尾張グダグダ戦国記   作:far

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滝川一益を3箇所ほど滝沢さんと書いていた模様。
指摘してくれた方、ありがとうございます。
みんなもわりとスルーしてたのちょっと面白。

斉藤じゃなくて斎藤じゃね? という指摘もいただきましたが、新字体と旧字体の違いなだけで、正式なのはむしろ齋藤になるので、できるだけ軽めの文章を目指す方針ゆえに、これからも斉藤でいきます。


【企業を】坊主と極道【起業する】

 

 はい。やってきました関ヶ原。の手前の不破の関。

 なんと律令制の頃からなので、今から900年前くらいからある、古い関所です。

 元は畿内に入ろうとする不審者対策と、逆に畿内から逃亡する謀反者や犯罪者対策だったと思われます。

 

 まあ、その頃の建物などは一切残っていなくて、今は不破さんの一族が一方的に占拠して、独自に運営して、勝手に関銭を巻き上げている。

 そんな、よくある私的な関所の一つに過ぎませんが。

 

 江戸時代にはマジで廃れていたのか、松尾芭蕉が 秋風や 藪も畠も 不破関 などと詠むほど、ただの田舎の風景と化していたようです。

 いや、新古今和歌集だったかに、藤原のなんちゃらが 人住まぬ 不破の関屋の 板(ひざし) あれにし後は ただ秋の風 という歌もありましたね。

 うち捨てられ、荒れ果てていたのを、ただ不破さんが拾って有効活用しているだけの可能性も…?

 

 だとすると、いらない物を活用しているだけで、関銭を取る以外は文句は言えませんね。関銭を取る以外は。(恨み節)

 権力者の懐に入れられるだけで生かされない、税金っぽいものなんて大嫌いだ。

 

 貰う側でならば、話は別ですが。

 

 はい。いらなくなった施設をもらって金儲け。私もこれから、美濃でやります。不破さんと違って、斉藤家公認ですが。

 その儲けを懐に入れるのも同じですので、この関所の存在にも、何も言わずにおきますか。

 

 いらなくなった施設、というのは、お寺です。

 今回の騒動で肩身が狭くなった、一向宗。もしくは浄土真宗のお寺ですね。

 その中でも、圧力をかけられて抗議していたら、勢い余って一揆しちゃって、即鎮圧。寺院まで焼けちゃった光勝寺が私の持ち寺になりました。

 坊主でもないのに寺院のオーナーってなかなか無いですよね。

 

 なんでもらったの? と言われれば、領地の代わりです。

 なんでそうしたのかというと、私、実はまだ織田家から領地をもらっていません。未だに扶持米での奉公になります。

 まあ、だから気軽にあちこち飛ばせるし、身軽に動けるという利点もあるのですが。

 

 で、そんな私が美濃の斉藤家から領地をもらいました! となったら?

 

「お前は何処の、それと誰の家臣なんだ」

 

 この丹羽様からされた質問に、自信を持って「織田家家臣です」とは答えにくくなってしまうわけですよ。

 一所懸命。一生懸命ではなく、一所懸命。一つのところ。場所、土地に命と人生を懸ける。

 それが武士の理想の生き方なので、斉藤家に領地をもらっていながら、織田家に仕えるのはむしろ筋違いになってしまうんですね。

 

 だから土地の代わりに、会社を貰いました。

 

 はい。会社です。

 室町時代のお寺は、土地の管理、金貸し、酒造・販売、商業。場合によっては明など海外との貿易にまで手を出す、総合商社です。

 

 いや、土地や店からミカジメ料取って、密造酒を造って売って、高利貸しして、密貿易までやってると考えると……

 

 これ、むしろヤクザでは?

 

 いやでも、一応は御仏に帰依して、教えに従ってるはず…… だからヤクザとは違う、はず。

 つまり独自の思想と掟に従っているわけで。

 

 ほなヤクザやないか。

 

 寺には、末端の構成員、信者から所属する寺へと集金して、それがさらに上の寺へ、上の寺へと吸い上げられていく、現代にもそのまま残るピラミッド型の集金システムがあります。

 ヤクザの場合は、組員から組に、さらに上の組へというそっくりなシステムが。

 

 ほなヤクザやないか。

 

 僧兵という独自の武装集団を抱えて、借金を返せない場合は強引な取立てをしたり、座という商業組合からミカジメ料を取ったり、勝手に関所を作ってそこでカツアゲしたり。

 

 ほなヤクザやないか。

 

 へ、ヘアスタイルは坊主頭が多いし。

 

 ほなヤクザやないか。

 

 あれれ~? おっかしいぞ~?

 ほなヤクザと違うかー。というポイントが見当たらないんですが。いやマジで。

 

 じゃあ、もうヤクザでいいや。

 

 そのヤクザの広域組織の一向宗組の美濃支部が、地元の斉藤組との抗争に敗れたので、空いた事務所のひとつを貰い受けたわけです。

 

 再建が必要なレベルで壊れていますが、ここって立地がいいんですよ。

 美濃の北西部、つまり美濃と近江、越前も結ぶ街道筋に近いのです。しかも長良川水系とも接していて、水運も利用可能。

 しかもこの組の組長たち、もとい寺の坊主たちも一揆で亡くなっているので、いじり倒しても問題なし。安心して、宗派換えなども行えます。

 

 そりゃさすがに一向宗のままでは寺の運営が許されないので、看板は変えますよ。

 

 新しい看板は天台宗と禅宗と迷いましたが、武家っぽいので禅宗にしました。

 禅宗、特に臨済宗は鎌倉幕府にも室町幕府にも保護されていたので、武家にはなじみがあってウケがいいのです。

 

 座禅ってなんか武士っぽいよね。というイメージの問題な気も、しないでもないですが。

 

 禅宗自体も、武家寄りの運営をしていますし。

 しかも京都の五山に大きな拠点があって、商業にも理解が深くて、商人とも太いパイプがある。

 ついでに織田家や斉藤家も、禅宗には親しい。とまあ、いい事だらけなわけです。

 

 天台宗も最澄の開いた、朝廷公認の古い宗派で、あちこちとの結びつきも強くて、会社、もとい寺社運営のノウハウも豊富。なのですが。

 古いだけあって、だいぶ腐っているというか。本部の延暦寺が、信長さんがガチギレして火をかけちゃうレベルというか。

 

 それに"延暦寺" で検索すると、検索候補のワードのかなり上に『焼き討ち』って出るんですよね。

 

 さすがに観光とかアクセスが上に来ますが、その次くらいに。

 

 そんなわけで有力ではありますが、私の中でのイメージが悪いので不採用となりました。

 なんかゴメンね最澄。

 

 いなくなった坊主の代わりは、潰された他の一向宗の寺や、他の寺の余っていた坊主らをリクルートしました。

 もちろん条件は『宗派換えに賛同しろ』です。だってここはもう、禅宗の寺になるのですからね。

 そしてその再建のお金を出すのは私です。管理する権限を持っているのも私です。

 文句があるなら、不採用にするだけでした。

 

「御仏に手を合わせる、その心に宗派の違いなど些細なもの。仏の慈悲は広大無辺ではなかったのか?」

 

 と問えば、一向宗の坊主はだいたい同意してくれましたが。

 『それよりも給料は?』という本音を持っていたヤツばっかりだったとも言いますね。

 

 かわりに『禅宗になるから、酒と肉と女はアウトな』という条件でだいたいの一向宗の坊主は去っていきましたが。

 気持ちは分かるけど、なんなんアイツら。

 

 おかげで当初の見込みよりも人数が足りなくなって、尾張の寺にまで声をかける羽目になりましたよ。

 まだ正式には織田家と斉藤家が和睦してないから、雇用条件で結構足元見られて、大変だったんですからね。

 『和睦したら、危険手当は減額な』って条件を入れたので、まあ許容範囲ではありますが。

 

 あとは正式に禅宗から看板を貰うだけですね。

 無断で「禅宗です」って顔してお寺を運営してると『なに勝手にうちの看板使って商売してるんだ』って怒られますからね。

 ほら現代だって、勝手にTOY●TAと名乗って車屋始めたら、怒られるでしょう?

 ましてやそれが○○組とかだったら『誠意見せろや、誠意!』という流れが不可避です。

 

 ですが大丈夫。幸い『旅の連れ』の冷泉季方さまが禅宗にもツテを持っていました。

 寺院を再建している間に、集めたスタッフに起業の準備をしてもらいつつ、私が京に行ったついでに五山で寺格を買ってくる予定です。

 

 ええ、売ってました。寺の格。

 まあ、朝廷の官位も実質売ってるようなものでしたし……

 そもそも坊主なら売れるもんは売るか。

 

 臨済宗の寺格は、上から南禅寺>>>五山>十刹>諸山、あとは位に関係なく修行重視の林下と、寺格を持たない末寺です。

 五山が鎌倉五山や京都五山の10の寺。

 その中でも序列があるという、結構厳格なマウントの取り合いと身分差のようなもののある、ちょっと闇を感じるポイントもありますが、まあそれは置いておいて。

 

 臨済宗というグループ企業で、南禅寺が本社、もしくは株式を握っている創業者一族なら、五山はメガバンクや大企業クラス。

 カネでは買えない地位で、基本は固定。変えるにしても将軍が直接裁定するレベルです。

 当然ながら、こんなものは狙いません。

 

 それに継ぐ十刹も、全国展開している中堅どころの企業というあたり。kメダとかケーzデンキとか。十刹といいつつ、数が多少上下するので、献金の額によっては狙えなくもありませんが……

 初対面でいきなり、という事を考えると、1000貫くらいは要求されてしまいそうなので、さすがに無理かなって。

 

 狙うのはその下の諸山。地域トップの老舗企業というあたり。地方銀行とか、地方電鉄、会社ならキッコーmンとか、そのあたり。

 これなら十刹の半額以下で購入可能です。

 

 って冷泉季方さまが言ってました。

 

 だってお寺の格の相場とか、一切分からないんだもん…… そりゃ受け売りにもなりますよ。

 

 そんなに使って、織田家や諏訪家の官位の資金は大丈夫なのかって?

 

 いや、むしろなんで私がそれらのお金を出すんですか。

 それらのお金はそれぞれの家の予算からと、加藤さんとかが出しますよ。

 

 はい。加藤さんです。熱田商人にして、織田家家臣の。以前に、一回だけ出番のあった、加藤さんです。

 私が京風のセレクトショップ経営をお勧めした人です。

 その下見と勉強に、自分で京まで行こうとしたばっかりに、丹羽様に目を付けられてしまった人でもあります。

 

「織田家のために協力してくれるな?」

 

 このたった一言で、加藤さんはどれだけのゼニを吐き出させられたんでしょう。

 しかもそのゼニを、証文や手形、金銀などで京まで運ぶ手配もしないといけないとか。

 大変ですね。まあ、私も書類をあれこれして、私の分の資金も一緒に運んでもらえるように手続きしましたが。加藤さん、よろしくお願いします。

 

 まあ信長は堺に2万貫を出せと吹っかけたので、それに比べれば、うん、まあ。なんとか。

 しかも払えたというからすごいですね、堺。

 

 まあ官位は置いておいて、寺格で諸山を狙うのは、理由があります。

 地域の老舗企業に当たるだけあって、地方の国ではトップの扱いになるんですよ。

 美濃でトップの寺になって、そして弱っている一向宗の寺を美濃から徐々に追い出す旗頭になるのです。

 

 余所者の私に寺を渡すのに、半兵衛どのが色々土豪などに吹き込んだせいですね。

 

「乱暴狼藉を働いた一向宗より、武家になじみのある禅宗にする事で、一揆の再発を防止して、新たな秩序を築きます」

 

「織田家との和睦の象徴として、共同で寺院を再建するという事です」

 

「あの人自身が管理するわけではありません。住職はちゃんと他所から呼びますよ」

 

 など、けっこう勝手に言われていたようです。

 共同で再建って、お金出すの私ですよ! とゴネて、補助金をむしってやりましたが。

 丹羽様にもこの件を報告したら、少しばかり出してくれたのは意外でしたね。丹羽様って、そんな甘かったっけ?

 

 そんな好き勝手言ってくれた半兵衛どのとも、不破の関でしばらくぶりの再会です。

 斉藤家には六角家に出す人材さえいないのに、京まで出せる人材なんて居るわけがないので、代理となる私との事前の打ち合わせは必須なんですね。

 

 私もこれで『美濃の方から来た人』から『斉藤家のために動いている人』にランクアップできますし。

 

 決して『斉藤家の人』ではないあたりがポイントですね。

 まあ打ち合わせといっても、さすがに女性の帰蝶さまに官位を、というのは無理なので半兵衛どのあたりにという内容……

 

 ……え? 不破さんに?

 

 不破さん、国人領主だけど、いいの?

 不破の関を任された、不破隼人 藤原 直家の末裔と名乗れるから、イケる?

 いや半兵衛さんも、土岐氏の支流の竹中氏ですって言い張ればイケるでしょ。

 

 その場合、帰蝶さまの婿になっちゃいそうだから、避けたい?

 

 別になっちゃってもいいんじゃないですか?

 




【リメイク版】八曜の旗印 加賀守護三男転生記 を推してみる。カクヨム、101話完結。
そもそも加賀の守って誰だよという感じですが、冨樫氏です。加賀の正式な守護で、つまり落ちぶれる名門のひとつです。
ましてや北陸は、特に加賀は一揆が、ね…?
その一揆で国を失って、本願寺が山科から追い出されて一時的に加賀が空いたので、取り返そうとする所からスタート。しかも三男。
そこから地方統一からの機内統一でゴール。内政重視。
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