転生特典としてゾルトラーク使えるようになったけどなんか世界観違くね?   作:wet

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この辺りうろ覚えなんで間違ってるところが多々あるかもしれないけど許して


第7話

クィディッチの試合で、俺がクィレルの杖を観客席から狙撃したあの日から数週間。ホグワーツはすっかりクリスマス休暇ムードに包まれていたが、俺の心は一向に晴れなかった。

ダンブルドアに一挙手一投足を監視されているという事実が、常に鉛のように俺の胃にのしかかっていたからだ。もはや慢性的な胃痛は俺の持病と化していた。

 

そんなある夜、グリフィンドールの談話室で暖炉の火にあたっていると、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が、神妙な顔で俺の元へやってきた。

 

「アーク、話があるんだ」

 

ハリーの真剣な眼差しに、俺は嫌な予感しかしない。

頼むから、もうこれ以上面倒ごとを持ってこないでくれ。俺の胃は、もうペラペラの紙みたいなんだ。

 

「スネイプが、賢者の石を盗もうとしてる」

 

ハリーは、声を潜めてそう言った。

曰く、スネイプはクィレルを脅して石の守りを突破させようとしている。そして、今夜にもそれを実行するつもりらしい。ダンブルドア校長が魔法省に呼び出されて不在の今夜が、絶好の機会だからだ、と。

 

(……来たか、原作クライマックスイベント)

 

俺は内心で天を仰いだ。

賢者の石。ニコラス・フラメル。三頭犬のフラッフィ。

原作知識がある俺は、彼らの話を聞きながら、これからの展開を正確に予測できていた。

そして、その予測は、俺に「全力で逃げろ」と警告を発していた。

 

「だから、僕たちで石を守るんだ!」

 

ハリーは、正義感に燃える目でそう宣言した。

ロンも「スネイプなんかに渡してたまるか!」と拳を握りしめている。

ハーマイオニーも、不安そうな顔をしながらも、固く頷いていた。

 

そして、三人の視線が、一斉に俺に注がれる。 その目は、こう語っていた。

「お前も来るよな?」と。

 

断る。

断固として断る。

俺はモブだ。主人公たちの冒険に、俺みたいな規格外の爆弾が混じっていいわけがない。

俺は、首を横に振ろうとした。

 

「アークの、あのすごい魔法があれば、きっと大丈夫よ!」

 

ハーマイオニーが、キラキラした目で俺を見つめる。

やめてくれ。その純粋な信頼が、俺の胃を抉る。

トロールを消し飛ばし、箒を粉砕したあの魔法のことだろう。あれは、そんな便利な代物じゃない。制御をミスれば、賢者の石ごとホグワーツを半壊させかねない危険物なんだぞ。

 

「そうだぜ、アーク!お前がいれば百人力だ!」

 

ロンが、俺の背中をバンと叩く。 その衝撃で、俺の胃から「ぎゅるる」と悲鳴が上がった。

 

ああ、もう。

俺に、拒否権はないらしい。 こうして俺は、半ば強制的に、賢者の石防衛隊(メンバー四名)の一員にさせられてしまったのだった。

 

その夜、俺たちはハリーが持つ透明マントに隠れ、談話室を抜け出した。

向かうは、三階の立ち入り禁止の廊下。

そこには、賢者の石を守る最初の番人、三頭犬のフラッフィがいるはずだ。

 

扉の前にたどり着くと、中から唸り声の代わりに、穏やかな寝息と、優しい竪琴の音色が聞こえてきた。

どうやら、クィレル(ハリーたちはスネイプだと思っているが)が、すでに魔法の竪琴でフラッフィを眠らせて、先に進んだ後らしい。

 

俺たちは、そっと扉を開け、眠っている巨大な三頭犬の脇を、抜き足差し足で通り抜ける。

そして、床に設置された活板扉を開け、暗い穴の中へと飛び込んだ。

 

どん、という衝撃と共に、俺たちは柔らかい何かに着地した。

ひんやりと湿った、植物の感触。

 

「うわっ、何だこれ!」

 

ロンが叫んだ瞬間、俺たちの体に、無数の蔓が絡みついてきた。

悪魔の罠(デビルズ・スネア)だ。

 

「動いちゃだめ!悪魔の罠よ!動けば動くほど、きつく締まってくるわ!」

 

ハーマイオニーが叫ぶ。

彼女は冷静に杖を取り出すと、呪文を唱えた。

 

「ルーモス・ソレム!」

 

杖の先から、太陽のような眩い光が放たれる。

悪魔の罠は、光と熱を嫌う。光を浴びた蔓は、まるで焼けるように縮こまり、ハーマイオニーの体を解放した。彼女は無事に地面に着地する。

 

「みんな、落ち着いて!光よ!」

 

ハーマイオニーが叫ぶが、ハリーとロンはパニックに陥り、もがけばもがくほど蔓にきつく締め上げられていた。

俺も、もちろん例外ではない。

 

(やばいやばいやばい!息が!苦しい!)

 

暗闇と、体に絡みつく不気味な感触、そして徐々に奪われていく呼吸。

高所恐怖症に加えて、閉所恐怖症と暗所恐怖症の気がある俺にとって、この状況は地獄そのものだった。

パニックで、頭が真っ白になる。

 

ハーマイオニーが、俺たちを助けようと、もう一度呪文を唱えようとしているのが見えた。

だが、俺の理性は、それよりも早く限界を迎えた。

 

(こんなところで死んでたまるか!)

 

ダンブルドアとの約束?知るか!

力の制御?できるか!

今は、ただ、この苦しみから解放されたい!

 

やるぞ俺は!やってやる!!

 

「―――ゾルトラーク!!」

 

俺が、もはやヤケクソで叫んだ呪文は、呪文というよりは断末魔に近かった。

次の瞬間、俺の全身から、黄金の魔力が爆発した。

それは、光の奔流となって、悪魔の罠を根こそぎ焼き尽くす。

 

ゴオオオオッ!という轟音と共に、部屋全体が灼熱の光に包まれた。

俺たちに絡みついていた蔓は、一瞬で灰と化し、俺たちは数メートル下の石の床に、ドサドサと落下した。

 

「……いった……」

 

尻餅をついた痛みで、俺は正気を取り戻した。

見渡すと、部屋は煙で充満し、焦げ臭い匂いが立ち込めている。

そして、先ほどまで悪魔の罠が生い茂っていた場所は、黒く焼け焦げた巨大なクレーターに変わっていた。

 

「……アーク……あなたねぇ……」

 

ハーマイオニーが、呆れ果てたような、非難するような声で俺の名前を呼んだ。

ハリーとロンは、口をあんぐり開けて、ただクレーターを見つめている。

 

「いや、その、不可抗力で……」

 

俺の言い訳は、誰の耳にも届かなかった。

胃が、また一つ、大きな悲鳴を上げた。

 

気を取り直して、俺たちは次の部屋へと進んだ。

そこは、高い天井から、何百羽もの羽の生えた鍵が飛び交っている、広大な部屋だった。 部屋の反対側には、古めかしい木製の扉がある。

 

「見て!箒だ!」

 

ハリーが、部屋の隅に浮かんでいる一本の箒を指差した。

 

「あの鍵の中に、一つだけ羽が傷ついた古い鍵があるはずだわ!それを捕まえて、扉を開けるのよ!」

 

ハーマイオニーが、興奮気味に解説する。

なるほど、フリットウィック先生らしい、繊細な魔法の罠だ。

ハリーが、天才シーカーの腕を見せる見せ場でもある。

 

ハリーは、自信に満ちた顔で箒にまたがると、空へと舞い上がった。

彼が、無数の鍵の中から、目的の鍵を探し始める。

 

俺は、それを下から見上げながら、考えていた。

(……いや、待てよ?)

 

目的は、なんだ?

あの扉を開けて、先に進むことだ。

鍵を捕まえるのは、あくまでそのための手段であって、目的じゃない。

つまり、扉が開きさえすれば、別に鍵なんてどうでもいいんじゃないか?

 

俺の思考は、どんどん常識から逸脱していく。

胃痛とストレスが、俺の判断力を著しく低下させていた。

 

(そうだ……なんでわざわざ、あんな面倒なことを……)

 

俺は、ふらふらと扉に近づくと、その巨大な鍵穴をじっと見つめた。

そして、そっと右手の指先を向ける。

 

(出力は最小……狙うは、鍵穴の内部機構のみ……)

 

クィディッチの試合での成功体験が、俺を大胆にさせていた。

俺は、ハリーたちが鍵探しに夢中になっている隙に、極小のゾルトラークを、音もなく放った。

 

―――カチリ。

 

非常に小さな金属音がして、重厚な扉の錠が、内側から弾け飛んだ。 そして、ギィィ……と、古びた蝶番の音を立てながら、扉がゆっくりと開いていく。

 

「え?」

 

空中で鍵を探していたハリーが、間の抜けた声を上げた。

ロンとハーマイオニーも、突然開いた扉を見て、目を丸くしている。

 

「……開いたな。行こうぜ」

 

俺は、何食わぬ顔でそう言うと、さっさと扉の向こうへと歩き出した。

 

「ちょ、ちょっとアーク!どうやったのよ!?」 「パズルを解いてないじゃない!」

 

背後でハーマイオニーが抗議の声を上げているが、俺は聞こえないふりをした。

パズル?ああ、解いたさ。「施錠された扉」というパズルを、最も効率的な方法でな。

 

そして、俺たちがたどり着いた最後の部屋。

そこは、床が市松模様になった、巨大なチェス盤の部屋だった。

俺たちの行く手には、人間ほどの大きさの、石でできたチェスの駒たちが、ずらりと並んで俺たちを待ち構えていた。

 

「……魔法使いのチェスだ」

 

ロンが、ゴクリと喉を鳴らした。

彼は、この中で唯一のチェスの達人だ。

 

「僕たちが駒にならなきゃ、向こう側へは行けないみたいだ。僕がナイトになる。ハリーはビショップの空きマスに。ハーマイオニーはクイーンの隣のルークだ。アークは……そこのポーンで頼む」

 

ロンは、的確に指示を出す。

彼の目は、もはや遊びではなく、真剣な戦略家のものだった。

これは、彼の見せ場だ。俺は大人しく、ポーンとして彼の指示に従おう。そう、心に決めた。

 

ゲームが始まり、ロンの巧みな采配で、俺たちは順調に敵陣へと進んでいく。

しかし、敵の駒も容赦がない。

俺たちの駒が取られるたびに、石の駒は、味方の駒を無慈悲に打ち砕いていく。

 

そして、ついに、勝負を決定づける局面が訪れた。

ロンは、苦渋の表情で、自らが犠牲になる作戦を立てた。

 

「僕が、クイーンの前に出る。そうすれば、ハリー、君がキングにチェックメイトをかけられる」

「だめだ、ロン!」

「チェスは、時に犠牲が必要なんだ!」

 

友の自己犠牲。熱い展開だ。

原作でも、ここは屈指の名シーンだった。

俺は、固唾を飲んで彼らのやり取りを見守っていた。

 

……はずだった。

 

(……いや、長くないか?)

 

ロンの覚悟。ハリーとハーマイオニーの葛藤。

それは、確かに感動的だ。

だが、俺の胃は、もう限界だった。

一刻も早く、この状況を終わらせて、暖かいベッドで眠りたい。

それに、よく考えたら、なんでチェスで負けたら死ななきゃいけないんだ?理不尽じゃないか?

 

俺の思考は、またしても、あらぬ方向へと暴走を始めた。

 

(そもそも、なんでこいつらのルールに従って、律儀に一マスずつ進んでるんだ?)

 

目的は、向こうの扉に行くことだ。

チェスに勝つことじゃない。

 

俺の中で、何かが、ぷつりと音を立てて切れた。

 

「……みんな、ちょっと下がっててくれ」

 

俺は、静かにそう言った。

俺のただならぬ雰囲気に、三人は戸惑った顔で俺を見る。

 

「アーク?何を……?」

 

俺は、彼らの言葉を無視して、一歩前に出た。

そして、目の前に立ち塞がる、巨大な石の駒たちを、冷たい目で見据えた。

 

「……チェックメイト」

 

俺がそう呟いた瞬間。

俺の右手から、扇状に、黄金の閃光が迸った。 それは、もはや一本のビームではない。

全てを薙ぎ払う、破壊の嵐だった。

 

ゾルトラーク・アウセーレ(広範囲殲滅魔法)

 

俺が、イメージトレーニングの中で編み出した、対軍勢用の応用技だ。

もちろん、口から出まかせの技名である。

 

黄金の光は、チェス盤の上を薙ぎ払った。

敵のクイーンも、ビショップも、ナイトも、ルークも、ポーンも、全てが光の中に飲み込まれ、一瞬で塵と化す。

 

ただし、俺は一体だけ、手加減して残しておいた。

敵陣の奥に鎮座する、キングの駒だけは。

 

光が収まった時。

そこには、ただ一人、ぽつんと玉座に座り、ガタガタと震えているキングの駒と、その向こうにある扉へと続く、だだっ広い、何もない空間が広がっていた。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

ハリー、ロン、ハーマイオニーは、完全に言葉を失っていた。

特に、命を懸ける覚悟を決めていたロンは、口をパクパクさせて、まるで金魚のようだった。

 

「……ほら、これでキングは詰み(チェックメイト)だろ?道も開いたし、行こうぜ」

 

俺は、そう言って、がらんどうになったチェス盤を、さっさと歩き始めた。

背中に突き刺さる、三人の視線が、痛い。

すごく、痛い。

 

「情緒がないわ……!」

 

遠くで、ハーマイオニーの泣き声が聞こえた気がした。

 

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