出雲出身の墓守。ハンター生活雑記   作:空白零無

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私は学がないので、専門知識なんてありませんよ。

 

 

 

 滅びた星、ファイニス。とはいっても、星が死んだのではなく。生命体が絶滅してしまった星。

 絶滅した理由は生存競争のような物。

 

 外部の生命体からの攻撃に原生の知的生命体が敵わず、そのまま絶滅してしまった。

 

 そんな人の寄りつかない星にたった一人だけ住み、拠点を構える人物が私の知り合いにいる。

 何でも、星の性質なのか。貴金属。それも、超希少金属が含まれる鉱石や。元素とか言うものがわんさかあるらしい。よく今の今までカンパニーに目をつけられませんでしたね。この星。まあ、へんな時間の流れをしているせいで普通は入れないんですがね。

 

 今日は星核ハンターのお仕事もありませんし、リザレイア()の方からも頼み事をされていないので、私のいない朝昼晩の分の食事をセーフハウスに置いてきました。

 数日前から事前に出掛けることは伝えてありましたし、食事に関しては刃もカフカも料理を作れますから問題ないでしょう。

 

 〝到着しました。どこで合流しますか? 〟

 〝おはようございます。返信bot、A2です。主君は、研究に没頭中。長らくお待ちください〟

 

 ……これは、かなり待たされそうですね。仕方がないですね。そちらから呼んでおいてこれとは。まあ、いつものことではあるんですけどね。

 

 門を開いて隠り世に入り、彼女の部屋まで移動する。

 そして、隠り世から出れば。全裸で扇風機に当たる女性が居た。

 

「ああ、来ていたのか。氷翠。元気してたか?」

「……失礼しました」

「? 何故、顔を逸らすんだ? ……ああ、これは失礼した。気にしないでくれよ」

「そうは言いますが、親しき仲にも礼儀あり。いくら親しくても、裸体をジロジロ見るのは失礼でしょう」

 

 そもそも何故全裸に……いえ、彼女の行動を理解できる人なんて、同じく天才クラブの人間ぐらいでしょう。私の頭は凡庸すぎてわかりません。

 

「そうは言うが。……まあ、いいさ。今服を着るから、私が良いと言うまで待っていてくれ」

「わかりました。では、着替え終えるまで待っていますので。()()()()()()に見られても大丈夫な格好をしてくださいね」

「まるで私が痴女だと言いたげだな」

 

 自宅、個人の所有する実験施設とはいえ、全裸で活動し。異性である私の前で今もそうして全裸でいる人は間違いなく痴女ではないのでしょうか。

 

「まさか。流石にスクリューガムやスティーブン。ホムンクルスたちの前で裸になることなどない。私が裸でも平気で対応するのはキミとルアンとヘルタぐらいな物だよ」

「何故その中に私が居るんですか」

「わかりきったことを聞く。私はキミが好きだからだ。何度も言っているだろう。……よし、服は着た。こちらを向いても大丈夫だ」

 

 僅かに聞こえていた布が擦れる音。今回はちゃんと服を着ているはず。……よし。ちゃんと着ていますね。

 体を冷やすと風邪になってしまったりしますから。裸で扇風機に当たるのは辞めていただきたいものです。

 

「ほう、私の心配をしてくれるか。思い人に思われるとは、なんたる幸福か。まあ、キミの場合。その思考はデフォルトのモノ。見ず知らずの誰かにも適用されているのだろうが」

 

 実際そうではありますが、知人へ向ける心配と、知らずの他人に向ける心配はその思考の強度が違います。知らずの他人は基本的に、一定の心配。今その瞬間しかしませんが、知人へのものは今後の全体を考えて心配します。

 

「ふむ、そうか。そういうものか」

「……そろそろ考えを読むのをやめてもらえますかね」

「いや、読んでいるつもりはないんだが。ついつい癖でね」

 

「しかし、私も思考を先読み出来るようになるほどキミを知り始めたか」そんな感慨深そうにしないでください。

 

「あなたが好きなアップルパイを焼いてきたのですが、食べますか?」

「もちろんだ。今、容器と切り分けるモノを取ってくる。待っていてくれ」

 

 彼女が好きなアップルパイ。

 彼女の故郷、レスティーネは農作産業が盛んな星だった。しかし、星核による汚染で農業は衰退し。今では規模を縮小して運営されているからか、レスティーネ産の果物や野菜はカンパニー経由でもかなり手に入れることが難しい。

 

 彼女の好物は、レスティーネ産の林檎を使ったアップルパイ。どれだけ機嫌が悪くても、好物を渡せば機嫌を直してくれる。そして、やる気を出してくれるので、ヘルタにもレシピを教えたもの。味は保証します。

 

「持ってきたぞ」

「ありがとうございます」

 

 包丁と容器を受け取って、アップルパイを切り分け、容器に入れて彼女に渡す。もう既に機嫌はかなり良さそうだ。

 

「ふむ、見事な焼き加減だ。この味、この匂いは、レスティーネ産の作物か」

「お好きでしたよね。レスティーネの林檎で作るアップルパイ」

「ああもちろんだ。故郷の味だからな」

 

 故郷の味。私にはもうないモノですから。

 やはり、人の嬉しそうな顔はいいモノです。

 

「うむ。毎度のことだが、美味い。対価は、私の手料理で構わないか?」

「対価は必要ありません。材料も感謝の品や貢物としてもらった物ばかりですので」

 

 レスティーネは円環のリザレイアへの信仰が強い星。使令である私に対してかなり好意的で、出来が良い農作物を分けてくれるので、セーフハウスの電気代ぐらいしかかかっていません。

 それに、

 

「アドレアさんが心配していましたよ。娘が連絡をよこさない、と」

「? 定期的にホムンクルスたちが連絡は返していたはずだ」

「あなたが返さないから心配しているのではないですか?」

 

 全部ホムンクルス達に返信させていたんでしょうか。それは心配もされるかと。

 

「そういうものか。では、母には後で連絡をしよう」

「そうしてあげてください」

 

 最近、腰を痛めてしまったらしいので。顔も見せにいってあげてください。

 

 

 少し会話をしながらパイを食べ、食べ終わった時には彼女はご機嫌。

 本調子と言ったところでしょうか。

 

「アップルパイの対価は後で考えるとして。氷翠。キミに少し手伝ってもらいたいことがある」

「いつも通り、実験ですか?」

 

 いつも通りの実験。

 彼女が私に向ける『好き』の正体を探るための実験。

 

「いや、それも手伝って欲しいが今回は違う。A1、氷翠用の端末を持ってきてくれ」

 

 メイド服を着た青い髪のホムンクルス、A1がタブレット端末を持ってきて、私に手渡す。

 人間と同じ肉体構造を持つ、人造生命体。その第一号。私も思い入れのある個体(子供)

 

「ありがとうございます。A1」

「……」

「無口なのは相変わらずなようですね」

 

 後でホムンクルス達用に持ってきたクッキーを差し入れしよう。

 

「ああ。なにぶん、恥ずかしがり屋な子だからな。恥ずかしがって喋らないんだ」

「性格も様々ですね」

「予想外ではあったが、一生命としてみれば、当然の結果とも言える。まあ、そんなことは置いておいてだ。今回手伝って欲しい実験なんだが」

 

 端末に何やらファイルが送られて来ましたね。

 ふむふむ……。これは、

 

「模擬宇宙、ですか」

「ああ。ヘルタから声がかかっていてな。どうも、円環(リザレイア)の情報と、私の星物化学の知識が欲しいとのことだ」

「それで、何故私に声が?」

 

 円環のリザレイアはあらゆる生命体の母。一瞥を受けた生命体が呼び掛ければその呼びかけに応えるでしょうし、一瞥を受けていなくとも呼び掛ければ何かしらの反応があるはず。

 

「それは円環の星神(アイオーン)に呼びかけをするなら。キミ経由の方が確実に応えるからだな」

「レスティーネ出身のあなたであれば、呼びかけに応えると思いますが」

 

 そもそも、彼女は円環の庇護にある星の生まれ。呼び掛ければ答えてくれそうだが。

 

「やるならば、より確実な方。というのが、ヘルタの考えだ」

「なるほど。ヘルタが私を呼ぶ様に言ったわけですね」

「そうだな。それに、その方が私のモチベーションが上がるから。私からもキミを推薦した」

 

 模擬宇宙。その製作目的は、星神はどうやって作られたのか、なぜ作られたのか、何のために作られたのか、その真相を突き止めること。

 そのためのコードで作り出された仮想世界。それが模擬宇宙というもの。

 

 プロジェクトメンバーは、5名。ヘルタ。ルアン・メェイ。スクリューガム。スティーブン・ロイド。そして、目の前にいる彼女。ライザ・レドゥケーレ。

 

「キミには、リザレイアのことを教えて欲しい。彼の星神は、呼び声に応えてはくれるが、姿は見せないし、詳細を書かれた文献も多くはない。わかっているのは、円環が万物を生まれ変わらせることができるぐらいだ」

「実際、そう言った能力ではあるんですがね」

 

 円環の概念は複雑で、いろんな運命と重なる部分が多く存在する。つまり、途轍もなく複雑で解釈が面倒な運命な訳で。

 

星神(アイオーン)の再現は、ルアン・メェイと、あなたですか。骨が折れそうですね」

「大体は調べてある様だから、あとはリザレイアの情報を入れて、スクリューガムにプログラムを組んでもらうだけだ」

 

「インタビューに応えてくれるだろう? 対価は、模擬宇宙への参加券だ」模擬宇宙への参加券。おそらく、ヘルタの発案でしょう。あっても困ることはありませんし、インタビューに答えるだけで良いなら儲け物ですね。

 

「よし、交渉は成立だ。ヘルタが、インタビューをして欲しい項目はまとめてあるんだ。回答は、簡潔に頼む。詳細を求める場合は、こちらから追加で質問する。わからないものは、素直にわからないと答えれば良い。質問の量が多いから長くなると予想されるがいいか?」

「はい。構いませんよ」

 

 私もリザレイア()のことに関しては知らないことの方が多い。わからないものは直接聞けば良いでしょう。多分、隠り世で呼べば来てくれるでしょうし。

 

 彼女がいつもの様に私の膝上に向かいあって座る。

 

「それじゃあ、始めるぞ。まず……少し待ってくれ。今の心拍数の変化をとっておきたい」

「結局やるんですね」

「ついでだ、ついで。年頃の美少女に抱擁されるんだ。喜べよ」

「相変わらずの自己肯定感ですね。そういうところ、好きですよ」

「──!」

 

 あ、体温が上がりましたね。

 こういう、恥ずかしいのは隠して攻めて来ますが、不意打ちされると恥ずかしがるの。可愛いと思いますよ。

 

「……あまり揶揄うな。父親にするぞ」

「そんな度胸あなたにはありませんよね。では、インタビューの続きをどうぞ」

「……負けた気分だ。まあ、いいさ」

 

 面白い人ですね。年頃の乙女って感じで。

 さて、一日居座ることになるんでしょうし。夕食の献立でも考えましょうかね。どうせ、いつもの様に私と食事を作りたがるでしょうし。







ちょこっと人物紹介

会員番号.85
本名:ライザ・レドゥケーレ
所属:天才クラブ
運命:知恵
属性:虚数

「劣化版ヘルタとか言われてるライザだ。ただの錬金術師だよ」
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