尾張グダグダ戦国記   作:far

27 / 92
小中学生の頃、必死に量を稼いで埋めてた原稿用紙
あれ、1枚たったの400文字だったんだなあ…
これ1話平均、11枚使ってるという事実。


【思い付いたら】いざ桶狭間【即実行】

 

 はい。琵琶湖が本体の滋賀県、近江の国から、浅井家がここ、私の出張中の美濃に攻めてきてしまいました。

 帰蝶さまが「ワタシが前に出ます」とワガママ全開でしたが、最終的には私も半兵衛どのもこれを認めました。

 

 いや、決して説得が面倒くさくなったワケではなく。

 

 浅井軍は稲葉山城の近くの村を荒らしていたのですが、それが100名程度の少勢だったからです。

 それくらいなら(帰蝶さまが出ても)ま、ええか……

 そう思ってしまった私たちは、後から思えば感覚が狂っていたのでしょう。

 

 普通は28歳の戦った事の無い女性を、本人の希望とはいえ戦の先頭に立たせないんですよ。

 それも動機が、憧れって。それ普通は、実際に人を斬ったら、心が折れるヤツですよ。

 

 16人で巨大な稲葉山城を占拠したばかりの半兵衛どのも。某無双系のゲームの意識で、ネームドなら戦えるだろうと思ってしまった私も。

 許可を出した私たちは間違いなく、思考がオカしかったんだと思います。

 間違える時は、だいたい両方とも間違える。息が合うというのも善し悪しですね。

 

 これ普通なら帰蝶さま戦死して、責任問題になってたんじゃないかなあ……

 

 帰蝶さまが先頭で突っ込んで、勢いよくスパッと1人を斬った。

 その兵の上げる悲鳴と、吹き出した血が帰蝶さまに降りかかって、動きが止まり……

 

 みたいな感じで。

 

 え? そこで助けに入ってフラグを建てるのが、主人公の仕事じゃないのかって?

 そこから斉藤家への入り婿として、美濃国主になって、天下統一の戦いへと漕ぎ出せって?

 信長の愛したここ岐阜城(稲葉山城)から、信長に憧れる帰蝶と一緒に、天下人に 俺はなる! って?

 

 ノーコメントです。

 

 出陣を許可したのと、その後に鎧を探して身に付けるのを手伝ったり、世話を焼いて多少は好感度を上げましたが、その程度です。

 それにそもそもあの人、戦場でピンチになりませんでしたし。

 いや、ピンチにならなかったというか、普通に活躍しちゃったというか。

 

 実際の結果としては、私の無双ゲーのイメージが正しかったという、現実のほうがオカしい不具合が発生しました。

 なんで馬に乗れるの、あのアラサー姫様は。

 

 さすがに専用の鎧までは用意していなかったので、城にあった中で着られるやつを身につけて。

 当時の日本の馬、それも山国の美濃の馬なので、小さめでガッシリした馬に乗って、ナギナタを装備。

 馬上からそれを左右に振り回しながら駆け抜けて、相手の兵たちを蹴散らしていきました。

 

 他の面々はもちろん「後に続けー! というか追い越せー!」ですよ。

 『戦場で女ひとりを先に行かせて、討ち死にさせました』ってなったら、武士として生きていけません。

 「その時、お前は何やってたの?」と聞かれても、答えられませんから。だから必死に追いかけるしかないわけです。

 

 武士は恥を知ったら、潔く切腹せねばならない。という武士道大原則にモロに引っかかりますからね。

 なお他にも、舐められたら殺せ。とか、殺したらヤベー奴やヤベー場所でも殺せ。その後に切腹しろ。など、サツバツルールがいっぱいです。怖いね、武士道。

 そりゃ『大発見! 毎朝「あっ死んだ」って自己暗示かけてたら、いざ死ぬ時にすっごい楽!』(意訳)って書かれた書物が、名著にもなるわ。マジ葉隠れ。

 

 幸い、そんな事態は回避できました。帰蝶さま大勝利。いつもより必死に戦っていた味方たちも、これにはホッと一安心。

 しかし私と半兵衛どのは笑っていませんでした。

 

「半兵衛どの。これは、少なすぎますね」

 

「ええ。ということは、これは……」

 

「どこまで広がっていると思いますか?」

 

「西美濃次第では? 日和見ならともかく、協力していたら、速まります」

 

 解からないと思うので、解説しましょう。

 この時は、お互いに時間が無いと焦っていたので、言葉数が少なくなっていたのです。解かりにくくて、申し訳ない。

 『同類』同士の認識の近さのせいか、割と思考が読めるというか、解かり易いので、その気になったらこんな感じになってしまうのです。

 

 まず少ない、というのは兵の数です。

 『それにしても少なすぎない? という事は、こいつら、薄く広がってない? ゲリラ戦してない? 浸透破壊工作してなくない?』

 と、まずは半兵衛どのと、この危機感と懸念を共有しているかの確認をしました。

 

 それから『広まってるといっても、範囲どんなもん? 地元の土地勘あるだろ。予測して』と聞きまして。

 

 『西美濃の国人らが浅井に協力してたら、そいつの領土は高速スルー。日和見なら適度に荒らされつつ進軍でそこそこが時間かかるから、国人次第』

 と、半兵衛どのが『情報不足でわからない』と答えたわけですね。

 

 情報不足であるならば、当然ここでやるべきは、情報収集です。

 地元の領主らもどこまでが味方で、誰が敵に回ったのかを調べねばなりません。

 浅井家の手が、何処まで伸びているのかも。

 

 しかし浅井軍が広まっているということは、本陣はその分手薄になるわけで。その本陣の位置さえ探り出したら……

 ってこの状況、アレですね。

 

 

 史実の桶狭間ですね。

 

 

「急にどうしました? 悪い顔をしていますよ」

 

「ええ。策を思いついた兄上のような顔をしています」

 

 どうも笑っていたようで、竹中兄弟からツッコミを受けてしまいました。

 弟の久作くんは、私にツッコミつつ兄をディスるという高等テクニックを披露しました。意外とデキるなキミ。

 その2人を無視して、戦の後で興奮が醒めて、アドレナリンが切れて疲れが一気に襲ってきた様子の帰蝶さまに向かいます。

 

「そのまま息を整えながら、お聞き下さい。まずは無事の初陣、おめでとうございます」

 

 そして状況を説明します。

 浅井軍がここまで来ている、そして軍を小さく分けて村を襲っているという事は、こちらの補給を断ちにきたという事。

 おそらく、そうしてから稲葉山城を包囲して、その間に龍興を捕らえるなり討つなりして、それから旗頭とまとまりを無くした美濃を、ゆっくりと占領するでしょう。

 

 ならば、どうする? と視線で問う帰蝶さまに、甘言を口にしました。

 

「信長様ならば、きっとこうしました」

 

 いつもなら、こうはしません。しかし今、私は意識して、意図的に騙しています。悪辣な行為をしています。

 だって、これは実に面白そうなのです。

 

 攻め寄せる大軍を前にして、相変わらず家中の統制は乱れていて、単身で飛び出して。

 それでも付いて来た家臣らを率いて、その中で標的を探し出して、敵大将を討ち取った。

 

 そんな史実の織田信長を、今世で帰蝶さまがやってのける。

 これは本当に、面白そうなのです。

 

 しかも成功率もそこそこ見込めます。

 地形を生かすことに関して達人。少数の伏兵をいくつも戦場に用意して織田信長を破った、十面埋伏の使い手の竹中半兵衛がいます。

 

 史実だと一昨年あたりにあったはずですが、どうなりましたかね?

 この戦いは織田信清と龍興が組んだ時の話なので、今世だと信清がどうなったか次第ですね。

 確か信清は、森さんが一回反乱起こした時に一緒に立ち上がってましたっけ?

 でも共謀したわけでもなくて『チャンスだ!』と勝手に立ち上がっただけなので、森さんが丹羽様の説得で元鞘に戻ると、孤立状態になって。

 織田に戻った森さんの忠誠の証にと、討ち取られちゃったんでしたっけ。

 

 あれ? そうすると半兵衛の軍歴や功績、史実よりも少ない…?

 

 い、いやそれでも半兵衛は半兵衛です。腐っても鯛。きっと何とかしてくれると信じましょう。『同類』ですし。

 

 美濃という地元補正のある地の利を生かして、きっと浅井軍の本陣を探し出してくれるでしょう。

 

「浅井軍の本陣を探り、そこへと奇襲をかけましょう。私も同行します」

 

 そして、私の武運も試してみたいのですよね。

 織田信長。織田信広。

 この2人を討ったこの弓は、浅井長政は討てるのかどうか。

 

 と、いうか。

 

 『うっかり討っちゃった』みたいなのばっかりじゃなくて、ちゃんとした武功も欲しいんですよ…!

 表沙汰に出来ないヤツ<ノブナガ>とか、あんまり誉められなかったヤツ<ノブヒロ>とかじゃなくて、きちんとしたトロフィーをね?

 もう久作くんみたいに『えっ、それ誇るんですか?』みたいな微妙な反応をされる武勇伝だけなのは、イヤなんだ…!

 

 えっ。『織田家臣のお前が、なんで美濃で武功立てたんだ』って思われるだろうから、どの道、微妙な顔はされる?

 

 それは、それ。まずは一歩前進で、最初から完璧は求めないという方向で。

 

 あと、独自に改造した弓の試し射ちがしたい、というのもあります。

 定番の滑車は目立つので諦めましたが、竹を細く削った竹ひごを束ねて芯にした、戦国後期モデルを一足早く開発。

 それにアーチェリーに付いていた照準器モドキを搭載した、私なりの弓を作ったんですよね。諏訪で。

 

 はい。諏訪で、です。勝頼さまにも差し上げたら、思った以上に喜んでましたねえ。

 藤吉郎くんには教えすらしませんでしたが。彼にいい武器を教えるのは、ちょっと怖すぎます。

 勝頼さまにはいいのかって? いや、まあ、多分大丈夫かなって。特に根拠はありませんが、大丈夫な気がします。

 

 で、まあ、やっちまったものは、もう仕様が無いとして。

 

 そもそも浅井長政が美濃に来ているのか? という話ですが。

 他国に軍を率いて攻め入る、という大規模な軍事行動に、浅井長政なら参加している可能性がとても高いです。

 だって長政も、指揮官先頭を何度もやらかした人の一人ですから。

 それで近江の桶狭間こと、野良田の戦いを勝ってたりするので、周りの大人たちは説教しにくくて困ったと思います。

 

 野良田の戦いは、今世でも2~3年前に起こった、六角軍2万5千 対 浅井軍1万 の戦いです。

 長政は『腕に覚えのあるヤツ集めて殴りこむ』という脳筋戦法で、その不利な戦いを勝利に導いた経験があるのです。

 そりゃあ、今回みたいな侵攻にだって、自らやってきてしまうでしょう。

 

 そんな彼ひとりが、標的です。

 

 長政を討ち取れれば、浅井軍は引いていくでしょう。たぶん。

 義龍が死んでも斉藤軍は帰らなかったけど、浅井はたぶん帰るはず。

 浅井は先代の久政だったかが健在なので、浅井もそう酷い事にはならないはずです。

 久政は一回、家臣らにクーデターされて隠居させられてますけど、その時の旗頭は長政だったので、長政がいなくなればセーフ。たぶん大丈夫。

 

 と、いうわけで。浅井長政さえ討ち取れれば、今回の戦は片付くのです。

 ならあとは、その成功率を出来る限り上げるだけですね。

 そのために頑張って長政を探してください、半兵衛どの。帰蝶さまは乗り気になっちゃったから、後戻りは出来ないぞ。

 

 お前も偵察手伝えって?

 なぜか少数のお供だけでうろついていた、豪華な鎧を着た武者に遭遇して、矢を撃ったら討ち取れてしまって。

 それが浅井長政だったりする謎イベントが起きそうだからイヤです。

 




カクヨム より、公社 氏の 旗本改革男 を推してみる
青木昆陽に師事してサツマイモの栽培を江戸周辺だけではなく全国区にしたり、オランダ語の解読に手を貸したり。
コネが無ければそのまま市政の学者止まりだったのが、御三家に縁が出来ちゃって、将軍暗殺を止めたところから出世してついに、江戸幕府そのものの改革が始まる。
再評価のされた1人、田沼意次などがいい味出してます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。