先生やお金持ちの後輩のヒモで悪いか?   作:エリ寄越せよ運営

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久し振りです


ユキ、どっから入ってきたのかちゃんと言って

昼下がりのリビング。俺はソファに寝転び、スプーンでアイスを掬いながら、天井をぼんやり見上げていた。冷房が効いた部屋に、至福のだらけタイム。俺の特権、ここに極まれりである。

 

 だが、その幸福は唐突に破られた。

 

 ――ガチャリ。

 

 玄関の鍵が開く音。買い物に出た先生殿が帰るにはまだ早い。誰だ? 不審者か?

 

玄関に向かうが誰も居ない。

俺の聞き間違いだったのか?

 

呆然と立ち尽くす俺の背後から、柔らかな声が響いた。

 

「わたくしが入れさせていただきました」

 

「ぎゃぁぁぁおばけぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?」

声がした方を振り返ると、完璧に整えられた髪を揺らしている人物、天城ユキが立っていた。

 

 

天城ユキ

生徒会時代、俺を補佐してくれた後輩であり、筋金入りのお嬢様。

そして金銭感覚がバグってる子でもある。

 

「ちょっと待ってユキ、なんで金なのかな。差し入れなら普通にチョコとかでいいと思うけど...」

 

「いえ、ミズキ様には栄養より資産が必要かと」

 

「俺を金で養おうとするのか!?」

 

俺は思わず叫んだ。

けれどユキは涼しい顔のまま、深々と一礼する。

 

「ご不満でございましたか?」

 

「……不満はないけど怖いかなぁ」

 

「ユキ、…この前もそうだが、もう俺と君をつなぐ物は無い、なのに何故...そこまでして俺を?」

俺が問いかけると、ユキはほんの一瞬だけ目を伏せて、苦笑を浮かべた。

 

「わたくしが生徒会時代...ミズキ様の補佐として、役目をことができなかったからです」

 

「ユキが? いや、俺からしたら十分頑張ってたと思うけどな」

 

ユキは首を横に振る。

 

「覚えていらっしゃいますか? 何百枚もの書類、数十件に及ぶ案件整理……」

 

「あー……地獄だったな、あれ」

 

「本来ならわたくしも手伝うべき仕事でしたのに、結局はすべてミズキ様お一人で処理なさってしまいました」

 

ユキの声には、ほんのり悔しさが滲んでいた。

 

俺は当時を思い出す。

机に積み上げられた山のような書類を、徹夜で片っ端から処理していった。

気がつけば、ユキは隣で固まったまま、強いて言えば紅茶やお菓子などを出してくれていたくらい。

 

「……いや、あれは俺が勝手にやっただけだ。決して君が役目を果たせていなかったわけじゃないさ」

しかも徹夜の時もずっとそばにいてくれたし、一人ぼっちじゃないだけましだよね。

 

「ですが、わたくしはミズキ様に助けてもらっていたばかりで」

...確かにあの頃は今では考えられないドジ踏んだり、書類ミスっちゃったりしてたなぁ。

でも段々ミスが減ってきて、最後の頃完璧になっちゃったけどね君。

 

「――わたくしは、補佐役として役目を果たせなかったのです」

ユキは真剣な眼差しで俺を見つめる。

 

「だからこそ、今度こそ支えたいのです。どれほど小さなことでも、……わたくしの力でミズキ様を楽にできるのなら」

 

「だから冷蔵庫に金貨?」

 

「はい。冷凍庫にも詰めておきました」

 

「ユキ……人の家の冷蔵庫を貯金箱とでも思ってるのか?」

 

「資産管理の一環です」

 

「冷やすな!金貨を!冷たくしてどうすんだよ!」

思わず叫んでしまうほどユキの感覚は狂っている。

 

「ミズキ様の未来を冷静に、凍らせて保存しておきました」

 

「ちょっと...わけが分からないかな」

 

俺は戸惑うが、ユキはどこまでも真剣だ。

 

――補佐として役目を果たせなかった。

 

たった一つの...その悔しさが、彼女をここまで突き動かしている。

 

だが、その方向性が「冷蔵庫に金貨」っていうぶっ飛んだ形に表れてるのが、やっぱりお嬢様だなと思う。

 

俺は深いため息をついた。

 

「……はぁ。まぁいいや。ありがとよ、ユキ」

 

「はい。わたくしのすべてはミズキ様のために」

―――今度は離しません、もう貴方様を失わない。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

「……なあユキ、次は普通にアイスでいいからな」

 

「はい! 最高級の金箔アイスを!」

 

「普通でいいっつってんだろ!!!!」

 

 

 

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