コロナが治ったら、処理します…。
やり方が分からない…発熱して、やり方探すのが億劫です…。
お酒無しの夕餉を頂いた後、お茶を飲みながら私は父上からの口伝と言う体で、全集中の呼吸の先を話します。
「全集中の呼吸には段階があるそうです。先ず体力を付け肺活量を増やす事、次に呼吸を使い技を出す事。そして最後に常に呼吸を使う、全集中の呼吸・常中」
「うむ、しかし常中は柱なら誰でも使えるものだぞ!」
「はい。しかし、全集中の呼吸には更に先の段階があるのです」
「な、なに!?」
槇寿郎さんは驚いた顔をします。今まで極めていたと思ってた技が、まだ道半ばだというのですから。
「正しい呼吸、正しい動き。これを極めて無駄な物をそぎ落とした先に、段々相手の筋肉や動きが透明に見えてくる透き通る世界。この段階に至れば相手の動きを先読みし、殺気すら放たず極自然に鬼の首を落とす事もできるとか」
この辺りは父ちゃんも、その境地に至っていたんだよね…。父ちゃん、凄いや!
「そして更に呼吸を極めた先に、体温39度、心拍数200回を超え、痣が発現し身体能力が飛躍的に上昇して鬼と対等に戦えると言います」
但し、これは寿命の前借りによる強化という事も話しておきました。25歳が平均寿命で、それを超えた槇寿郎さんは闘いの後で亡くなる可能性があるので。
もしかしたら痣が出ないと、透き通る世界に行けない可能性もありますが…私は痣無しでいけると思っています。
「これらは亡くなった父からの口伝ですが、この話をお館様にしたところ、産屋敷邸の書架にも同じ様な記述がある書物があるとか。また父も透き通る世界まで辿り着いていました。間違いないと思います」
話し終えると、槇寿郎さんは困惑し、杏寿郎師匠は目を輝かせておりました。蜜璃お姉ちゃんもキラキラ輝いています。
やがて槇寿郎さんが深いため息をつきました。
「そうか。全集中の呼吸を極めたなどと、とんだ自惚れだったわけか」
「自惚れ…だとは思いませんが、少なくとも始まりの呼吸を極めた最強の剣士の回りには、痣者が幾人もいたとか。日の呼吸以外の呼吸も、極めたら恐らく日の呼吸に負けないと思います」
正直、最強の剣士、縁壱さんがチート過ぎるという話も…。
槇寿郎さんは顔を上げて、真っ直ぐこちらを見ました。その目は、完全に生き返って輝いてました。
そして、徐ろに膝をパンッと叩き、立ち上がりました。
「…よし!そうと分かれば、こうしては居られん!訛った身体を鍛え直さなくては!」
その勢いのまま槇寿郎さんは、道場の方へ駆けて行きました。後に続いて、父上、私も!と杏寿郎師匠が嬉しそうに駆けていきます。
「…男の方は、単純で羨ましいですね…」
この時私は、自分が元男だという事も忘れ、無意識につい呟いてしまいました。
それを聞いた蜜璃お姉ちゃんは、あらあらという顔をして、夕餉の後片付けを杏寿郎師匠の弟の千寿郎君と始めるのでした。