転生特典としてゾルトラーク使えるようになったけどなんか世界観違くね?   作:wet

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旧版
第1話


俺は死んだ。

 

正確には、気づいたら死んでいた。

 

信号無視のトラックに、巻き込まれるような形で。ぶつかった瞬間の衝撃とか、痛みとか、そういうのはあんまりなかったな。気づいたときには目の前に、どこまでも広がる真っ白な空間があった。いや、空間っていうのもなんか違うな。真っ白な、ただそれだけの場所。上下左右、どこを見ても白。天井も壁も床もなく、ただ、白。

 

「あー……すまん、すまんね。本当にすまん」

 

唐突に男の声がした。声のする方を見やると、そこに立っていたのはどこかの大学教授みたいな、白髪の初老の男だった。

 

「いや、本当にすまない。私の不手際で君を死なせてしまった」

 

男はそう言って、深く頭を下げた。

 

「え、誰?」

 

俺は状況がまったく飲み込めず、そう尋ねる。

 

「私は、君たちの言うところの『神』というやつだよ。まあ、正確には君が住んでいた世界の管理神の一人だがね」

 

神はそう言って、さらに頭を下げた。

 

「そ、そうなんですか……あの、不手際って?」

 

「うん、そうだね。君は本来、あと60年は生きるはずだった。それが、私の管理システムの不具合でね。君が横断歩道を渡るときに、トラックが信号無視をするというエラーが発生してしまった。いや、本当に、重ね重ね申し訳ない」

 

神様はそう言って、土下座せんばかりの勢いで謝り倒す。

 

「いや、まあ、俺は別にいいんですけど……」

 

俺は困惑しつつ、そう答えた。神様の不手際で死んだなんて正直わりとどうでもいいというか…。両親はすでに他界、独身で毎日仕事行って寝ての繰り返し。未練とか無い。それよりも、俺はこの後どうなるのか?ってことの方が重要だ。

 

「そうか、良かった。君は寛大な心の持ち主だね。しかし、このままでは私も気が済まない。そこでだ。君に、新しい人生を提案しようと思う」

 

神様はそう言って、にこりと笑った。

 

「新しい人生?……もしかして、転生?」

 

俺は思わず、ゲームやアニメでしか聞いたことのない言葉を口にした。

 

「その通り! 転生だ。もちろん、君が住んでいた世界とは違う、ファンタジー世界への転生だ。しかも、転生には特典がある」

 

「特典?」

 

「うん。いわゆる『転生特典』というやつだ。せっかくだから、君の好きな能力を一つ、選ばせてあげよう」

 

神様はそう言って、得意げに胸を張った。

 

俺は少し考えた。転生する世界がファンタジー世界なら、欲しい能力はたくさんある。身を守ったり、敵に攻撃したり…。生産系の能力とかでもいいな。

 

「あの、一つ、質問いいですか?」

 

「なんでも聞きたまえ」

 

「その特典って、どんなものが選べるんですか?」

 

「ああ、それはね。君が今までに見てきた、いわゆる『物語』に出てくる能力の中からランダムで一つ選ばれる。ガチャだね」

 

「……ガチャ?」

 

俺は思わず、聞き返した。

 

「そう、ガチャだ。つまり、君が今までに見てきた物語に出てくる能力の中から、ランダムで一つ君に与えられる。ただし、レアリティが高い能力ほど出る確率は低い。もちろん、はずれだってある」

 

神様はそう言って、にやりと笑った。

 

「よりにもよってガチャ形式かよ…」

 

俺は思わず頭を抱えた。というのも俺はガチャに関していい思い出がない。俺は昔から、くじ運が悪い。宝くじなんてカス当たりの300円しか当たったことないし、ゲームのガチャだって毎回天井まで引く羽目になっている。そんな俺が、人生を賭けたガチャとかさ…。

 

「いや、待ってください。そんなのあんまりじゃないですか?」

 

俺はそう言って、神様に詰め寄った。

 

「そう言うと思ったよ。しかし、こればかりはルールで決まっていることなんだ。すまないね」

 

神様はそう言って、申し訳なさそうに肩をすくめた。

 

「まあでも、君には運がある。君は私に巻き込まれて死んだ。つまり、君は『神に愛された存在』なんだ。きっと、いいものが出るさ」

 

神様はそう言って、俺の背中をポンと叩いた。

 

「いや、そういう問題じゃないでしょ……」

 

俺はそう言ったが、もうどうしようもないらしい。神様は、俺の前にガチャの筐体のようなものを出現させた。ぱっと見は、まるでゲームセンターにあるごく普通のガチャガチャだ。ただ、その中に何が入っているかは分からないが。

 

「さあ、回したまえ。君の新しい人生の扉を開く、運命のガチャだ」

 

神様はそう言って、俺を急かす。

 

俺はため息をつきながら、ガチャのハンドルに手をかけた。

 

回す。

 

ガチャン。

 

カプセルが、コトリと落ちてきた。

 

中に入っていたのは、小さな紙切れだった。俺はそれを拾い上げ、開いてみる。

 

そこに書かれていたのは、たった一言。

 

『ゾルトラーク』

 

「……は?」

 

俺は思わず、間抜けな声を出した。

 

「おお! ゾルトラークではないか! これは大当たりだ! さすがは、神に愛された存在だ!」

 

神様はそう言って、大喜びしている。

 

「いや、ちょっと待って! ゾルトラークって、あのゾルトラークですか?」

 

俺は思わず、神様に尋ねた。

 

「そうだよ。君が知っている、あの『ゾルトラーク』だ。いいじゃないか、あれは強力な魔法だぞ」

 

神様はそう言って、さらに機嫌を良くした。

 

「いや、でも、あのゾルトラークって、人を殺す魔法ですよね?」

 

「ああ、そうだよ。君も知っての通り、『葬送のフリーレン』に登場する貫通魔法の元祖だ。人類に研究され、装備や防御魔法の発展を促した革新的かつ一般化した魔法でもあるね」

 

神様はそう言って、ゾルトラークについて説明してくれた。

 

そう。ゾルトラーク。『葬送のフリーレン』の中で、魔王軍屈指の魔法使いであるクヴァールが生み出した魔法。そして、その凶悪性から大陸中の魔法使いに研究され、防御魔法で防ぐことのできる()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……え、じゃあ、俺はあのゾルトラークを、転生特典として手に入れたってこと?」

 

「その通り! さあ、新しい人生を楽しんでくれ」

 

神様はそう言って、俺の体を光で包んだ。

 

「ちょ、ちょっと待て!これじゃあ俺は「一般攻撃魔法を最初から使える、ちょっと早熟な魔法使い」ってことにしか……」

 

俺の声は、光の中に溶けていった。

 

                ◇◆◇◆◇

 

次に俺が目を覚ましたとき、俺は体にとてつもない違和感を感じた。いや、違和感っていうか、体のサイズが変わったんだ。俺は自分の手を見て驚いた。小さな、小さな、子供の手だ。

 

俺は5歳くらいの幼い男の子になっていた。

 

「あら、起きたの? もう、何度も注意したのに階段で遊ぶからよ。危ないでしょう?」

 

目の前にいたのは、見知らぬ若い女性だった。

 

俺は、その女性の顔に見覚えがないことに戸惑いながら、首をかしげる。

 

「お母さんよ。もう、ぼーっとしてないで。さあ、ご飯よ」

 

女性はそう言って、俺の手を引いた。

 

「……お母さん?」

 

俺は、自分の口から出た、か細い声に驚いた。

 

俺は、彼女に手を引かれながら、リビングへと向かった。そこには、前世の俺と同じくらいの年齢の男がいた。

 

「ああ、目が覚めたか、アーク。ダンブルドアごっこも程々にしておけよ。父さんも心配したんだからな」

 

そう言う男は、俺の父親らしい。

 

「?」

 

いや、ちょっと待て。

 

……ダ、ダンブルドア?

 

そんな特徴的な名前、忘れるはずがない。『ハリーポッター』という小説に登場する老人で、主人公のハリー・ポッターが入学することになるホグワーツ魔法魔術学校の校長である……確かそんな人物だったはずだ。

 

ここは『葬送のフリーレン』の世界じゃないのか?

 

俺は自分の頭を抱えながら考える。

 

いや、待てよ。よくよく周りを見たら、テレビがあるし、冷蔵庫もある。とても中世あたりの文明だとは思えない。

 

それに、あいつ「ファンタジー世界に転生させる」って言っただけで、「どの作品の世界に転生するか」については言及してなかったな。

 

俺は、両親の会話に耳を澄ませる。

 

「ねえ、あなた。アークがもうすぐ、ホグワーツに入学する年になったわね」

 

母親が、そう言った。

 

「ああ、そうだな。もうそんな年齢か……」

 

父親は、そう言ってため息をついた。

 

「もう、あなた。そんなため息つかないで。アークは、あなたみたいに優秀な魔法使いになるわ」

 

母親はそう言って、俺の頭をなでる。

 

俺は、その会話を聞いて、頭の中が真っ白になった。

 

ホグワーツ。

 

魔法使い。

 

「……え?……もしかしてここ、ハリポタ世界?」

 

俺の呟きは、誰にも届かず、静かに部屋の中に溶けていった。

 

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