カプ厨ユミルに目をつけられた   作:三軒過歩

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(2-7)決別

「ローレ、君には何が見える、敵は何だと思う。」

 

トロスト区奪還作戦で鹵獲した巨人が殺された日、訓練後にそんなことをエルヴィン団長から聞かれた。

 

「そんなの、俺が知りたいくらいです。」

 

知性のある巨人はエレンだけではない。ただ壁の外にいる巨人を全員殺して解決するならどんなに良いだろうか。きっとそんなに単純なことではないんだ。どんな風に複雑なのか想像もできないけれど。

 

「訓練の後団長室に来てくれ。もう少し話がしたい。」

 

俺の答えはエルヴィン団長にとってハズレではなかったらしい。俺の知る未来、一周目ではこのときうまく答えられなかったし、彼に興味を示されることもなかった。

 

 

「わざわざ呼びつけてすまないな。」

 

訓練の後、団長室にいたのはエルヴィン団長だけではなかった。ハンジ分隊長、ミケ分隊長、そしてリヴァイ兵士長。

 

「いえ、呼びつけた理由をお聞きしてもよろしいでしょうか。」

「呼び出すときに言った通りだよ。もう少し話がしたかった。君が敵についてなにを思っているのか。」

 

あの時、一周目で女型の巨人に殺されたとき、否、女型との戦闘中に思った。第五十六回壁外調査はこの巨人のための作戦であると。そして、それを団員に共有しなかった理由も考えた。無駄にしまくってなお考える時間があったから。

 

「いった通りです。巨人が何をかんがえているのか、それが分かれば少しはこの何もわかってない状態から救われるでしょう。鹵獲した巨人が殺される前に有効活用できたかもしれない。」

 

それで考えたことを団長たちに話すかは別の話だ。考えた結果、信じられる人物が限られてしまったのは何の皮肉か。

 

「エルヴィン、俺たちが部下に百パーセントの信頼を置いていないってのは見抜かれているようだぜ。」

 

あたえる情報を制限していることを仄めかされる。そしてローレが情報を制限されていると察していることまで理解している。どんな情報が隠されているのかまで理解しているとはさすがに思っていないだろうが。

 

「ローレ、ここで話す内容はここにいるメンバー以外には共有しないと約束する。今回呼び出したのは君に百パーセントの信頼を置けるのか見極めるため、ひいては今作戦の本当の目的に参加させるがどうかを見極めるためだ。」

 

しばしの沈黙の後、団長が呼び出した本当の目的を話す。受け答えに失敗すればおそらく自分は援護班に振り分けられるか、最悪監禁だ。いや、監禁で済むというのも楽観的かもしれない。

 

「ローレ、君には何が見えている。敵は何だと思う。」

 

そして再度問いが投げられた。

 

「……エレンが巨人化できると知り、知性のある巨人という存在について考慮すべきになりました。そうして考えればウォールマリア・シガンシナ区の扉を蹴破った超大型巨人は知性のある巨人、エレンと同じ人間であると予測がつきます。」

 

超大型巨人がずっとあの姿でウォールマリアまで歩いてきていれば誰かしらが発見したはずだ。壁の近くまで人間の姿で接近してそして巨人化すれば誰も見つけられなくとも不思議はない。急に消えたという理由も人間に戻ったのだと説明できる。

 

「その目的は人類への攻撃、というには少し疑問が残ります。ウォールマリアを破壊した後、その勢いでウォールローゼ、ウォールシーナを破壊することは難しくなかったのにしなかった。目的は想像もできませんが、であれば今超大型巨人の中身はどこにいるのかは想像できます。考えたくはないですけど、団長がこの作戦の本当の目的を一部にしか話していない理由はここにあるんでしょう。」

 

シガンシナ襲撃の時に壁外調査に出かけていた者たちで線引きしているのだろう。

 

「その通りだ。エレンという存在であらゆる可能性が拓けた。拓けてほしくない可能性も含めてな。」

「我々人類に敵対する知性を持った巨人が超大型巨人や鎧の巨人だけとは限らない。それ以外に現れても不思議ではない。」

 

実際現れるのだ。超大型でも鎧でもない知性を持った巨人、女型の巨人が。

 

「次の壁外調査でエレンの有用性を示す必要がありますが、少なくとも自分に与えられた作戦情報だけではエレンの有用性は示せない。現状エレンを壁の外に出すリスクとリターンが見合ってないと考えます。だからこそ団長がエレンや調査兵団を使って何かしようとしている。替えの利かない存在を危険にさらすほどの何か……例えば知性巨人との接触、あるいはそれ以上の成果。これを少人数にしか伝えずにやるには生じる犠牲に見合わないと思いますが、とにかくこれが自分が見えているもののすべてです。敵は巨人だけじゃなくなってしまった。」

 

そういって話を結ぶ。

 

「思った以上だ。そこまで見えているとはな。」

「見え過ぎているくらいじゃないかな。だからこそ本作戦に組み込んでもいいというか組み込むしかないと思うけど。」

 

ハンジがそう進言するが、しかし、エルヴィンはまだ迷っているようだ。巨人側ではないという証明などできないのだから。だが、俺はこの調査に援護班としておいて行かれるのは困る。女型の巨人という脅威を唯一知っているのは俺しかいないのだから。

 

「君の四年間の働きは信頼に足るものだと思っている。君のおかげで犠牲者は間違いなく減っている。だが、少しばかり飛躍があると思うことがある。君には何か秘密があるのではないかと。」

「……人類のために全力を尽くしているだけですが。」

 

一周目の記憶があることが、凡人である自分を特別にしている。その特別というズルをエルヴィン団長は秘密として感じ取る。

 

「君があと一年調査兵団に入団してくれていればと何度も思ったよ。」

 

リヴァイは自分たちが百パーセントの信頼を自分に向けていないといったが、逆もそうだ。ローレはエルヴィン達調査兵団の上層部に百パーセントの信頼を向けていない。それは一周目の記憶があるからだろう。自分の心臓が何のために使われているのかも分からず使われた。その答え合わせが二周目の今だ。そんなことしたエルヴィン達上層部に百パーセントの信頼を向けられなかった。そして百パーセントの信頼は百パーセントの信頼同士でなければ結べない。

 

「まあ仕方ない。俺はいつも博打しか打てないのだから。」

 

ローレからすれば信じられないようなことを言って、エルヴィンは作戦の真の目的と概要を語り始めた。

 

 

「それは、いやしかし、それほどの物がすでに用意されているとは。」

 

対特定目標拘束兵器、エレンのような知性ある巨人でさえも捕まえてしまえば逃れられないだろう、人類の英知の結晶。見た目は普通の荷馬車と何ら変わらないように作られている。だがこの武器には欠陥がある。それも致命的な。

 

「これは鎧の巨人には通用しない武器です。」

 

この武器は鎧を貫通しない。エレンに釣りだされる巨人は超大型は動きが鈍いため考えにくいとなれば鎧の巨人か、第三の巨人だ。

 

「そうだ。だが、奴らにほか仲間がいるのなら鎧の巨人が追ってくる可能性は低いと考えている。」

 

鎧を全身にまとっているのだ、当然動きは普通の巨人よりは鈍いだろうが、シガンシナで見たあいつは相当素早く駆けていた。

 

「エレンが無尽蔵に巨人化できないように、知性巨人にはスタミナがある。鎧をまといながら我々調査兵団の中からエレンに接触するのは難しいだろうし、そうなれば対処は不可能ではない。」

 

機動力やスタミナに秀でた力を持つ巨人がいないということも分かると付け加える。

 

「しかし……」

 

この問答には意味がない。結果として鎧の巨人ではなく女型の巨人が追ってくる。女型の巨人にならばこの兵器は使える。だが、ローレはこの作戦を容認できない。仲間が死に過ぎる。

 

「リスクは大きいが、相応にリスクを冒さなければ得られないものもある。そして兵士はみなその覚悟を持っている。」

「自分の心臓が何のために費やされるかも知らずに死ねと兵士に言うのですか。」

「あのね、ローレ気持ちは分かるけどー」

 

止めようとしたハンジをエルヴィンが制する。

 

「そうだ。訳も分からず死んでくれと頼みすらせずに使う、この作戦はそういうものだ。」

 

ギリ、と歯がきしむ音がする。そんな作戦到底容認出来ないと、ローレサマルブルクの魂が叫ぶ。

 

「俺たち調査兵は、あなたに死ねと言われたら死ねます。でもそれは意味があるならだ。意味も分からず死ねと言われて死ねない。だからその意味を知る権利が調査兵にはあるはずだ!」

「話すことの危険性は君も理解していると思っているが。」

「ああそうでしょうとも!人類に敵対する意思のある巨人になれる悪魔が人の皮をかぶって壁内にいる。そいつにこの作戦が伝われば作戦は機能しない!でも、それでも、人間性のないこの作戦を俺は認められない!」

 

思わず叫んだローレの頬に拳が飛んでくる。

 

「ピーピー騒ぐな。冷静になれローレ、外に聞こえたらどうする。」

 

聞こえてしまえばいい。調査兵には知る権利がある。そういってしまいたかった。

 

「…………すいません。先の発言を撤回します。」

 

でもその危険性を知ってしまっているから、ここで謝罪がでてくる。悪魔に対抗するには自分も悪魔になるしかないのに、それもできない自分はただ一周目の記憶があるというだけの凡人。必要とあれば悪魔にもなれるこの人たちとは違う。

 

「情報を与えられない兵との距離は君が一番近い。酷なことを言ったな。次の遠征は援護班に配属させよう。」

 

それはエルヴィン達からのせめてもの気遣いだ。それに自分は甘えられない。

 

「いいえ、知ってしまった責任から目を背けるつもりはありません。事前の計画通りに右翼索敵班に配属してください。与えれれていた役割くらいはこなします。俺は調査兵ですから。」

 

一周目でいた配置、真っ先に女型の巨人に襲われる位置、一周目で仲間をほぼ全滅させた。今の俺なら犠牲を減らせる、減らして見せる。そうしなければならない。俺は右翼索敵で唯一死ぬ意味を知った調査兵だ。

 

 

「浮かない顔だな、何があった。」

 

夕食をとっている中声をかけてくるのは、タンベムだ。ローレが百パーセントの信頼を置いている同期の一人。

 

「別に何もないが。次の壁外調査について考えていたくらいで」

「じゃあ次の壁外調査で何かあるんだな。」

 

ローレは言葉を失い、口を開きかけて閉じた。何を言えばいいのか、一周目のこともエルヴィンと話したことも伝えられない。右翼側に配置されたタンベムとリーザが次の壁外調査で死ぬであろうことも。

 

「ローレはウチらよりもいろんなこと考えてるんだろうし、色々見えてそうだもんね。団長の質問にも答えられたんでしょ。それで、浮かない顔してる」

 

こちらを見もせずに淡々とスープを口に運びながらリーザが核心を突きにかかってくる。

 

「本当か!?あの質問に答えられる奴がいるとは思えなかったんだが。」

 

やっぱローレはすげえなあと感心しているタンベムと、つまらなそうに固いパンをかじるリーザを見ながらローレは口を開いた。

 

「俺たちは死ねと言われたら死ねるよな。」

「当たり前だろ。」

「そうね。」

 

感心してうなずいていたタンベムも、つまらなそうに食べていたリーザもそれぞれ手を止めて真顔で返答する。

 

「じゃあ訳も分からず死ねと言われたら……どうする。」

「? 今の質問とさっきの質問何が違うんだ?」

「結構違うでしょ。とはいえ答えは変わらないけど。」

 

どうしてと、聞きたかった。そんな自分の命を訳も分からず使われてもいいなんて思えない。

 

「だってお前が使うだろ。」

 

その疑問にタンベムは答える。心を読んだかのように。

 

「俺たちはお前になんども助けられた。お前がいなきゃ俺はもうとっくに死んでるよ。そんなお前が俺の命の使いどころを判断した場面が来るなら俺は迷わず使うぜ。」

「四年前、自分の命で稼いだ一秒が無駄になった兵士なんてたくさんいたよ。無駄死になんて珍しくもない。そんな死に方がありふれてると知っててウチは調査兵団に入ったの。だってのに無駄にしなそうな上官や同期に恵まれた。ウチらはラッキーだったね。」

「「だからさ、ローレ」」

 

確信する。この二人は俺よりずっと特別だと。

 

「「俺(ウチ)らは訳も分からず死ねる。」」

 

その特別な二人の命を、俺は使う覚悟を決めた。

 

 

 

早朝、否、出発が早朝だから今は深夜というほうが正しいが、目が覚める。右翼後方索敵の最前線に配属された班はローレの班を含め3つ。幸か不幸かリーザ班とタンベム班がそれに該当する。連携はとりやすい。壁外調査のことを考えていたら目が冴えてしまった。もう一度寝るには時間がなく、支度をするには早すぎる、とはいえ……

 

(せっかくだ、この時間を有効活用させてもらおう。)

 

上着を羽織って宿舎を出る。ほとんどの兵士は寝ているだろうから人気などないも同然だが、昼間であっても人気が少ないであろうところに向かって歩いていく。戻るころにはちょうどよくほかの兵士が起きる時間になるだろう。

 

「監視するならせっかくだから散歩に付き合ってくれると嬉しいのだが。」

 

回りに自分と、声をかけた相手以外いないことを確認しそう声を出す。動揺の気配の後に観念したようにイルゼが姿を現した。

 

「いつから気づいていたんです?」

「監視がつかないわけがないと思っていたから最初からと言えば最初からだが、気づかれることも織り込み済みの監視だろう。監視を振り切るような行動があれば俺は壁外調査に参加できなくなるってところか。」

「正解です。なんでもお見通しですね。」

 

手を挙げて降参の意を示してくる。

 

「しっかりイルゼという保険を掛けるんだからやっぱり団長が博打打ちなんて面白くもない冗談だ。」

「それに関しては意見の相違がありますね。私は団長は博打打ちだと思います。」

 

巨人研究に関してイルゼはハンジに次いで詳しい。いや、戦闘員としての顔を持たない分ハンジよりも詳しい可能性すらある。その縁でローレよりも団長の近くにいることが多かったのだろう。壁外調査に参加しないからというのもあるかもしれないが、この監視を任されている以上、彼女もまた今回の壁外調査の真の目的を知る一人なのだ。ローレよりも後に入隊したのにも関わらず彼女は団長から百パーセントの信頼を向けられている。

 

「今回の作戦、うまくいくと思うか。」

 

この場なら間違いなく本音を聞けると思い話を振った。

 

「巨人は常に私達の想像を超えてきます。だからうまくいくかなんて分からないですよ。でも一つ言えるのは、エルヴィン団長は巨人の想像を超える手を打てる人です。」

 

後はどちらが相手の想像力を大きく超えれるかの勝負だとイルゼは言った。

 

「想像を超える、か。」

 

巨人の想像を超える手、一周目の記憶を前提とした指示になり定着しない可能性もある、しかしそれでも――

 

 

訳も分からず死ねるといった二人を俺は使うと決めたのだから。




リヴァイ兵長がローレに手を出すのはちょっと解釈違うんですけど、うまい展開が思い浮かばなかったので手を出してもらいました。文才の不足は解釈をゆがめることで補えるのです。これをキャラ崩壊と言います。
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