書いていて、色んな状況に放り込んで、そうか君はそういうやつなんだな。というのがわかっていくのも、この道の楽しみ。
お腹いっぱいになるまで食べたら、昼に寝て、日が落ちる頃までみんなで寝ました。
起きたらまたご飯を作って、ドンちゃん騒ぎです。と言っても、お酒は抜きですが。
だってこれから、夜襲しますから。
説得の使者()こと、私が城に入って間もなく騒がしくなって、静かになったと思ったらまた騒いで。
そんな清洲城の様子を、包囲している斉藤家の方々はどう思ったでしょう?
最後の別れの宴でもしているのかと、思ったのではないでしょうか。
その後に「討ち死にじゃあ」と、突撃してくる奴らもいるかもしれない、と警戒はしているとは思います。
しかしまた騒がしい声が聞こえ始めたなら、警戒は解くでしょう。
そこが、ねらい目です。
まさか全員そろって、生きるために突撃してくるとか思ってもいないでしょう。
そのために、わざわざ同情を引くような演技で、斉藤家に通してもらいましたからね。思考誘導!
しかも手榴弾モドキの、手投げ弾も多数用意してあります。音と威力で、混乱は必至です。
実際に実行したら、それ以上だったわけですが。
私が持ち込んだ大八車が、なぜか先頭を切って走っていきました。
しかも弓兵と、手投げ弾を多数背負ったやつを2人ずつ乗っけてです。
誰が引っ張っていたのか、暗闇の中をすごい速さで斉藤家の陣のかがり火めがけて走っていって……
ドォン!! ドォン!!
と、腹に響く大きな音が、空気を震わせて轟きました。うわ、思った以上にヤバいな。
綿火薬の手投げ弾への加工は、城の中で複数人でやりましたから、火薬の分量を多めにしたヤツがいたんでしょうね、たぶん。実験した時以上の威力でした。
近くに投げちゃって、自爆してないといいけどなあ……
いや自爆したら、手持ちの手投げ弾にも火がついて、もっと連鎖で爆発するか、一気にドカンといくか。
誰だ、あの戦術考えたの。
そんな事を考えながら、私も必死で走りました。
みんな鎧を着ているのに、誰も彼も足が速いので、置いていかれそうなのです。ちょっと待ってマジで。
くっ、足軽時代はともかく、事務方に移ってからは運動不足ですからね。まさかこの歳で衰えを感じようとは……
いざという時の防御用に、抜いた刀の背を肩に載せて、鎧も小手と胴だけで完全には身に着けずに、槍すら持っていないというのに。思った以上に身体が鈍っています。
大八車の行き先以外からもドッカンドッカンと聞こえ出して、あちこちの陣がひどい事になっていそうなので、少しばかり遅れても大丈夫そうですが。
戦場でそんな油断してたら、死にますからね。頑張って走ります。
しかし打ち合わせでは、一点突破で斉藤家の包囲を抜く! と決まっていたはずなのですが。なんであちこちの陣が燃えているのか。これがわからない。
篭城で溜まっていたストレスが、爆発しちゃいましたかねえ。手投げ弾の威力に、テンション上がっちゃいましたか。
あんまり弾数ないから、こんな景気良く使ってると、すぐ無くなってしまうんですが。
同じ大なべの雑炊を食った仲間たちの心配をしながら、夜の戦場を南東へと走ります。
目的地は末森城。清洲城からは約13km。と言いたいけど約14km。所要時間は2~3時間というところです。
……しかし順調に進めていますね。いや、いい事なんですが。
普通こういう場合って、私を通してくれた斉藤家の人が「よくもダマしてくれたな」って立ちはだかったり。
斉藤家の名の知れた武人が出てきて、死闘をしたり、私が機転を利かせて辛くも逃げ延びたり。
敵方だったり、味方だったりの、ピンチになっている女性を拾ったり助けたりしてヒロインにしたり。
そういったイベントを起こすべき場所のような気がしてならないのですが。
まあ、気のせいでしょう。もしくは14歳くらいの時に、男ならみんなかかる精神的な病気の名残りですかね。
戯言はさておき。
末森に着いたら、坊丸さまの安否確認して、後見人には誰がなるかのグダグダな会議して、いやその前に柴田さまや森さまにも連絡取って。
そこから手分けして、あちらこちらへのお手紙攻勢……
うわあ、面倒くさい。仕事したくないでござる。
いや、でも私も商人関連に顔の効くひとりだし。この状況でも織田家に銭を貸してくれ、と頼むお仕事が回ってくるのは必至かあ……
信行さまを暗殺するついでとばかりに、だいぶ清洲城にいた信行派の大物達も消されたようなので、会議のグダグダっぷりは多少マシになるかもしれませんが。
そのぶん、諸々の作業が回ってきちゃうというジレンマ。
でもあの人たち、正直いい上司じゃなかったというか、はっきりイヤな上司達だったので。
まとめて処理して、事の全てを背負って切腹してくれたという、池田恒興さまには感謝しかありません。特に蟹江城を私から取った角田をヤッてくれたのがグッド。
そういえば角田って、織田姓の誰かを殺害したって聞いた事があるような……
原因は確か痴情のもつれ(衆道)だったので、スルーされたんだっけ? まあ、もういない人だし、何でもいいです。
おっと、名古屋城ならぬ那古野城のあたりまで来ましたね。一息入れましょう。
と言っても、もし追っ手が来たら火をかけられかねないので、さすがに城下町に入れません。
近くの村に勝手にお邪魔して、開いている場所に座って、草鞋を脱いで足の裏を揉みます。
長距離の行軍は、これをやらないとマジでしんどくなるんですよね。おっ、ラッキー、井戸がある。水を飲ませてもらいましょう。
私1人だった場合、こんな事をしていたら、起きてきた村人達に不審者として袋叩きにされます。
しかし幸い、他にも清洲城からの逃亡者達が入れ替わり立ち替わり通っていくので、そんな事は起きません。
村人達は、早くいなくなってくれないかなあ。変な事しないでくれよ、と祈りながら、家の中でじっとしていることでしょう。
贅沢を言うなら、水じゃなくてお茶がいいし、お茶菓子も欲しいですね。
そういえば名古屋名物、熱田のきよめ餅って、もうありますかね。
伊勢神宮の近くには、餅菓子の店がたくさんあるのに、熱田には無いな。と気付いた商人が始めたのは知っていますが、いつからかは覚えてませんねえ。
無かったらいいな。いい商売のタネです。
いや、でもしばらく新規の商売に手を出してる余裕は無いな。熱田神宮からゼニを借りる材料に化けるのが、精々ですか。
ところで末森城に着いたら、信行さまとその周辺の暗殺とか、そのへんも坊丸さまに説明しないといけませんが、納得してくれますかね。
子供に「きみのお父さんは家臣に殺されて、その家臣は切腹したよ。これからはきみが次の主君だ。よろしくね」とか、脳がついてこれるかなあ。
というか、坊丸さまを現在保護しているだろう、祖母の土田御前はどう反応するんでしょうか。
なんか面倒になる気しか、しないのですが。
まあ、いいや。そのあたりは丹羽様に投げ…… いや、この気配。丹羽様も私に投げる気だな!?
よし。折衷案として、前田利家か慶次郎さまに任せるように提案しよう。私も丹羽様もやりたくないのなら、他へ回してやらなければいいのです。
なんだか前田家のふたりも、押し付け合いをしそうな気もしますが、まあ、手放した案件はもう他人事ですから。
私は、アレですよ。
たぶんこの機に、あいつがいなくなったなら、俺が店を仕切る! とか言い出しているだろう、あの元2号店店長のダメ亭主をシバいたり。
ちょっとばかり諏訪に横流した兵糧で、武田の過酷な税に苦しんでいる諏訪の土豪たちが、武田が内乱をしている! 好機! と、勝頼あたりを旗印に独立目指してくれたか、確認したり。
なんか不利になってるらしい、鳴海城の一向一揆勢に、途中で略奪しないなら伊勢の長島まで船をレンタルして出すよ。逃げるなら今でしょ。と打診した返事を待ったり。
必ず必要になるから、浅井家とのツテを作って下さい! と森家に頼み込んだ件の報告も聞いたりしないといけないので、わりと忙しいのです。
勝手に動きすぎ? いえ、大丈夫ですよ。
なぜなら私は、丹羽様の補佐ですからね。権限を借りるくらいは、日常茶飯事、いや通常業務で合法です。たぶん。
だってやらないと、織田家ごと滅びますし。
武田は動くと皆が困るので。内乱状態が長続きしますように、という願いを込めて、諏訪独立という追加要素を加えるというムーブです。
できれば上杉、今は長尾かな?
まあ越後の謙信の保護下にいるらしい、武田に快勝した後に宴会してたら、引き返してきた武田に滅ぼされちゃった村上とか、礼法で有名な小笠原とか、その辺の元諏訪や信州の土豪も参加させたいですけど、全くツテがないので……
鳴海城は、そのまま殲滅されるなら良いのですが、あちこちに飛び散ってゲリラや山賊化されると、このただでさえ人手が足りない尾張がさらに荒れてしまいます。
だから関連施設に引き取ってもらうという、ただそれだけの穏便な願いですね。
戦力が減って、三河の松平家が鳴海城を取りやすくなりますが、今の織田家にそちらまでかまっている余裕はありません。一向一揆という反社の統治下でなくなるだけ、よしとします。
松平家は今川家と戦うでしょうから、放置でよし。同時に織田家には手を出してこないでしょう。こないといいな。くるなよ。
元店長は、放っておいても嫁さんや他の店員がシバくでしょうが、私がシバきたいので。
浅井家とのツテは、浅井家も斉藤家の敵だからですね。敵の敵は味方。そうしたいじゃないですか。
今だって、浅井が「手薄になってるな、攻め込もうかな」と美濃の方をチラッと見てくれたなら、尾張にいる遠征軍は、慌てて帰るかもしれません。
周囲には、あとは伊勢の国がありますが。あそこは統一すらされていなくて、国内で仲良くケンカしているので、下手に手を出さない方がいいでしょう。
あれ? 国内問題はサッパリ片付いていないのに、国外問題は片付いた気がするぞ…?
いや、でも本当に片付いてるかな、これ。何か見落としとかありませんかね。
全部事後承諾ですけど、丹羽様に確認してもらいますか。
さあ、丹羽様。末森に着いたら、お仕事のお時間です。
オーク「早く人間になりたい」(作者:ボボッキュ)を後書きで推してみる
まだ6話ですので、追いかけやすいよ。
異世界異種族転生、悪種族。しかし意識は現代人… いやこれやや江戸武士メンタルかな? 自分がなってしまったこの種族は邪悪だ。滅ぼさねば(使命感)と動き出す覚悟決まり系主人公。メインウェポンは弓。