キミの支えになりたくて   作:飯即斬

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皆さん、ボイスドラマ4話は聴かれましたか?
あれはヤバイです。

まだでしたら是非聴いてみてください。


53話 自覚した思い

 

孤児院に来てからはや数年。俺は中学受験に挑戦し、無事合格することができた。

 

進学先は犬神中学校。中高一貫校で努さんの母校でもある。

 

合格が決まったその翌日、合格祝いが孤児院主催で開かれた。

 

「それでは菊君の合格を祝してかんぱーい!」

 

「「「かんぱーい!!!」

 

テーブルに並べられた豪勢な料理を堪能しながら、他の子や先生達との談笑を楽しむ。

 

もちろんパーティーは楽しいが一つだけ気になることがあった。

 

・・・歩のやつ居ないなぁ、今日くらい参加してくれると思ってたんだけどなぁ

 

今回、合格できたのは歩が日頃勉強を教えてくれたことが何より大きかった。なので改めてお礼を言いたかったが居ないのならしょうがない。後で部屋を訪ねよう。そう決めて今はパーティーを楽しむことにした。

 

 

パーティーが終わると動けなくなった俺を努さんが介抱してくれた。

 

 

「うっ、く、食いすぎた・・・」

 

「まったくもう。いくら主役だからって食べ過ぎだよ」

 

「す、すいません努さん。部屋まで連れてきてもらって」

 

や、やっちまった・・・調子に乗りすぎた。は、腹が・・・

 

「いいから、今日はもう休まなさい。いいね」

 

「・・・はい。分かりました」

 

ぱんぱんに膨れた腹を抑えながら部屋に入るためにドアノブに手を掛け努さんの顔を見るとこちらを見て優しく微笑んできた。

 

「菊、本当に合格おめでとう。頑張ったね」

 

「努さん・・・はい、ありがとうございます」

 

「うん、それじゃあ、おやすみなさい」

 

「はい、おやすみなさい」

 

姿が見えなくなるまで見送った後、ゆっくりとベットに入り眠りについた。

 

それからしばらく大人しく寝ていると扉をノックする音が聞こえて目が覚めた。

 

誰だよこんな夜中に・・・

 

「はい、誰です?」

 

少しイラついた声で話すと向こう側から小さくか細い声が聞こえてきた。

 

「私だけど、開けてくれない?」

 

「あ、歩?なんでこんな時間に・・・」

 

「いいから、開けて」

 

「わ、分かった」

 

扉を開けるとそこにはいつものように白いシャツとズボンを着た歩が立っていた。

 

「どうしたんだよ、こんな時間に・・・パーティーにも来てくれなかったし」

 

「先生はともかく、他の子とと仲良くする気はないから」

 

「そ、そっか」

 

歩のこの敢えて孤独を選ぶ性分は孤児院だけではなく小学校でも一緒で、クラスでも1人で居るところをよく見かけた。歩曰く、周りの子達はバカにしかみえず授業もつまらず毎日退屈だとか。もう学校に行く必要ないとまで言い出すこともありこれには努さんも頭を抱えていた。

 

そんな歩に対して周りは陰口を叩いたり時には歩を取り囲んで暴言を吐くこともあった。

 

それを見かけるたびに出来るだけ穏便に止めていたがただ一度だけ、歩のクラスの男子が生意気だからと歩の髪を引っ張ったことがあった。それを見て我慢ならず思いっきり殴ってしまい、その男子の親が学校に乗り込んでくる事態にまで発展したことがあった。

 

先生には叱られ、親がわりに来てくれた孤児院の先生や努さんまでも怒られてしまった。

 

その後は動機は立派だけどやり方が良くない、と努さんから諭された。ただ最後に、歩を守ってくれてありがとうと言ってもらえた時は心に刺さった針が抜けた気がしたのを、今でも覚えている。

 

そして次の週から歩が始まるの方から一緒に登校しようと誘ってくれるようになり、学校に行かないと言うこともなかった。

 

努さんからもかなり感謝された。もちろん嬉しかったかが何より歩と一緒に登校しようと誘われたのが嬉しかった。

 

この歳になったらさすがにら自分の気持ちを自覚する。

 

俺は歩のことが好きだということに。友達としてではなく、異性として好きなんだと。

 

そんな思いを寄せる相手から夜中に起こされて今は後を追う形で誰もいない静かな廊下を歩いている。

 

そんな中、俺はずっと歩のことを見つめていた。揺れる後ろ髪に時折見える首筋、窓に映った白くて綺麗な横顔。それらをずっとバレないよう見つめ続けていた。

 

しばらく続けていると歩の足が止まった。いつのまにか外の桜の木の下に来ていたようだ。

 

「ここでいいかな」

 

「で、いったい何をするの?」

 

「・・・まだ言ってなかったなって思って。・・・合格おめでとう。菊」

 

そう言うと歩は桜の木の前に立ちこちらを見て微笑んだ

 

夜桜と月明かりに照らされた歩はいつもよりより眩しく見えた

 

「ああ、ありがとう。嬉しいよ」

 

そう伝えると今度は得意げな顔をし出した

 

「ま、勉強を教えた人が優秀だったお陰かな・・・ん?どうしたの?黙りこくって」

 

「・・・別に、なんでも」

 

いや、そうだけど!ありがとうって思ってるけど!こう得意気に言われるとなんかムカつく!!

 

「ふふ、もし菊さえ良けれればこれからも先生やってあげようか?」

 

あ、これ、断ったら面倒なやつだ

 

「・・・ぜひ、お願いします。・・・・先生」

 

「うん、よろしい」

 

まあ、いっしょに居られるし、いいか

 

「それじゃあ、用も済んだし、私は部屋に戻るよ」

 

「俺も戻る。部屋まで送っていくよ」

 

「ふふ、そうしてもらおうかな」

 

「お任せを・・・じゃあ、戻ろうか」

 

「うん・・・怖いから手でも繋ぐ?」

 

「え?またまた、歩はそんなタイプじゃないだろ」

 

「そう・・だね」

 

・・・あれ?今なんか重大なやらかしをしたような・・・それになんか寒気がするような・・・気のせいだよな。うん、きっとそう。

 

 

努side

 

菊を部屋に送った後、大学のレポートを徹夜でまとめていると廊下から話し声がしたのでドアを少し開けて見てみると歩と菊が縦に並んで歩いていた

 

こんな時間にどうしたのかな??

 

気になったのでこっそり後を着けると何やら桜の木の下で話をしだした

 

ここからじゃ聞こえないな・・・よし!

 

聞こえないのなら見ればいい。と、いうことで2人の口の動きから会話を推測。どうやら歩は菊の合格を祝っているみたいだ。

 

歩、興味なさ気だったけどやっぱりちゃんと気にしてたんだな。菊も嬉しそうだし、よかったよかった。

 

2人の様子に感動していると同時に以前の歩のことを思い出した。

 

菊と出会うまで歩は他の子供たちとなかなか仲良くしようとしなかった。それどころか興味すらないようだった。でも彼、菊だけにはそうはならなかった。

 

自分から話しかけるなんて稀だったし勉強を教え始めたことにも驚きで思わず、なんで菊とは仲良くするのか聞いてみたけど歩自身もよく分からないようで結論は出なかった。

 

ここからは僕の仮説だけど歩は菊に友達以上の感情を抱いているのだと思う。歳も歳だからおそらく歩は自覚していないのだろうけど。

 

もし、そうだとしたら兄としても黙ってはいられない。歩に男ができるなんて。まだ小学生?そんなもの関係ない。特に今の子供はませていると言うし油断ならない。それがたとえ菊であっても。彼もこれから思春期を迎え本格的に男に、いや、雄になっていくし歩をいやらしい目で見るようになるかもしれない。もしそうなれば呪い殺す・・・かもしれない。

 

っと、いけないいけない。これ以上盗み見はよくない。バレないうちに部屋に戻ろう。

 

そう思い2人に背を向けると歩が菊に手を差し出しているのが見えた。口の動きをみると手を繋ぐ?と言ったようだ。

 

あ、歩があんなことを言うなんて・・・菊はどう返す?彼も恐らく歩の事を思ってくれているはず・・・

 

いったいどうなるのか見守っていると菊が笑い出した。どうやら冗談だ思ったようで歩の方は少しガッカリしているようだった。

 

その光景を見て思わず力が入り手を添えていた柱に亀裂が入る。

 

 

・・・さて、クギとハンマー、それと藁を買ってこないとね。ふ、フフフフフ

 

 

 

 

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