諏訪への出張が無事終わりました。
冬から春にかけての4ヶ月くらいでしたが、妙に長く感じましたね。
最終的には、武田はだいぶ消耗したので、任務完了です。
川中島の武田軍の動きをダイジェストにまとめると。
謙信と戦いながら、一部部隊を割いて、後背を襲ってくるだろう信濃連合を逆に奇襲。
しかし戦力が減ったせいで、謙信の突撃を受け止めきれずに、軍の左翼が崩壊。
奇襲されつつも持ちこたえて戦闘になっていた信濃連合を、戦っていた味方ごと飲み込みながら撤退。
という感じだったそうです。
必死に逃げる兵の群れに飲み込まれた信濃連合の人々は、撥ねられたり、倒れて踏みつけられたりして犠牲者は出ましたが、死者は少なかったみたいですね。
勝頼さまも無事です。むしろ逃走中の土屋昌続を見つけて、討ち取ったとか。
いや、その人、信玄のオキニで武田24将で、なおかつ強い人だった記憶が……
なにしてるんですか、総大将。
いやいや、その人がいたって事は、その近くに信玄がいた可能性が高いですね。仕留める好機を逃がしましたか。
なにしてるんですか、総大将。
いやいやいや、信玄がもし亡くなっていたら、武田の跡継ぎ問題が発生します。
対立中なので、すんなりと『嫡男の義信が継ぐ』とはいかないでしょう。家臣らの間でモメます。
そして、家臣らが『武田の後継者』でモメるという事は。家臣らが『武田の後継者』を誰にするのか、口を出せる、決められる。という事になってしまいます。
そうやって決められた当主の持てる力というものは、果たしてどれだけのものが残っているのか。
小領主たちの寄り合い所帯のまとめ役。それが普通の大名家です。
そこから抜け出して、確固とした命令を家臣らに強いることが出来る、中央集権に成功した大名を、戦国大名といいます。
信玄は武田をそうする事に、ある程度成功しました。
それが無になって、甲斐がグダグダのまとまりすらない、ただの山賊の群れと化す所でしたね。
そうなると、統治に失敗したり、何か無茶やったり、内部で勝手に隣の領地に攻め入ったりで。
そういう諸々で発生した、流民爆弾が東海道や関東や、諏訪に連打されていた可能性までありますね。
なにしてるんだ勝頼。
まあ、そうはならなかった。ならなかったので、よし。としましょう。(自己暗示)
そんな状態だと、さすがに見捨てて尾張へと帰り辛かったでしょうし、諏訪頼忠さんも仕事の手が欲しくて、引き留めにかかったでしょうからね。
藤吉郎くんは、そんな状態でも普通に帰りそうですけど。
そういえば彼は、諏訪頼忠から給料をもらえてるんでしょうか。私は1000石の証文もらってますけど、これもしかしたら彼の分も込みだった可能性が…?
……面倒なので、気付かなかったことにしましょう。
換金して山分けしても、持ち運ぶのが手間ですからね。米だと言わずもがな、ゼニでも全部銅銭だと、どれだけの重さになるやら。
金や銀だとマシでしょうが、私も彼も独りで出張してきているので、道中の危険度とか、関所で取られる、もとい盗られる危険がね?
まあそんな自己弁護は置いておいて。
これで信玄は数年の間は、信濃へ打って出る力を無くした事でしょう。
勝頼の信濃も、地盤を安定させつつ、武田に吸われた国力と独立戦争で消耗した兵力を回復する必要があります。
義信に至っては、城は富士氏からの借り物で、兵力その他もその通りで、あとは今川からの援助頼りなので、そもそもあまり動けません。
もしこれ義信が勝っちゃったら、家臣の力を借りての当主就任なので、だいぶ弱い立場の当主になりますね。
そう言えばそんなパターンで、地方統一にあと少しという所で失敗した家がありました。
奥州の伊達家です。伊達政宗の祖父と父の時ですね。
戦も内政も調子良くて、子沢山だったので、他家にバンバン嫁や養子に行かせて、奥州全て伊達一族。伊達の宗家がその一族のトップ。すなわち奥州のトップ!
という戦略が成功しかけた時に「それだと伊達宗家が強すぎて困る」と、権益などを削られそうな家臣らが、次期後継者を担いで伊達家は内乱に。
結果、後継者の息子が勝つも、家臣が「私たちのおかげで当主になれたでしょ?」と、ちょっと権益を拡大。
傘下だった大名たちも、伊達家が弱ったなら、言うことを聞かない。
残ったのは多すぎる、かつ複雑すぎる親戚血縁関係です。
「あれ俺の甥っ子なんだよな…」「あっちの嫁、妹なんだよなあ…」みたいなケースが多すぎて、戦がなあなあになって、ついにはお互い事前に話し合っての予定ありきの、通称奥州プロレスに…!
逆に平和になったのかもしれませんが、武田の場合は違います。
たぶんですが「フトコロが寂しいんで略奪行きたいです」って家臣の願いで、いっそう凶悪な山賊ムーブに……
信玄だと内政も頑張るので、無軌道な山賊ムーブにはならないんですよね。
河川整備など、複数の家臣の領土にまたがるので調整が面倒かつ、言う事を聞かせる豪腕が必要になる案件もサバけますし。
でもその分、やる時は国ごといくような、強力な大山賊ムーブに……
でも勝頼に勝たせてもなあ……
あいつ、国主としては強引で戦に傾きすぎてて、領土は勝ち取れるけど荒れ放題です。とか、やりかねないから……
こうして見ると、どうなっても周辺にとっては厄介ですね。
やっぱり武田は、滅びるべきだった?
まあ今回の出張で山賊の群れが3つに分かれて、しかもお互いが仲悪いので、以降の被害は軽減されるはずです。
無くならない辺りが、実に武田ですが、出張の目的は果たせたと言っていいでしょう。
そして出張が終わると、何があるのかご存知ですか?
そう、次の出張が始まります。
なんでやねん。
しかも諏訪では「無茶なお願いして、悪いなあ」と諏訪頼忠さまが1000石を証文でくれましたが、今回はそういう手当ても無さそうです。
戦国時代には、危険手当も出張手当もないんだよ。
いや、その分働いたから給料上げて。という交渉は出来ますし、ある程度は通るでしょう。
でもそういう労働争議を度々起こす部下って、心象悪くして出世が遠のいたり、だんだん待遇が悪くなったりするんですよねえ。
あんまり主張しなさすぎるのも、便利に使い潰されるんですが。
何事も程々が肝心。そういう事です。
私の場合かなりやらかしている自覚があるので、どの程度がいい塩梅なのか、もうわかんないんですけどね。HAHAHA。
でも今回の出張は、かなり要求してもいいと思うんですよ。
最後の最後、なんか勝頼さまにかなり引き止められて、大変でしたし。
1年どころか、3ヶ月くらいしか付き合いが無いのに、なんでここまで懐かれてるんですか。
「お前は俺の!」
とか言葉足らずに、どこぞの黒服の軍人みたいなセリフまで叫んでいましたが、俺の、なんだったんでしょうね。
軍師といえば軍師ですが、手紙では隠してましたが、たぶん臨時って付くし。
味方ではなかったのか、とか言われても、味方しましたよね? で、味方し終わりましたよね?
まあ武田の中でたった一人で「ねえボクも仲間に入れてよ!」「ほら見て、こんなに頑張ったんだよ!」「うん、次も頑張るよ! だからボクを見てよ!」みたいなノリで人生送ってたみたいですからねえ……
でも結果は、毎回戦に出て、活躍だってしていて、それでもボッチ人生ですからねえ……
なんか同腹の弟がいたらしいですが、史実では信玄が亡くなった後、家臣らが「勝頼よりも、こっちを担がないか?」と真剣に検討したらしいし、おそらく兄弟の仲も……
そんな状況から救い出したとか。
ひょっとして私、飢えた野生のナニカにエサをあげちゃいましたか?
それによく考えたら今世の勝頼って、まだ武田じゃ初陣すませたか、すませてないかくらい若いですよね。
人生経験足りてないのと、まだ色々と耐性が出来てなかったから、こうなっているのか。
そう考えると、アイツよく武田24将を討ち取れましたね。返り討ちになってた可能性が、かなりありますよ。
まさかそれが信玄の狙いだった…?
諏訪勢が追いかけてくるだろうと読んで、伏兵を置いておく。
しかしそれで仕留めるだけの兵は、謙信相手では抜けないから、足止めさせておく。
そこから全軍とって返して、諏訪勢目掛けてなだれ込めば、諏訪勢には勝てる。
勝頼の性格上、攻めてきている見込みはかなりあるので、討ち取れればなお良し。
ありそう。
でも謙信に軍が乱れるほど叩かれてしまったので、無秩序な敗走になったせいで、諏訪勢を叩いている余裕が無くて。
偶然勝頼を見つけたので、側近として近くにいた土屋に討ち取らせようとして、逆に首を取られてしまった、と。
戦術で勝てる算段つけて、戦闘で負けてる。これは信玄かわいそう。
なんか帰り道でも、修験者の覚円さんに輜重隊だけ狙って襲われて、馬と兵糧をかなり奪われたり燃やされたらしいですし。
信玄が諏訪に来る時に邪魔して、時間を稼ぐつもりだったゲリラ戦の用意が、来るのが早すぎて無駄になったと思えば、まさか帰り道で役に立とうとは。
やっぱり信玄かわいそう。
それでもまだ山縣とか真田とか、有力な武将がいっぱいいるので再起可能なあたり、武田家は怖いですね。
だから今のうちに帰らせて下さい。
勝頼さまには、住む所と収入と地位と家臣と領土と、その運営方法まで用意したじゃないですか。
これ以上信玄の対策とか、謙信へのお礼とか考えるのイヤでござる。
信玄へは、地元対策も兼ねて、諏訪大社を経由して朝廷からなんか官位を貰って大義名分バリヤーを張っておきなさい。
武田相手なんで、パリーンと割れそうですが、無いよりマシです。
謙信へは、武田に吸われなくなった分の米を売ってやりなさい。お礼なので、ちょっとお安く。
向こうはゼニなら持ってますから、あげるとかはしなくていいです。
これで当面は持つでしょう。だからこのまま諏訪にいるコースは、お断りします。
「すみません。私には、すでに主がおりますので。それに離れていても、諏訪の力にはなりますよ」
なんか「既婚者です」って断る人妻みたいですね。
自分で言っていて、そんな益体も無い事を考えながらも、友情っぽい演出で、何とか事態を乗り切りました。
「あなたには、あなたの道と戦場が。私にも、私の道と戦場があるのですよ」
そんなそれっぽいだけで、中身の無いセリフも有効でした。
セーフ。
口からデマカセというか、弁舌というか、言いくるめのスキルが上がっているのを実感しますね。
あれ? ひょっとしてこれが今の私のメインウェポン…?
現代知識チートとか、指揮能力とか武力や、百歩譲って謀略じゃなくて?
えぇ……
そんな事実に気付いてしまった悲しみを、勝頼さまと一緒に諏訪へと置き去りにして。
仕事がやっと終わって、無事に帰れる。その達成感と喜びとともに、諏訪湖から天竜川沿いに木曽家まで戻ってきて。
さあ、ここで少し話し合ってから尾張へ……
という所で、丹羽様からの使者が到着して「ご苦労さまでした。では次の仕事をお伝えします」とカマされたわけです。
これ私、怒ってもいいですよね。
いやでも、諏訪に行って来いって命じてた時の丹羽様、ガチギレしてましたし、まだ怒ってるのかもしれません。
それでも連続は、やりすぎじゃないかと思うんですよ。
きみは思います? 使者の堀久太郎くん。
もう251話にまで続いていて、長いですが、1話あたりは5分しないで読めるのと
日刊で増えてゆくので、読み始めるならまだ今のうち。ということで
カクヨムの のらしろ 氏の 名も無き民の戦国時代 を推してみる。
伊勢の桑名に、子供の状態で倒れている所からスタート。マジで何も無い。
そのままだとさすがに死ぬので、僧侶に拾われて、あばら家と、同じく食い詰めてる大人2人のところに置いてもらう。
そして1年後には作った村の長になっていて、2年後には伊勢を獲っていた。
展開がすごく速いです。そのために、主人公とその集団は常にブラック労働中。
主人公は思いつきで行動して、仕事を増やしてしまうセルフ社畜です。生前は学生だったはずなのに。