「おい、ローレ。聞きたいことがあるんだが。」
「なんだオルオ、改まって。珍しいな、お前が俺に聞きたいことがあるなんて。」
グリシャと接触し数日、訓練兵団卒業を残り半年に控えたころ、オルオに呼び出されて、夜の訓練場に来ていた。
「まあ今日聞きたいのはいつもとは毛色が違うからな。そもそも技術的な話なら俺はお前から吸収できるものは吸い切った自負があるぞ。」
実際、立体機動の成績では俺のが上になった、と自信ありげにつづけた。
「お前、最近やたらとほかの連中にかまうよな。自身の訓練を犠牲にしてまで。」
確信めいた口調だ。
「教官に聞かれたらまずい話だな。お前も共謀していると思われても仕方ない状況だと思わないか。」
「何のために人気のない場所に呼び出したと思ってるんだ。仮に聞かれたとしてどうなる。今期の2トップ、8つの訓練場の中で見ても突出した実力者二人を開拓地送りにするとでも?」
何とか逃げられないかと試みるが、どうやら無理らしい。
「……必要だからやっているだけだ。」
「タンベムやリーザならまだわかる。だが上位十名の当落線上にいるわけでもなく、調査兵を目指すわけでもない奴らに立体機動を教えることが必要とは面白いことを言いやがる。」
混じりっけなしの本音が建て前にしか聞こえない状況だ。
「何の事情もないとは思わない。だが、お前のやっていることは俺に対する裏切りじゃないか。」
「事情を話せ。ほかの誰に隠しても俺にだけは隠すことを許されないはずだ。」
視線が交じり合う。根負けしたのはローレだ。
「半年後、シガンシナ区が巨人による襲撃を受ける。その結果人類はウォールマリアを放棄、人類の二割が死ぬ。」
その言葉は認識されない。
*
「事情を話せ。ほかの誰に隠しても俺にだけは隠すことを許されないはずだ。」
突き刺すようににらみつける。俺はこいつにライバルと認められていなかったのか、成績では常にローレの影を踏み二位。どうやらローレが外れ値で、自分も十分に才能にあふれてると知ったのは8つの訓練場の兵士を集めた合同訓練をしてからだ。こいつに追いすがれるのは俺しかいない。こいつを独りにさせないように俺はライバルとして追いすがれていたはずだ。
「何とか言ったらどうなんだよ!」
「……すまない。」
そう思っていたのは俺だけだったみたいだと数日後に分かった。彼は半年後の卒業を待たず、訓練兵をやめてウォールシーナに出戻りやがった。
*
「ねえ、所属兵科はどうするの?」
シガンシナ襲撃が起こり、地獄を見た。でも俺はその地獄が生ぬるいと思った。訓練兵として費やした二年半の年月、あんな裏切りを受けて、俺はなにか大事なものが壊れたんだろう。あいつが何を考えていたのか、俺は必ず問いただす。そのために俺は―
「憲兵になる。決まってんだろ。それがローレへの最短距離だ。」
もう少し先でループ方法とループからの脱出方法が明かされるのでもうしばらくお待ちください。