尾張グダグダ戦国記   作:far

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ここ数話、動きが無いなと思っておられた方がいらっしゃいましたら
お待たせしました。六角家へやっと入って、そしてホットスタートです。


【本当の南無阿弥陀仏を】観音寺ウォー!【お前はまだ知らない】

 

「う~ん、もう少し後の事だと思っていたんですけどねえ」

 

「そんな危険があるとワカッとったら、ワシを連れて来んでくれんか!」

 

 はい。現在逃亡中の私と、冷泉さまです。

 相変わらず足腰が達者で、私よりも余裕がありそうな冷泉さまが、これまでに聞いた事のない怒りの声をあげていて、こんな時なのに少し愉快

 

 なにから逃げているのかと言えば、六角家の兵や武士たちからですね。

 なんで追いかけられているのかと言えば、まあ……

 

 六角家の現当主の『六角義治が殺害されたっぽい』からでしょうか?

 

 逃げ切れるかな、これ。

 幸い、六角家は大混乱に陥っていて、事態を把握している人間は極少数。

 しかも命令を出せる側のトップは、ほぼ全滅という状態です。

 追いかけてきているのも、ほぼノリと勘で『怪しいヤツがいたぞ、捕まえろ』ってだけの連中です。それで正しいから困りますが。

 

「冷泉さま。後藤家です。あそこに戻れれば、匿ってくれますよ」

 

「ええい、わかった! どちらでおじゃ!」

 

「まずはあちらへ。塀がやや低いので、乗り越えて一旦その影に隠れます。それから屋敷の中を乗り越えて、裏側へ抜けます」

 

「……なにゆえに初めて来た城で、逃走経路がすんなり出てくるのかのう。不思議でならぬわ」

 

 それは『こんな事もあろうかと』観察していましたからですよ。

 このセリフ、もっと別の場面で、別の使い方をしたかったですね。

 火星往復だったかの、日本が飛ばした宇宙船で、あまりに連発したので。

 

「日本の技術者にとって、もはや夢ではなくて嗜みなのか」

 

 とまで言われた『こんな事もあろうかと』ですからね。元ネタは確か昭和のアニメ。

 

「冷泉さま。私の肩を足場に」

 

「よし!」

 

 今逃げ回っているこの場所は、六角家の観音寺城の城下です。

 ここには六角家の先々代当主の定頼が強権を発動して、家臣を集めて城下に住まわせる事に成功しています。

 他にも城下町や石寺があって、楽市なども開かれる市場などもありまして。

 そんなこんなで増築に増築を重ねて、結構複雑かつ広大になっていて、逃げ隠れするのに都合が良かったりするのです。

 

「さあ、捕まれ」

 

「ありがとうございます!」

 

 板で挟んで突き固めた土塀を乗り越えるのに、私の肩に乗って登った冷泉さまが、なんと何も言わずとも私に手を差し伸べてくれました。

 なんだこの出来た貴族。

 思わず、いつぶりか思い出せない、心からの素直な礼を言ってしまいましたよ。

 

 まあ、あえて最後まで道順を言っていないので、私を置いていったらどこかで捕まるので、これで正解ですが。

 なんか純粋に誠実な対応をされると、こちらが汚れているように感じて、困りますね。

 

 いやお前、ヨゴレだろって?

 

 確かに。気付けば、戦国の世に慣れすぎてしまったかもしれません。

 

「…………よし、屋敷に気配はありませんね。ついでに厨房で、水でも飲ませてもらいましょう」

 

「図太すぎはせぬか、オヌシ。頼もしくはあるが」

 

 さて。

 

 一息ついたところで、いい加減にどうしてこなったかを振り返ってみましょう。

 

 ここ、六角家の観音寺城へは、私は『斉藤家の依頼を受けた者』という立場でやってきました。

 名門相手なので、もちろんアポイントは事前にとりました。たぶん半兵衛どのが。

 そして事前にある程度話が通っていたのか、なんといきなり宿老という家老よりも上の、現在六角家を仕切っている後藤賢豊さまが対応して下さったのですよ。

 

「今こそ、浅井に対する反抗の好機。六角家の権威を取り戻すのは、今なのです!」

 

 私はその後藤さまを相手に、いい感じに煽りに煽りました。

 

 私の今回の仕事は『六角家に対浅井で動いてもらう。少なくとも牽制はして動きを封じてもらう』ことです。

 それがいきなり達成に向けて、大きく前進した状態で始まったので、テンションが上がって説得スキルもヒートアップしちゃったんですよね。

 前回、信玄が信濃守を得ようと動いていると知ったので、こちらも対抗するべく京へと早く行きたくて焦っていたのもあります。

 

 他にもちょっと、不破さんに闇系のお仕事を頼まれてもいますが、それはまあ後々。

 

 ところで私たちは前回、美濃へ来た浅井軍を撃退しましたし、その多くは討ち取りました。

 しかしそれは本来の浅井の兵ではなくて、流れてきていた一向宗と、地元にいた一向宗らなので、浅井家の力は実はあまり落ちていない疑いが濃いのですが……

 『そんな事は知ったこっちゃねえ。いいから六角を動かすんだよ!』と弁舌スキルが暴走してしまったのです。

 

 しかしさすがは六角家の宿老。簡単には動こうとしませんでした。

 まあ六角家は大きいですからね。いざ動くとなれば、必要になる予算や手間も大きいし、時間もかかるので、決断するのはどうしても慎重になるのです。

 その手間や時間を省くための、家臣の城下への集中だったらしいですし。

 会議一つするにも、参加者の家臣を集めるのに、まず使者を各地にいる家臣に飛ばして、それから移動させて。きっと、定頼も面倒になったのでしょうね。

 

 そうして縮まった君臣の間も良し悪しで。

 どうも私がカタッた熱弁が、今の当主の義治の耳に入ったらしくて。

 それで義治は浅井家を叩きたかったらしくて、盛り上がっちゃって『攻めるぞ!』ってなって。

 

 でも、当然後藤さまは止めるわけですよ。

 進藤という、もうひとりの宿老も病の身なのに、無理して出てきて止めました。

 

 揉めましたね。グダグダを通り越して、バチバチに揉めたようです。

 

 そもそも、当主交代はしたものの、実権はまだ握っていた先代の義賢が、野良田で浅井軍に大敗してなお実権を手放さなかったり。

 後藤と進藤の両藤と呼ばれる、宿老2人がどちらも先代からの大物家臣で、先代寄りの立場だったり。

 そういう年寄り達が、イチイチうるさくて自由にやらせてくれなかったり。

 先代とも、婚姻問題で意見が食い違って仲違いしていたり。

 

 当代の義治には、不満とストレスの種がたくさんあったわけですよ。

 

 史実だと、半年くらい先に爆発します。

 

 観音寺騒動という事件ですね。

 自分に従う家臣を使って、城に呼んだ後藤さまを、その息子ともども斬り捨てたという『六角没落の始まり』の事件です。

 先々代は信長さんより先に楽市を開いていたり、将軍を助けて権威を高めて近江の支配を磐石にしたりと、六角家を大きくして全盛期を築いたのですが。

 先代は三好家と争って敗北して、畿内の影響力を落とすわ、浅井にも敗北して近江の影響力も落とすわ。

 そして当代はこの事件で、家中の影響力まで落とすわ、と。

 後継者問題を、続けてしくじったばっかりに……

 

 後継者ガチャ、SSRからの爆死2連ですよ。

 やはり単発ガチャはアテになりませんね。十連を回さないと。まあ、リアルでは最低保証はないので、全部コモンというオチかもしれませんが。

 

 史実では当主と嫡男を討たれた後藤家の家臣らが即座に暴れて、観音寺城を包囲。

 他の家も、進藤家や平井家など多数が協力して、六角義治のみならず、先代の義賢もセットで城から追放していました。

 

 その後『後藤や他の家がトップ取ってもギスるし、やっぱ六角が頭なのが丸いわ』と、蒲生家などが仲介して、六角親子は観音寺城に戻ってきてしまいます。

 そして織田家がやってきて、まだ権威の低すぎる織田家に頭を下げられない、その旗頭の義昭も将軍になっていないし、立場や外聞的に『自分がメイン張れないなら仲間になれない』六角家は、敵対して即滅亡します。

 

 戻さなければ、頭を下げられて丸く収まったかもしれないのに。

 まあ、後知恵ですけれども。

 

 で、まあ。ここまで語れば、お解かりかと思いますが。

 前倒しで、起こっちゃったんですよね。観音寺騒動。『もしかしたら、あるかもな~』くらいには懸念していたのですが。

 

 そこに私も居合わせたのは、全くの計算外です。

 

 なんで居たんだよって?

 

 義治が「直接聞きたいから」って呼び出されたんですよ。後藤さまと進藤さまに、義治が説教されてる現場に。

 浅井領に攻め込みたい義治が、止めてくる両藤相手への援軍を欲しがったんでしょうね。

 まあ実際、私も六角家には動いてもらいたいので、加勢せざるを得なかったでしょう。

 

 間に合いませんでしたが。

 

 私がその場に到着した時に見た光景は、仕立てのいい着物を着た男が、血に濡れた刀を握り締めて、倒れた老人二人を見下ろしているというものでした。

 

「あっ」(察し)

 

 あっ、これ観音寺騒動だあ。

 即座に察した私をなんだと思ったのか、義治、と思われる男は、私に斬りかかって来ました。

 

 とっさの犯行を見られた犯人が、衝動的に目撃者の口封じに出た。

 

 今思うと、たぶんそんな感じだったのではないでしょうか。

 当時の私は、そんな分析をする余裕も無く、当主への謁見なので、武器も無く。

 

 とっさに、身に着けていたお守りを投げつけました。

 

 はい。お守りです。

 熱田の加藤さんに提案していた、アレですね。中身はオリジナルですが。

 釣りの錘みたいな、ヒモ付きの平べったい鉛が入れてあるのです。

 

 流星錘という隠し武器ですね。中国拳法のマンガで見たやつの再現です。

 確か向こうは球形でしたが、お守りに入れるのに不便だったので、ちょっと長方形っぽくて平べったくなりました。

 重さは、600グラム程度でしょうか。

 

 額に、クリーンヒットしましたね。

 

 そして脳震盪でも起こしたのか、頭を抑えてうずくまる義治(仮)を視界から外さずに、倒れた老人達を素早く観察しました。

 知らない顔の方の老人、たぶん進藤さまは仰向けに、目を開いたまま倒れています。あれはもうダメですね。

 後藤さまは…… あっ、体が上下に少し動いてる! 息してるよ!

 

 あっ、止まった。

 

 良く見ると、首を切られていますし、即死ではなく息があっただけですか。

 流れた血の量からしても、致命傷で間違いないでしょう。

 でもせめて最後の言葉くらいは、聞いてあげたかったですね。

 

 さて。

 

 ここで私は、考えました。この状況、どうしよう、と。

 

 でも推定義治が立ち直る気配がしたので、彼が落としていた刀を拾って、首を突きました。

 

「ぐわぁぁぁぁ!」

 

 返り血を浴びないようにだけ、気を付けて。

 そして義治(たぶん)が倒れたら、後藤さまと相打ちになったっぽく、体を移動させて。刀も後藤さまの手に乗せて、と。

 

 

「よし!」

 

 

 あなたたちは『よし! じゃないが』と思いましたね?

 『なにしてんだお前』とも思ったでしょう。

 

 責任回避です。

 

 だってあのままだと、最悪私が両藤殺しの犯人に仕立て上げられますよ?

 目障りだった目の上のたんこぶを始末しても、その影響は抑えたいですからね。

 都合よく目の前に現れた私を犯人にするのが最善手です。私ならそうします。

 

 そうなったら人生終わるので、義治(と思われる)の口も封じて、私はただの第一発見者を名乗る。これが私の最善手になるわけですね。

 

 あ~あ。あそこで義治(じゃなかったらどうしよう)が斬りかかってこなかったらなあ。

 呆然としている彼に『お前は悪くない』とかテキトーに吹き込んで、いい感じに操れ、もといオトモダチになれたかもしれないのになあ。

 でもこうなってしまったものは仕方が無いわけで。是非も無しです。

 

 それで素直に第一発見者として名乗り出ても、やっぱり拘束されて犯人にされかねないので逃げ出しまして。

 冷泉さまを放置するのはダメだろうと思ったので、一緒に逃げているわけですね。

 まさかその途中で、ここまで追いかけられるとは思いませんでしたが。

 

 ともあれゴールは後藤家。そこで(私に都合のいい)事情を説明して、身柄を保護してもらえればいいでしょう。

 

「乱心したのか、義治さまが後藤さまと進藤さまをお手討にしようとしたとしか考えられません。私はたまたま呼ばれていて、部屋に入った時には既に……

 ですが後藤さまが何とか相打ちに持ち込んだ様子で、こういう感じの男も倒れていました」

 

 証言はこんな所ですか。たぶんこれでミッションコンプリートできます。

 対浅井家に動いてもらう余裕とか、今の六角家からは完全に吹っ飛んだでしょうから、本来のミッションは失敗ですが。

 

 こうなると不破さんに官位をもらって、美濃の土豪たちを動かせる権威を手に入れる重要度が増してしまいましたね。

 諏訪家も急ぎだし、主家の織田家だけ何も無しとかはありえないし。

 

 京での仕事は、色々とハードになりそうですねえ。

 




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