元教皇BBAの体当たり式たいむだいばぁず 〜どんと来い終焉の銀河〜 作:久保サカナ
これ以上連載増やしたらいけないと分かっているのについ投下してしまう………
夕陽にに染まる荒野、そこでは死闘が繰り広げられていた。
片方は長剣を二刀流で扱う夜の闇を思わせる漆黒の背後の翼が印象的な鎧を纏った黒髪の少年であった、細身の身体にはとても似合わない剣捌きにまさしく人非ざる者、まるで神そのものである圧倒的なプレッシャー………負の小宇宙を発している。
彼こそが「この世で最も清らかな少年」を依代にして地上に降臨したギリシャにおける冥府の主人にしてオリンポス神が一柱、冥王ハーデスである。
かの神の行動原理は大変シンプルである、「穢らわしい人間を根絶やしにして地上を己の支配下に置くこと」だ。
しかし、冥王ハーデスは神代の時代より地上の支配に成功したためしは無い、己の天敵である智慧と戦の女神アテナがいくたびもその野望を挫き続けたからだ。
戦女神アテナは人間の愛と正義を心より信じており、世界中の神々が人間に見切りをつけて去った後も地上に降臨して人間と共に地上のあらゆる生命を守り続けて来た。
そして戦女神アテナに仕える聖なる闘士………己が守護星座を聖衣として身に纏い、時にアテナの盾、時にアテナの矛としてある者………彼らは聖闘士と呼ばれている。
今、冥王ハーデスの前に立ち塞がり聖闘士の禁である「武器を持つ」という行為………剣を構えハーデスと互角の剣戟を繰り広げるのもまた聖闘士なのであった。
冥王ハーデスは人間を虫ケラ以下の存在として見る、だからこそ目の前の光景が解せなかった。
「何故、我らについて来れる人間?この剣は冥府の神剣、月輪草薙の剣であるぞ」
(忌々しい日輪の力を感じるぞ、気を付けよハーデス)
「冥王ハーデスよ!貴様は人間を舐めすぎだ!!私の持つ剣こそ日の本より借り受けし日輪草薙の剣である!!!」
そう声を張り上げるのは白髪で顔に皺を刻んだ老婆である、しかしその声も肉体も一切の衰えを見せずこうして冥王ハーデスの前に立ち塞がっている。
その身に纏うのは黄金の聖衣………彼女こそが聖闘士の最高位である黄金聖闘士の1人であったということが分かる。
(チィッ、日輪草薙の剣を借り受け、アテナ様の血により神聖衣を、その御心を通じ合わせた事により聖装衣を同時に発動しているというのに何と無様な。アレスやエリスやポセイドンもそうであったが神とは何とも強大な存在か!)
彼女が纏っているのは通常の黄金聖衣では無い、アテナの血(イーコール)を受けた『神聖衣』、アテナと心を通わせたセインティアのみにもたらされる『聖装衣』、この2つを同時に発動させるという『奇跡』をもってして冥王ハーデスと拮抗しているのだ。
しかし、『奇跡』には代償がある。冥王ハーデスも月輪草薙の剣もこのままの勢いが続くとは思えないからこそ敢えて相手の自滅を待ち拮抗状態を生み出していた。
そして、終わりは呆気なく来た。聖衣の腹部パーツが負荷に耐えきれず損傷したのだ。
「これで終いだ、なかなか楽しめたぞ。人間」
(さらばだ、日輪)
損傷した腹部パーツを冥王の剣と月輪草薙の剣が同時に穿った、刺された老婆は血反吐を吐き返り血が冥王ハーデスの冥衣を染めた、間違いなく致命傷である。
しかし、老婆は爛々とした瞳で冥王ハーデスと己の腹に刺さった月輪草薙の剣を見据えると「かかったな」と吐き捨てたのだった。
慌てて二本の剣を抜こうとした冥王ハーデスであったが、遅かった、老婆の血が幾重もの鎖と化し彼の身体を拘束しているのである。
神代より続く極東の最高位の術師カミヨミの血の鎖である、『冥府の存在』にはたとえ冥王ハーデスであっても効果を発揮する。
「くっ離せ!人間!!」
「神の一手先を読んでこその教皇よ!黄泉比良坂通りませ…チビキノイハを開きませ…」
老婆の詠唱と同時に彼女の腹に刺さった月輪草薙の剣が蒼い焔に包まれて行く…蟹座の黄金聖闘士の奥義、積尸気鬼蒼焔である。
この技は相手の霊的なもの…スピリチュアルな概念を燃料に燃える焔である、冥府の神剣である月輪草薙の剣には特攻なのだ。
(ぐぎゃぁぁぁぁぁ!!!)
「常世の長鳴鶏よ大禍時の声を告げよ………祓い出せ!黄泉の府の籠の鶏!!積尸気魂葬破!!!」
積尸気魂葬破は相手を火薬に見立てて爆発させる蟹座の黄金聖闘士の奥義である、相手の霊格が高ければ高い程に爆発の威力は増す。
詠唱により威力を増した一撃をゼロ距離で喰らった月輪草薙の剣、神代より数多の悲劇を巻き起こして来た邪剣は呆気なく砕け散ったのであった。
(これで我らカミヨミの悲願は果たせた………後は冥王ハーデスにご退場頂くのみ!)
老婆は最期まで戦い続けんと日輪草薙の剣を振るい冥王ハーデスの片腕を斬り落とした、ハーデスは腕ごと冥王の剣を落とした事になる。
「よくも!!よくもやってくれたな人間!!!」
「常世の神にはこのアテナの座す地上よりご退場頂こうか!!!」
いまだに血の鎖の拘束より逃れられない冥王ハーデスに向けて老婆が再び「黄泉比良坂通りませ…チビキノイハを開きませ…」と詠唱を始める。
すると彼女の周囲にかつて彼女と共に戦った者達………黄金聖闘士が来た、白銀聖闘士が来た、青銅聖闘士が来た、セインティアが来た、雑兵が来た、女官が来た、神官が来た、ロドリオ村の人々が来た………地位身分を問わず同じ志で戦った『仲間達』が現れた。
蟹座の黄金聖闘士の奥義…冥界の束縛を断ち死者を召喚する奥義、積尸気転霊波をカミヨミの常世と現世を繋ぐ力でブーストした形になる。
老婆が指を掲げると彼ら/彼女らは一斉に蒼い焔に変わり老婆の指先に集い轟々と音を立て積尸気鬼蒼焔と化し冥王ハーデスを焼き滅ぼさんと燃え上がる。
しかし、冥王ハーデスも伊達に大神を名乗ってはいない、己に目掛けて迫る蒼い焔の奔流を己の小宇宙を燃やして受け止めたのだ。
再び老婆と冥王ハーデスは拮抗する…かと思いきや、老婆は更に焔に薪を焚べた。
積尸気使いとは「魂」のプロフェッショナルである、老婆は更に長年の研究と研鑽を重ねて「生物の生み出す負の感情のエネルギー」をコントロールする術を得たのだ。
つまり、老婆にとってはこの戦場に満ちる散って行った雑兵と冥兵と聖闘士と冥闘士の負念、先程消滅させた月輪草薙の剣の負念、そしてまさに今目の前で戦っている冥王ハーデスの負念全てを手に取るように操り焔の燃料にすることさえも可能なのだ。
こことは違う世界では「呪力」「負の霊力」と呼ばれるそれを老婆はハーデスに気取られぬように一瞬で掌握すると一気に積尸気鬼蒼焔に焚べた、鬼蒼炎は天まで届くかの如く轟音と共に燃え上がる!
「ふむ、この肉体もこれまでのようだ。もはやこれまでだな…せいぜい数百年の平和を楽しむが良い、人間よ」
そう判断した冥王は肉体を捨てエリシオンに帰還した、ここに聖戦はアテナの勝利を迎えたのである。
「「教皇様!」」
老婆に駆け寄るのはまだ幼さが残る顔立ちの水瓶座の黄金聖衣を纏う少年と上に立つ者の威厳を感じさせる天秤座の黄金聖衣を纏う青年であった。
「教皇様!お気を確かに!!」と縋る様に手を伸ばす少年であったが、もう老婆はそれには応えない。
「クレスト、よく見ろ……もうとっくに事切れておる!最初からこのお方は冥王ハーデスと月輪草薙の剣を道連れにして死ぬ不退転の覚悟で挑んだのだ…!」
「イティア様…そんな………」
「このお方の顔をよく見るが良いクレスト、断末魔の苦痛でも死ぬ事への恐怖でもない…」
イティアと呼ばれた青年は己のマントを地面に敷くと立ったまま事切れていた老婆の身体を丁重に横たえた、手に握っていたままの日輪草薙の剣も取り上げた、クレストと呼ばれた少年も言われた通りに老婆の顔を覗き見る。
「安堵だ。教皇様はカミヨミでもあった…月輪草薙の剣を討つ事こそが悲願だったのだ、我ら聖闘士の倍以上の使命を持ち走り続ける人生の何たる重さであったことか………!でもこうして今はようやく荷を降ろされて眠りについたのだ」
「教皇様………まるで陽だまり中で眠りについた様に安らかでおられます」
老婆の顔はクレストの言った通り、まるで陽だまり中でうたた寝をしているかの様な安らかな顔をしている、腹に穴が空いて死んだとは思えない表情だ。
イティアが老婆の遺体を抱き上げると纏っていた蟹座の黄金聖衣が外れて蟹座のオブジェ形態に変化した、心なしか蟹であるのに泣いている様に2人には見えた。
「さぁ、我らの聖域に帰還するぞクレスト。このお方をまずは丁重に葬らねばならぬ」
「はい!聖衣と剣は私が運びましょう」
そうして2人は去って行った………老婆の魂が何者かに持ち去られて既にこの世界に存在しない事にこの2人が積尸気使いであったならば気づけたかもしれない。
・
・
・
・
・
我はまつろわぬ霊の王にして
あまねく世界の楔を解き放つ者なり
全ての剣よ、我の下に集え
かの者達の意志を、そのしもべ達を
あまねく世界から消し去らんがために
我が名は霊帝
全ての剣よ、我の下に集え
………ふむ、我の手に入れたこの「異なる理を持つ剣」はどういう戦いを見せてくれるだろうな
「させませんっ!!!」
たかが一惑星すらも護りきれぬ神でありながら矮小なる身で我に楯突こうというのか
「たとえどれだけ貴方との力に差があろうとも私には地上全ての命を守る使命があるのです!!!」
愚かな
「きゃあああああっ!?くっせめて彼女だけでも…………頼みましたよ…因果律の番人………」
やってくれたな
だが全ては些事よ
そして、舞台は『終焉の銀河』に移るのであった
なんかOGのアニメみたいに「最初だけクライマックス」とか言われないように頑張ります。
Q、そもそもカミヨミって何よ?
A、柴田亜美先生の昔描いた漫画です、グロいよ!