尾張グダグダ戦国記   作:far

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メモ帳に書いてから、ここにコピペするスタイルですが
今回、突然画面が右にスクロールし続ける現象が起きて困りました
スキャンして、マウスとキーボード掃除して
それでも直らず、PCの買い替えも考えて
最終的に、無線マウスのUSBポートに挿すデバイスの掃除で直りました。
普通に焦った。


【トンネルはないけど】国内だけど外国です。【雪国だった】

 

 はい。私、飛ばされました。

 地方に左遷されるとか、そういうのではありません。というか、織田家にそんな遠方の領地はありません。

 

 いや、三河湾内の島なら、ワンチャン…?

 

 いやいや、それすら今の織田家では、佐治水軍に断られるかなあ。

 

 佐治水軍は、知多半島。愛知県の2つの半島の左のほう。南にまっすぐ突き出した半島を拠点にした、三河湾と伊勢湾を縄張りにする水軍衆です。

 つまり、東海道の愛知と三重をつなぐ、海の道の覇者です。ありていに言って、かなりゼニになるのです。

 信長の妹の、お犬の(かた)が嫁に行っているくらい、織田家からは気を使われていました。

 

 旦那が例によって、長島で戦死したので実家の織田家に戻りましたが。

 

 有名な方の信長の妹の、お市の(かた)の娘のひとり、お江も佐治家の嫁に入っています。

 

 わずか1年後。小牧長久手の戦いで秀吉の怒りを買って、佐治家終了して離縁になりましたが。

 

 2人とも、のちに再婚しています。お犬の(かた)は細川の本家筋のほうへ嫁入りして、そのまま安泰。

 お江の(かた)は、秀吉の甥の秀勝と再婚して、娘も生まれますが、秀勝が朝鮮で戦死。

 普通なら、そのまま尼にでもなって歴史からフェードアウトするのですが、ここでまさかの家康の息子、それも第二代将軍徳川秀忠と再再婚。

 第三代将軍家光を含む、7人の子を産むミラクルを起こします。この人、いくつまで産んでたんだろう。

 

 こうして見ると、女系でも織田家の血筋ってパないですね。

 

 話を戻して、私の左遷。いや、左遷じゃないです。左遷されてません。出張。これはあくまでも出張です。

 甲斐や信州への入り口。ついこの間、武田家が尾張に出入りするのに使った、木曽路の門番。

 木曽福島城の城主、木曽義昌を訪ねてきたのです。

 

 メチャメチャ警戒されてますけどね。

 まあ、今まで時候のあいさつも、手紙のやり取りも無かった相手が、いきなり訪ねて来たら、そうなるでしょうけども。

 そのわりには、なぜかすんなり面会できました。なんででしょうね。

 

 なお、この木曽義昌。史実では勝頼の頃に武田を裏切って、信長に付いています。

 それで侵攻ルートを得た信長は、大軍を甲斐へと入れる事ができるようになって、武田滅亡へと大きく前進しました。

 

 会ってしまえば、こちらのものよ。

 

 だから少し、そんなふうに甘く見ていたところがあったのですが。

 彼も、国境の国人領主。大国の間を、あちらにつき、こちらにつき、状況と空気を読んで生きてきた老獪な男。

 思ったほど、簡単にはいかないようです。

 

 まあ、それでも彼が国人領主である以上は、何とでもなるんですが。

 

「こちらの要求を、もう一度。信濃の方々、特に諏訪氏と、今は越後の村上氏とつなぎを取っていただきたい」

 

「要求、ですか。我が木曽家は、武田の家臣。織田家の方に、命じられる謂れはありませんな」

 

 実際、信玄の娘を正妻にしている、歴とした武田家臣ではあるんですよね。

 両方にいい顔をして、両属になって、緩衝地帯として生存を図るタイプの国人だったら、話は違ったのですが。

 この人は常に情勢を見て、どちらかに頭を下げるタイプの国人ですからねえ。どちらの側にいるのか、態度をハッキリさせないと、命取りなのはわかるのですが。

 

「その武田とは、どちらの武田ですかな?」

 

「…………」

 

 武田家は、今も親子に分かれて内乱中です。

 同盟なんか知ったことか。今川を食うんじゃ派の信玄と、そんなだから信用されねんだわ。美濃か尾張でいいだろ派の義信ですね。どっちも他国に侵攻はするあたり、実に武田。

 

 双方ともに、冬の雪で身動きが取れなくなる前に、内乱を決着させたかったんだと思います。ですが、予定通りには行かなかったわけで。

 最初は信玄も義信も住んでいた、躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)の中で東西に分かれていがみあっていたんですが。

 それじゃラチが明かない、と義信が実力行使に出たのですが、なんか返り討ちにあったらしくて。

 しかし脱出には成功して、今川を頼って南へ逃走。

 今は富士浅間神社の大宮司の富士氏の居城、大宮城に入って、今川の支援を受けつつ春を待っているようです。

 待っている間は、信玄とお手紙を使ってのゲームが始まりました。

 

 甲斐国内の有力者達に手紙を送って、説得して味方につけるのだ。

 地形や兵力、武力などで狙いを定めて、地縁血縁、ゼニに利権、脅迫、人質、虚偽情報。様々な手段を駆使して、甲斐を勝ち取ろう!

 

 そんなゲームです。

 敗北したら、たぶん命は無いかな。とんだ闇のゲームですね。

 

 もちろん信濃の有力豪族の木曽氏も巻き込まれています。

 木曽義昌からすると。スジからすると、次期後継者の義信よりも現当主の信玄。そう言いたいのかも知れませんが。

 それで義信が勝った場合、木曽家の立場が悪くなる、下手をするとお取り潰し。それに領地の位置的には、武田が美濃を取ってくれたほうがオイしい。

 どちらに肩入れしていいかわからないが、いつまでも日和見していたら、それはそれで立場が悪くなる。

 そんな難しい選択を強いられているのです。

 

 だから助け舟を出してあげましょう。

 困っている人は助けてあげないとね。そして売った恩は、あとできちんと回収しましょう。

 恩には利息がつくどころか、だいたいは時間経過で目減りしていきます。恩にも鮮度があるのです。気をつけましょう。

 

「これはあなたにとっても、悪い話ではありません。諏訪が武田より離れたならば、それに対抗、監視をするために、木曽家は身動きが取れなくなる。そうでしょう?」

 

 動きたくないなら、動けない言い訳を作ればいい。そうでしょう?

 

「だからと言って、これ以上の武田の弱体化に手を貸せ、と?」

 

 おや、意外と忠臣ヅラをするじゃあないですか。

 国人領主とは、自分が勝手に動いて、そのせいで大国同士の戦になって大変な事になったけど、俺は得したからヨシ! という自分本位で勝手な生き物では無かったのですか?

 尾張はそんな国人たちがいっぱいいて、今もグダグダやってるんですが。

 

「それをするのは、諏訪や村上。あるいは、長尾。先ほども言いましたが、あなたはツナギを付けてくれるだけでいい。それだけで――」

 

 あなたの領土は、安泰です。

 

 この言葉に、木曽義昌は悔しそうな顔でしたが、それでも明らかに安堵していました。

 戦国時代の領主にとって、これ以上に大事なことなど、そうそうありませんからね。

 領地安堵さえ保障されるなら、だいたいの事はスルーされるのです。

 

 よし、交渉終了。

 特に何も出さずに、条件を飲ませましたよ。やったー。

 

 次は信濃にいる諏訪氏と連絡を取って、向こうに潜入して直接会って交渉して、場合によっては越後まで行って交渉続行ですね。ヤダー! お仕事終わんない!

 

 なんで私は、単独でこんな重要な外交交渉してるんでしょう。

 一応、部将には出世しましたが、それでもそんな偉くないはずなんですが。

 

 丹羽様の名前で好き勝手やりすぎた私が悪い。

 そう言われれば、はい。まあ、それはそうなんですが。

 

 外交関係のアレコレを報告したら、さすがの丹羽様もキレちゃったんですよ。

 あれは今までに見た事の無いキレ方でしたね。ヤロウぶっ殺してやる! って感じじゃなくて、信じていたものに裏切られた。許せない! って感じでした。

 

 今更ながら、申し訳ない。

 

 そしてキレた丹羽様は、私に仕事を投げてきました。

 

「お前ちょっと、諏訪を独立させてこい。いいから行け。できるまで帰って来れると思うなよ」

 

 目がマジでした。

 冒頭で左遷ではない、と主張していましたが。左遷ではなくとも、懲罰人事だった気がしてきましたよ。

 

 思えば、普段からの激務に、斉藤家の侵攻からの、清洲篭城、そこで一旦ストレスを爆発させて信行暗殺に(たぶん)加担。一度持ち直して、実行犯の盟友を切腹させて。

 包囲していた斉藤家を蹂躙しながらの脱出で、ひと時の爽快感を得たものの、脱出後は細々とした処理や、説明・説得・交渉の対人関係のお仕事でまたストレスを溜めていって。

 

 そこに私が、こんな事してました。と、各国への工作を事後報告

 

 うん。今更ながら、本当に申し訳ない。

 

 よく斬られませんでしたね。いや、斬っても問題は解決しないからか。

 私がいなくなった分の仕事も丹羽様にかかってくるから、むしろ問題は増えますね。

 

 出発前に足軽大将から部将に昇進させてくれたのは、時間を置いて理性が多少回復したからでしょうか。

 実際、足軽大将は足軽の最高位ではありますが、兵士の指揮官としての意味合いが強いですからね。交渉の場での肩書きには、場違いなので助かりました。

 

 新しく就いた地位の部将は、武将の誤字ではありません。そういう名前の役職があったのです。

 だいたい侍大将と同格ですね。これよりも上は家老になります。その上はもう、大名とか国主とか、最盛期の織田家の軍団長とかになります。

 

「では諏訪との連絡を待つ間に……」

 

 一度尾張へと戻って、自分の商売の様子を確認しようかな。

 そう思っていた私に、木曽義昌はとんでもない人物を引き合わせてくれました。

 

「ああ、お待ちあれ。実はそちらと同様の依頼を持ってきたヤツがおりましてな」

 

「はい?」

 

 えっ、諏訪独立を企む、武田の混乱よ長続きしろ。末永く分裂してろ。って願う人が他にもいたの?

 それどんな極悪人?

 

「今まで門前払いにしておりましたが、そちらのおかげで、決心がついた今、会わない理由はもうありませぬ。どうせヤツは明日もまた来るでしょうから、一緒に会いませぬか?」

 

「そうですね。一晩、ご厄介になります」

 

 そうかあ。なんのツテも無かったのに、ノーアポで来た私に、なんですんなり会ってくれたのかと思ったら。

 その先客がいたおかげだったんですね。

 1人だけならともかく、2人目が現れたら、情報収集するために話くらいは聞きますから。

 たまたま向こうが先に来ていたから、こっちが会えたのはラッキーでした。

 いやこっちを先にしたのは、部将という肩書きのおかげもあるかな。サンキュー、丹羽様。

 

 確かこっちの方は、高遠だか遠山ってところに、信長の叔母が嫁入りしてたような……

 という、あやふやな歴史知識で探してみましたが、どうやらあれは信長が美濃を取った後の出来事らしくて、チート不発したんですよね。

 マジでノープランでの飛び込み営業だったので、本当にラッキーでした。

 

 敵国ってほどではないけど、外国の余所者なので、いきなり斬り捨てられても不思議は無かったんですよね。

 いや、ほんと助かりました。サンキュー、先に来てた人。

 

 で、その先に来てた人なんですが……

 

 

「どうもはじめまして。それがし、三河の本多藤吉郎と申します!」

 

 

 秀吉じゃねーか。

 

 

 広い額に、ちょっと出てる歯に、低めの背丈。

 

 うん、秀吉だわ、

 

 でも本多って名乗ってましたよね。

 

 ほな秀吉とちゃうかー。

 

 でも指が6本あって藤吉郎なんですよ。

 

 お前秀吉だろ。

 

 よし、脳内セルフコントで少し落ち着きました。

 こいつはガッツリ巻き込んで、諏訪独立の仕事に便利に使い倒しましょう。

 それでいて、悪く思われないように、良い印象を残すように、気も使いましょう。

 

 勝ったな。

 この瞬間、なんかわからないけど、勝ちましたよ! なににかもわかんないけど!

 

 いや、待って。

 三河って言った?

 

 えっ。家康が秀吉を部下にしてんの?

 しかも本多って、忠勝か正信が、こいつを養子にでもしてるの?

 

 なにそれ怖い。

 

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