尾張グダグダ戦国記   作:far

32 / 91
突然の車のパンクの修理って、時間かかりますよね
遅くなりました。

それと、また書き溜めになります。


【実家のような】新たなる仲間と、暗黒労働へと挑む【安心感】

 

 はい。久しぶりに尾張へと帰ってきました私です。

 

 えっ? 六角家へ行くんじゃなかったのかって?

 

 半兵衛どのは常識をわきまえた人ですよ。

 六角家へ行く前に、まず斉藤家との和平の条件やら、今回の私の仕事やらを報告する必要がある。

 そんなごくごく当たり前の事を、言わずともわかってくれました。

 だから、こうして一度尾張へと帰って、丹羽様へと報告しているわけです。

 

「お前は何処の、それと誰の家臣なんだ」

 

 腕を組んだまま目を瞑って、軽くうなりながら首を斜め上へ向けたり、下へと向けたり。

 そうして「何から言うべきか…」と、悩んでいたと思われる丹羽様が最初に発したのは、その質問でした。

 

 正直に言うと、給料を払ってくれる人の味方ですが。

 

 これをそのまま言うのは正直すぎます。

 なので、なんかいい感じに言葉を飾れ、我が最強スキル弁舌よ――!

 

「ご恩と奉公。武士の習いは私も心得ております。織田家以外に、さほどの恩を受けた覚えはございませんよ」

 

 まだ微妙な顔をする丹羽様に、追撃の言いくるめを発動。

 

「事実、こうして帰ってきたではありませんか。私は依然として織田家の家臣で、丹羽様の部下ですよ」

 

「それは、まあ…… そうか。うん、そうなのだよなあ……」

 

 おかしいな。納得してくれたはずなのに、丹羽様の微妙な顔が直らないんですが。

 むしろ苦味が増しているんですが。

 

「コイツの上司かぁ……」

 

 あっ、言っちゃった。

 それを言ったら、角が立つでしょう、丹羽様。

 まあ、面倒くさいので、聞こえなかったことにしてスルーしますが。

 でも軽い仕返しはします。さあ、丹羽様。 お仕事です。

 

「改めて報告しますと『諏訪を独立させよ』との命令は『信濃の国ごと独立』させ、達成しました。

 つきましては、継続して武田家への盾として使うため、交易で力をつけてやる必要があります。詳細は丹羽様へお任せしますのでお願いします。

 またそのために、一部街道整備も必要となります。費用は該当箇所の木曽家と、諏訪家、織田家で各々3割ずつ負担。なぜか私が残り1割の負担となります。

 予算の捻出と、工事の手配と、責任者の選定をお願いします」

 

 まずは信濃関連のあれこれだ。くらえっ!

 

「そのあたりは、久太郎を諏訪までやってこちらでも確認した。すでに工事にも着手している。更に同盟を結ぶかも検討中だ」

 

 なん… だと…

 

 い、今起こった事を、ありのままに言いますよ。

 

 『私は仕事を投げたと思ったら、もう処理されていた』

 

 これが超スピードか。催眠術で誤魔化すなんてチャチなものでは断じてありませんね。

 もっと恐ろしい“米”五郎佐の実力の片鱗を味わいました。

 

 でも負けっぱなしは悔しいので、お仕事追加で。

 

「続きまして美濃の報告となります。私が美濃に到着した所、丁度浅井家が一向宗と共に攻め入ってきましたので、一緒に戦いました」

 

「なんでじゃ」

 

「製紙工房ですよ。木曽川を使う事と、川並衆への制裁。両方の黙認を確約してもらった代わりに、合力しました。書状はこれに」

 

 今回は公務なので、清洲城にある丹羽様の執務室での報告中です。

 椅子ではなく、板の間の上の座布団に座って、低い机に向かっている丹羽様は、私から手渡された書状を広げて確認しました。

 これがいつものように居酒屋だったなら、何かをつまみながら軽く一杯やりつつだったでしょう。

 

 なお、突然社長がいなくなった我がグループですが、無事に回っていました。

 駆け足で顔合わせと、私がやっていた仕事の引継ぎ…… というか、あれは押し付けに近かったですね、今思うと。

 ともあれ、急きょ4号店の店長に代理を任せていたのですが、おおむね問題は無かったようです。

 私が尾張を離れて半年ほどなので、大きな問題は発生していないだろうとタカをくくっていましたが、それすらも杞憂でした。

 

 さすがは歴史に名を残した男、木下長秀。歴史に残った名は、豊臣秀長

 

 はい。なんかいつまでも中村に残っていたので、スカウトしました。

 武士じゃなくて商人の方で。

 

 なんでって?

 そっちの方が渡せる給料多いんですよ。武士としての部将の禄よりも、店の稼ぎの方が大きいんですよ。

 どっちがいいかって本人に聞いたら、商人選んじゃったんですよ。

 

「給料は安いですが、武士をやりませんか? いつかは、城持ちにも出世できるかもしれません」

 

 こんな風に、ドリーム目指さないか? と誘いもしたんですけどねえ。

 目の前のお金には、勝てなかったよ……

 

 まあ、今回助かったので、結果オーライです。

 

 「新参の店長が仕切るのかよ!」と、元2号店店長が騒いだようですが。

 

「長秀の4号店は、出来たばかりの店で、方向性も違う。最悪潰れてもかまいません。だから彼に、あなたたちの店を守らせます」

 

 そうやって、前もって他の現役店長や店員達を誤魔化し、もとい根回ししてありましたので、誰も賛同せずに白い目で見られるだけで終わったとか。

 実際のところは『コイツならやってのけるだろう』という、分のいいバクチ程度のつもりで、4号店を潰していいとか、サラサラ思ってなかったんですけどね。

 

 方便方便。私よりも更に若い、長秀に社長代理をやらせるための、ただの建て前ですよ。

 まあ、潰れてたら潰れてたで、将来豊臣秀長になれる若者に大きな貸しが出来ていましたので、それはそれでオイシイし……

 

 ふむ。この半年で慣れてきたでしょうし、新しい店でも1から作らせますかねえ。

 4号店は気が付いたら、長秀の妹さんも店員やっていましたし。4号店は彼女に任せられるよう鍛えながら、新店舗を作ってもらいましょうか。

 蕎麦の消費と生産を後押しすべく、甘くないクレープこと、ガレットを売ってもらいますか。

 具は、キノコとネギの山の幸系と、塩漬けのイワシや、アサリ、シジミの海の幸系で。豆腐をチーズの代わりにして、八町味噌で味付けした和風もいいですね。

 肉も使いたいですけど、そっちは居酒屋で使いますからねえ……

 それに肉を使わない事で、居酒屋には来ない客層をつかむ事が出来るかもしれません。真面目な坊主とか武士とか。

 

 おっと、つい商売の構想に夢中になっていました。

 今は、丹羽様との話に集中しないと。

 

「で、その木曽川のあれやこれやは、誰がやるのだ?」

 

「無論、丹羽様でございます」

 

 いかにも面倒臭そうに、こめかみを軽く揉みながら、皮肉っぽく言う丹羽様。

 しかしこれは、見せ掛けだけです。

 その証拠に、にっこりと笑って「アンタやで」と言い切ると、すぐ了承してくれました。ため息はついておられましたが。

 

「……ハァ~…… わかった。ワシがやっておく。だがこの先、美濃との交渉はお前が使者となれ。久太郎にはまだ荷が重い」

 

 そりゃまだあの子、11歳ですからねえ……

 むしろ働かせちゃダメな年齢ですよ。それを他家への使者にしてたとか。なにやってるんですか丹羽様。子供の使いにしてはレベルが高すぎますよ。

 

「他に、動かせる方はおられないので?」

 

「おらぬのだあ、これが」

 

 いないんかい。あっ、そうだ。美濃で思い出した彼はどうしたか、聞いてみよう。

 久しぶりの戦国wikiですね。

 

「そういえば斉藤道三の末っ子が、尾張で保護されているとか聞きましたが、どうなったかご存知ですか?」

 

 また微妙な顔を。しかし先ほどとはまた違った、哀れみを感じさせる表情で、丹羽様は答えてくれました。表情豊かッスね。

 言葉を選んでいるようで、この回答の速度はゆっくりでした。

 

「あ~、…うん。坊丸様とたまたま同い年であったので、(前田)利家らと共に、坊丸様の育成と、その、土田御前さまの話し相手というか、何と言うか……」

 

 ああ、織田家ホスト部。世間での呼び名は……

 

お持て成し隊に入っちゃったんですか」

 

「本人達は気にしておる。そう呼ぶのは、やめてやれ」

 

 丹羽様もそう言うのなら「わかり易いがな」ってボソッと付け足さないで下さい。説得力が無くなりますよ。

 しかしそうですかあ。坊丸さまの同い年。という事は、久太郎くんよりも更に年下の、9歳児じゃないですか。

 うわ、ギリギリだけど年齢ヒトケタとか。これこそマジで働かせられませんね。

 

 佐久間は討ち死に、秀吉と滝川は三河へ。池田は切腹、前田はホスト。佐々は確かどこかで討ち死にしてましたっけ?

 ああ、そういえば川尻って人もいましたね。割と出世街道進んで国主にまでなったけど、それが甲斐の国主だったせいで人生終わった人。

 

 ところで本能寺の変って1582年なんですよ。覚え方は「イチゴパンツ」か「イッコーハニー」。

 

 それで川尻が甲斐国主になったのも1582年です。

 

 統治はたった2ヶ月だったそうです。

 『信長が死んだぞー』という情報が出回るや、甲斐全土が反乱、一揆祭りになりまして。

 なんとか甲斐を脱出しようとするも、あえなく討ち取られてしまったわけですね。

 

 滝川一益も群馬県あたりに領土をもらって、ほぼ同じ状況でしたが、反乱祭りは無かったものの、北条が攻めてきてしまいます。

 織田信長の死に動揺する地元の国人らや兵の士気は低く、敗北しましたが、逃走には成功しました。

 真田丸などで有名な、真田家と取引をしたのです。

 

「領地安堵するし、沼田城を返すから、帰り道の護衛して?」

 

「いいよ」

 

 こんなに簡単だったかはわかりませんが。

 のちにこの沼田城を巡って、真田家は何度も北条軍や徳川軍の万を越える兵と戦う事になります。

 

「北条くん! 仲直りしようか!」

 

「いいよ徳川くん! でも沼田城ちょうだい!」

 

「いいよ、あげる! さあ真田くん。それちょうだい。代わりの領地? そのうちあげるよ。そのうちね」

 

 そんな感じで、ちょうどいい場所にあった沼田城と、代わりの土地を最後まで用意しようとしなかった家康のドケチが原因だったりします。

 

 なお真田家は全てを返り討ちにした模様。この家の戦闘力と戦績は、かなりオカしいです。

 その強さと勝利ゆえに、関ヶ原で最後まで豊臣側、というよりも徳川の敵に回り続けたのと、何度も戦をせねばならなかった事を考えると。

 その真田家も沼田城に関する収支は、絶対にマイナスだったんじゃないかなって。

 

 徳川に取り込まれた長男を除けば、真田家は結局は滅んでいますし。

 家康の死後、大名になっていたその長男も、江戸幕府からの嫌がらせを受け続け、取り潰しに……

 

 なりそうなところを、全て回避して天寿を全う。藩も領地換えはさせられましたが、普通に存続しました。

 やっぱりオカしいよ、この一族。

 

 そんな真田一族ほど優秀… 優秀? 異常に優秀ではありませんが、川尻もブラック大名織田家で出世争いに勝ち残った男。

 武将として優秀なだけではなくて、外交、内政でも実績を残しています。でないと、信長さんは統治能力無しと見なして、国主にしてくれません。

 

 この人手不足の時。そんな人材を遊ばせておく余裕はありません。

 例え今、内政も外交もやった事が無かろうとも、素質はあるのです。やってもらいましょう。きっと何とかなります。

 

 うちの長秀のように。

 

 さあ、どこにいるんだ川尻秀ナントカー!(微妙に名前が出てこない)

 

「そういえば丹羽様。川尻という方は…」

 

「稲生*1でな……」

 

 あっ(察し)

 

 仕方ありませんね。切り替えていきましょう。例によってヤッちゃったのが私じゃないなら、まだセーフの精神で。

 あれから色々ありましたし、もう全部を水に流して。

 

「私はとりあえず、まず予定通り近江の六角家へ行って来ます。美濃の事は、それからという事で」

 

「近江か…… ついでに京まで行く気はないか?」

 

 えっ、美濃の事はいいんですか?

 えっ、そっちも、ちゃんとやれ?

 

 おかしいな。信長さんがいないのに、史実並みにブラックになってきたぞ。

 

*1
今世で織田信長を主人公が討ち取っちゃった戦い




ノリ的に近い気がするので、作者:なぐ@沼 氏の 重頭脳級掲示板 を推してみる
26話完結。Muv-Luv二次ですが、原作ノータッチの人でも大丈夫。
星の侵略者にして、ラスボスの重頭脳級が、いわゆる『おれたち』みたいなノリになって、掲示板でわいわい地球人と、それにかかわった一体の同類を観察する。
ただし元々地球にいた個体だけは、反人類で絶滅に追い込み中。
それに気付き、アカンやろと止めにかかる重頭脳級たち。時々、人類のヤバさに引きつつ地球を救うのだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。