転生特典としてゾルトラーク使えるようになったけどなんか世界観違くね?   作:wet

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ストックはこれで最後です。また書き溜めねば…


第6話

トロールを上半身ごと消し飛ばし、ホグワーツの壁に新たな窓(直径二メートル)を増設してしまったあの日から、俺の胃は本格的に限界を迎えていた。

マクゴナガル先生からは「グリフィンドールに50点!……ですが、罰則としてフィルチのトロフィー磨き一ヶ月分です!」という、アメとムチにも程がある処罰を受け、スネイプ先生からは蛇のようにねっとりとした視線で監視され、そしてダンブルドア校長からは、なぜかフクロウ便で大好物のレモン・キャンディーが一袋まるごと送られてきた。怖すぎる。完全に「見てるぞ」という無言の圧力だ。

 

そんなわけで、俺はすっかり人間不信と胃痛のスパイラルに陥っていたのだが、季節は無情にも巡り、ホグワーツは初めてのクィディッチの試合の日を迎えた。

グリフィンドール対スリザリン。

因縁の対決に、城全体が朝から異様な熱気に包まれている。

 

「行こうぜ、アーク!史上最年少シーカーのデビュー戦だ!」

 

ロンが俺の肩を組み、興奮気味にまくし立てる。

ハリーは、例の飛行訓練での一件(ネビルの箒を俺が粉砕したやつ)がきっかけで、特例として一年生ながらシーカーに大抜擢されたのだ。

原作知識がある俺からすれば当然の流れだが、実際に目の当たりにすると、やはり胸が熱くなる。

 

観客席は、両寮のシンボルカラーである赤と緑で埋め尽くされていた。

「頑張って、ハリー!」と書かれた横断幕を掲げるハーマイオニー。双子ウィーズリーの応援合戦。鳴り響くホーンの音。

ああ、これだ。これぞホグワーツ。

俺は胃の痛みを忘れ、一人の観客として、このお祭り騒ぎに心を躍らせていた。

 

試合が始まると、ハリーは期待以上の活躍を見せた。

最新鋭の箒ニンバス2000を巧みに操り、スリザリンのチェイサーを翻弄し、ブラッジャーを華麗にかわす。その姿は、まさに天才シーカーそのものだった。

 

「すごいぞ、ハリー!」

「いけー!」

 

グリフィンドールの応援席が、割れんばかりの歓声に包まれる。

このままハリーが金のスニッチを捕まえれば、グリフィンドールの勝利は目前だ。

俺も、思わず拳を握りしめて試合の行方を見守っていた。

 

その時だった。

 

ハリーの乗るニンバス2000が、突然奇妙な動きを始めた。

まるで獰猛な馬のように激しく揺れ、ハリーを振り落とそうと暴れ出したのだ。

 

「どうしたんだ!?」

観客席がどよめく。

ハリーは必死に箒にしがみついているが、その顔は苦痛に歪んでいた。箒に呪いがかけられているのだ。

 

「見て!スネイプよ!」

 

隣でハーマイオニーが叫んだ。

彼女が指差す先、教師陣の観客席では、スネイプ先生がハリーを睨みつけ、何事か呪文をぶつぶつと唱えていた。

 

「スネイプがハリーに呪いをかけてるんだ!」

ロンが怒りに声を震わせる。

ハーマイオニーは「なんとかしなきゃ!」と言うと、スネイプのローブに火をつけるため、観客席を駆け下りていった。

 

原作通りの展開。

だが、俺は知っている。

犯人は、スネイプじゃない。

 

俺は、ハーマイオニーとは逆の方向に視線を向けた。

そこにいたのは、ターバンを巻いたクィレル先生。彼もまた、ハリーをじっと見つめ、誰にも聞こえない声で呪文を唱えていた。その目は、いつもの気弱な様子とはかけ離れた、冷酷な光を宿している。

 

(……あいつだ)

 

間違いない。

このままでは、ハリーは箒から振り落とされてしまう。

ハーマイオニーがスネイプの気を引くのが先か、ハリーの握力が限界を迎えるのが先か。

そんな賭けに、友人の命を預けるわけにはいかない。

 

ダンブルドアとの約束が、またしても脳裏をよぎる。

『軽々しく使ってはならん』

 

……ああ、分かってるさ。

だから、今度は軽々しくなんて使わない。

慎重に、繊細に、誰にも気づかれないように、ピンポイントで終わらせる。

 

俺は、騒ぎに紛れてそっと席を立った。

そして、観客席の柱の陰、誰からも死角になる場所に身を隠した。

 

(落ち着け……俺……)

 

俺は、トロールとの一件以来、夜な夜な寮のベッドの中で、ゾルトラークの出力調整のイメージトレーニングを繰り返していた。

あの時は、恐怖に任せて最大出力でぶっ放してしまったが、本来、魔力とはもっと精密に扱えるはずだ。フリーレンだって、ゾルトラークを自在に操っていたじゃないか。

 

狙うは、クィレル先生本人じゃない。

彼が呪いをかけている、その杖だ。

 

(最小出力……針の穴を通すようなイメージで……魔力を収束させて……弾速は最大……!)

 

俺は、深呼吸を一つすると、右手の指先を、そっとクィレル先生の方向に向けた。

距離は、およそ50メートル。

風の音、観客の悲鳴、全てが遠のいていく。

俺の意識は、クィレルが持つ一本の杖だけに、極限まで集中していた。

 

「……ッ!」

 

声にならない気合と共に、俺は魔力を解放した。

指先から放たれたのは、もはや光として認識できないほどの、極小の魔力の弾丸。

それは、音もなく、空気抵抗すら無視するかのように、一直線にクィレルへと飛翔した。

 

次の瞬間。

 

パキンッ!

 

という、非常に乾いた、小さな音が響いた。

それは、大歓声にかき消されて、おそらく誰の耳にも届かなかっただろう。

 

クィレル先生が、小さく「ひっ」と悲鳴を上げた。

彼が手にしていた杖が、真ん中から綺麗に、ぽっきりと折れていたのだ。

いや、折れたというよりは、まるで鋭利な刃物で切断されたかのように、その断面は滑らかだった。

 

杖を失ったことで、呪いは即座に解かれた。

ハリーのニンバス2000は、ぴたりと暴走を止め、安定を取り戻す。

 

何が起こったのか分からず、呆然とするハリー。

そして、自分の手の中で無残な姿になった杖を見つめ、顔面蒼白になっているクィレル。

 

その一瞬の隙を、ハリーは見逃さなかった。

彼は体勢を立て直すと、猛スピードで急降下。

そして、まるで何かを吐き出すような仕草をしたかと思うと、その口の中から、羽の生えた黄金のボール……金のスニッチが、ぽとりと手のひらに落ちた。

 

「ハリー・ポッターがスニッチを捕らえた!グリフィンドール、170対60で勝利!」

 

リー・ジョーダンの実況が、競技場全体に響き渡る。

一瞬の静寂の後、グリフィンドールの応援席は、地鳴りのような大歓声に包まれた。

 

俺は、そっと柱の陰から抜け出し、何食わぬ顔で歓喜の輪に加わった。

「やったな、ハリー!」と叫びながら、内心では冷や汗が止まらなかった。

 

(……完璧だ)

 

誰にも気づかれていない。

被害は、クィレルの杖一本のみ。

これ以上ないくらい、スマートな解決方法だったのではないだろうか。

俺は、自分の成長に、少しだけ胸を撫で下ろした。

 

その時だった。 群衆の向こう側、教師陣の席にいるダンブルドア校長と、ふと目が合った。

彼は、いつものようににこやかに微笑んでいた。

そして、俺に向かって、ゆっくりと片目を瞑ると、手に持っていたシェーベット・レモンを、くいっと掲げてみせたのだ。

それは、まるで「見事じゃったな」と、祝杯をあげているかのようだった。

 

―――ゴクリ。

 

俺の喉が、大きく鳴った。

全身の血の気が、サーッと引いていくのが分かった。

 

(……バレてる)

 

全部、この爺さんには、全部お見通しなんだ。

俺が柱の陰でこそこそやっていたことも、杖だけをピンポイントで破壊したことも、全て。

 

「うおおお!アーク!お前もだ!」

 

勝利の興奮で我を忘れたフレッドとジョージに、俺はハリーと一緒に担ぎ上げられた。

グリフィンドールの生徒たちにもみくちゃにされながら、俺は空を仰いだ。

 

 

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