真夏の太陽できらめいている海。家族連れやカップルなどが多く往来している中、行幸はビーチテントの中にいた。
(まだか…)
傍から見ても分かるぐらいに緊張しながら待っている行幸。何故こうなったのか、それは数日前の事…
「PRフォトモデル?」
普段からよく連絡を取り合っている二人は、この日も最近の事について話していたのである。
「そう、クラウンさんから頼まれてね。これが結構大変だったんだよね」
「よく分からんが、お疲れ~」
「ホントにそう思ってる?」
「てか、PRって具体的に何するんだ?」
「えっと、リゾート施設を楽しんでいる様子?とかかな。シュヴァルさん達と一緒に水着で撮影したり…」
その時、つい心の声が漏れ出てしまう。
「へぇー、水着か…」
「…もしかして水着、気になるの?」
「…いや、別に?」
嘘である。ホントはとても見てみたいのである。しかし、流石に思春期の男子が幼馴染とはいえ女子の水着が見たいとは口に出せるはずがない。
「ホントに?実は見たいんじゃないの?」
「い~や、全然。まぁ?シオンがどーしても見せたいって言うなら…」
「ふ~ん。じゃあ、今度の休みに海、行く?」
「……え?」
という事で冒頭の場面に行きつくのである。これは自分から発破かけた結果ではあるが、普通なら羨ましがられる状況だった。けれども行幸自身は緊張の方が勝っていたのである。
それは女子と一緒に海やプールに来たことがなかったのである。もちろん、男友達とは何度も遊んだことがあるが、今回は
「それにしても、なんか遅いな…」
この時、テントで待ってから、すでに30分は経っており、集合時間はとっくに過ぎていた。行幸自身はそこまで時間に厳しい訳ではなかったが、今日だけは時間が経つほど、緊張が高まっていたので早く来てほしい気持ちが強かったのである。
「…とりあえず深呼吸して…平常心、平常心…」
自分に言い聞かせるようにつぶやいていると、
「お~い!ゆっくん!」
振り返ると、そこには水着姿…ではなく上にパーカーを着ていた。
「遅くなってごめん!更衣室に全然入れなくて、時間掛かっちゃった」
「…そ、そうか。それは仕方ない…な」
それから二人は海に潜り、シジミを集め、海の家で一緒に食事をとるなど、遊べるだけ遊び尽くした。少しもやもやしていた行幸も、なんだかんだで楽しむことが出来た。そうこうしているうちに日暮れになり、二人は砂浜に腰かけていた。
「ねえ、ゆっくん」
「ん?」
「今日は楽しかったね」
「そうだな。久しぶりのバリやんとシジミ対決、楽しかったぜ」
「じゃあ、思い残すことはないの?」
「まあ、あるとすれば水着が見たかったぐらい…」
「ふ~ん」
シオンの返事でふと我に返り、自分の言った事に恥ずかしくなり、夕日と同じ色に顔を染める行幸。それを横目にシオンは、
「それじゃあ、10秒だけ目をつぶって」
「え?」
「いいから」
言われたとおりに目をつむる行幸。そして10秒後、目を開けると、そこには水着姿のシオンが立っていた。
「じゃーん!!どうでしょう!!」
感想を求めるシオンだったが、問いかけられた方は唖然として固まっていた。
「ちょっと何か返事くらい…」
「…ぃ」
「え?」
「その…凄く綺麗で…ゕゎぃぃ…です」
もじもじとした声で話す行幸。その返事に今度はシオンの顔が夕日色に染まった。
「おい、バリやんまで恥ずかしくなるなよ!」
「だって!ゆっくんが…か、かわいいって言うから…」
「仕方ないじゃん!水着のバリやん、めっちゃかわいいんだから!!」
「ちょ…これ以上は…」
「いいや!まだまだ言ってやるからな!!」
こうして、しばらくの間、かわいいと言い続けた行幸は正気に戻った後、シオンと一緒に顔を赤らめるという、一生に残る思い出を刻んだのであった。