出雲出身の墓守。ハンター生活雑記   作:空白零無

2 / 7



この小説内の銀狼は、成長期です。

追記、誤字報告ありがとうございます。純美のイリドラがイドリラと誤表記していました。お詫び申し上げます。





私の仕事は主夫のような物です

 

 

 

 うーむ。困った。

 星核ハンターの隠れ家。通称、セーフハウス。

 セーフハウスにある冷蔵庫を開け、内容物を確認していた時のこと。……本当に困った。

 

『泉下、どうかしましたか』

「……少し考え事を」

 

 ……さて、どうしたものか。

 

「君がそんなに悩むなんて、珍しいね」

「そんなことありません。結構悩んでますよ」

 

 主に今悩んでることに関しては、定期的に悩んでます。

 

「あたしで良ければ相談に乗るよ。どうしたの?」

「……食料の備蓄が減ってきまして」

「あ、なら。これからお買い物に行かないとだね」

 

 もちろんそうなのだが。

 

「……ホタル。最近銀狼の事、どう思いますか?」

「え? どうって、なに?」

「そうですね。銀狼の体のことです」

 

 銀狼はまだ若い。異なる星の生まれなので、寿命なり、精神面なり色々違うのはわかっている。

 でも、

 

「えっと、銀狼が太ってきた。とか、そういう話?」

「いいえ。銀狼の年齢なら多少太っても問題ないと思いますので、別にそれで困ったことはないんですけ」

「なら、何について悩んでいるの?」

 

 そもそも、この話を他に話して良いものなんだろうか。……私からは言いにくいしホタルからカフカや刃に話をしてもらいましょう。あの二人なら私よりも知識があるでしょうし、カフカなら銀狼も説得してくれるでしょう。

 太るから食べる量を減らしたりするのは得策ではありませんからね。

 

「銀狼の発育のことで少し」

 

 銀狼はまだ若い。そして、成長期のようで一年前に比べると胸部や臀部の丸みが増している。身長も少しばかり伸びているようですし。

 

「体の成長に合わせて食事も考えなければいけません。栄養が足りなくては成長出来ませんし、成長不全となった体は虚弱になったり、不調で動けなくなったり。適切な量を食べなければ仕事にも影響が出るでしょう。ですので、買ってくる物を考えていました」

「そんなに考え込むほどのことなの?」

「はい。腹が減っては戦はできません。そして、体の管理を怠ると何処かしらで不調が起きて大きな怪我、死に直結します」

 

 出雲では、食事をまともに与えられなかった少年少女が逃げ遅れて殺されたり、激しい飢えのまま戦いに赴いて亡くなる者も多くいました。

 私たちは星核という危険物を収集する犯罪者組織の人間。捕まれば拷問もされるでしょうし、人間的な扱いはされないでしょう。

 

「食による危険は、回避したいのですから」

 

 それに、空腹というのは辛い。どれだけ空腹でも、私は運良く生き残ることができていたが、空腹は辛い。極度の空腹は自分を見失ってしまいそうになる。

 そんな思いをするのは私だけで良い。是非とも銀狼には、適切な食を与えたい。

 

「泉下は、優しいんだね」

「……まあ、やさしくなければリザレイア()が私を使令にしようとすることはなかったでしょうし。それに関しては星神お墨付きですね」

 

 それはそうと、銀狼の食事をどうしようか。カフカや刃、ホタルは体がある程度完成されている。鍛錬による身体づくりで必要な栄養は、日々の食事で補ってもらっているから。後は自分の好きな物を食べて英気を養って欲しい。

 

「……あれこれ悩んでも良い結果は出ません。カフカと刃は、仕事中でしたね。ホタル。少し、買い物に付き合ってもらえますか?」

「そうしたいのは山々なんだけど、今日は体の調子があまり良くなくって」

 

 今日は症状が少しキツイらしい。上手く体が動かせないのだと。

 

「車椅子でも構いませんので、お手伝いお願いできますか?」

「……良いの?」

「はい。構いません。病を治すことは出来なくても、円環の力であれば今の姿で居られる時間も長くなりますから」

 

 たまにはその姿で外を歩きたいだろう。短い時間かも知れないけど、私と間接的にでも触れている間ならそれが出来る。

 

「車椅子の準備をしますので少し待っててください。行きと帰りはあまり時間をかけたくないので、隠り世を渡りますが良いですか?」

「うん。平気だよ」

 

 体はうまく動かなくても、生身で世界を感じたいんでしょう。ホタルは、生身で活動できる時間が短いから。

 

 車椅子を持って来て、ホタルが椅子から立ち上がり、車椅子に乗るのを手伝う。時間は有限だ。急いで行って、急いで戻らないと。

 

「行きましょうか」

 

 隠り世に繋がる門を開けて、車椅子を押して隠り世に入る。

 

 隠り世の空気は冷たく、青い炎が提灯に灯る。その提灯にも暖かさはない。

 

「……さて、とりあえず。近場の星で買い出しですかね。欲しいものはありますか?」

「そういえば、昨日、銀狼がおやつを切らしたっていってたよ。何か買ってあげる?」

「そうですか。では、お菓子作りの材料も買って帰りましょう。それに、最近冷えて来たので今晩はお鍋ですかね」

 

 提灯のあかりを頼りに隠り世を歩く。

 

 ……大体この辺りですかね。提灯を振って現世に繋がる門を開いて外に出る。

 ……よし。予定通りの座標だ。

 

「ホタル。買うものはある程度決まっているので、見たいものがあれば言ってください」

「ここはどんな星なの?」

「セーフハウス付近にある星。確か、名前はフローディⅧだったと思います。純美を信仰する星ですので、強かな方々が多くいますが、カンパニーの手が入っていない場所です。ここなら、変に問題を起こさなければ自警団に目をつけられることもありません」

 

 フローディⅧは、純美を信仰する星。

 平和な星ではあるけど、一人一人の戦闘能力が高く。純美の騎士や警護などの職につく者が多く居る星。

 

 住民たちはおおらかで、優しい人々が多く。排他的な人間の方が稀。ではあるのだが、

 

 市場の方に足を進めると、たまに顔を出す肉屋の主人が私に手を振って挨拶をする。

 

「お! 泉下ちゃんじゃないか。お買い物かい?」

「はい。今日は、お鍋にしようかと思いまして」

「ほお、そうかそうか。今朝いい肉が手に入ったんだ。今ならお安くしとくぜ。イドリラ様を崇めるってんなら、もっと安くしておくぜ」

「イドリラ様を信仰するかはまた今度。今歩むべき運命を終えた後に検討させていただきますね。では、そのお肉を見せてもらってもいいですか?」

「はいよー」

 

 気前のいい人が多く居るが、純美のイドリラを推してくる。言うだけで安くなるから言えば良いのだけど、今はリザレイアの使いっ走りの身。拾ってもらった恩を返した後でも遅くはないだろう。

 こんなに良い人たちに嘘をついてまで安く買い物をしたくはない。

 

「お? 今日は美人さん連れてるねえ。お友達かい」

「そうですね。ただ、ちょっと体調がすぐれないようで」

「そうかそうか。これも何かの縁。弱き者に与えるのも純美の道だ。ほら、うちの1番人気だ。泉下ちゃんも好きだからよ。持ってけ持ってけ」

「ありがとうございます。お代は」

「良いんだよ。泉下ちゃんはいつもウチに良くしてくれてんだ。また、買い物に来てくれさえすりゃ。それで良いんだよ」

 

 肉屋の店主、ポーラは髭を撫でながら豪快に笑う。

 買ったお肉代を渡して店を後にする。

 

「……ねえ、泉下。この星って、みんなこんな感じなの?」

「そうですね。大体こんな感じの人達です。良い場所ですよね」

 

 次は野菜だ。野菜なら、二軒まわれば終わるかな……。

 あ、コロッケサクサクで美味しい。みんなの分、買っておけばよかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カセットコンロを置き、星核ハンターの食卓には大きめの鍋がセットされている。

 

「今日はお鍋です。バランス良く、食に感謝して頂いてください」

 

 食事が始まると真っ先に銀狼が肉に手を伸ばす。刃もカフカも手近にある物をとって食べ始める。

 

『食べないのですか』

「はい。私は、コロッケでお腹一杯ですので」

 

 それに、私は少し離れたところから食事風景を眺めている方が楽しい。

 

「そう言うホタルは食べないのですか?」

『はい。この装甲を纏う間、食事は不要ですので』

 

 買い物から帰って来て早々。ホタルは装甲を展開して身に纏っている。この間は食事は要らないらしく、欲という欲が抑制状態になるらしい。

 

「そうですか。なら、分けて置いてあってよかったです。体調が安定したらお食べください」

 

 鍋の具材は別で避けて作ってある。足りない分、お代わり分の食材でもあるが、仕事が不定期なこの職場は誰か一人が仕事に出て帰ってこないこともある。それ用で食材は追加分を分けて用意してある。

 

『泉下。あなたはいつもあのような事を?』

「買い物の事ですか? そうですよ。皆さん明るくて私も活力を分けてもらえますから」

『とても言いにくいのですが、我々は星核ハンター。あの星に星核が埋め込まれた場合。我々は──』

「はい。知っていますよ」

 

 そうなった場合。私は必要があれば彼らを殺戮することになる。

 それでも、

 

「この縁は、関係。彼らのことは、私の記憶の中で生き。円環に抱かれて新たな命となるでしょう。全てが徒労であったとしても、私はこの刹那を生きているのです。嫌々やるよりも、楽しくやった方がいい。人間関係とは、そういう物なのです」

 

 いつか終わる。終わらないものなどない。

 

 しかし、終わっても円環がそれを新たな始まりとする。

 

『あなたが辛くないならそれで良いのですが』

「理解と納得は別物ですから。でも、半端な仕事はしませんよ。それは、礼節を欠く行為ですから」

 

 ああ、本当に優しい人だ。

 

「泉下ー、お肉なくなったー」

「わかりました。追加で持っていくので、お待ちください」

 

 食べ盛りから追加の注文だ。

 

「お肉ばかり食べてないで、お野菜もちゃんと食べてくださいね」

「泉下。飲み物を持って来てくれるか」

「良いですよ。刃。美味しいですか?」

「……不味くはない」

「素直に言えば良いのに。泉下、今日もちゃんと美味しいわ」

「ありがとうございます。カフカ」

 

 セーフハウスは今日も平和です。

 

 

 

 

 

 







ちょこっと、泉下について紹介。



コードネーム:泉下
本名:不明
所属:星核ハンター(廻り人)
運命:円環
属性:氷
武器:大太刀「帰」

「どうもこんにちは。私は泉下と言います。今は星核ハンターですが、ただの墓守です。副業で使いっ走りをやっています」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。