転生特典としてゾルトラーク使えるようになったけどなんか世界観違くね?   作:wet

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忙しくて更新するのをすっかり忘れてました。すんません。お詫びとして今あるストックを全部放出することにします。


第3話

変身術の授業が終わった後、俺は完全に抜け殻になっていた。

魂が口から半分くらい飛び出して、ホグワーツの廊下をゆらゆらと漂っているような感覚。原因は言うまでもない。俺が教室の壁にぶち開けた、綺麗すぎる風穴のせいだ。

 

「なあアーク、あれ、なんていう呪文なんだ?」

 

「すごかったわ!教科書のどこにも載ってないわよね?」

 

隣を歩くロンとハーマイオニーが、興奮冷めやらぬといった様子で矢継ぎ早に質問してくる。やめてくれ。俺のライフはもうゼロなんだ。そっとしておいてくれ。

 

「いや、だからあれは事故だって……杖が暴発しただけだから……」

 

俺は力なく笑い、もはや何度目か分からない言い訳を繰り返す。もちろん、二人が信じているはずもない。ロンは「またまたー!」と俺の肩をバンバン叩き、ハーマイオニーは「杖の暴発であんな綺麗な円形の穴が開くなんてありえないわよ。もっと合理的な説明を求めるわ」と探偵みたいな目で俺を睨めつけてくる。

 

合理的な説明?

あるわけないだろ!「前世で神様のガチャ引いたら『葬送のフリーレン』のゾルトラークが当たって、それをハリポタ世界でぶっ放したら壁に穴が開きました」なんて、誰が信じるんだよ!俺だって信じたくないわ!

 

そんな風に友人からの尋問という名の拷問を受けていると、前方からグリフィンドールの監督生であるパーシー・ウィーズリーが歩いてきた。ロンのお兄さんだ。彼は俺の姿を認めると、少しだけ気の毒そうな顔で近づいてきた。

 

「アーク・ウィンドソアだな?」

 

「は、はい」

 

「ダンブルドア校長がお呼びだ。すぐに校長室へ向かうように」

 

来た。

ついに来てしまった。

死刑宣告だ。

 

パーシーの言葉を聞いた瞬間、俺の周りの空気が凍りついた。ロンとハーマイオニーも、さすがにまずいと思ったのか、心配そうな顔で俺を見ている。

 

「だ、大丈夫よ、アーク。きっと、事情を説明すれば分かってくれるわ」

 

「そ、そうだぜ!お前、悪いことしたわけじゃないし!」

 

二人の慰めの言葉が、逆に俺の心臓を締め付ける。

ああ、終わった。俺のホグワーツライフ、わずか二週間でジ・エンド。退学どころか、アズカバンに送致されるかもしれない。だってそうだろ?入学したての十一歳が、わけのわからん超強力な攻撃魔法を校内でぶっ放したんだぞ。魔法省が黙っちゃいない。

 

「……うん、ちょっと行ってくる」

 

俺は二人に弱々しく手を振ると、幽鬼のような足取りで校長室へと向かった。

廊下の肖像画たちが、ヒソヒソと俺の噂話をしているのが聞こえる。「あの子が壁に穴を開けたっていう……」「なんて恐ろしい……」。やめて!石を投げないで!

 

校長室へ続く、巨大なガーゴイルの石像の前に立つ。

合言葉なんて知らない。どうすればいいんだ?と立ち尽くしていると、ガーゴイルが独りでに横にスライドし、螺旋階段が現れた。ダンブルドアが、あらかじめ細工してくれていたらしい。その気遣いが、逆に怖い。断頭台への階段を、自ら用意してくれているようなものじゃないか。

 

俺は重い足を引きずりながら、螺旋階段を上る。

ガチャリ、と重厚な扉を開けると、そこは不思議な品々で満たされた、広くて丸い部屋だった。 カチャカチャと奇妙な音を立てる銀の機械。歴代校長たちの肖像画。そして、部屋の中央にある巨大な机の後ろに、その人は座っていた。

 

半月型の眼鏡の奥で、青い瞳をきらきらと輝かせている。長く白い髭をたくわえた、世界で最も偉大な魔法使い。

アルバス・ダンブルドア。

 

「やあ、アーク。待っておったよ」

 

ダンブルドアは、俺の姿を認めると、にこやかに微笑んだ。

その笑顔が、死神の微笑みに見えたのは言うまでもない。

 

「どうぞ、そこに座りなさい。レモン・キャンディーはいかがかな?」

 

「い、いえ、結構です……」

 

勧められるがまま椅子に座るが、心臓は今にも破裂しそうだ。レモン・キャンディーなんて食べたら、酸っぱさでショック死してしまう。

 

「さて……ミネルバから話は聞いたよ。変身術の授業で、実に興味深い魔法を使ったそうじゃな」

 

ダンブルドアは、指を組んで俺をじっと見つめる。その目は、まるで俺の全てを見透かしているかのようだ。

ごくり、と喉が鳴る。

 

「あ、あれは!その、事故なんです!杖が、新しくてまだ手に馴染んでなくて、その、暴発してしまって……!」

 

俺は、もはや使い古された言い訳を口にする。 しかし、ダンブルドアは静かに首を横に振った。

 

「ふむ。オリバンダーの店主は、君の杖は『シナの木とユニコーンのたてがみ』、非常に忠実で、持ち主以外の魔法を滅多に受け付けない杖だと言っておった。そんな杖が、持ち主の意に反して暴発するとは、考えにくいことじゃ」

 

秒で論破された。 くそっ、オリバンダーの爺さんめ、余計なことを!

 

「そ、それなら!新しい呪文を試してみたんです!ほら、図書館の禁書の棚にあった、古い本に載ってたやつで……!」

 

俺は咄嗟に次の嘘をひねり出す。そうだ、禁書のせいにすればいい。好奇心旺盛な一年生が、ちょっと悪いことをしてしまいました、テヘペロ☆みたいな感じで乗り切れるかもしれない。

 

「ほう、禁書の棚に?どんな本じゃったかな?わしもホグワーツの蔵書は全て把握しておるつもりじゃが、壁に風穴を開けるほどの魔法が載った本は、記憶にないのう」

 

まただ。また笑顔で嘘を暴いてくる。

この爺さん、人の心を読んでいるんじゃないのか?開心術か?だとしたら、俺の転生者設定まで全部バレてるってことか!?

背中に、滝のような冷や汗が流れる。

もうだめだ。どう言い訳しても、この魔法の正体を説明できない。

 

俺が顔面蒼白で黙り込んでいると、ダンブルドアはふぅ、と一つ息をついた。

 

「アーク。君が使ったあの魔法……あれは、この世界のいかなる魔法体系にも属しておらん」

 

静かだが、有無を言わせぬ響きを持った声だった。

 

「わしにも、魔法省にも、感知できない魔法じゃ。詠唱も、杖の振り方も、そして何より、その魔力の流れが、我々の知る魔法とは全く異質じゃった。……一体、どこでそれを覚えたのかね?」

 

核心を突かれた。

もう、ごまかしは効かない。

俺は観念して、頭を抱えた。どうする?どうすればいい?正直に話すか?「いやー、神様のガチャで当たりまして」なんて、狂人だと思われるだけだ。

 

何か……何か、この状況を打開できる、都合のいい嘘はないのか……!

俺は前世で培った、なろう小説の知識をフル回転させる。

そうだ、あれだ!困った時の、アレしかない!

 

「……拾いました」

 

「ほう?」

 

「道端で、古くて汚い魔導書を拾ったんです」

 

俺は、顔を上げて、必死の形相で訴えた。

 

「その、なんていうか、表紙もボロボロで、何語で書いてあるかも分からないような本で……でも、その、一つの魔法だけ、なぜか図解でやり方が描いてあって……好奇心で、つい……」

 

我ながら、苦しすぎる言い訳だ。だが、もうこれしか思いつかない。

 

「その本は、怖くなってすぐに捨てました!どこに捨てたかも覚えてません!本当です!信じてください!」

 

俺は、ほとんど半泣きになりながら、そう叫んだ。

これでダメなら、もうアズカバン行きを覚悟するしかない。

 

俺の必死の訴えを聞いたダンブルドアは、しばらくの間、黙って俺の顔を見つめていた。半月型の眼鏡の奥の瞳が、何を考えているのか全く読めない。

数秒が、数時間にも感じられた。

 

やがて、ダンブルドアは、ふっと口元を緩めた。

 

「……そうか。それは、さぞかし危険な魔導書じゃったんじゃろうな。見つけてすぐに捨てたのは、賢明な判断じゃ」

 

え?

信じた?信じたのか?

俺は、あまりに予想外の反応に、呆気にとられて口を開けたまま固まってしまった。

 

「しかし、アーク」

 

ダンブルドアは、続ける。その表情は、先ほどまでの柔和なものから一転して、真剣なものに変わっていた。

 

「君が使った魔法は、計り知れないほどの力を秘めている。使い方を誤れば、君自身を、そして周りの人々を、取り返しのつかない危険に晒すことになるじゃろう」

 

「……はい」

 

「わしは、君に退学しろとは言わん。君の好奇心は、優れた魔法使いになるための大切な資質じゃからな。じゃが、一つだけ約束してほしい」

 

ダンブルドアは、俺の目をまっすぐに見つめて言った。

 

「二度と、あの魔法を軽々しく使ってはならん。もし、万が一……また道端で同じような魔導書を『拾って』しまい、どうしてもその魔法を使わなければならない時が来たら……その時は、必ずわしに相談すると」

 

「……え?」

 

「いいかな?」

 

ダンブルドアは、悪戯っぽく片目を瞑った。

その瞬間、俺は理解した。

この校長、俺が嘘をついていること、全部お見通しだ。

その上で、俺の力を危険視しつつも、同時にとてつもない興味を抱いている。だから、完全に禁止するのではなく、「自分の監視下に置く」という選択をしたんだ。

 

なんて食えない爺さんなんだ……!

 

「……わかりました。約束します」

 

俺は、頷くしかなかった。

全身から力が抜け、椅子に深く沈み込む。

とりあえず、退学もアズカバン行きも免れたらしい。

 

「よろしい」

 

ダンブルドアは満足そうに頷くと、再びいつもの人の好い校長の顔に戻った。

 

「では、話は以上じゃ。もう寮に戻ってよろしい。ああ、そうだ。帰りにレモン・キャンディーを一つ、持っていくといい。疲れた頭には、甘いものが一番じゃ」

 

俺はふらふらと立ち上がり、校長室を後にした。手には、いつの間にか握らされていたレモン・キャンディーが一つ。

ガーゴイルの石像の前まで戻ってきたとき、俺はへなへなとその場に座り込んでしまった。

 

「……あぶなかったぁぁぁぁぁ!!」

 

心臓が、まだバクバクと音を立てている。

生きた心地がしなかった。ダンブルドアとの対話は、トロールと戦うよりよっぽど疲れる。

 

だが、とにかく、最悪の事態は避けられた。

俺は、固く、固く心に誓った。

もう二度と、絶対にゾルトラークは使わない。どんなことがあっても、封印するんだ。この力は、あまりにも危険すぎる。

 

そう誓ったはずなのに。 この後、俺がその誓いを何度も破ることになるのを、この時の俺はまだ知らなかった。

 

寮に戻ると、談話室で待っていたハリーとロンが駆け寄ってきた。

 

「アーク!大丈夫だったか!?」

 

「退学にならなかったか?」

 

「ああ、なんとかね……。ちょっと、お説教されただけだよ」

 

俺がそう言って笑うと、二人は心底ほっとしたような顔をした。

しかし、ロンはすぐにニヤニヤしながら聞いてきた。

 

「で?結局、あの魔法はなんだったんだ?ダンブルドアにはなんて説明したんだよ?」

 

「それは……秘密」

 

俺がそう言って人差し指を口に当てると、ハリーとロンは顔を見合わせ、さらに興味をそそられたような顔をした。

やめてくれ。そんな期待に満ちた目で見ないでくれ。俺はすごい魔法使いなんかじゃない。ただの、うっかり極太ビームを暴発させちまう、しがない転生者なんだから……!

 

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