出雲出身の墓守。ハンター生活雑記   作:空白零無

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「別に、自分の母に会うのに謁見なんて大袈裟ですよね」






謁見だなんて堅苦しいですね。

 

 

 

 宇宙ステーション『ヘルタ』。

 宇宙に名を残す天才ヘルタが「一切の怪異を星空に封印する」ことを目的として打ち上げた宇宙ステーション。

 銀河のあらゆるところから収集物を集め、『遺物』『奇物』を管理している。

 

「そんな場所に、私を招いて大丈夫なんですか。これでも一応犯罪者ですよ。私」

「問題ないわ。私の招いた客だもの」

 

 球体関節を持つ人形の姿をした女性。ヘルタの執務室で私は他のメンバーが到着するのを待っています。予定では、ルアン・メェイとスティーブン・ロイドはリモート参加。スクリューガムとライザは直接参加。

 内心少しだけ安心しました。以前、ルアン・メェイには質問責めにされまし、質問の内容が生命の循環と変化というもの。

 私には学がないので詳しいことなんて分かりませんし、感覚的なモノしかわかりません。

 

「銀狼からここの情報は貰ってないの?」

「はい。私には関係のないことでしたから。それに、大体のことは調べれば書いてありますし」

 

 調べる必要も、調べる気もなかった。まさか、呼び出されると思ってませんでしたし。模擬宇宙に関してはあのインタビューで終わったものだと思っていたから。

 

「インタビューだけで終わるだなんて勿体無いわ。せっかく時間があったんだから、会ってみて協力者足り得るか確かめたいもの」

「知恵の使令、ヘルタ。ここはあなたがカンパニーからの融資で建造されたと聞きます。そんな場所に堂々と犯罪者を招いて大丈夫なんですか?」

「犯罪者? なんのことかしら。私が招いたのは、円環の使令よ。星核ハンターはお呼びじゃないわ」

 

 どっちも指名手配をされていると指摘するのは野暮でしょうか。一応、同一の人物なので。

 

「大丈夫よ。今のあなたの姿を見て、星核ハンターの泉下だと気づける人は少ないわ」

 

 そのために態々変装してるわけですしね。

 この服装、やっぱり着慣れないせいで着心地が悪いです。カフカに悪いので変装で着てきましたがあまり好みではありません。

 

「そんな仮面の愚者みたいな格好をして、星核ハンターだと言われても。その手のジョークにしか聞こえないわ」

 

 変装が成功していると喜べばいいのか。仮面の愚者と勘違いされそうな格好をしていることを嘆けばいいのか。複雑です。

 

「……アッハが手を叩いて笑っていそうですね。今度こそ切ってやりましょうか」

「あら、試したことがあるの?」

「ありますよ。少し長いですが、話しますか?」

「全員が揃うまでは暇だし、話していいわよ」

 

 あれは、リザレイア()から使いを頼まれた時のこと。

 

 

 

 スウォームを駆除していると、異様に強い一匹のスウォームがいました。

 そのスウォームは円環の冷気も、浄炎も効果が薄く。何故か太刀で切れば切るほど再生分裂を繰り返し、かなり苦戦しました。

 

 多分、これまでで1番手を焼いた相手だと思います。反物質レギオンの軍隊相手でもここまで苦戦しませんでした。

 

 なんとかスウォームを倒し切った時にヤツは現れたんです。

 

『おおすごい! びっくりだ! すごい演舞。見させてもらえてアッハは嬉しい。良いものを見た! アッハは楽しかった!』

 

 何処からともなく聞こえる不快なほど愉快な声。賑やかで、今思い出してもイライラする程不快な声。

 

『リザレイアいいな。リザレイアいいな。アッハが拾えば良かったのかな。でも、死んでるオマエ生き返らないから、面白くなさそうだったしいっか!』

「……どちら様ですか。疲れているので休ませてください」

『フラストレーション溜まってるね! 怒ってる? 怒ってる! だから、アッハからプレゼント。開けたらびっくり花火箱』

 

 目の前に箱が現れ、そのまま爆発しました。開けていません。触れてもいません。目の前に現れ、そのまま爆発しました。

 

『大きな花火綺麗だ。鎮魂と弔いの大花火! 綺麗だね。綺麗でしょ! アッハは笑うのさ。アッハ!』

 

 消えゆく意識の中で、そんな声が聞こえました。

 

 

 

 

「あなたよく生き残ったわね」

「いいえ。死にましたよ。花火の爆発に巻き込まれて」

 

 いやー、あれは驚きました。

 目が覚めたらリザレイア()に抱擁されていました。なんでも、リザレイア()が私をもう一度産み直したそうです。

 

 そして、花火で吹き飛んだ私を揶揄いにきたアッハに対してかなり怒っていました。

 

「その時に、アッハに太刀を抜き。切りました。まあ、避けられてしまいましたがね。その時に、謝罪と一緒にこの顔布を貰いました」

「それ、愉悦の星神(アッハ)から直接貰ったものなのね」

「はい。認識阻害の効果がついているようで、変装に役立ってはいます。しかし、」

 

 たまにですが、つけている間異性化するんですよね。

 体付きが変わるので、変身する間は全身が痛いし、栄養不足になってひどい空腹に襲われるしで大変ですが、それはそれで変装に役立つのでお世話になっています。

 

「それはそれとしてアッハのことは嫌いです」

「そう。大変だったのね」

 

 今でもアッハの声が聞こえてくるんですよね。幻聴だと嬉しいのですが。

 

『おや。約束の時間まで少し時間があると思ったのですが』

「なんだ。もう集まっていたのか」

「少し時間があったから、話をしていただけよ」

 

 ヘルタの執務室にやってきた紳士然としたオムニック。スクリューガムと、ステーション内を見回っていたライザ。

 

「……アンタ。私と会ったことある?」

「さあ、どうでしょうか」

 

 グレーの髪の私が見知った少女。

 エリオの脚本通り。カフカや銀狼の言葉通りなら、記憶喪失となっているだろう(せい)

 

「おや、知り合いか?」

「どうでしょうか。私は知り合いが多くいますから」

「私も知り合いは多いよ。本当に私と何処かで会わなかった?」

 

 食い下がってきますね。……本当のことを言えればいいんでしょうが、言っても星を困惑させてしまうだけでしょうしやめておきましょう。

 

「アンタから懐かしい匂いがする。好きだった匂いが」

「……左様ですか。しかし、私はあなたのことを知りません。残念ですが、気のせいだと思いますよ」

「そう、人違いか。過去に、アンタみたいな人と知り合いだったのかな」

「かもしれませんね。記憶が戻る日が来ることを、祈っていますよ」

 

 諦めてくれたようで良かった。

 ……しかし、隠り世の匂いは記憶が消えても覚えていたんですね。なんだかんだ、私たち星核ハンターとのことも覚えていたりするんでしょうか。

 

「全員揃ったわね。開拓者。今から、模擬宇宙の新しい領域のテストをしてもらうわ。準備してちょうだい」

「報酬はもらえるんだよね」

「ええ、用意してあるわ」

 

 開拓者。新しい名前ですかね。

 

「詳細は入ったら説明するから、入ってちょうだい。スクリューと私、ライザの三人で微調整するから。あまり激しい動きはしないように」

「わかった。……この人は、何かするの?」

「私は円環の関係者ですので、円環と接触するための呼水。ここに立って様子を見守るのが私の仕事ですね」

 

「ふーん」そう言って星は模擬宇宙へと入っていきました。

 執務室のモニターに星の様子が映し出され、ヘルタやスクリューガム、ライザが仕様の説明と、指示を飛ばす。

 

 ヘルタ曰く、進行度も出会える星神もランダムなようで。星の動きに対応する星神が反応を見せ、接触を図ってくるようになっているらしい。

 戦闘も探索も特に危なげなく進み、今は休憩領域へ足を進め、少し休憩するらしい。

 ……記憶を失っても、戦い方はあまり変わっていないようですし、身体が覚えているのでしょうか。

 

「キミは、彼女と知り合いか?」

「さあ、どうでしょうか」

「誤魔化せると思わないことだ。もう一度聞こう。知り合いか?」

「……黙秘します」

「ライザ。その辺りにしておきなさい。…………来たわね」

 

 モニターに目を向けると、星は隠り世らしき場所を歩いている。

 暗い夜道のような世界。

 

 ──Aaaaa。

 

 愛おしそうに我が子へ囁く様な母の声がモニター越しに聞こえる。

 どうやら、やってきたらしい。

 

 後光を放つ円環の前に鎮座し、大きくなったお腹を愛おし気に抱いている。まるで、我が子の誕生を今か今かと待ち侘びる母親のような姿をした星神(アイオーン)

 

 ──生命の母。リザレイア(『円環』の星神)

 

『ああ、久しい。久しいわ、アキヴィリ。また会えたわね。開拓の子』

 

 アキヴィリ。その役を務める星を胸に抱こうと手を伸ばす。

 

「開拓者。リザレイアの抱擁を受けてはダメよ。取り込まれるわよ」

『──え、マジ?』

「詳しいことは、そこの客人が話すわ」

 

 ああ、説明は私なんですね。

 

「解説しましょう。円環のリザレイアは、自身をあらゆる生命の起源、あらゆる生命体の母であるとしています。ですので、その他の星神。ナヌーク(壊滅の星神)であろうが、クリフォト(存護の星神)であろうが、リザレイアは全てを抱擁し、産み直そうとします。ですので、あなたがリザレイアの抱擁を受けると、その宇宙でのアキヴィリが最悪消滅することになってしまいますので、抱擁されることは避けてください」

『──出鱈目すぎない』

「司る運命が広いので、仕方がない結果です。頑張って避けてください。やんわり断れば、諦めてくれるの思いますので」

 

『名を呼んだ。我が子が呼んだ。嗚呼、私の子。私の子が呼んだ。行かないと。おいで、こっちへおいで。私の赤ちゃん』

 

 ああ、不味いですね。

 

『ねえ、なんかやばそうな雰囲気がするんだけど』

「ヘルタ。これ以上は危険です。彼女を移動させてください。おそらく、システム越しにいる私をリザレイアが感知しました」

「わかったわ。開拓者、聞こえる? 今移動させるわ」

 

 星のいた次元が変わり、隠り世からも脱せているらしい。何事もなくてよ「──Aaaa」。まさか、現実の方のあなたも反応しますか。

 

「開拓者。今回やってもらいたかったことは以上よ。帰ってきて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子にあったのね」

「はい、会いましたよ。偶然ではありますがね」

 

 セーフハウスの台所。

 今日はカフカが料理を手伝ってくれるらしく、少し高級そうな料理を作っている。……本当に上手ですよね。和食、でしたか? 私はそう言った系統は得意ですが、それ以外は得意じゃないんですよね。

 

「元気だった?」

「元気そうでしたよ」

「そう。ならいいの」

 

 ……あなたも、母のような顔をするんですね。

 

「あら、失礼なこと考えた?」

「いいえ。気のせいですよ」

「ならいいのだけど。泉下」

「なんですか?」

「──聞いて」

「……私に言霊は通じませんよ」

 

 精神に作用する催眠の類には元々強いので。

 

「ふふ、残念。でも、いいわ。だって、あなたも。星のこと、好きでしょ?」

「私が嫌いな人はいませんよ。アッハぐらいです」

 

 アッハは嫌いです。切り殺したいぐらいには嫌いですが、愉悦というものは嫌いじゃありません。

 

「泉下ー。今日のご飯は?」

「クリーム煮とポタージュスープだそうです」

「私が台所に立っているのに、何故泉下に聞くのかしら」

「だって、カフカはどうせ「出来てからのお楽しみ」って言っても誤魔化すから」

 

 ここは平和ですね。……いつまでも、こうやって平和な世界が続けばいいのに。






 アッハってこんな感じの口調でしたよね。確か


 ちょこっと解説。

 リザレイアの抱擁は、星神であれば本来問題はありません。若干身体が分解されるだけで済みます。しかし、模擬宇宙のアキヴィリは開拓者なのでアキヴィリではなく、開拓者のデータが分解されます。そして、模擬宇宙に存在するアキヴィリのデータに欠損ができてしまい。模擬宇宙内でアキヴィリとして機能しなくなる可能性があったので、危険だったわけなんですが。
 実際、抱擁されても記憶を保持したまま産み直されます。身体構造の全てを抱擁される以前の身体に作り直されるので、博識学会では、テセウスの船のように、リザレイアの再生誕について哲学的議論がされているとかいないとか。





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