カプ厨ユミルに目をつけられた   作:三軒過歩

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(4-1)エレンとの出会い

「人生には三度の大きな転機が訪れるとされている。今がその一つの転機になるだろう。その選択が正しいか間違っているかなんて今はわからない。だけれど、決して後悔するんじゃないよ。例え取り返しがつかないことが起ころうとも。」

 

四度目の説法、捧げた心臓を見届ける、そのために戻ってきた。それがユミルの与えた使命でないとしても俺はそれに意味を見出さないといけない。

 

「……ローレ?」

「ルキア()()、お願いがあります。」

 

様をつけない、それだけでローレが神の子として振舞っていると判断される。

 

「私、いえウォール教はあなたの手足です。存分にお申し付けください。」

 

そうして親と子のような関係は終わりを告げた。

 

 

 

訓練兵になって最初の夕食、キース教官による通過儀礼を唯一必要ないと判断されたローレは二周目の時と同じように好奇の視線にさらされるが、話しかけてくるものもない。だが二周目と違うところもある。それは目の前に座る付き人の存在だ。

 

「何か言いたいことがあるなら何でもお申し付けください。私はあなたの指示を最優先に動きますので。」

「……シアン、なぜあなたがここにいるのですか。」

「あなたが神の子だと分かった以上、シガンシナに一人置くなどとんでもない。あなたは我々ウォール教の導き手なのですから。」

 

声を落とし自分たちにしか聞こえない声量でそういった。

 

「……信仰心が高くて何よりです。」

 

シアンはウォール教の司祭ではない。壁の真実、ローレの特異性、そのほかにも司祭が知るべきことについて完全な理解をしているわけでもない。シアンと似たような立場の人間はいくらでもいるが、それでも因果に導かれるようにローレの付き人として抜擢される。三周目と同じように。

 

「もちろんお邪魔であるというのならば立ち去りますが、命令に忠実な付き人はいて損になることはないと思いますよ。」

「そうですね。あなたが優秀な人物であることは疑っておりません。信頼できる人物であるとも分かっております。ですが、私のウォール教での立場はあまり軽々に明かさないように。」

 

いつ死ぬとも知らない危険に巻き込むことに少し引っ掛かりがないではないが、飲み込もう。三年後に始まる壁内の混乱は始祖の巨人が奪われたことに起因するはずだ。所持することになるエレンと接触しその目的を探る、そのためにシアンは有用だ。

 

 

「それで、エレンの居場所を特定したと。」

 

訓練兵団に所属して一週間、まだ安息日は一日しかないというのに、シアンはその一日でエレンと接触に成功したらしい。

 

「父親が医者だ、という情報からよくもまあ一日で見つけられましたね。この街に医者だって片手で収まらないくらいはいるでしょうに。」

「エレンの父親であるグリシャさんはシガンシナ区でも有名なようで……運が良かったというのもあるのです。顔は見たことがありましたから。」

「シガンシナ区の町医者を、あなたがですか?」

 

シアンも俺と同じくウォールシーナ出身だ。ウォールローゼはもちろん、ウォールマリアの住人と会うことなどあるとは思えなかった。

 

「ええ。私も不思議に思いましたので少し調べました。彼はそこそこの頻度でウォールシーナに出入りしている記録があります。よほど腕のいい医者なのでしょうね。」

 

壁門の入管記録を確認したらしい。裏どりの早いことだ。

 

「ともかくエレンへの接触はいつでもとは言いませんが、苦労なくできるでしょう。彼に会う際は私にもお声がけください。お供いたします。」

 

しかし、ローレは想定よりもさらに早くエレンに会うことになった。

 

 

「危ないよそんなところ。落ちたらどうするのさ」

「そんなドジふまねえよ。それにこの程度の壁超えられなかったら海を見に行くのだってできっこないぜ。」

 

馬術の訓練を終えた帰り道、宿舎に戻ろうとする視界のすみで、壁をよじ登ろうとしている子供の声が聞こえた。訓練所に忍び込もうとしている子供だろうと注意しようと近寄ってみれば、それはエレンだった。偶然か必然か何かしらの運命力が働いているのか、今声をかけるのが正解なのか、考えがまとまらないうちに、決断の時はやってくる。エレンが壁から手を滑らせた。

 

「危ないッ!」

 

ドンッ!

 

「いってえ……」

 

とっさに飛び込んで受け止める。腕を変に突いたみたいだが、大きな怪我からは守れたはずだ。

 

「だから危ないって言ったのに!すいません、大丈夫ですか、お兄さん。」

「俺は大丈夫。やんちゃできるのは子供の特権だが、いつでも守ってくれる大人がいるわけじゃないんだからな。」

「……はい、ごめんなさい、助けてくれてありがとうございます。えっと」

 

ローレだと自己紹介してエレンの様子を見る。少し当たり所が悪かったらしく腕をひねったようだが、数週間もすれば治るだろう。

 

「大丈夫です。少し手首は痛むけど俺の父さんは医者なので。」

「そうか、じゃあ家まで送ってやる。また壁をよじ登られたらたまらない。」

 

……もし、彼が巨人の力の保有者なのであればすぐにでも修復するはずだ。帰るまでの間、けがの様子を見ておきたい。そういう打算もあってローレはエレンに同行を申し出た。

 

「その制服に腕章、訓練兵ですよね。どうして兵士になろうと思ったんですか?」

 

帰りがけ、アルミンにそんなことを聞かれる。エレンも興味深そうに視線をこちらに送ってきた。

 

「世界の平和を守るため、だな。」

 

最初は違った。ただ誰も知らない場所を、壁の外を冒険してみたかったんだ。だが今は違う。使命を果たすために、壁を破壊されないために兵士になる。だが今の回答はエレンにとってはつまらなく感じるだろう。

 

「ここ百年間、ずうっと壁は破られず、平和なままですよ。」

「でも一年後は?二年後は?三年後は破られるかもしれない。」

 

つい三年後というセリフに実感がこもってしまった。引っ掛かりを覚えたようだが、追求まではしないでくれた。そうこうしている間に家の前に着く。

 

「手首、まだ痛む?」

「当たり前じゃん。こんなすぐ治ったら苦労ないっての。」

「エレンはよく無茶するからねえ。」

 

普段の様子も察せられてそして確信する。少なくとも今はエレンは巨人の力を身に宿していない。自覚のある無しにかかわらず、怪我を治したいと願っているなら修復が始まるはずだ。そしてエレンは怪我を治したいと思っているが、修復は始まらない。それは巨人の力がない証だ。

 

「じゃあ、グリシャさんにちゃんと診てもらうんだ。いいね。」

 

最後にそう言い残し訓練所に戻った。

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