カプ厨ユミルに目をつけられた   作:三軒過歩

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(2-8)捧げられない心臓

深夜、ウォールシーナを飛び越える。壁の上から見るウォールシーナ、ウォールローゼの街並みは平和そのものだ。トロスト区襲撃があったのはようやく一か月たったところだというのに。

 

私達のすることは壁内の誰にも理解されない、理解できるようにさせてはいけない。マーレの戦士として、島の悪魔から始祖を奪還する。そのために、エレンを奪う。マーレが把握していない巨人の力、始祖と進撃のどちらかの継承者。ウォールマリアを破壊して、トロスト区を破壊してなお、姿を見せない始祖の巨人の強力な手がかりとなるはずだ。彼を奪いマーレに、故郷に、父のいるところに――

 

「そのためなら、違う、そのために私は調査兵を殺す、私達はもう引き返せない」

 

マルコを殺したときから、いや、ウォールマリアを破壊した時から私達に引き返す選択肢などないのだから。

 

 

右翼前方の調査兵が通り過ぎるのを巨大樹の森の上から遠目に見送る。誘導した巨人の群れがばれないよう、事前に森の中に隠れていたが、正解だったようだ。森の近くは索敵が効きにくいため調査兵は基本的には寄り付かない。と、事前にライナーたちから聞いていたのだが、襲撃予定の右翼後方の班はその例外だった。巨大樹の森付近を通っている。

 

(寄り付かないとかそういうわけでもないってわけね。とはいえ右翼後方、エレンまでの最短経路はここから!)

 

最短でエレンを奪取し祖国に帰る。人殺しなんて少ないほうがいいに決まってる。例え滅ぼされる運命だとしてもだ。

 

「―――!」

 

声にならない叫び声をあげて巨人を向かわせる。突然の十体を超える巨人の群れ、動揺に動きが鈍るかと思ったが襲撃した班は思いのほか優秀だったらしい。すぐさま巨人と応戦が始まり、巨大樹の森での戦闘となってしまった。立体物に豊富なこの森は調査兵に圧倒的有利、もちろんその程度の有利はこの物量差では焼け石に水だ。

 

(一人だけ連絡に向かわせたね。連携を取られると厄介だ、先んじて潰す。)

 

 

ミオは煙弾の残り香が薄れていくのを振り返りながら、ひとり馬を走らせ続けていた。

 

四列二班、ラーグ班へ連絡。指示を伝えたら、そのまま合流──

 

ローレ班長の言葉を頭の中で復唱する。

 

(……急がなきゃ。少しでも早く……!。)

 

胸の鼓動が早い。恐怖ではなく、判断の重さに。

 

レイ、リア、タンベムたち頼れる先輩、そしてローレ班長──彼らの背中が視界から遠ざかっていくほど、責任がずしりと肩にのしかかる。

 

(大丈夫。ローレ班なら持ちこたえられる。あの人たちなら……)

 

その思考が、途中で途切れた。

 

ドン……ドン、ドン……!

 

地面の震動。普通の巨人の足音ではない。重い。異様なほど。

 

(……なに?)

 

ミオは反射的に、後ろを振り向く。その視界に大きく映り込む巨人の姿。

 

ズガァンッ!!

 

踏み潰されそうになったのを紙一重でかわす。

 

ミオは息を呑んだ。そこにいたのは他の巨人とは明らかに造形が違う“女性の”巨人。自分たちが知る“巨人”とは別物だった。

 

(……っ、いけない!!)

 

ミオは即座にアンカーを撃ち、立体機動へ入る。馬をはるかに超える速さ、イルゼ先輩に伝えられた巨人とはまるで違う。本能で理解した。これは、ただの巨人じゃない。真正面から戦ったら終わる。情報を伝えることが最優先──!

 

幸いにも打ち捨てられた建物が近くにある。風を切る音を聞きながら、一気に民家の屋根に飛ぶ。馬がはたき飛ばされたのを視界の端にとどめる。

 

(……仕留めたと勘違いさせられた?今のうちに……)

 

そう思った瞬間だった。女型の姿が、ふっと消えた。

 

「……え?」

 

現実には、消えたわけではない。ただ、あまりに速く動いただけだ。次にミオが認識したのは、屋根の瓦が砕け散り、礫のように降る中で──

 

女型が、自分のすぐ横に立っているという事実だった。

 

(はや……っ!)

 

ミオは叫びもせず、反射でアンカーを撃つ。だが女型はミオの軌道を読み、先回りするように腕を振った。

 

バギィッ!!

 

衝撃で体が回転する。立体機動のグリップが手から飛び、腹へ焼けるような痛みが走る。

 

「っ、あ……!」

 

うまく着地できず、壁に叩きつけられた。呼吸が一瞬止まる。それでも立ち上がろうとする。足が震えても、関係ない。

 

(行かなきゃ……!役目を果たさなきゃ……こんな、何の……!)

 

女型がミオの背中に影を落とす。振り返ると、女型はミオを見下ろしていて、視線が交わる。

 

(いや……いやだ……!)

 

ミオは手探りで折れた立体機動の留め具を握りしめる。

 

「ローレ、班ちょ──」

 

言い切る前に、女型の足が振り上げられた。

 

バシュッ!!

 

視界が白く弾ける。感覚が消えるより速く、ミオの体は家にめり込んでいた。そしてそのまま動かなくなった。

 

 

(直接殺した感覚、これをこれから何度も……!)

 

悪魔を殺したことは何度もある。正確には悪魔とそう教えられていた人間をだけれど。本当に悪魔だと思っていた昔と違い、今は知ってしまっている。悪魔と教わったこの人たちが人間であると。

 

(ハハッ!こんなのもう、笑うしかないや。)

 

やめよう。深く考えるだけ心がすり減るだけだ。正気になんていないほうがいいのに。ライナーみたいに狂気にいられれば楽になれるだろうけれど、私はそれもできないみたいだ。

 

 

 

「リーザ班とタンベム班が来るまで持ちこたえる、仕留めろとは言わない。留め続けるぞ!」

 

ミオを送り出した直後、そういって陣形を展開する。巨人は視界の範囲には八体、死角に潜んでいる奴もいるだろうが、四人の視点を合わせれば死角はないと信じ、記憶をたどる。

 

「両端の二体はこちらへの興味が薄い、速攻を仕掛け数を減らせ!」

 

一周目でこちらへの興味が薄かった個体を発見する。巨人の体にアンカーを突き刺したりしなければ注意が向くことはない。一撃必殺で仕留めるぞと班員に指示を出し攻めかかる。

 

ザシュッ!ズドン!

 

鈍い音と共に巨人が二体倒れる。簡単に倒せる巨人はもういない。ここからが本当の戦闘だ。

 

「来るぞ、散開しろ!」

 

倒れた二体を踏み越えるように、巨人たちが一斉に迫る。木々の影が揺れるたびに、視界の端に新たな影がのぞく。

 

「レイ、三時方向を抑えろ! リアは上を──ライブル、左だ!」

「了解ッ!」

「了解!」

 

指示は通る。動きも噛み合っている。先んじて二体の巨人を倒せて一周目よりも条件はいい──その、この場面に存在してはいけない余裕が、今、思考を生む。

 

()()()()()()()()()()()()()()?)

 

一周目において()()()()()()()()()()()()()()()()()女型の巨人は何をしていたのか、なぜ最初から自分たちのところに来なかったのか、その理由が最悪の事態を想像させてしまう。

 

「っ――レイ、そこ危ない!」

 

思考がわずかに揺らいだ瞬間、背後で木が折れる轟音。警告が揺らぎの分一瞬遅れて一本の巨木がレイの軌道に倒れ込んだ。

 

「うわっ──っ!」

 

ぎりぎりでかわしたが、その瞬間、巨人の腕が横から飛び込んでくる。

 

「レイ!」

 

レイが腕で庇うように受け止めるも、骨の軋む音が聞こえた。

 

バギィッ!

 

「ぐ、あああああっ……!」

 

巨人の掌に叩きつけられ、レイの体が木の幹に激突した。立体機動装置が音を立ててひしゃげる。

 

「レイ、離れろ! 動けるか!」

「……っ、すみません、班長……腕が……上がら……っ」

 

右腕が不自然な方向に折れ曲がっている。装置の片側も潰れていた。

 

(まずい──この状況で戦えないのは、死と同じだ、リーザかタンベムの班に預けて撤退させれば……いや無理だ。)

 

ローレは即座に判断する。何が最適な指示か、頭で分かっているのに口を動かせない。

 

「……私はここまでです、班長。私の心臓、ちゃんと使ってください。」

 

リアは振り返らなかった。その声音は、震えも涙も残っている。全く違うはずなのに、

 

「時間を作ってあげる。」

 

ただ淡々と、役割だけを告げた一周目のあの声と重なって聞こえた。

 

次の瞬間、巨人の影が三つ、リアへ一斉に飛び込んだ。

 

「リアッ!!!」

 

叫んでも、もう届かない。巨人たちは競うように腕を伸ばし、そのうちの一体が彼女の胴を掴んだ。引き裂かれるように持ち上げられ喰われた。

 

 

その瞬間、ローレは歯を噛み、腹の奥で何かが切れる音を感じた。

 

(……あぁ、くそっ……! リア……!)

 

 

だが、同時に理解した。これがちゃんと使わないといけないと。十数体の群れの中で、複数体が同時に“食事中”になる瞬間など二度と来ない。来させない。

 

「レイ、ライブル……行くぞ!」

 

返事を待つまでもなく、ローレはリアを喰っている巨人の肩へアンカーを撃ち込んだ。木々を裂く加速。視界が揺れ、喉が焼けるほどの風切り音。食事に夢中で、こちらを見もしない巨人のうなじへ──

 

「……ッ!」

 

ザシュッ!!

 

刃が深く沈む。巨人の体が硬直し、首元から蒸気が噴き上がり、膝から崩れた。

 

一体目。こぼれ落ちたリアをまた巨人が群がる。

 

着地と同時に、ローレは再び跳んだ。リアを巡って争うように身を乗り出していた二体目は、まだ口元を血に濡らしながら、上体を前に垂らしている。

 

「ライブル!」

 

次の標的を示すと、ライブルの動きは淀みない。アンカーを巨木に撃ち、反動で巨人の背へ回り込む。

 

「ッらああああああ!」

 

刀が肩からうなじへ斜めに抜けた。

 

二体目。

 

蒸気の中に飛び降りるその刹那、左側から別の巨人がリアの脚を掴みに伸びていた。外側の巨人は諦めたのか、リアに興味を無くしつつある。

 

「レイ、急げっ!」

「ッ!」

 

レイは気を立て直し、動く。巨人の腕にアンカーを刺し、滑るように腕を駆け上がっていく。腕を登る最中に、巨人はまだリアの残骸を引き寄せようとしている。

 

(レイ……落ち着け……!)

 

動揺を打ち消すように、レイは刃を逆手に持ち替え、首の基部に深々と突き立てた。

 

ザクッ。

 

巨人が痙攣し、倒れ込む。

 

三体目。

 

蒸気が一斉に噴き上がる中、ローレたちは全員が地に降り立った。リアはもう居ない。

だが彼女が喰われて生まれた隙で、確かに三体は倒れた。

 

ローレは息を吐き、再び巨人の群れへ目を向けた。警戒心は完全に元に戻り、巨人との戦闘は続く。

 

(……リア……無駄にはしない。ここからが──)

 

その瞬間だった。

 

「班長ッ! 合流します!」

 

上空から声。リーザ班とタンベム班の影が森の天蓋を裂き、枝葉を飛散させながらローレ班の側面へ飛び込んでくる。

 

「ひどい顔しているところ悪いけど私たちに求めることを教えて。呆然としている暇はないでしょ。」

 

簡潔に、言い切る。少しばかりの焦りを声音に乗せている。その視線は、ローレの背後──森を抜けた先のの“なにか”に吸い寄せられていた。

 

風が逆流したように感じた。木々の葉がざわめき、巨人たちが一瞬だけ動きを止める。

 

 

 

ローレは嫌でも思い出す。一周目、自分を終わらせた元凶、女型の巨人。

 

「キアアアアアッ!!」

 

耳を引き裂くような絶叫が森全体を揺るがせる。全員の視線が声の主に吸い寄せられる。15m級はあろうかという巨人。記憶によればこの後の展開は――

 

「はあ!? 待て! 何の冗談だ!」

 

その声に吸い寄せられるように、周囲の巨人が走り出す。

 

「よほどのことをしない限り興味を向けてこない! 一撃で仕留め時間を稼げ!」

 

ローレがリーザ班とタンベム班も含めた全員に指示を出す。

 

「だとしてもこの数ッ……!」

 

弱音が聞こえる。実際ローレ班が相対していた時は十数体の巨人だったが、あの叫び声に吸い寄せられたのか、最初よりも巨人の数は多い。女型の巨人を倒さなければ永遠と巨人を呼ばれてしまう。前回の記憶を考えれば奴の強さはとびぬけている。やつとの戦い、勝てるのか、最低でも五人、だが残りの七人でこの巨人の群れを抑えきれるはずはない。視界にリアのマントが入り込む。

 

「ッ!」

 

何のために部下を、仲間の班を危険に晒しているのか、兵士の三分の一以上を訳も分からず死なせないためだ。そのためにリーザを、タンベムを、ライブルを、レイを、そしてリアをちゃんと使うと決心した、のに。リアの心臓は、リアの言葉がなければちゃんと使えなかった。俺が、俺だけが責任を負って使わなければならなかった。リーザとタンベムと視線を交わす。女型はこれから森を抜けだし本陣に向かう。だが今、叫びをほかの巨人に届けるためか、女型は森の中に入ってきている。今が最大の好機なのだ。女型を仕留める可能性があるのは今しかない。

 

「女型はローレ班とリーザ、タンベムで処理する!他は任せる。今一度人類に心臓を捧げ何が何でも食い止めろ!」

 

こいつを止める、この場に集まった兵士全員を犠牲にしても。その代わりにこれ以上の犠牲を絶対に出さないために。

 

五人はほぼ同時にアンカーを撃った。鋼索が巨大樹の幹を貫き、力学的に無理のある角度へ身体を引きあげる。高度を取る。そこからしか、女型の相手はできない。

 

「脚を落とす! まず止めろ!」

 

ローレの指示にリーザが応じ、タンベムが突っ込むように低空へ飛ぶ。彼は地表すれすれを滑りながら女型の足首へ斬りかかった。

 

シャキンッ!

 

その斬撃が空を斬る。女型の脚がわずかに蹴り上げるように動き、空気が爆ぜる音がした。

 

「タンベム、離れろッ!」

 

ローレの叫びより早く、タンベムは衝撃波に近い風圧をまともに受け、軌道が乱れたまま大木に叩きつけられた。彼は即座に体勢を立て直そうとしたが、片側の装置が破損して回り続けている。

 

「まだ……まだ動ける……ッ!」

 

無理に高度を戻すが、女型の手が伸びていた。

 

握り潰すような一閃。タンベムの全身が女型の手首から肩までの間で砕かれ、木々に破片のように散った。

 

リーザが喉から絞り出すように声を詰まらせる。

 

「タンッ……!」

 

刃を振るう。こんな状況下でも、彼女は最善を尽くし続ける。

 

(……リーザ……頼む……止まるな……!)

 

ローレは彼女に視線を送り、同時にレイへ合図した。

 

「右側に回り込め! レイ、いけるか!」

 

「やるしか……ないでしょうがッ!」

 

本来五人でやる動き、得られる成果を四人で実現しなければならない。どこかで無理を通す必要があって、可能性が一番高いのがレイだった。アンカーを構え、視界を歪ませながら女型の側頭部へ飛び込む。

 

この一撃が、少しでも効けば──

 

ザシュッ。

 

刃が皮膚を裂いた。しかし女型の反応は速すぎた。

 

レイの身体がつかまれていた。振り払うでもなく、放り投げるでもなく、握り潰さんとしている。

 

「やめろ……離せ……ッ離せぇぇぇ!」

 

ライブルが高度を落とす。間に合わない。女型への叫び声とは裏腹に身体が追いつかなかった。

 

女型は血で汚れた手を振り払うように腕を一閃する。

 

それで終わりだった。

 

怒りで奥歯がきしむ音がする。強さの見積もりが甘かった。報告にあったエレンの巨人と比較にならない。こいつは巨人の体の操り方を、熟知している。

 

(絶対に……絶対に、ここで倒す……!)

 

「ローレ! 指示を!」

 

リーザの声が震えている。だが理性が残っていた。ローレは彼女の声で意識を戻す。

 

「……脚を……脚を切り落とす! 俺とライブルでやる! リーザは背後からうなじを狙え!」

 

「了解!」

 

五人だったはずの隊形が、もう三人しかいない。しかしローレは考える余裕もなく、女型の足へ飛び込んだ。

 

ライブルは既に動き出していた。彼の刃が女型のアキレス腱へ滑り込み、ローレが逆側に斬撃を入れる。

 

「キアアアアアッ!」

 

女型が叫ぶ。斬撃は深い。明らかに効いている。その証拠に女型が膝を落とす。森を揺るがす落下。幹が折れ、地面が跳ねる。

 

(今だ……リーザ、行け!)

 

リーザは狙っていた。女型の背後を取り、うなじへ向かって身体を傾ける。その斬撃が女型のうなじを一閃した。

 

ガキィン!

 

「は?」

 

リーザの持っていたブレードが折れる音がした。その声が誰からでたのかわからない。

 

 

 

その瞬間、女型の肩が震えた。腕が後ろへ伸びたのだ。見えていなかったはずのリーザを、まるで初めから見えていたかのように正確に──

 

「っ!」

 

リーザの腹部が、女型の手刀で貫かれていた。血が霧のように舞った。

 

「リーザッ!!」

 

ローレは叫び、次の刹那にはライブルが叫んでいた。

 

「班長、下がってください!」

 

だが遅い。女型の手が再び振るわれる。ローレはアンカーを撃ち、辛うじてその軌道を逸らした。しかし着地の瞬間、ライブルがローレを庇うように前へ飛び出し──

 

ドン!

 

鈍い音。巨人の掌がライブルの背中を叩き潰した。胸を地面に打ち付けられ、呼吸が一度で止まるほどの衝撃。

 

「……ッ、ぁ……あ……」

 

ライブルは呼吸を取り戻す前に、女型の踵が上から落ちてきた。潰れた音すら、森に吸われて小さく感じた。

 

立体機動装置の音。巨人たちの足音。風を裂く女型の歩み。

 

(なんで……どうして……もっと……なにもできなかった……)

 

気づけばローレは無垢巨人に囲まれていた。後ろを振り向く。リーザ班とタンベム班は全滅していて無垢巨人が増えている。そうか、足への斬撃が上手くいったのはこいつが巨人を呼び出そうとして注意力が散漫になってたからか。

 

(そうだ、硬質化なんて隠し札があるなら俺達なんて脅威でも何でもない。可能性はなかった)

 

「……ごめん……ごめんなさい……俺が……余計なことをしたせいで……」

 

女型が迫る。影が覆いかぶさる。刃が届く距離、息の音が聞こえる距離。ローレはブレードを振ろうともしない。

 

衝撃で世界が白く弾ける。森の音も、血の匂いも、すべてが遠ざかる。ローレは最後に、倒れ伏した仲間たちの姿を探すように目を動かし──

 

そのまま視界が暗転した。




二周目の話は一周目の補完的な役割を持っていたりもします。ローレが一周目の最期に巨人と戦っている間、しばらく女型がいなかったのはミオを始末していたからなんですね。これ以降でも前の周回の補完として書かれることもあるかもしれません。伏線とは違いますが、疑問を持って読んでみてくださいね。
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