そんなこんなで始まった、諏訪独立の戦いですが、想定外のラッキーもあって、最初はかなり順調でした。
なんと、勝頼さまが高遠城の城主を、武田から任されたのです。
諏訪をしっかりと押さえとけよ。そういう意図だったと思われます。
盗人に追い銭というか、渡りに船というか。
大変に都合の良い展開に、勝頼さまは嬉しそうな顔をしていたのだと、容易に予想ができます。
その時に色々とバレないで、本当に良かった。
ところでターゲットにしていたのは、諏訪湖の近くの高島城なので、お間違いなく。
高遠城は、諏訪湖から25kmほど南の、小さな湖のほとりのお城です。
諏訪氏のお城ではありましたが、主流の頼重とは対立していて、そのおかげで武田に諏訪家の主流が滅ぼされた時も参戦せずに生き延びました。
諏訪を手に入れた武田相手に「そこを継ぐ権利がある」と、遺産狙いの親族ムーブをキメた結果、無事死亡しましたが。
武田の城になった後は、南の伊那方面への橋頭堡として役立ちました。
つまりここは、伊那との間の関所のようなもの。
伊那は義信と信玄のいる山梨県方面から、山脈で隔てられた西の平野部です。
ならば諏訪独立を他人事気分で、高みの見物をしてくれそうなものですが、そうはいかない事情がありました。
秋山信友(または虎繁)という有力な武将が高遠城主として入っていたからです。
史実では、有力すぎて伊那なんかに置いておけない。甲斐や前線で働け、と誰か部下を城代にしていたのですが。
武田親子の内乱状態の今世では、伊那地方の反乱防止に実際に城主として入っていました。
もし彼がそのまま城主であったなら、伊那勢をまとめ上げ、信玄の別働隊として諏訪の独立阻止へと動いたでしょう。
ですが、その展開はなくなりました。
むしろ伊那の土豪たちに根回しして、諏訪独立に続けとばかりに、武田を追い出す好機です。
武田四郎勝頼ではなく、諏訪四郎勝頼としての顔を伊那の土豪らに売るチャンスでもあります。
「新しく高遠城の城主になりました。よろしくね! と、地理把握をかねて、あいさつ回り行って来ます」
そう言っておけば、武田側にも不自然に思われないでしょう。
攻略対象は、礼法で有名な小笠原氏、の当主は追放されてるんで、地元に残って武田に頭下げた残党の人。
それと、伊那の飯田の南部をシメてる知久氏。
この両者、小笠原氏が武田の手先になって伊那制圧に加担してて、知久氏がそれに激しく抵抗して最終的に臣従しているせいで仲が悪いですが、がんばって説得して欲しいですね。(他人事)
地理的に、諏訪が落ちなければ、武田は大軍を伊那に進められませんから、説得の難易度は低めなので、まあ、いけるでしょう。
気を付けるべきは、情報漏れですね。
武田には、忍者というべき情報や諜報を行う集団の『三ツ者』があるし、土地の人間をスカウトして作った『草』という、民間に張り巡らされた情報網があります。
どこから情報が漏れるか、わからないのです。
一番バレたらマズい『勝頼が諏訪に寝返った』という情報は、隠し事が出来ない本人から、というのが一番ありそうですが。
まあ、そうなったら彼抜きで実行すると諦めています。
こちらの情報関係は、諏訪大社の大祝の諏訪氏が味方なので、寺社のネットワークを使っています。
神官、巫女や参拝者に信者。付き合いのある修験者を介したやり取りですね。
特に修験者は便利です。
山を聖域と見なして、そこに住み暮らし、駆け巡って霊的な力としようと日々修行しているので、普通の人々が通らない道を行き来して、情報を運んでくれます。
手間賃は取られますが。まあ、彼らも収入がないと、山の恵みだけでは生きていけませんからね。
前回、勝頼をひとりで呼び出してくれたのも、呼び出すのに丁度いい場所を教えてくれたのも、ひとりの修験者さんです。
お名前は覚円さん。高野山で修行していたこともある、本格派です。初期に彼と接触できたのは、幸運でした。マジで幸運でした。
というのも。なんかこのへんの修験者って、信玄の手の者がけっこう混じってるんだそうです。
歩き巫女なら知っていたんですが、修験者もそうだったのか……
覚円さんは、武田家の支配下になる前から信濃にいるので、征服者の信玄を嫌っています。
だから彼の弟子や、付き合いのある修験者や、地元出身の者は武田にはあまり手を貸しません。
しかし善光寺に、修験者でもある行者快賢という僧侶がいて、こいつが修験者の情報網を武田に提供しているのだとか。
善光寺といえば、令和にも残っていた観光地。もとい名刹。作ったのは確か……
……武田信玄。
そりゃ、武田に肩入れしますね。
その辺を解かっておらずに適当な修験者に仕事を頼んでいたら、信玄にバレていたどころか、都合のいいように動かされていた可能性すらあります。
ありがとう覚円さん。本当にありがとう。
そういうわけで、修験者を使ったやり取りも問題なく行えて。
信仰を使った情報のやり取りだったおかげか、こちら方面での漏洩はありませんでした。
ただ、商売方面から、物資の流れが怪しいと、商人か、物資の運び人か、どこかから漏れてしまったようですね。
序盤、諏訪湖の東の高島城と、ついでに近くの上原城を、向こうの兵が集まる前に奇襲で落として占拠したものの。
それが成功したのを見届けてから、諏訪のあちらこちらで土豪たちが立ち上がり始める中、わずか3日。土豪らがこちらへ応援に繰るよりも先。
早くも、信玄自らが率いる武田軍がやってきました。
まさに、早きこと風の如く。
向こうの動きは探っていたのです。動き出したのは解かっていましたが、まさかここまで早く来るとは、わかりませんでした。
う~ん、これは静かなること林の如く。
これで火の如く攻められて、占領されて動かざること山の如しされたら、非常に困ります。
ただの連絡と交渉役だったはずが、気付いたらこうして軍師みたいに作戦立てて、総指揮まで取ってる私の命が、危険で危ないので。
いまマジで、どういう立場なんでしょうね、私。
越後の村上氏などにとも手紙のやり取りで、協力を求めたのですが。
そこに書く署名の肩書きをどうしたらいいのか、本気で悩みましたよ。
織田家家臣って書いていいんだろうか。とか。結局は無難に、諏訪軍師としておきました。
諏訪頼忠から1000石ほどお給料もらってますし、間違いではないですよね。
そういえば、尾張でも私は領地ではなくて、俸給で働くサラリーマン侍だったのですが、出張中の給料ってどうなってるんでしょうか。
口座に振込みどころか、銀行さえ存在しないんですけど。
まあ、そんな疑問を覚えつつも書類仕事を日々頑張っていると、思うわけですよ。
勝頼ぃ! 本来はあなたの仕事ですよ勝頼ぃ、さまぁ!
雪の中を馬で、徒歩で、諏訪と伊那とを駆け回って、急がしいのは解かるけど、書類仕事も頑張れよ!
まあそんな、冬の間の臨時上司へのグチは置いておいて。
来ちゃった武田軍への対応を急がねばなりません。
占拠した後、行政本部にもなった高島城にて軍議です。
「ここ、諏訪へと軍で侵攻する道は2つ。青木峠と、杖突峠。東と南ですね。そして信玄は、これ見よがしに東よりやってきました」
「別働隊か。しかし勝頼さまが首謀者だという事は、大々的に広めたゆえ、向こうもわかっていよう。杖突峠は伊那への道。それでも来るか?」
「備えておくしかありませんね。それで兵を分けねばならないとしても。素通りされたら、伊那の者たちは立ち上がってくれません」
「確認するが、打って出ることは無いな?」
「はい。篭城一択です。予定通りに」
この場にいるのは、有力者のみ。
勝頼さまと、諏訪頼忠と、宮坂、千野などその重臣たち。
しかし軍議とはいえ、すでに打つべき手は打った後です。内容は、現状の確認でしかありません。
あとはこちらとあちら。どちらが先に結果が出るのかの、時間の勝負。
伸るか反るか、信濃1国を賭けての大博打です。
ハハッ、すごいですね。私、今、あの武田信玄と戦をしていますよ。
戦国時代で。知恵を絞って、自分と他人の命を賭けて! 歴史に残る大物相手に、勝とうとしているんですよ!
『何の冗談だ』
いつもの自分が、頭の中ではそう吐き捨てます。
しかし口は勝手に笑みを浮かべて、心は踊って仕方が無い。
なんだこれ、楽しいぞ。鳥肌まで立ってきた。
「大丈夫か?」
いつに無い様子の私に、勝頼さまが気遣ってくれました。
なぜか味方判定されたようで、私には甘いんですよね。そんなに武田の家中では敵だと思える人ばっかりだったんでしょうか。
実際、諏訪の側に連れてきた家臣って、いないですし……
母親の諏訪御料人も、何年も前に亡くなってますし、ボッチだった疑惑が出てきましたね。
史実だと戦に出まくって、積極的に手柄を立てようとして、一騎打ちまでしていますが。
もしかしたら武田家中に自分の居場所を作ろうと、我武者羅に手柄に手を伸ばし続けていた、ボッチの奮闘だった…?
「大丈夫です。ちょっと戦を前に高ぶっていましたが、もう落ち着きましたので」
本当にね。
かつてなくテンションが高まっていたのが、ボッチの悲しみに気付いてスンッって落ち着いちゃいましたよ。
さて。
小山田と穴山の、史実では最後に勝頼を裏切った面々には、何度かやり取りをした後、信玄にもバレるように手紙を出しました。
どうなるかは解かりませんが、何らかの騒ぎにはなるでしょう。
義信には、藤吉郎くんを送り込んで説得してもらいました。最低でも、甲府へのピンポンダッシュくらいはしてくれるはず。
信濃の民衆には寺社を通じて、郷土愛や、武田へのネガキャンを広めて『民意』を作りました。
逆に甲府の民衆には、先行きの不安や、越後すら動くかもしれないというウワサを、寺社を使って信者らから流して「もし負けたら…」という『社会不安』を醸成しました。
ついでに善光寺にも顔を出して、行者快賢とも会談して、民心を失った地を統治する難しさと、そのために流れる血と失われる命について、僧侶としてどうかと問うた。
そうやって情報戦、心理戦まで仕掛けて、外交的に武田の足を引っ張れるだけ引っ張りました。これも城を攻めるより心を攻めるのが楽、という孫子の兵法ですね。
軍事的には、武田軍の侵攻ルートの山間部に、隠れた休息所を作って、ゲリラ戦をやりやすくしてあります。
夜襲でぐっすり眠らせない、補給を妨害する、指揮官を暗殺する、などをやってくれるはずです。覚円さんが。
しかし援軍無き篭城は、勝利するには難易度が高すぎます。
だから、あとは越後から、村上氏と小笠原氏がどれだけの軍勢を、どれだけ早く連れてこられるかが、勝利のカギです。
最後が人任せというのが、どうにも自分らしく感じて、笑えますね。
これからの篭城戦の指揮も、諏訪家の方々に任せますし。というか、私の仕事はもうやり終わっています。
さっきも言いましたが、打つべき手は打った後。あとは結果を待つだけです。
あれ? じゃあ、私がこうして戦場にいる必要ってもう無いのでは?
尾張に帰っちゃっても、良かったのでは?
いや、その場合は勝頼さまが「う… 裏切られた!」って思ってしまって、以降の外交的にマズいか。
しかし、そうすると。尾張に帰るタイミングどうしますかね。
私の出張って、いつ終わるんでしょうか。
今回は鬼滅の刃の二次創作を推してみる
Pixiv の ライカ 氏 の 逆行ジェノサイダー兄上
原作で消滅後に、気付けば赤子の自分に戻っていた兄上。
縁壱に、手を抜け、人より二歩先ほどで抑えよ。と諭して大人しくさせておいてからの、身代わりにしての入れ替え脱出。鬼殺隊へ入隊して、縁壱の代わりに輝こうとする。
そしてなんやかんやで無惨さま討伐成功するも、鬼にはされて
その後はなんやかんやあって、鬼食いの部下の血鬼術の副作用?暴走?で、原作にもちょいちょい関わる兄上。
俺の弟は剣など握らず、ただの人として生きて死ぬのだ。(バケモノは出てくるな)という兄上が、琴線に触れまくりの不死川さんとか面白いよ。
文章も描写がしっかりしてます。