Linaria   作:ぷる²

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ギリギリ連日投稿達成です。
明日も休みですが更にもう一日連日投稿できるかは…微妙です。
一日平均3,000字程しか書けないので。
ていうか今回もなんか5,000字超えてんじゃねえか!通りで終盤しんどくなったわけだよ!!

それと、星宮壬琴様、るしる様。お気に入り登録ありがとうございます。
勝手に名前を出して申し訳ありません。
しかし、本当に嬉しかったので。まだもう少し書き連ねてみようかなという気持ちになれました。 

ちなみに今回、マリーダさんは直接は出て来ません。
じゃあ誰と誰が指切りげんまんするのか…?
それは、読み進めてからのお楽しみという事で。
と、いうことで駄文ですがどうか見て下さる方はお楽しみ下さい。


「指切りげんまん、しようぜ」

 

 

ふんふふん、と上機嫌な鼻歌を歌いながら、湯船に浸かり今日一日の疲れを癒す。

時折手遊びで水鉄砲を作ったりして、普段の活力溢れる様な男前の面持ちとは異なる年相応のあどけない笑みを浮かべているのが、この家で愛する妹と二人で暮らしているジュドー・アーシタだ。

 

「あー…あっちぃ…そろそろ上がろっと」

 

外の猛暑のせいも相俟ってか、最近浴槽でお湯に浸かる時間が短くなってきたな、と実感しつつ、ざば、と湯を溢れさせながら浴槽から出る。そのまま浴室の扉を開けた瞬間に

 

「お兄ちゃーん!今、ちょうど……っ!きゃあぁぁぁ!!!」

 

「うわあぁぁぁ!!?ちょっとなになにっ……!!」

 

運悪く愛妹と鉢合わせになってしまった。

浴槽に浸かっていた以上、当然生まれたままの姿である訳で、そのあられもない姿を目の当たりにしてしまった彼女は、烈火のごとく赤面をして堪らずそっぽを向いてしまった。

ほぼ不可抗力ながらもやってしまった、と後悔するも後の祭りで、慌てて浴室に戻り扉を閉めて語り掛ける。

 

「…ごめん、ごめんって!!な、何があったんだ…!」

 

…んもう、サイアク……プルツーが一人で家に来たの!さっさと着替えてお出迎えしてあげて!!」

 

致し方の無い事とは言え、サイアク、の四文字が確り耳に入ってしまいショックを受ける。しかし、こんな時間にプルツーが、しかも一人で家に来るとは何事であろうか。

…心当たりは少なからずあるが。

 

ちら、と隙間から外の様子を確認する。

今度こそ妹が居ない事を何度も目視しながら手早く体を拭き、着替えるのであった。

 

 


 

 

着替え終えリビングに向かうと、椅子に腰掛け視線を落としあからさまに意気消沈としているプルツーがいた。どうしたんだ?と尋ねてみても反応が鈍い。

 

『取り敢えずご飯でも食べたら、元気も出るんじゃない?』

 

というしっかり者の妹の提案に乗り、夕飯を三人分作って貰う。

 

その間、自分に出来る事と言えばどうにかして、世間では”顔だけは瓜二つでも、天真爛漫な長女と対照的に気性の激しい”と思われているこの次女を慰める事だけだ。

 

「プルツー…なんか、嫌な事でもあったのか?」

 

「…」

 

「……言いづらいか。言いづらいよね。なら…」

 

座っている椅子を小さな彼女の方に近づけ、橙色の髪をそっとかきあげてやる。そうすれば傷一つない透き通るような白い額が広がっていた。

瞳を覗き込む。さすれば、澄んだ青空のような瞳の色をしており、思わず綺麗だなぁ、と嘆息してしまう。しかし、その中にある光は宛ら軋んだ網の様に、不安定に揺れていた。

 

「言えるようになるまで、ちゃんと待つからな。大丈夫…苦しい事、辛い事…素直に吐き出したって、誰も責めないよ」

 

「なんつったって、オレはずっとプルツーの…おにいちゃん。だからな」

 

にいっ、とちょっとわざとらしいくらいに口角を上げて笑って見せる。

辛い思いをしている時に、傍らに居る人まで心痛な表情を浮かべていたら、より気分も沈んでしまうだろう、という自分なりの経験則に基づいての行動であった。

 

すると、暫しの沈黙の後、初めは微かに、しかし徐々に大きく肩を震わせ始めたのをジュドーは見逃さなかった。

ハンカチでも渡してあげようか、と思い立った刹那、唐突に勢いよく自身の胸に飛び込んでくる。

あわわ、と情けない声を上げつつ椅子から横転しそうになるが何とか踏みとどまり、胸の中で愚図る二番目の妹を離してしまわぬよう確かに抱き寄せた。

 

 

「……プルツー…」

 

「……っ、ぅぇ、ぐ……」

 

胸の中で漏れる嗚咽。気休め程度にしかならないかもだけど、と内心思いつつも優しく背中を撫でてやる。

すぅ、はぁ、と呼吸をする度に、撫でている背中が隆起する様に膨らみ、やがて沈降する様に縮んでいく。泣きじゃくる彼女の体は、とても温かかった。

 

彼女もエルピー・プルも、顔立ちは去ることながら、感受性の高さからか不安やストレスを人よりも多く感じ、時折感情を爆発させてしまう。

 

プルの方は、定期的に甘えたり駄々を捏ねる事で、募り積もったまだその小さな体に収めるには困難な膨大な感情を何とか放散させようとする(が、それでも昇華できない場合は癇癪を起こすが)。

 

対してプルツーは、感情の表現があまり得意ではない。

その結果、周りの人とトラブルを引き起こしたりして、余計なストレスを溜め込んでしまったりする。

更に溜め込んでしまった悪しき感情をどうやって放散させればいいのかも解らず、限界が来るまで溜め込もうとする。

しかし、未だ11歳の少女に我慢し続けろというのも酷な話で、時折こうして堰を切ってしまうのだ。

 

実は、このような事は前に数度あった。

同じような悩みを抱える姉や、年上であるが、妹でもある末妹に頼る事できないとなると、自然と親しい付き合いのある此方に赴いて来るのだ。

 

ふと、彼女の末妹の、先日、共に街中へ映画を観に行ったと思ったら、数奇な出来事に遭遇したマリーダ・クルスの事を思い出す。

彼女もこうして感情を溢れさせてしまうのだろうか。

 

…もしや、あの別れ際の抱き寄せながら流した涙がそれなのだろうか。

もしそうなら、あの時僅かにも邪な考えを抱いてしまった自身が恥ずかしく、思わず殴りたくなってくる。

彼女の気持ちを只管に受け止められるような、そんな存在でありたかったのに。

 

感情の昂ぶりがピークを迎えたのか、啜り泣きを越えて、

 

「じゅどぉ…!ぅ、う…あ、ああぁぁ…!!!」

 

と泣き叫ぶ二番目の妹を抱擁し、少しでも哀しみが居なくなってくれます様に、と祈りを込める。

時々ぎゅ、と握り締める力が強くなってしまう小さな手に、此方からもそっと大らかな掌を添えながら。

 

 


 

 

漸く泣き止み、俄かに普段の調子を取り戻し始めた頃に丁度タイミングよく

────或いは、気の利く妹の事だから、落ち着くまで待っていてくれたのか────

夕飯が用意される。

 

献立は夏野菜をふんだんに使ったハヤシライスとサラダであった。

三人揃って頂きます、と命を食す事に感謝しながら食べ始める。

苦手…ではなく、あまり得意でない野菜はなるべく除けて食べ進めていれば、案の定妹の鋭眼が光り、

 

「こら!ちゃんと健康のためにと思って入れたんだから食べてよ!プルツーだってちゃんと食べてるのに…もぅ、恥ずかしい!」

 

と説教を受けてしまった。

先程の号泣は何だったのか、と思ってしまう程勢いよくがつがつと食べ進めるプルツーを見れば心が温かくなる一方、成程確かに恥ずかしいな、と自戒し覚悟を決めて野菜にも手をつけるのであった。

 

「プルツー、おいしい?」

 

「ああ、おいしいよ。こんな手の込んだ料理、わざわざあたしなんかにありがとな、リィナ」

 

妹同士の和やかな談笑が響く。

久しぶりの二人以外で食べる夕飯は、それはとても美味で、幸せな気分に浸れて有意義な一時であった。

 

 


 

 

夕飯を食べ終わり暫しお腹を休めた後、姉妹の待つ家まで送る事にした。

この自宅から歩けば凡そ30分程度時間のかかる場所で、途中バレなければ怒られないでしょ、と言い聞かせコンビニでアイスキャンディーを購入し、二人でペロペロ、と舐りながら歩き続けた。

 

「ジュドー、お前、マリーダと付き合い始めたんだろう?」

 

「…ぐっ!?ぅ、げほっ、げほ…ぷ、プルツー!?お前何言ってんだ…!」

 

それまで互いに学校や日常であったことを穏やかな雰囲気で語り合っていたのに、唐突に特大の場外ホームランを打たれたかのような、強い衝撃が走る。

食べ終わりかけていたアイスがむせてしまい、甚く咳き込みながらも、何故彼女がその様な事を言い出すのか、という疑問も過ぎる。

 

「…まさか、マリーダさんが、そんな風に家の中で言ってるの?」

 

そもそも、付き合っているか否かで言えば、付き合っていないというのが正解だろう。

確かに、一緒に買い物をしたり、ご飯を食べに行ったり、映画を観に行ったり…抱き締め合ったりも、したが。

 

付き合おう、とは言っていない。彼女からも、言われていない…が、もしや家の中でそう言っているのか?それならば、その想いに応えなければならないのでは?と、逸った気持ちが、浮ついた質問を投げ掛けさせてしまった。

 

「いや、そんな事は言っていないが」

 

とはっきり言われてしまい、がく、と思わず力が抜けてしまう。

勝手に妄想し期待していた自分がとても恥ずかしく、思わず首を垂れてしまう。

そんな自身の様子を彼女は半ば呆れた様子の、三白眼で見詰めつつ、言葉を続けていく。

 

「…言われてはない、が…マリーダ、最近お前の話題を良く口にするんだ。それに乗ってあげると凄く嬉しそうで…お前の好きそうな色や着飾り方を聞いてきて、実際にそのアレンジをして出かけて行ったりもした。つまりそれはお前との…デートと言うものに行っていたのだろう」

 

「確信したのはこの間、何故か直近で二回も映画を観に行って、その後戻って来てからだ。マリーダの纏う服から…お前の匂いがしたんだ。…驚いた。きっとプルの奴も知ってるんじゃないかな」

 

「…お前とマリーダが付き合うのは、お互いに幸せだというのなら、それでいい。だが…」

 

「だが?」

 

「……もし、そうなったら。ちょっと、二人が遠い所に行ってしまう気がして。上手く言葉で表せないが…二人きりの世界が出来てしまって、その、今までのような日常が…お前ともマリーダとも、過ごせなくなってしまうような、そんな予感が…し、て」

 

「…それは、ちょっと…さみ、しい、な」

 

自身でも恐らく初めてであろう、沸々と湧き起こってくる感情にどう対処すればいいのか分からないのか、話が終わりになるにつれて、言い淀みが激しくなっていく。

最後のさみしい、は殆ど消え入りそうな声であった。

 

事ここに至って、彼女の心の襞に触れられたような気がした。

そしてきっと、根拠のない、しかし誤っているとは思えない自分なりの答えを、彼女の妹も同じように答えるであろうという謎の確信を持ちながら、不安に怯える彼女に視線を合わせ、優しく言い聞かせる様に答える。

 

「…プルツー。オレは…きっと、マリーダさんも。お前に寂しい思いなんかさせたくない。お前の事は大切だし、幸せで居て欲しいって、心から思っているよ」

 

「もし…これから、もっとマリーダさんと仲良くなって…その、恋人、っていう存在になれたとしても。お前の事を決して蔑ろになんかしない。約束できる。もし、不安だって言うなら…」

 

微笑みと共に、嘗て彼女が差し出してくれた白妙の滑らかな手とは異なる、日に焼けた色をしている、ごつごつとした無骨な手を差し出す。

手先の色合いや形状は違えども、眼前の少女の妹があの時掛けてくれた言葉を、そのままそっくり送った。

 

「指切りげんまん、しようぜ」

 

小さな指先を、これからもずっとずっと、傍に居るよ、という念を込めつつ絡める。

守れなかった場合の罰も唱えながら、確かに約束を交わす。

初めは呆然としながら此方の顔と自身の指先との間を何度も視線を動かしていたが、やがてあどけなく、やや気恥ずかし気な微笑みを浮かべ

 

「…ジュドー、うれしいよ」

 

と述べてくれた。相変わらず呟く様な、夜にのみ鳴く虫の声に掻き消されてしまいそうな程小さな声であったが、その声色は、確かに喜びの色が滲み出ていた。

 

 


 

 

それから間もなく家の前に付けば、自身の家にまで来た経緯などを傍で説明してあげようと、彼女達の家の中に立ち入ろうとするも、

 

『後は自分で何とか説明する。今日は本当にありがとう、な』

 

と何処か憑き物が落ちた様な、穏やかな笑みを浮かべつつやんわりと制された。あまり感情を上手に伝えられない彼女が、敢えて困難な道を選択したのだ。

ならば何も言うまい。

じゃあな、と朗らかに別れを告げて一人来た道を戻っていった。

 

空を見上げる。

際立つような光を発する大きな星もあれば、瞬きしていたらその次の瞬間には消えてしまいそうな程零細な光も浮かんでいた。

小さな頃は、もう少し多種多様な星が見えていた筈だったが。

都市開発が進み見えづらくなったのか。それとも単に、視力が落ちたのか。

 

最近夜中まで友達とゲームをする事があったから、もしかして後者の方かもしれないな、と思っていると連絡用SNSの通知音が鳴った。

画面を開いてみる。すると、この前二人で行った喫茶店の名物チョコパフェをアイコンにした、先程別れた少女の妹からの通知であった。

そこには一言、

 

『姉さんの事、ありがとう』

 

とあった。

すかさず明るく応えるようなスタンプを返した後

 

『プルもプルツーも、寂しい思いをさせない様に、幸せで居られるようにしたいよね』

 

と続ける。

更に付き加えるかどうか逡巡した挙句、結局

 

『二人でね』

 

と付け足す。余計だったかな、と思わなくもないが。

こうして一緒に居るという事をアピールするだけで、得も言われぬ心地好さを覚えてしまう。

この気持ちは、一体何なのだろうか。これが、恋というものだろうか。

その答えが見つかる間もなく、彼女から返信が来る。

 

『うん』

 

『一緒にな』

 

一緒に。

一緒に遊ぼう。一緒にご飯を食べよう。一緒にゲームしよう。

これまで様々な”一緒に”を聞いてきた。

しかし、彼女から誘われる”一緒に”程嬉しいものはないのではないか。

心からそう思える。次は、どんな風にして共に時間を過ごそうかな。暗がりの静けさな夜道だというのに、足取りは自然と弾んでいた。

 

 




今回は当初、全然違うキャラクターがゲストで登場するはずでした。
が、唐突に発作的に発生する「プルツーかわいいすきすきだいすき病」が再発してしまい。
この様な話になってしまいました。
まさしく敵を倒す為に生み出されてきたクローン強化人間が、最期は人を助けるように導いて儚い命を散らしていく。
とても悲しい話です。だからこそ、平和な世界では沢山愛でてあげたい。
プルツーかわいいよプルツー。

蛇足ですが、自分の気持ちに正直になれず、ジュドーやプルの思念の説得に応じてこのまま逃れてしまいたいものの、主であるグレミーに従う様マインドコントロールされていて結局逃れる事が出来ず、浮かべる苦悶の表情が、ちょっと…その……えっちだと思います。
プルツーえっちだよプルツー。
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