尾張グダグダ戦国記   作:far

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まだ清洲にいます。

それと月初めって先月の数字決算するんで手間取るよねって。


【よくある】振り返れば罪が増える【あるよね】

 

 さて。清洲城脱出にかかる前に、まずは皆で腹ごしらえ。

 もうこれ以上篭城しないので、残りの兵糧とか気にせずに、めいっぱいご飯作ってお腹いっぱい食べるのです。

 

 なお、私の持ち込んだ食糧は一切ございません。

 

 さすがに食糧と(普通の)武器などは、持ち込みさせてもらえないと思ったので、そもそも持ってきていないのです。

 お酒ならセーフかな。と思いましたが。

 

「これ、売り物だしな……」

 

 という発想になってしまって、やめました。

 でも皆さん、お酒無しでも盛り上がってるみたいなんで、よかったかなって。

 

 信行さま死亡で、マジでお先真っ暗で先が見えない状態でしたからね。

 そこに希望の道が見えたら、それがどんなにか細くても明るくなるってものです。

 まあ、こうして横から見ていると、そのせいで地獄へと自ら歩を進めてる感が無きにしも非ずなのですが。

 

 いや、その背中を押したのってお前だろって?

 

 いいえ、丹羽様です。丹羽様に吹き込んだのは私ですが、彼ら織田家の面々を動かしたのは丹羽様なのです。

 信行ヤッちゃったのは池田恒興ですが、黒幕は丹羽様なのと同じですね。

 

 やだ。私たちヘンなところで似てる。

 

 

「カブもサトイモも、全部入れちまえ! あとで味噌入れりゃあ、何とかなんだろ」

 

 なにやら、雑に料理しているとしか思えない内容の声が聞こえてきました。

 大勢のぶんを一度に大なべで料理するとなると、そんなものにならざるをえないのかもしれませんが。そんな事情とは関係なく男料理しか作れなさそうな声と顔をしています。

 それと「あ、こいつなんかヤバい」という雰囲気も放っているので、いつもの如くグーグ… Wiki… 丹羽様に聞いてみました。

 

「丹羽様。あのナベを無駄にかき混ぜている人は、どなたですか?」

 

「サトイモが煮崩れてしまいそうだな… まあ、米も入れて雑炊にするからよかろうて。あれは信長様のお気に入りだった、前田利家というやつだ」

 

 おお、あれが伝説になった、ロリコン

 あれ? でも思ったより若いな。もしかすると、これ、また私やっちゃいましたか?

 

「前田どのは、既婚者ですか? お相手は、まつという方ですか?」

 

 私も足軽大将まで出世してるし、向こうより上だろう。そう判断して、様付けではなく、どのと付けました。

 身分社会だと、色々と気を使いますねえ。

 

「うん? その通りだが。結婚は、去年あたりにしておったな」

 

 アウトだけど、セーーーフ! そしてセーフ!

 

 結婚時期が明らかにズレています。これがアウト。

 しかしそのおかげで、嫁のまつさんが12歳で結婚、翌年出産というレジェンドにならずに済んでいます。セーーーフ! 圧倒的セーーーフ!

 戦国ベストカップルの上位ランカーの二人が、くっつかないという事がなかった。これもセーフ。

 

 二勝一敗。いいや、一大勝、一勝一敗で勝ち越しました。これはもう優勝ですね。別に歴史的観点から、とか言い出すような意識高い系じゃないですけども、進んで色々と壊したいわけじゃないので良かったです。

 

「しかし、おかしな事を聞く。知り合いか?」

 

「前田慶次郎どのから、話だけは。信長様の直臣だった身内がいると」

 

 イタズラヤンチャ坊主だったらしくて、自分も相当だが、あっちよりはマシだと主張していましたね。

 前田家は荒子城の城主一族で、一族としては信行派。しかしヤンキースピリッツを持ってしまった利家は、同じヤンキースピリッツの持ち主の信長と共鳴してしまって、信長のチームに入ってしまったんですね。

 グレてゾクに入って家出する、という「昭和のヤンキーか」というツッコミが綺麗に入る経歴です。

 そりゃ傾き者(かぶきもの)として名を残す、破天荒な慶次郎さんもグチるでしょう。

 

 史実では自分も似たようなケースで家出して、チームUESUGIに入ったりしますが。

 

 なお慶次郎さんが家出する時の前田家のトップは、利家さんです。

 慶次郎さんの養父がトップだったんですが、信長さんから「お前、病弱だから甥の利家に家督を譲れ」と命じられてしまったんですね。

 前田家を信行派から自分の派閥へと鞍替えさせる、信長さん視点ではいい一手です。

 

 トップを無理やり挿げ替えたんで、前田家中では大反発が起こりましたが。この城は渡さんぞ、と篭城する部下(オクムラ スケエモン)が出たりとか。

 

 なお病弱と言われたこの養父。この後18年ほど普通に生きていました。

 利家も悪いと思ってはいたのか、慶次郎ともども家臣として迎え入れて、自分の不在時の城代を任せるほど重用していたようです。

 

 病弱とはいったい。

 

 他にも色々と聞きまして、例えば慶次郎さんが滝川一益の家からの養子なのは知っていましたが、まさか弟だったとか、今世で初めて知りましたよ。

 あの人、居酒屋で飲んでるんじゃカネが持たん。と言って、樽で買って宅飲みする派でしたが、お得意様ではありましたからね。面識だけはあって、話す機会もそこそこはあったのです。

 単に客と酒屋の付き合いなので、頼みごととかができる関係ではありませんが。

 

「話どおりに腕は立ちそうですし、あとで挨拶しておきます」

 

「それはいいが、その前に、お前いい加減に着替えて来い」

 

 ああ、そういえばまだ白装束のままでしたね。

 道理で、いつまでも変な目で見られると思ったら。ちゃんと着替えも持ってきているので、さっさと着替えましょう。

 これ以上汚れないように、と気をつけて脱ぎながら思いました。

 この白装束、また着る機会とかあるんでしょうか。ないといいけど。

 

「お、脱いだか。ではもらっていくぞ」

 

 えっ、丹羽様、なんで? それ私の私物なんですけど。

 切腹する人がいるから使う? あっ、はい。まあ、それならお持ち下さい。

 

 まさかマジで切腹を選ぶ人がいようとは。負傷して、もう助からない人とかでしょうか?

 脱出する時に、担いでいかなくてすんだ。そう考えて、いい処分ができたと割り切りましょう。

 …白装束の話ですよ? 負傷者の事ではないですからね?

 

 あの服は、特注で特急で作ってもらったんで高かったんですが、さすがに切腹する人に料金請求とかできませんよねえ。

 

「いや、待てよ…」

 

 考えてみれば、このタイミングで丹羽様が世話を焼くレベルの人で、切腹ときたら、あの人ではないでしょうか?

 信行さま暗殺の実行犯、池田恒興。

 私の白装束まで脱がして持っていく、その気の使いようからして、たぶん間違いありません。

 

 生かして使う手もありますが、その場合、池田恒興の所属する派閥の立場というのは…… 針のむしろかなって。

 信行さまの息子を旗頭にする予定ですからね。その父親を殺した張本人がそこにいたら、そりゃそうなります。

 

 家康の父親が、自分の父親を暗殺した犯人の親をそのまま家臣として用い続けましたが、あれさえも犯人その人は、その場で斬殺されています。

 やっぱ張本人はムリですね。

 

 なんでやっちゃったのかなあ。とか、それでも池田さん生かす手はないかなあ、とか思うところはありますが、今更です。きっと、どうにもなりません。

 考えても仕方が無いことは、考えない方がストレスになりません。心の棚に、さらしておきましょう。きっとそのうち、風化します。

 その分、考えるべきことを考えねば。

 

 まず、現在の尾張の状況です。

 北の美濃の斉藤家から攻め込まれ、主城の清洲城を包囲されていて、これから逃げ出します。

 東は鳴海城が一向一揆に占拠されていますが、幸いその目は三河に向いています。

 しかし尾張国内の一向宗も、東側の大半は一揆に参加してしまっているので、油断はできません。

 結論。尾張国内はボロボロで、末森の織田の後継者、信行の嫡男を旗頭にできなかったら、織田家終了ですね。

 

 信忠は? 信長の息子はどうしたって?

 

 まだ生まれてません。信忠が生まれるのは、稲生の戦いの翌年です。

 

 あれ? そういえば息子はいませんが、兄はいましたね。母親の身分が低いので、庶子とされて継承権低かった人が。

 あの人、確か名前は信広でしたね。彼、どうしましたっけ。ウワサすら聞かないんで忘れてました。

 オッケー、グーグ…… いやもういいや。教えて帰ってきた丹羽様。

 

「お前が討ち取ったじゃろ」

 

「えっ」

 

 何を言っているんだ。

 そういう顔で言う丹羽様に、私も同じ顔を返しました。

 えっ、マジで覚えてないんですけど。

 

「稲生の戦いの少し前の話だ。本当に覚えておらぬか?」

 

「え~っと… なんとなく? 大物を仕留めたと思ったら、なんか怒られたような記憶は…」

 

 えぇ…… マジでなんとなくしか覚えてない。

 本当に、なにやってんだ今世のオレ。

 信長の前に、信広も仕留めてました。ってそんなサプライズいらんのよ。

 

 一応お咎め無しだったのは、信広も信長に謀反してたから。

 それも美濃の斉藤義龍と組んで、そっちが攻めてきたら、信長もいつものように全軍出撃するだろう。その時に味方の振りして近付いて、後ろから攻めるわ。というガチなもの。

 しかし信長はこれを「美濃勢がいつもより、気が抜けている。必死に殺しあう気配ではない。これはウチの誰かが謀反するな?」と見事に見抜きます。

 さすがに誰が裏切るのかは、候補が複数あったのか絞りきれなかったようですが。それでもソイツは清洲城も狙うだろうな、と見抜いていて。

 住人らを城に入れて、城下町も硬く閉ざして、清洲城を任せる武将にも、決して出るな。誰も入れるな。と、厳命しました。

 さすが謀反されるプロ。対応もバッチリです。

 

 史実では、信広は閉鎖された清洲を見て、計画がバレたとわかると降伏。許されて、以降は忠実に地味に生きて、長島一向宗相手に戦死します。

 今世では、私のあやふやな記憶によりますと。

 信広らが清洲に来た時に、あいつらが裏切り者か。今なら討てるな。と、独断で弓を射たら、たまたまヤッちゃったっぽいですね。

 

 史実に比べると、今世では信広の寿命をだいぶ縮めてしまいました。よく覚えていませんが、ごめんなさい。

 軽いですが、戦場での事ですし。勝負の結果で、たぶん武運の問題だと思うので、受け入れてもらって。

 

 他にも信長の叔父シリーズとかいるけど、だいたい死亡確認されちゃってるんですよね。いや、私がヤッて回ったわけじゃなく。

 寿命だったり、敵対して滅ぼしていたり、今回の斉藤家の侵攻で討ち取られていたりです。

 

 唯一、織田信次という人が行方不明ですが、存命のはず。ではあるのですが……

 この人。信長の弟が馬で通りかかった所を、城主である自分の前で下馬せぬとは。ちと射ってやれ! と、誰なのか確認もせずにやっちゃいまして。

 そしてそんな時に限って、出るんですよね、クリティカルってやつは。わかります。信長と信広ヤッちゃった時の私もそうでした。

 この時も、威嚇のはずが、見事命中。信長の弟さん、落馬して即死です。

 これがマズかった。何がマズかったって、この弟さん。推測ですが、信行と母親が同じです。つまり信長とも同じで……

 はい、非常にマズいですね。

 

 信次は取るものも取らずに逃げた。と記録に残っています。

 

 その後に事態を耳にした信長は、すぐさま単騎で馬を飛ばして駆けつけようとしました。

 しかしその手前で止められて、すでに信次が逃げた事と、信長同様にキレた信行が、城下に火をつけて燃やした事を聞かされます。

 信次さん、逃げて正解だったようです。信長以外に、ここまでガチギレする信行は珍しい。それだけに絶対に許してもらえなかったでしょう。

 

 この信長と信行の実弟が生きていたら、旗頭候補だったという事もありますので。

 もし今、このやらかし叔父さんが出てきても、織田家を任せるとか、背負うとかは無理です。

 というか、生きてるかなあ。史実では生きてて、結構あとに帰ってきて、やっぱり長島で戦死してるけど。

 

 長島一向一揆は、一向宗が城に追い詰められて篭城、何度も降伏すると言ってきても、信長が「もう少し飢えてどうぞ」って断って。

 三ヶ月たって、半分くらいが餓死したところで、降伏を認めて。生き残りの一向宗が退去しようとしたのを……

 

「よし、今だ。撃て!」

 

 と、鉄砲を撃ち掛けて、次々と殺害。

 しかしこれで一向宗の中に、感情が振り切れちゃった人が800人ほど出まして。

 つまり、命を顧みない死兵の集団が誕生。銃弾の雨の中、それでも弾幕の薄い所を突破。織田の親族集団も大勢犠牲に。

 という、信長の自業自得なラストを迎えてしまった史実がありまして。やらかし叔父さんや信広もその時の犠牲者です。

 

 そんな悲劇が無くても、今世ではだいたい全滅したんですけどね。HAHAHA。

 

 いや、信長も死んでいる以上、史実よりひどいのかな。

 

 ともあれ他の道も考えてみましたが、やはり無いようです。

 信行さまの息子さん、年齢一桁ですが修羅の道確定です。頑張って下さい。

 

 お前も頑張れって?

 えっ。頑張っちゃっていいの?

 

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