転生特典としてゾルトラーク使えるようになったけどなんか世界観違くね?   作:wet

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ホグワーツ入学の年齢を勘違いしていたので修正しました。


第2話

(やばい! 完全にやらかした!!)

 

俺がこの世界に転生したのを自覚してから数年。ここホグワーツに入学してから最初の変身学の授業で、俺は死ぬほど焦っていた。

 

なんでだ!? なんでこうなった!?

だって課題は「マッチ棒を針に変える」だけだぞ!? よりによって、そこでゾルトラークぶっ放す奴がどこにいるんだよ!!

 

「…………」

 

教室の空気が凍りついていた。

ざわめきすらない。誰もが口を開けて、俺を凝視している。そりゃそうだ。だって俺が放った一撃は、壁をすっぱりと貫通し、そのまま向こうの廊下にまで穴を空けていたのだから。

……いや、ほんとごめん。別に校舎の改修工事がしたかったわけじゃないんだって!

 

「……ミスター・ウィンドソア?」

 

鋭い声が俺の名前を呼ぶ。

マクゴナガル教授だ。冷たい眼差しが、眼鏡の奥から俺を突き刺す。

はい死んだ。俺のホグワーツライフは入学早々、二話目にして終了しました。ありがとうございました。

 

「い、いやちがうんです! その……杖がですね! ちょっとこう……暴発的な?」

 

必死に言い訳してみる俺。

だが、教授の表情は「言い訳は聞き飽きた」とでも言いたげにピクリとも動かない。

教室の空気がどんどん冷たくなっていくのを肌で感じる。頼むから誰か笑ってくれ! 俺ひとりが吊し上げを食らうこの状況、マジで心臓に悪い!

 

「あ、あれだ! ほら、マッチ棒を針にする変身呪文って、似たような呪文体系で――」

 

「似てなどおりません」

 

秒で切り捨てられた。

いや、知ってるよ!? 知ってるけど、なんとか繋げないと俺の命がマジで危ないんだよ!

心臓がバクバク鳴り、頭が真っ白になる。ああ……俺はまたやってしまったんだ。

 

――っていうか。

 

そもそも俺がこんな魔法を撃てるようになったのって、一体なんでだったっけ?

 

そうだ、あれは……。

 

俺は緊張と焦りでぐちゃぐちゃになった頭を、無理やり過去へと引き戻す。

最初にゾルトラークを手にしたあの瞬間。

気がつけば死んでいて、白い空間で神様に出会って、ガチャを回されて、出てきたのがよりによって凶悪魔法のゾルトラークだった。

 

――そして気づけば、俺はホグワーツに通う子どもになっていた。

 

……そうだ。話はそこから始まるんだ。

 

                ◇◆◇◆◇

 

俺が5歳でこの世界に転生したことを自覚してからの日々は、まさにゾルトラークとの戦いだった。

 

前世で神様と名乗る男に「ゾルトラーク」という、ふざけた特典を与えられてこの世界に転生してから、俺はアーク・ウィンドソアという名の少年として生きてきた。両親はごく普通の魔法使いで、ホグワーツ出身だ。

 

はたして、この世界でゾルトラークは撃てるのか?

 

俺は転生を自覚してからというもの、そのことばかり考えていた。だって、せっかくもらったんだから試してみたいじゃないか。

 

いや、もちろん、試し撃ちなんてできるわけがない。ゾルトラークは人を殺す魔法だ。そんなものを試せるわけがない。俺はゾルトラークについて頭をフル回転させていた。

 

『葬送のフリーレン』の世界で、クヴァールが生み出したというゾルトラーク。この世界でも、呪文を唱えることで魔法が使える。一応杖は必要だが。

 

もしかして、ゾルトラークも呪文を唱えるだけで撃てるのか?

 

俺は誰もいない庭で、こっそりと試してみることにした。

 

最初はただ呪文を唱えてみるだけ。

 

「ゾルトラーク」

 

そう呟いてみても、何も起こらない。当たり前だ。杖もないし、魔力も感じない。

 

次に、俺はイメージしてみた。

 

『葬送のフリーレン』の作中で、クヴァールがゾルトラークを放つシーン。あの、一瞬で物体を貫通させる強力な魔法。

そのイメージを頭の中に描き、呪文を唱える。

すると、手のひらから微かに光が漏れ出す。

 

(おお、すげぇ……!)

 

俺は興奮した。そして、その光を一点に集中させ、思いっきり放つ!

 

「ゾルトラーク!」

 

口にした瞬間、魔力の流れのようなものが全身を駆け巡り、指先から圧縮された光弾が飛び出した。

 

ボンッ! という鈍い破裂音とともに、庭の端に置いてあった植木鉢が粉々になる。

 

「うわっ、マジかよ!」

 

俺は、あまりのことに声を上げてしまった。

本当に撃てた。

しかも、呪文を唱えるだけで。

杖もいらない。

 

俺はゾルトラークが撃てるという事実に、興奮を隠せなかった。

しかし、その興奮もすぐに冷めた。

 

「…って、やべぇぇぇぇ!」

 

俺は全身から血の気が引くのを感じた。

冷静に考えればわかることだった。

未成年が学校外で魔法を使えば、魔法省に感知される。

確か、原作でもハリーが屋敷僕妖精のドビーに魔法を使われて魔法省に感知されたはずだ。

 

俺は庭の真ん中で固まったまま、頭の中で絶叫した。

 

――終わった! 完全に詰んだ!!

 

心臓が爆発しそうなくらい脈打つ。今にも役人が飛んでくるんじゃないかと、庭の門を凝視する。

 

……が、誰も来ない。

 

一分、五分、十分。

それでも何も起こらない。俺はじっと汗をかきながら時間を数え続けた。

 

けれど、結局その日は誰も来なかった。

 

その後も一週間、二週間と過ぎていったが、魔法省の人間が訪ねてくる気配は一切ない。

俺はその間ずっとビクビクしていた。夜も寝つけず、足音がするたびに「ついに来たか!?」と飛び起きる日々だ。

 

……が、一ヶ月たっても、なんの音沙汰もなかった。

 

その頃になって、ようやく俺は冷静になり、考え始める。

 

待てよ。

魔法省の感知ってのは、この世界の魔法体系を前提にしたものだ。

俺が撃ったゾルトラークは、『葬送のフリーレン』の世界でクヴァールが一から開発した、いわば完全オリジナル魔法だ。

体系も詠唱も、この世界の魔術理論とはまるで違う。

 

つまり――魔法省の感知網に引っかかるはずがない。

 

「……あぶなかったぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は布団に潜り込みながら、心の底から安堵のため息を漏らした。

 

そう、俺の魔法はこの世界の「常識」からは完全に外れている。

 

もしそうだとしたら、ゾルトラークは魔法省に感知されない魔法ということになる。

これは、とんでもない能力なのでは?

俺は、ゾルトラークを撃てるという事実に、再び胸を躍らせた。

 

それからというもの、俺は庭の奥でゾルトラークの練習に明け暮れた。

 

魔力の制御、出力の調整、そして何より、無意識に発動させないようにする訓練。

これが一番難しかった。

ちょっとでも集中力が途切れたり、気が緩んだりすると、ゾルトラークが暴発してしまう。

 

だが、俺は前世で漫画やアニメにどっぷり浸かっていた男。

 

どこで聞いたかは忘れたが、「魔法は一つ一つのプロセスを理解して、初めて完璧に制御できる」という言葉を思い出し、俺はゾルトラークを撃つたびに、その魔法陣を脳内で展開し、魔力の流れを調整した。

そうすることで、俺は徐々に、ゾルトラークを制御できるようになっていった。

だが、まだ完璧とは言えない。

 

そんな日々が続き、俺は11歳になった。

 

そしてついに、その日が来た。

 

ホグワーツ入学許可証が、ふくろう便で届いたのだ。

封筒を手にした母親は大喜び。

 

「見て、アーク! あなた、ついに入学よ!」

 

父親は「もうそんな年か……」と妙にしみじみしていた。いや父さん、あんまり寂しそうに言わないでくれよ。こっちはこれから死ぬほど不安なんだから。

 

ホグワーツへの入学を前に、両親に連れられてダイアゴン横丁へ向かう。

オリバンダーの店で杖を選ぶ時、俺は少し緊張した。

「ゾルトラーク」という特殊な能力を持つ俺に、どんな杖が選ばれるのか。

 

オリバンダー老人は、俺の前に何本もの杖を並べた。

どの杖も、俺が触れると、少しだけ光を放つ。

 

「ふむ……不思議な少年だ。君が求める杖は、いったいどんなものだろうか?」

 

オリバンダー老人はそう言って、俺の目をじっと見つめた。

俺は何も言えず、ただ「ゾルトラーク……」と心の中で呟いた。

 

すると、突然オリバンダー老人の背後の棚から、一本の杖が飛び出してきた。

 

「これは……君の杖だ。13インチ、シナの木とユニコーンのたてがみ。きっと君に合うはずだ」

 

オリバンダー老人はそう言って、俺に杖を手渡した。

俺がその杖を握ると、温かい光が俺の体を包み込んだ。

 

「これで、俺も魔法使いか……」

 

俺は嬉しくて、少しだけ泣きそうになった。

 

他にも魔法薬の材料を買ったり、教科書を揃えたり、ローブを仕立てたり。準備は順調に進んだ。

 

そして迎えた入学初日。

キングズ・クロス駅で9と3/4番線に突っ込んだ瞬間は、本当に鳥肌が立った。列車の蒸気、魔法使いたちのざわめき、カラフルなローブ。ああ、本当に俺はホグワーツに行くんだ、と実感する。

 

感動で胸がいっぱいになりながら、列車に乗り込む。

空いている席を探して歩いていると、見慣れた顔がいた。

 

(ハリー・ポッターとロン・ウィーズリーだ!)

 

原作の主人公であるハリー・ポッターと、その親友であるロン・ウィーズリー。

彼らがいるということは、今が原作の始まりだということ。

 

つまり、ヴォルデモートが復活するまであと数年。

俺は内心、頭を抱えた。

 

(まさか、原作と同じ世代だとは思ってなかった……)

 

俺は彼らから離れて、空いている席に座った。

 

「あ、あの!」

 

すると、ハリーが俺に話しかけてきた。

 

「君もホグワーツに行くのかい?」

 

「うん、そうだよ」

 

俺は、ハリーと話すのは避けたかった。

原作に関わると、俺の人生がどうなるか分からない。

 

「そっか! 僕、ハリー・ポッターっていうんだ。よろしくね」

 

「僕は、アークだよ。アーク・ウィンドソア。よろしく、ハリー」

 

俺はハリーと握手をした。

そして、列車がホグワーツへと向かって走り出した。

 

ホグワーツに到着すると、組み分けの儀式が行われた。

俺はハリーたちと同じグリフィンドールに組み分けされた。

 

「やったー! アークもグリフィンドールだ!」

 

ハリーとロン、ハーマイオニーが喜んでくれた。

俺は複雑な気持ちで、彼らと抱き合った。

 

――そうして始まったホグワーツ生活。

俺は心に誓った。「絶対にゾルトラークは使わない。目立たない。波風を立てず、平和に過ごす」

 

……そのはずだったのに。

 

よりによって入学二週目の授業で、俺は盛大にぶちかましてしまった。

 

              ◇◆◇◆◇

 

「……ミスター・ウィンドソア?」

 

冷たい声が、俺の思考を中断させる。

俺は、再び現実に戻ってきた。

目の前には、眉間にシワを寄せたマクゴナガル教授。

そして、俺がぶっ放したゾルトラークによって、壁に空いた穴。

 

「い、いや違うんです! あの、杖がですね、その……! ちょっと調子が悪くて!」

 

俺は必死に誤魔化す。

 

しかし、マクゴナガル教授は首を横に振った。

 

「杖の調子? ミスター・ウィンドソア、あなたの杖は、ホグワーツの生徒の中でも最高級のものです。杖の調子が悪いなどということはありえません」

 

マクゴナガル教授の言葉に、俺は絶望した。

そう、俺の杖は、オリバンダー老人が言った通り、非常に強力なものだった。

杖の調子が悪くなるなんてことは、ありえない。

この世界の常識では、ありえないことだ。

 

クラスの生徒たちが、俺を好奇の目で見る。

なかには、「あいつ、なにかすごい魔法を使ったんじゃないか?」と囁く者もいる。

俺はこのままではいけないと思った。

 

このままでは、俺のゾルトラークが、この世界でバレてしまう。

もし、この世界の誰かにバレてしまったら、俺はヴォルデモートよりも恐ろしい存在として、魔法省に捕まってしまうかもしれない。

 

「先生、本当に違うんです! その……」

 

俺が必死に言葉を探していると、教室の扉がノックされた。

マクゴナガル教授が、扉を開けると、そこにはダンブルドア校長が立っていた。

 

「ミネルバ、少しよろしいか?」

 

ダンブルドア校長は、そう言って、マクゴナガル教授を教室の外に連れ出した。

俺はダンブルドア校長の登場に、内心ホッとした。

これで一時的にでも、この場をしのげる。

 

いや、しかし、ダンブルドア校長が来たということは、俺が明らかに異常な魔法を使っているということに校長が勘付いたってことか?

俺は、ダンブルドア校長の顔を見つめた。

ダンブルドア校長は、俺にニコリと微笑みかけた。

 

俺は、授業が終わるまで、生きた心地がしなかった。

 

授業が終わり、俺は教室を後にする。

廊下を歩いていると、ロンとハーマイオニーが俺に駆け寄ってきた。

 

「アーク、お前、すげえな!」

 

ロンが興奮した声で言った。

 

「マッチ棒を針に変えるどころか、壁に穴を開けるなんて!」

 

ハーマイオニーも、目を丸くして俺を見つめている。

俺は、二人の言葉に、苦笑いした。

 

「いや、違うんだ。あれは、ただの事故で……」

 

「事故なわけないだろ! お前、すごい才能があるんだな!」

 

ロンはそう言って、俺の肩を叩いた。

俺はロンとハーマイオニーの言葉を聞いて、複雑な気持ちになった。

 

俺はホグワーツの廊下を歩きながら、考える。

 

俺はこの力をどうするべきか。

俺はこの世界で、この力とどう向き合っていくべきなのか。

俺は答えが出ないまま、ため息をついた。

 

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