前回、アンチモンが進化した究極体のデジモン“アンチロモン”に追い詰められ、あわや倒されてしまうかと思った瞬間。

シオンところねの首にかけられた紋章のペンダントが光りネスモンとシオモンの2体は“コロネスキーモン”と“シオッコモン”へと進化する。

究極体へと進化した“コロネスキーモン”と“シオッコモン”の圧倒的な力により、シオンところねたちはアンチロモンに勝利するのだった。










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ホロモンアドベンチャー XX話 絆の奇跡

 

 

 

 

 

「あー、もうっ!ぜんぜん道がないんだけどっっ!」

「仕方がないよ。アンチロモンとの戦いの余波でいろいろなところが崩れちゃってるんだから……」

 

 

 周囲に瓦礫が散在し、進めるような道も分からない状況にロングヘアーの少女、“紫咲シオン”は苛立たし気に声をあげる。

 そんな彼女の言葉に黒い狐のようなシオンのパートナーデジモン、“シオモン”はなだめるように声をかけた。

 

 事実として彼女たちの周囲はかなり破壊されており、むしろ今いるこの城が崩壊していないことの方が奇跡ともいえるようなレベルだった。

 

 

「文句言ってないでシオンたんも道を探しな~」

「って言ってもこんな状態じゃねぇ……」

 

 

 文句を言っているシオンとは少し離れた場所で同じように進める道を探していた犬耳の生えた少女、“戌神ころね”は困った子を見るような表情を浮かべながらシオンに道を探す続きをするように促す。

 とはいえ道がそんな簡単に見つかれば苦労はしないもの。

 

 ころねの言葉に服を着ていない人間のようなころねのパートナーデジモン、“ネスモン”は困ったように周囲を見回した。

 

 

「でもここにシオンたちが人間界に帰るためのゲートがあるっていうのは確かなはずなんだし、頑張ろうよ」

「それは分かっているけどさぁー……」

「うーん……。あっ!」

 

 

 シオモンの言葉にシオンはガックリと項垂れ、しぶしぶといった様子で自分たちが帰るために必要なゲートがある場所につながる道を探し始めた

 

 シオンたちの様子をしり目に少しだけ考えるような仕草をしていたころねがなにかを思いついたのかポンと手を叩いた。

 そんなころねの姿に嫌な予感を感じたネスモンはなにも気づいていませんよーといった雰囲気を醸し出しながら道を探す作業に戻ろうとする。

 

 

「……道がないなら、壊して作ればいいんだよ!」

「…………へ???」

「ころね……、天才!!」

「イヤな予感が当たったぁ!!」

 

 

 決め顔を浮かべながらころねは瓦礫に向かって指をさしつつ高らかに言い放つ。

 

 無茶で無謀と笑われようと、意地が支えの喧嘩道

 壁があったら殴って壊す、道がなければこの手で創る!

 

 とでも言わんばかりの勢いのころねの言葉にシオモンは思わずポカンと呆けてしまう。

 そんなシオモンのことなど気にも留めずに、シオンは目をキラキラと輝かせて嬉しそうに同意する。

 嬉しそうにする2人言葉に、予想していた通りに嫌な予感が現実となったことにネスモンは頭を抱えて膝から崩れ落ちるのだった。

 

 

「「ネスモン!/シオモン!進化!!」」

「え、ちょっ……。嘘でしょーーー?!」

「あーもう、やってやるーーー!!」

 

 

 シオンところね、2人は息を合わせて自身の持っているホロヴァイスをそれぞれのパートナーへと向ける。

 状況の理解が追い付いていなかったシオモンは困惑をしながら、もはや何を言っても止まらないと理解したネスモンは半ばやぶれかぶれになりながらホロヴァイスから発せられる光を受ける。

 

EVOLUTION『シオモン』EVOLUTION

EVOLUTION『ネスモン』EVOLUTION

 

 ホロヴァイスから発せられた光を受けたシオモンとネスモンはそれぞれ光を発しながらその姿を変貌させていく。

 

 とても小さくマスコットのような大きさでしかなかったシオモンはその体躯を大きく巨大化させ、頭に魔女のような帽子を乗せた4足歩行の黒い狐へと

 ころねよりも少し小さいくらいの大きさだったネスモンはその肉体を大きく巨大化させ、両腕に骨の形をした武装を着けた筋肉質な巨人へと

 

    『シオイモン』

    『ネスキモン』

 

 進化を終えたシオモンとネスモン、もといシオイモンとネスキモン。

 2体の姿にシオンところねは満足そうにうなずく。

 

 

「それじゃあ、ネスキモン。道を壊してなー」

「シオイモンも頼んだからね!」

 

 

 そう言いながら自分たちの上に乗る自身のパートナーにネスキモンとシオイモンはガクリと息を吐き、あまり大きく壊しすぎないように気をつけながら瓦礫を破壊して道を作っていくのだった。

 

 ちなみに、ころねはネスキモンの頭の上に仁王立ちで立っており、シオンはシオイモンの上に膝立ちで乗っている。

 どうしてそのような不安定そうな乗り方をしているのかというと、ころねの場合はシンプルにお尻をネスキモンに着きたくないからで、シオンの場合はお尻を着けた瞬間にどこからか『ぽえぽえぽえ~』やら『せんぱ~い❤』といった謎の声と悪寒がしたために直接座るのではなく膝立ちになったという経緯があったりする。

 

 

「“ソルトブレス”!」

「“ボーンブレイク”!」

 

 

 瓦礫を破壊して道を作ってしばらくしてから、おそらくは天井から落ちてきたであろう大きな瓦礫によって塞がれた扉をシオンたちは見つけることができた。

 どうにかして瓦礫を壊すことはできないかとシオイモンとネスキモンの2体に攻撃をさせてみるが予想以上に固く、軽くヒビが入る程度にしか壊すことができなかった。

 

 壊れる様子の見えない瓦礫にシオンところねは互いの顔を見てうなずき、ホロヴァイスを先ほどと同じようにそれぞれのパートナーへと向ける。

 

SUPER EVOLUTION『シオイモン』SUPER EVOLUTION

SUPER EVOLUTION『ネスキモン』SUPER EVOLUTION

 

 ホロヴァイスから光が放たれるのと同時にシオンところねの胸にかけられたペンダントからそれぞれの紋章が浮かび上がりシオイモンとネスキモンに吸い込まれていく

 

 受け取った紋章は『星』シオイモンの四肢にパキパキと結晶のようなものが生成されて装甲のような形へと変化していき、どこからか飛来してきた槍のようにも見える星の装飾の付いた杖を口で咥えた姿へと

 受け取った紋章は『友愛』ネスキモンの両腕に着いていた骨のような武装から装甲が展開されてどこか骨を彷彿とさせる全身装甲になり、その腰には骨のような造形の二振りの太刀が添えられた姿へと

 

        『マテリアルシオモン』

        『ウォーネスキモン』

 

 完全体への進化を終えた2体は静かに目の前の瓦礫を見、それぞれの獲物を構える。

 

 

「“ルクシオンスカー”」

「“骨端閃断(こっぱせんだん)”」

 

 

 次の瞬間、先ほどまでまったくと言っていいほど壊れる様子の見えなかった瓦礫は粉々に粉砕されていた。

 瓦礫を粉砕するのと同時に扉も破壊していたのか、なにもなくなって通りやすくなった通路が目の前に現れた。

 

 

「マテリアルシオモンもウォーネスキモンもさすがの威力だねぇ」

「これだけ楽にできるならもっと早く進化してもらえばよかったかな~」

 

 

 あっさりと瓦礫を破壊したその光景にシオンところねは感心したようにうなずきながら扉があった先の部屋へと足を進める。

 

 部屋のサイズはまぁまぁ大きく先ほどアンチㇿモンと戦闘になった部屋よりもやや広いくらいの大きさの部屋となっていた。

 部屋の中をざっと流し見したシオンたちは部屋の奥に機械の門のようなものがあることに気がつく。

 

 

「あれってもしかして……!」

「うん!きっとあれがそうだよ!」

「こおねたちが元の世界に戻るためのゲート!」

「ようやく、見つけられたんだね……」

 

 

 きっとあれが自分たちが元の世界に戻るために必要なゲート。

 そう直感したシオンたちは機械の門のようなものへと駆け寄っていく。

 

 

「うわ、でっかぁ……」

「これが元の世界に戻るためのゲート、なのかな?」

「でもこれ、動いてないみたいだよ?」

「電源が入っていないのかな?」

 

 

 機械の門のようなものに近づいたシオンたちはその門の大きさに思わず見上げてしまう。

 その大きさは裕にウォーネスキモンたちよりも大きく、その門の扉が簡単には開かないであろうことが理解できる。

 

 さらに軽く調べてみるとその門にはなにかしらの電源が必要なようで、今の状態ではどちらにしても動くような状態ではないということが分かった。

 

 シオンたちがどうしたら門の電源を入れることができるのかと門を見ていると、不意に背後から物音が聞こえてきた。

 

 

「その門は確かにお前たちが元の世界に戻るために通る必要がある門だ」

「この声!!」

「コロネスキーモンとシオッコモンの攻撃を受けて倒されたんじゃなかったの?!」 

「「アンチモン!!」」

 

 

 シオンたちが入った部屋の入口。

 そこには先ほど戦ったアンチロモンの進化前のデジモン、黒いスライムのような体躯に人間の口が無数についたアンチモンの姿があった。

 

 先ほどの戦闘でコロネスキーモンとシオッコモン2体の攻撃によって倒されたはずのアンチモンがそこにいるという事実にシオンたちは驚きの声をあげる。

 

 

「なに、これでも無傷というわけではないさ。その証拠に完全体に戻されてしまっているしな」

「……これが元の世界に戻るための門だっていうならさっさと動かしてほしいんだけど?」

「完全体だっていうならこおねたちに勝てないって分かってるでしょ?」

 

 

 ひらひらと伸ばした触手を振りながら、わざとらしくアンチモンは答える。

 そんなアンチモンの姿にシオンたちは油断することなく見つめながら、門を動かすように言った。

 

 シオンたちの言葉にアンチモンは体中の口から笑い声を漏らしながら体の中から光り輝く球を取り出した。

 

 

「ふふふふ。本当ならこれを使って私があちらの世界にいき背のすべてを手に入れるつもりだったのだが……。今となってはもうどうなっても良い!」

「あいつ!マテリアルシオモン!」

「何かする気?!ウォーネスキモン!」

 

 

 体の中から取り出した光り輝く球を口へと運びながらアンチモンは声をあげる。

 その姿からなにかをするつもりなのだと理解したシオンところねはそれぞれのパートナーへと声をかけた。

 

 

「やらせない!“ソルトレイスピア”!!」

「止めて見せる!“指骨破弓(しこつはきゅう)”!!」

 

 

 イオンところねの声にマテリアルシオモンとウォーネスキモンは素早く行動を起こす。

 マテリアルシオモンは口に咥えた杖を槍のようにして放ち、ウォーネスキモンは二振りの骨のような太刀を組み合わせて大弓を作り出して強力な一矢を放つ。

 

 そして、2体の攻撃がアンチモンに直撃するかと思われたその瞬間、アンチモンはごくりと光り輝く球を飲み込んでしまった。

 それと同時にすさまじい衝撃がアンチモンから放たれ、2体の攻撃はあっさりと弾き飛ばされてしまう。

 

 

「くくくく、あふれる……。力が、あふれるぞぉぉおおおおおお!!!!」

「きゃぁあああっ?!」

「うわぁあああっ?!」

 

 

 アンチモンから放たれる衝撃にシオンたちは思わず声をあげる。

 そして、アンチモンの身体が進化の光に包まれた。

 

DARKNESS EVOLUTION『アンチモン』DARKNESS EVOLUTION

 

 アンチモンの進化した姿は漆黒の竜のような体に人間の口が無数に生えたデジモン、アンチロモンへと進化する……はずだった。

 しかし、取り込んだ光り輝く球の影響なのかその姿はまったく違うものへと変貌していく。

 

        『ダムドヴァイトモン』

 

 その姿は一言でいうのであれば漆黒の人型のもの。

 しかし、その身に現れているいくつもの人間の口が一層の嫌悪感を抱かせるような見た目へとなっていた。

 そして、その人型の胴体には大きな目玉が1つだけ存在しており自身の敵となる存在を真っ直ぐに睨みつけている。

 

 

「さっきの、アンチロモンと姿が違う?!」

「それならこっちも進化を!」

 

 

 先ほど戦ったアンチロモンとは違う姿に進化したアンチモンにシオンたちは驚きの声をあげる。

 しかし違う姿に進化したとしても究極体であることに変わりはないはず、そう考えたシオンたちは自身のホロヴァイスをそれぞれのパートナーへと向ける。

 

 

「ウォーネスキモン!」

 

 

 ホロヴァイスがオレンジ色に輝き、眩いほどの光を放ちながらウォーネスキモンへとその力を流し込んでいく。 

 

ULTIMATE EVOLUTION『ウォーネスキモン』ULTIMATE EVOLUTION

 

 ホロヴァイスから流れ込んだその力にウォーネスキモンの身体が進化していく。

 骨のような全身装甲は機械のような装甲へと変化し、その体にも銃のような武装などが組み込まれていく。

 ひと際大きな変化として左手の指が三本強力な銃身へと

 

        『コロネスキーモン』

 

 そして、コロネスキーモンの進化に続くようにシオンもホロヴァイスをマテリアルシオモンに向けようとした

 

 

「マテリアルシオモ……、きゃぁああああ?!」

「シオン?!」

 

 

 完全体から究極体へ進化しようとしたその瞬間、シオンの足元から黒いスライムのようなものが飛び出しその姿を飲み込んでしまう。

 あまりにも突然のことにマテリアルシオモンは進化することができず、驚いてシオンの名を叫んだ。

 

 

 

 

 

 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

「なに、ここ……」

 

 

 気がつけばシオンは真っ暗な空間に1人で漂っていた。

 そこに上下の間隔はなく体の感覚もどこか鈍く感じられた。

 

 不意にシオンの周囲に黒い人影のようなものが現れる。

 

 

『お前が悪い』

「はぁ?いきなり出てきてなんなん?」

 

 

 シオンに対して指さしながら黒い人影はどこかこもった声で言い放つ。

 人影の言葉にシオンはイラっとしながら答えた。

 人影はシオンの言葉になにも反応を示さず、変わらずにシオンへと指を向けていた。

 

 

『お前がすべての原因。お前の友だちが苦しんでいるのもお前がこの世界へのゲートを開けたからだ』

「それは……ッ!」

 

 

 続く人影の言葉にシオンは驚いた表情を浮かべながら歯をかみしめる。

 自分たちがこの世界に来てしまった原因が自分なのだという変えることのない事実に後悔しながら……

 

 

 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

 

 シオンを飲み込んだ黒いスライムのようなものはそのまままるで結晶のように硬質化し、完全にシオンのことを閉じ込めてしまう。

 いきなりのことにころねたちの意識はそちらに向いてしまい、ダムドヴァイトモンへの意識が薄くなってしまった。

 

 

「「「シオン(たん)っ?!」」」

「隙だらけだ!!“イモータルノイズ”!!」

「しまっ……?!」

「く、うわぁあああああ!!!」

「コロネスキーモン!マテリアルシオモン!」

 

 

 誰が見ても隙だらけのその瞬間、それをダムドヴァイトモンが見逃すはずもなく。

 口から吐き出された音波の攻撃によってコロネスキーモンとマテリアルシオモンの2体はあっけなく吹き飛ばされてしまった。

 その威力は先ほど戦ったアンチロモンの威力とは比べ物にならないほどに高く。

 同じく究極体であるはずのコロネスキーモンですら小さくないダメージを負ってしまっており、マテリアルシオモンにいたっては進化が解除されてシオモンにまで戻されてしまっていた。

 

 

「なんて……、威力なんだ……ッ!!」

「シオモン!大丈夫?!」

「なん……とか……。でもごめん、ちょっと戦えそうにはないかも……」

 

 

 ダムドヴァイトモンの放った攻撃の威力に驚愕しながらもコロネスキーモンはなんとか立ち上がり、ころねとシオモンを守るように前に立つ。

 進化が解除されてしまったシオモンを急いで回収し、ころねはシオモンに大丈夫かどうかを確認する。

 ころねの言葉にシオモンはどうにかといった様子で答える。

 究極体の攻撃を不意打ちで喰らったことを考えればむしろシオモンの状態はこのくらいで済んだことの方が奇跡なのかもしれなかった。

 

 

「くっ……。あんた、シオンたんになにしたの!!」

「くくく……。なぁに、ちょいと闇に飲み込んでやっただけさ」

 

 

 結晶に閉じ込められてしまったシオンのことを気にかけつつ、ころねはなにをしたのかと声をあげる。

 そんなころねの姿にダムドヴァイトモンは楽し気に笑いながら答えた。

 

 ダムドヴァイトモンの言葉にころねたちが聞き返そうとした瞬間、どこからか声が聞こえてきた。

 

 

【私のせいで……、私のせいでみんなが辛い目に合っている……】

「この……声は……」

「シオンの、声……?」

「でも、どこから?」

「おおぉ、よい闇だ……!」

 

 

 どこかこもったような声だったがその声は間違いなくシオンのものだった。

 聞こえてきた声色からは後悔の感情を感じ取ることができ、普段のシオンの様子からは想像の出来ない声色にころねたちは困惑していた。

 

 困惑するころねたちをしり目にダムドヴァイトモンはシオンの閉じ込められた水晶から流れてくる黒い粒子を吸い取り満足そうにうなずく。

 ダムドヴァイトモンが黒い粒子を吸い込んだその瞬間、ダムドヴァイトモンから発せられる圧がわずかに強くなったような感覚をころねたちは感じ取った。

 

 

「今のは?!」

【私が……、あのときあの魔法をためそうだなんて言ったから……】

「くくく、ははははは!!」

「くっ?!」

「うわぁっ?!」

 

 

 ふたたび聞こえてきたシオンの声と、水晶から黒い粒子がダムドヴァイトモンへと流れ込んでいく。

 それと同時にダムドヴァイトモンから発せられる威圧感はさらに強い物へと変化していった。

 

 自身の力が増していることを理解しているのかダムドヴァイトモンは愉快そうに笑い声を上げながら周囲に衝撃を放つ。

 放たれた衝撃の威力にコロネスキーモンは声を漏らし、シオモンはあまりの衝撃に軽く吹き飛ばされてしまう。

 

 

【私なんて、いなければ……】

「っ!!!!」

「こ、ころさん??」

 

 

 さらに聞こえてきたシオンの声に、ころねは自身の手を強く握りしめた。

 ころねの様子にコロネスキーモンは困惑した声をあげる。

 

 そんなコロネスキーモンに対してころねはなにも答えることはなく、握りしめた拳をそのままにシオンの閉じ込められた水晶へと近づいて行った。

 

 

「すぅ………………、ふざけんなぁああああああ!!!!!!!!!!」

「ころさん?!?!?!?!」

「うひゃあっ?!」

 

 

 ころねは短く深呼吸をしたかと思うと、勢いよくその握りしめた拳をシオンの閉じ込められた水晶へと叩きつける。

 ころねの行動とその叫び声にコロネスキーモンとシオモンは驚き、ダムドヴァイトモンは面白そうに笑みを浮かべていた。 

 

 

 

 

 

 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

 真っ暗な闇の中。

 シオンは光の消えた瞳でぼんやりと虚空を見つめていた。

 シオンの周りには取り囲むように黒い人影が出現しており、口々にシオンに対して心無い言葉をぶつけていた。

 

 

「…………」

 

 

 シオンはもはや何の反応も示さず、ただただ人影からぶつけられる言葉を受けるだけだった。

 

 

――――ドンッ!

 

 

 不意に、大きな音と衝撃が空間に響く。

 その衝撃が響くのと同時に人影が1人、また1人とかき消されていった。

 

 

「…………」

 

 

 目の前で人影が消えていくのだが、それでもシオンに反応はない。

 

――――ドンッ!

 

 再度、大きな音と衝撃が空間に響き渡る。

 それと同時に暖かな光が空間にうっすらと広がっていく。

 

――――ドンッ!!

 

『勝手にこおねの気持ちを決めつけんな!』

 

 衝撃とともに叫ぶような声が空間に響き渡る。

 聞こえてきた声にシオンの身体がピクリと小さく反応をする。

 

――――ドンッ!!!

 

『シオンたんと一緒だったからここまで楽しかったんだ!』

 

 なんどもなんども衝撃が空間に響き渡り、そのたびに暖かな光が空間に満ちていく。

 聞こえてくる声にシオンの瞳に光が徐々に戻っていく。

 

――――ドンッ!!!!

 

『だから!帰ってきてよッッッ!!』

 

 ひと際大きな衝撃と光が空間に差し込んでいく。

 もはや黒い人影もほとんど残っておらず、残っていてもなにも言葉を発せないような状態だった。

 

 

「ふふふ……。もう、うるさいなぁ」

 

 

 少しだけ小ばかにするような口調でありながらも、どこか嬉しさを感じさせる声色でシオンは呟く。

 そして、シオンはしっかりと立ち上がりこの空間内を見渡した。

 

 

「たしかに原因は私かもしれない。でも……、それでも……、この冒険に後悔はない!!」

 

 

 シオンのその叫びとともに空間内に満ちていた光がすべてシオンのもとへと集まっていく。

 それと同時にシオンの胸にかけられたペンダントに浮かぶ紋章に変化が起こった。

 

 シオンが受け取っていた紋章は“星”。

 それはどんな状況でも輝ける自己の強さを表している紋章。

 しかし、その強さも1人だけでは限界がある。

 なればこそ、友との絆を得て共にその輝きを増していくのだ。

 シオンの紋章の内側に新たな模様が刻み込まれる。

 星の内側に宿る友との絆、“友星(ゆうじょう)”の紋章。

 これこそがシオンの受け取った紋章の真の姿だ。

 

 光を受け、シオンは意識がどこかに引っ張られるのを感じながらその意識を失うのだった。

 

 

 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

 

 なんども、なんどもころねはシオンの閉じ込められた水晶に拳を叩きつける。

 

 不意に、シオンの閉じ込められた水晶に白い亀裂が走る。

 その亀裂はどんどんと大きく広がっていき、水晶全体にへと広がっていった。

 

 突然の出来事にころねたちは驚き、唖然と水晶を見上げる。

 

 

「な、なに……?!」

「シオンッ?!」

「キサマ、なにをしたんだッ?!」

 

 

 水晶に起きた異常にコロネスキーモンはダムドヴァイトモンを睨みつける。

 シオンになにをしたのか、シオンの身になにかがあれば容赦はしないといった感情をコロネスキーモンはダムドヴァイトモンに向けた。

 しかし、コロネスキーモンがダムドヴァイトモンを見た瞬間、その感情は困惑へと変化した。

 

 なぜならダムドヴァイトモンは驚愕の表情を浮かべながらシオンの閉じ込められた水晶を見ていたのだから。

 

 

「馬鹿な?!やつは闇に閉じ込めて堕としたはず?!」

「これは……、あいつにとっても想定外のこと、なのか……?」

 

 

 ピキピキと広がっていく亀裂はダムドヴァイトモンにも予想外なのか驚愕の表情を浮かべたまま動くことができずにいた。

 そして、亀裂が水晶全体に広がったとき、眩い光が亀裂から漏れ出して周囲を照らしていった。

 

 眩く、しかし暖かく照らしていく光の中、ゆっくりと人影がころねのもとへと降りていっていた。

 その人影に気がついたころねは目じりに涙を溜めながら声をあげる。

 

 

「シオン!」

「もう、声が大きくてうるさすぎるんですけど……?」

 

 

 しっかりと、絶対に離さないと降りてきたシオンのことをころねは強く抱きしめる。

 ころねにきつく抱きしめられ、シオンは少しだけ苦しそうにしながらも生意気そうに、しかし嬉しさを滲ませながら答えた。

 

 

「ありえない!ありえないありえないありえない!お前は闇に堕ちたはずだ!あそこから戻ってこれるはずなどない!!」

「へぇ、それならあんたの言う闇とやらはだいぶ浅いものだったんじゃないの?」

 

 

 ころねのハグからやや無理やり脱出し、シオンは発狂して叫ぶダムドヴァイトモンに言い返す。

 そして、シオンの胸にかけられたペンダントが強い光を発する。

 

 

「シオモン、いけるよね」

「もっちろん!」

 

 

 ホロヴァイスを強く握りしめ、シオンはシオモンに声をかける。

 先ほどまでボロボロになり動くことのできなかったシオモンだったが、シオンからかけられた言葉に力が沸き上がりしっかりと立ち上がって応える。

 

 

「いくよ、シオモン!!」

 

 

 ホロヴァイスが群青色に眩いほどの光を放ちながらシオモンへとその力を流し込んでいく。

 

WARP ULTIMATE EVOLUTION『シオモン』WARP ULTIMATE EVOLUTION

 

 ホロヴァイスから流れ込んだその力にシオモンの身体が進化していく。

 シオモンの姿からシオイモン、シオイモンの姿からマテリアルシオモンの姿へと一気にその姿を変化させていく。

 そして、四肢に生成された結晶の装甲はしっかりとした紫と金色の金属質の装甲へと変化し、口に咥えていた星の装飾の付いた杖は分離し大きな魔法陣として頭上に浮かんだ姿へと

 

        『シオッコモン』

 

 小さな黒い狐の姿から大きく装甲を身に纏った黒狐へと進化したシオモンの姿にころねとコロネスキーモンは思わず驚きの声をあげる。

 

 

「装甲の色が違くなってる?!」

「で、でもシオッコモンのままだよね?!」

 

 

 なぜころねたちが驚いていたのか。

 それは前回アンチロモンと戦った際にシオモンが進化していたシオッコモンの装甲の色は完全に灰色一色であり、今のシオッコモンの装甲の色とまったく違っていたからだ。

 

 そんなころねたちの様子にシオンは面白そうに笑みを浮かべる。

 そして、シオンとシオッコモンはお互いに顔を見合わせてしっかりと頷いた。

 

 

「シオンたん!どういうことなの?!」

「ふふん。この姿こそがシオッコモンの本当の姿なの!」

「前の進化もたしかに正しい進化ではあったみたいなんだけど。それでも完全な進化ではなかったみたいなんだ」

「そうなの?!」

 

 

 驚き詰め寄るころねたちにシオンは得意気になりながら装甲の色が変化した理由を答えた。

 シオンの説明にころねたちは驚きつつ、シオッコモンが完全な進化をしたことに喜びの声をあげるのだった。

 

 

「馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な……、馬鹿なぁああああ!!!!」

「あれあれぇ?なんか発狂してるやつがいるんですけどぉ?」

 

 

 先ほどまで水晶に閉じ込められていたとは思えないほどに和気あいあいとしたころねたちの様子にダムドヴァイトモンはありえないと頭を振りながら声を荒げる。

 そんなダムドヴァイトモンの様子を小馬鹿にするようにシオンは挑発するような声をあげた。

 

 

「それじゃあシオンたんも無事に戻ってきたことだし」

「いっちょ勝っちゃいますか!」

「コロネスキーモン!」

「シオッコモン!」

「いくよ!」

「うん!」

 

 

 シオンところね、2人の言葉にコロネスキーモンとシオッコモンは勢いよくダムドヴァイトモンへと向かって行くのだった。

 

           推奨BGM“Break the chain”

 

 

「“フィンガーバルカン”!!!」

「くっ!!」

 

 

 ダムドヴァイトモンへと駆け出したコロネスキーモンは自身の砲身となっている指をダムドヴァイトモンへと向け、無数の弾丸を放つ。

 放たれた弾丸にダムドヴァイトモンは自身の身体から闇を噴き出させ、その身を守った。

 

 その隙にシオッコモンはも同じようにダムドヴァイトモンへと向かって行き、いくつかの魔法陣を展開させていった。

 

 

「“ショウ()エン()ツラヌ()キ”!逃げ道はないよ!」

「なめ、るなぁあああああああ!!“イモータルノイズ”!!!」

 

 

 シオッコモンがダムドヴァイトモンを取り囲むように展開した無数の魔法陣、そこから白い結晶の槍がダムドヴァイトモンへと殺到していく。

 迫りくる白い結晶の槍に対してダムドヴァイトモンは大きく声をあげ、全身に存在している口から音波を吐き出して粉砕していった。

 

 それと同時に、シオッコモンの攻撃に合わせて距離を詰めていたコロネスキーモンのことも大きく弾き飛ばした。

 

 

「くっ……、まだだ!!シオッコモン!!」

「分かってる!!」

 

 

 弾き飛ばされたコロネスキーモンは空中で体勢を整えるとシオッコモンへと大きく呼びかけた。

 コロネスキーモンの言葉にシオッコモンは頷き、コロネスキーモンの足元へと魔法陣を展開していく。

 

 コロネスキーモンが魔法陣に着地したのを横目に見つつ、シオッコモンはさらにダムドヴァイトモンの足元にもう1つの魔法陣を展開していった。

 

 

「ぬぅっ?!か、身体が?!?!」

「“ハマホウエンジン(破魔法塩陣)”!これであいつの動きは封じたよ!あとはお願い!!」

 

 

 シオッコモンはダムドヴァイトモンの足元に展開された魔法陣の効果を発動し、その動きを完全に固定する。

 急に動けなくなった自身の身体にダムドヴァイトモンは困惑し、冷静に脱出をすることができずにいた。

 

 ダムドヴァイトモンの動きを封じたシオッコモンはコロネスキーモンに声をかけ、勢いよく魔法陣を発射装置のように動かしてコロネスキーモンのことを打ち出した。

 シオッコモンによって打ち出された勢いのまま、コロネスキーモンは砲身となっている自身の左手の指を真っ直ぐに伸ばしながら大きく左腕を振りかぶる。

 そして、ダムドヴァイトモンとの距離がゼロ距離になった瞬間、その左腕をダムドヴァイトモンへと叩きつけた。

 

 

「これで決める!!パイルゥウウウウウウ……フィンガァアアアアアアアーーーーーーーッッッッ!!」

 

 

 ズガァアアアンッツ!!というすさまじい音とともにダムドヴァイトモンを爆炎が包み込む。

 それと同時に“パイルフィンガー”の衝撃によってシオッコモンたちのもとへと吹き飛ばされてきたコロネスキーモンが地面へと着地した。

 ガリガリと地面を削りながらどうにか勢いを殺し、そのままの体勢でコロネスキーモンは爆炎を見続ける。

 

 やがて、爆炎が収まるとそこにはところどころが焼け焦げ、ボロボロになった姿のダムドヴァイトモンが現れた。

 

 

「やった?」

「ううん、まだだよ。デジタマ化もしてないもん」  

「…………ここまでのダメージは予想外だった」

 

 

 ボロボロになったダムドヴァイトモンの姿にシオンところねは近づかずにいた。

 

 不意に、先ほどまでの発狂したような口調とは全く違う落ち着きのある口調でダムドヴァイトモンが口を開いた。

 ダメージを負っているはずなのに普通に話し始めたダムドヴァイトモンにコロネスキーモンとシオッコモンは警戒を強める。

 

 

「だが、無意味だ」

「そんな!傷が修復されていっている?!」

「なんて回復能力なんだ?!」

 

 

 次の瞬間、ボロボロに傷ついていたはずのダムドヴァイトモンの肉体がどんどんと元の傷一つない姿へと戻っていってしまった。

 ダムドヴァイトモンに与えたダメージがすべてなくなっていくその光景にコロネスキーモンとシオッコモンは驚きの声をあげる。

 

 そんなコロネスキーモンたちのことをあざ笑うようにダムドヴァイトモンはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「くくく、どうした?あまりの絶望に声も失ったか?」

 

 

 全ての傷の修復を終え、ダムドヴァイトモンはなにも反応を示さないころねとシオンに話しかける。

 

 アンチロモンのときであれば先ほどの攻撃で完全にデジタマ化をしていてもおかしくはなかったのだが、それも今のダムドヴァイトモンへと進化した自分には何の障害にもならない。

 そういった事実を突きつけるためだけにダムドヴァイトモンは先ほどの攻撃を受けていたのだった。

 

 ダムドヴァイトモンの言葉にコロネスキーモンとシオッコモンは悔し気に顔をしかめる。

 

 

「…………んー。なんて言うんだろ。ころね、今の私の思ってること……、分かる?」

「うん、なんとなく……。それでもしっかりと」

「……なにぃ?」

 

 

 コロネスキーモンたちの様子に笑みを浮かべているダムドヴァイトモンのことなどなにも気にしていないかのような口調でシオンはころねに尋ねる。

 シオンの言葉にころねも同じように平然とした口調で答えた。

 

 予想していなかった2人の反応にダムドヴァイトモンは面食らった様子で2人の顔を見た。

 そんなダムドヴァイトモンのことなど気にもせず、2人は自身のホロヴァイスを手に握り、お互いの手を握りしめた。

 

   そして――――

 

 

「シオンと一緒なら」

「ころねと一緒なら」

「「負ける気がしない!!」」

 

 

           推奨BGM“brave heart”

 

 2人の握りしめるホロヴァイスからこれまでにないほどの光が発せられ、それぞれ2人の紋章となり左右に巨大に展開されていった。

 

EXTEND FUSION『コロネスキーモン』『シオッコモン』EXTEND FUSION

 

 左右に展開された紋章から発せられる光を受け、コロネスキーモンとシオッコモンの身体に変化が起きていく。

 コロネスキーモンとシオッコモン、それぞれの頭を残してその体は光の粒子となり新たな姿を形成する。

 それは純白の鎧に身を包んだ女騎士のようであり、一切の汚れを感じさせないような存在感を放っている。

 そして、コロネスキーモンの頭は複数の砲門の付いた腕へ、シオッコモンの頭は紫色の刀身に肩に六芒星の魔法陣が展開された腕へと変化した。

 

        『パンシオモン』

 

 現れた純白の騎士デジモンの両肩にころねとシオンは乗り、真っ直ぐにダムドヴァイトモンのことを見据える。

 

 

「なんだ、その姿は……?!」

「しいて言うなら、あんたを倒すための力かな」

 

 

 現れた騎士デジモン――“パンシオモン”の姿にダムドヴァイトモンは怯み、後退りをしながら声を荒げる。

 そんなダムドヴァイトモンに対してなんてことのないようにシオンは答えた。

 

 

「ありえん……ッ!この私が……、この私が気圧されるなど……ッ!!ありえてはならんのだッッ!!“ヴェノムレイン”!!!!」

 

 

 シオンの言葉にダムドヴァイトモンは頭を抱え、その体を変質させて毒の(したた)る無数の触手の槍をまるで豪雨のようにシオンたちに向けて放ちだした。

 それに対してシオンたちはなにも焦ることなく迫りくる攻撃を見据えていた。

 

 そして、パンシオモンはゆっくりとコロネスキーモンの頭が変化した右腕の砲門、“コロネスキャノン”を迫りくる攻撃に向ける。

 

――――“ユービークワイエット”

 

 瞬間、凄まじい勢いでパンシオモンの右腕の砲門から無数の砲撃が放たれる。

 その砲撃は正確に迫りくる触手を撃ち抜いていった。

 

 砲撃が直撃した触手だが粉砕されている様子はなく、その様子にダムドヴァイトモンはそのまま攻撃を続けようとする。

 しかし砲撃によって撃ち抜かれた触手を動かそうとするも、ピクリとも動かすことができなくなってしまっている。

 見れば撃ち抜かれた触手それぞれが三角形の魔法陣によって包まれており、それによって触手が空間に固定されていることが分かる。

 

 触手を動かすことができないと理解したダムドヴァイトモンは自身の肉体から生やした触手を切り離し、両腕を大きく上に伸ばす。

 

 

「まだだ!!“ヒュージペイン”!!」

 

 

 ダムドヴァイトモンの大きく伸ばした両腕がグネグネと変化していき、巨大な異形の剣へと変化していく。

 その刀身には無数の人の口のようなものが生成されており、ガチガチと何度も歯を合わせて耳障りな音を立てている。

 その様子からその刀身に切り裂かれれば同時に(むさぼ)り喰い千切られるであろうことは想像に難しくはないだろう。

 そして、その巨大な異形の剣をパンシオモンへと振り下ろした。

 

 それに対してパンシオモンはシオッコモンの頭が変化した左腕の刃、“シオノハバソツ(塩之羽刃楚告)”を構える。

 

――――“ハカタノツルギ(破卦太乃剣)

 

 直後、先ほどまで聞こえていた耳障りだった歯を合わせる音が消え去る。

 見ればいつの間にかパンシオモンはその左腕を振り下ろしており、すでになにかしらの行動を終えていたことが見て取れた。

 

 

「なにをしたかは知らんがこの一撃は防ぐことはでき――――カペァッ?!」

「気づいてなかったみたいだけど……、こっちの攻撃はもう終わってたよ?」

 

 

 そのままダムドヴァイトモンは巨大な異形の剣を振り下ろそうとする。

 ダムドヴァイトモンが攻撃を放とうとした瞬間、ズルリとその体がズレた。

 見れば巨大な異形の剣の先を頂点とし、キレイに一直線にダムドヴァイトモンの肉体が両断されていた。

 

 自身の肉体に起きた異常にダムドヴァイトモンは驚愕の声を漏らし、素早く自身の肉体を球状に変化させてまるで粘土のようにグチュグチュと音を立てながら自身の肉体を修復していく。

 

 

「グゲッ……、ググギガ……」

 

 

 うめき声をあげながらダムドヴァイトモンはその肉体を修復していく。

 パンシオモンに対抗するためなのかその修復は元の姿に戻るだけではなくさらに異形のものへと変質させていっていた。

 

 その光景を見ながらパンシオモンは左肩に浮かべていた六芒星の魔法陣を巨大化させ、自身の前へと展開した。

 

 

「いろいろと大変な目にあわされたけど、これで終わりにするよ」

「もう復活とかしないで欲しいところね」

 

 

 自身の目の前に展開されている魔法陣にパンシオモンは“シオノハバソツ”を向け、カギを開けるかのように捻る。

 すると魔法陣を構成している三角形が回転して重なり、横向きの三角形へと変化した。

 2つの三角形が重なったことにより、凄まじい輝きが発せられていく。

 

 そして、“コロネスキャノン”を魔法陣へと向け、力を込めていく。

 それに合わせるようにころねとシオンの持つホロヴァイスが発する光も強さを増していく

 

――――“ホロデルタ・ライブストリーム”

 

 魔法陣の輝きが限界まで高まったとき、光の奔流がダムドヴァイトモンに向けて解き放たれた。

 

 放たれた光の奔流にダムドヴァイトモンは自身の肉体から太い触手を伸ばして盾のように構えていく。

 しかしその触手で防げるのはわずかな時間のみ。

 なんども触手を伸ばしてその身を守ろうとはするが伸ばした先から瞬時に消し飛ばされていっていた。

 

 

「ア゛ア゛ア゛……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ?!?!?!」

 

 

 やがてダムドヴァイトモンの肉体に光の奔流が触れ、絶望の叫び声を上げながらダムドヴァイトモンはその身を消滅させていった。

 

 ダムドヴァイトモンが消え去ったのを確認したパンシオモンは魔法陣の展開を止め、戦闘態勢を解除する。

 そしてころねとシオンはパンシオモンの肩から降りた。

 

 

「ダムドヴァイトモンには勝ったけど……、どうやって人間界に戻ろうか?」

「人間界に戻るための門を動かそうにもそれを動かすためのものはダムドヴァイトモンが使っちゃったし」

 

 

 パンシオモンの肩から降りた2人は顔を見合わせ、どうやって元の世界に戻るかを話し始める。

 ダムドヴァイトモンの言っていたことが確かであるのであればダムドヴァイトモンが進化するために飲み込んでいた光り輝く球が人間界へと繫がる門を開くために必要だということ。

 その光り輝く球もダムドヴァイトモンが消滅するのと同時に消え去ってしまっている。

 それゆえに人間界へとつながる門を開く方法がなくなってしまっているのだ。

 

 不意にパンシオモンが門へと腕をかざす。

 

 

「え?」

「門が動き出した……?」

 

 

 パンシオモンが門に腕をかざすと、ヴーンという音とともに人間界に繋がる門が動き始めた。

 いきなり動き始めた門にころねとシオンは驚き、顔を見合わせる。

 

 

「あなたが、やったの?」

 

 

 シオンの言葉にパンシオモンはうなずき、門を指さすように腕を向けた。

 パンシオモンの仕草からなにを伝えたいのかを理解したころねとシオンはうなずいて門へと足を進めていく。

 そして、門の目の前にたどりついた2人は改めてパンシオモンを見る。

 

 

「これをくぐれば、元の世界に帰れる……んだよね?」

「この世界での冒険もこれで終わる、のかぁ」

 

 

 2人の中に思い出されるのはここにたどり着くまでにあった様々な出来事。

 

 様々な苦労がこの世界にはあった。

 様々な出会いがこの世界にはあった。

 様々な喜びがこの世界にはあった。

 様々な別れがこの世界にはあった。

 

 それらすべてがどれも大切な思い出たちだった。

 

 

「ここまで一緒に来てくれてありがと。また、どっかでこおねたちと会えると良いね」

「いろんなことがあったけど全部楽しかったよ。また会えたら一緒に冒険しようね」

 

 

 涙は見せずに、きっとまた会えると信じて。

 笑顔でころねとシオンは人間界へと繋がる門をくぐっていく。

 そんな2人のことをパンシオモンはジッと見送っていた。

 

 そして、2人の姿が完全に門の向こうへと消えたとき、パンシオモンの身体が光り輝き、ネスモンとシオモンの2体の姿へと戻っていった。

 

 

「……行っちゃったね」

「そうだね。でもきっとまた会えるよ」

 

 

 ころねとシオンが消えていった門を少しだけ寂しそうにしながらネスモンは呟く。

 そんなネスモンにシオモンは励ますように声をかける。

 そして2体は門に背を向けて歩き始めた。

 

 

「ここまでいろいろとあったよね」

「そうだねぇ。最初はいきなりネスモンの上に落ちてきて驚いたんだよね」

 

 

 歩きながら2体はこれまでの出来事を語っていく。

 ネスモンとシオモンの2体で歩いているときにいきなり上から落ちてきたころねとシオン。

 それがこの冒険の始まりの出会いだった。

 

 

「あのときはホントに驚いたよね。だって人間なんて初めて見たんだもん」

「そうそう。それでそのあといきなり襲われたりね」

 

 

 普通であればこの世界に人間が来ることなどありえないことであり、伝承などでしかその存在を知らないというデジモンもいる。

 それゆえにころねたちとの出会いは衝撃だったのだ。

 

 

「それからもいろんなことがあったよねぇ……」

「……ねぇ、さすがにそろそろ現実を見ない?」

「待って。お願いだからもう少し逃避させて!」

 

 

 これまでの出来事を懐かしそうに思い出しているネスモンに、地面に(●●●)しがみつきながら(●●●●●●●●)シオモンは声をかけた。

 シオモンの言葉に同じように地面にしがみついているネスモンは声をあげる。

 

 なぜネスモンたちが地面にしがみついているのか。

 その答えはネスモンたちの後方にあった。

 

 

「なんで……、なんでゲートが吸い込んでくる(●●●●●●●)のさぁあああああああ!!!!」

「そんなのボクも知りたいよぉおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 人間世界へと繋がっている門はゴォオオオ!という音とともに周囲のものを吸い込んでいく。

 その勢いはかなりのもので、やや大きな瓦礫ですら動いてしまっていた。

 

 ネスモンとシオモンの2体は門に吸い込まれないように必死に地面にしがみついて抵抗をする。

 

 

 

 まぁ、それもすぐに無意味になるのだが。

 

 

「へ?」

「え?」

 

 

 ボゴリ、という音ともにネスモンたちがしがみついている地面が動き出す。

 直後、2体が感じたのは浮遊感だった。

 

 いったい何が起きたのか。

 それを理解しようとしたときにはすでに遅い。

 

 

「「う、うわぁああああああああああああああ?!?!」」

 

 

 そのまま2体は悲鳴を上げながら門へと吸い込まれていくのだった。

 

 

           推奨ED“Butter-Fly”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人の姿のない駅のホーム。

 荷物をまとめたキャリーケースを横に置きながらシオンはそこにいた。

 

 

「本当に行くの?」

「うん。もう決めたからね」

 

 

 シオモンの言葉にシオンはしっかりと頷きながら答える。

 その表情には自信が満ちており、なにも心配事などなさそうに見えた。

 

 

「……そういえば。あんた(●●●)っていつまでシオンのことを見てるつもりなの?」

 

 

 不意にシオンは虚空(こちら)に向かって話しかけた。

 突然のシオンの言葉にシオモンは不思議そうに首をかしげる。

 

 

「ま、返答があるとは思ってないけどね。でもあっちの世界に行った時からずっとシオンたちのこと見てたでしょ。人間界じゃ気づかなかったけど、あっちの世界に行ってから視線が多いことに気がついたんだよね」

 

 

 自信満々にシオンは虚空(こちら)を見ながら言う。

 どうやらデジタルワールドに行った際に視線の量に違和感を感じていたようだ。

 

 

「シオン?誰に話しかけてるの?」

「んー、なんて言うんだろ。観測者、とかそんなかんじのやつ?それになんかシオンたちのこと見てて実況みたいなこともしてたみたい?」

 

 

 虚空(こちら)に向けて話しかけているシオンにシオモンは首をかしげながら誰に話しかけているのかをたずねる。

 普通であれば認識できないはずのものを認識しているあたり、やはりかなり優秀な魔法使いなのだろう。

 

 

「っていうか、今だから言わせてもらうけどさぁ。地の文がちょっとクサすぎると思うんだよねぇ。めんどくさい言い回しとかもあった気もするし。かっこいいと思ってたりするのー?」

 

 

――――ピキリ……

 

 大人なレディ(笑)なシオンは(ない)胸をはりながら小馬鹿にしたように笑う。

 

 

「ね゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っっっ!!いま絶対に余計な文字付け足したでしょぉぉおおおっ!!」

「あ、あはは……」

 

 

 特徴的な濁音のついた声を上げながらシオンは地団駄を踏む。

 そんなシオンの様子にシオモンは乾いた笑いを洩らす。

 

 

「もうっ!電車も来るし行こっ!シオモン!」

「あ、うん!」

 

 

 ホームに向かってくる電車を確認した、シオンは荷物を手に取り電車に乗る準備をしていく。

 ここから彼女の新しい物語は始まっていくのだろう。

 

 

「……あんたが見守ってくれてたから、シオンたちも情けないところを見せらんないって頑張ってこれたんだからね。それだけは感謝しとく。だから、これからもシオンたちのこと見守ってると良いんじゃない?」

 

 

 電車に乗る直前、シオンは虚空(こちら)を見ながらそう言った。

 そして、シオンの乗った電車は走り出していく。

 

 これから彼女のいく先に幸あらんことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








かなり長い小説となってしまいましたが読んでいただきありがとうございます。

こちらの小説はホロライブの戌神ころねさんと紫咲シオンさんが“brave heart”を歌っているのを聞いて頭に浮かんだ物語となっております。





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