解体ってやつです」

 

これで都市伝説解体センターはこの世から完全に無くなった、ってことでいいんだよな?

 

 

「最後に、あなたに渡す物があります」

 

そう言いながら警視監は懐から封筒を取り出し、アタシに渡してきた。

 

「これは?」

 

「指示書です。止木さん、あなた、しばらく休暇を取りなさい」

 

「・・・謹慎ってことですか?」

 

「最初はそうなりかけたけどなんとか特別休暇として取り付けました」

 

「どうして・・・」

 

「怪我のこともあるけどなにより、友人2人が一度に消えて気持ちの整理も必要でしょう。そのあいだ、バッチと拳銃は預かりますが」

 

しばらくは休め、そう言われて正直安堵した。色々な事が一気に起きてむしゃくしゃしていたので一度落ち着きたかったから。

 

「ありがとうございます、警視監」

 

「ええ、お大事にね」

 

深々と頭を下げてその場を後にした。

 

 

 

 

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