しかもやめようとすると、その子がダメっていうので少し遅れました。
はい。あの後、何とか六角家を脱出できました私です。
後藤家に逃げ込んだ後は、予定通りの(私に都合良く捻じ曲げた)事情説明をして、あとは大人しくしていました。
だって、観音寺城を包囲する中に混じって、顔を出すヤツを狙い打つとかさすがにやっちゃダメでしょうからね。
そりゃ大人しくしますよ。
あと六角家当主の六角義治。生きてました。
私がヤッ、もとい。後藤さまが最期に相打ちに持っていったあの男は、暗殺の実行役の種村ナニガシという側近だったらしいです。
う~ん、良かったような残念なような、不思議な気持ちですね。
そして義治は生きていましたが、史実通りに父親の義賢とセットで、城を追放されました。
むしろ死んでいた場合、親の義賢だけだと追放されなかった恐れがあるので、かえって好都合でしたね。
ですが史実通り戻ってこられてもイヤなので、ここは実際に殺せなかったぶん、社会的に死亡してもらおうと思います。
だって今、六角家が弱ると、織田家的にすごく助かりますから。
現在織田家は、伊勢以外の周辺勢力との和平に成功しつつあります。
それが全て成立したなら、何の心配も無く伊勢へと手が出せるというわけですね。
まずは北勢四十八家などと言われる、実際は50以上あるらしい、小勢力の土豪たちを殲滅する所からスタートです。
いや、これ私の方針じゃないですからね?
「いう事聞かないわ、勝手に動くわ、文句は多いわ、情報は他所に流すわ。好き勝手する、面倒な土豪はこれ以上織田の領内には、いらぬのだ…!」
という、丹羽様や村井さまを始めとする、織田家の統治を頑張っている方々の総意です。
なんと言うか、殺意が高かったです。その苦労の程が見えるような、濃い黒さの殺意でしたね。
まあ本当に皆殺しにするわけではなくて、ただの地主や庄屋など、武士を辞めて帰農するなら命までは取らないでしょう。
でもまあ、武家としての家は潰すわけで。これは過激な行動に見えるし、実際その通りではあります。
なので、手が出せそうな近場に有力者がいれば、邪魔して来るでしょう。
具体的には南伊勢の北畠家と、近江の六角家と、浅井家です。
このうち浅井家は、介入してくるにしても武力介入は無いと思われます。
斉藤家と揉めているし、六角家とも敵対しているので、更に織田家も敵に回すぜ! というのはさすがに豪気が過ぎます。
あの世紀末覇者っぽかった長政なら、ワンチャンやりかねませんが。
一戦だけならセーフ! みたいな感じで、やって来かねません。
でもまあ、まず無いでしょう。なんかフラグっぽいですが、本当にまず来ない、はず。
北畠家は、別に来てもいいです。
伊勢制覇のために次に攻め込む先なので、大義名分を用意しなくてよくなるので、逆に助かるまであります。
ですが六角家は困ります。
ついでに相手にするには、大きすぎるのです。
浅井に大敗した野良田の戦い以降、重要地を取られた事もあって、日に日に落ちていくとはいえ、まだ強大な経済力。
5~70万石くらいと思われる、生産力。それらから生まれる、1万人に届く動員力。
まさに、腐っても鯛。
介入してこられたら、一時的に撤退を考えなければいけないほどの、大勢力だったのです。
そう、大勢力『だった』のですよ。過去形です。
観音寺騒動で、それまで少しずつ崩れていく六角家を支え、仕切っていた後藤さまという柱は消えました。
六角家の当主が一時は追放され、有力な家臣たちの権限と立場が強化されました。当然まとまりはなくなって、分裂に大きく近付いています。
それでもまだ、介入してくる余力があるのです。すごいね、六角家。
だからもっと権威を落として、その余力を無くしてもらおうかなって。
六角家とも斉藤家とも敵対している浅井家が『あれ? 六角が弱って、斉藤よりもおいしそうだぞ?』と六角家へ目を向けてくれるかもしれませんし、一石二鳥ですね。
そのために、とりあえず史実とは違って生きている、後藤さんの嫡男に事情説明のついでに、こう吹き込んでおきました。
「なんですか、あの義治という方は! 浅井家への牽制、もしくは侵攻をと、頼みに参った他家の使者の居る時に。しかもその目の前で、当主自ら暗殺騒ぎを起こすなど!
しかも『自身で実行したか、ならばまだ武士としてはマシか』と思えば、実は側近にやらせて、自らはその場に居もしないとか。卑怯にも程がある!」
具体的には、こんな感じで義治をボロクソにけなしたのです。
通常ならば、仮にも自分の主をこうまでコケにされたなら、家臣として黙っているわけにはいきません。場合によっては即斬り捨てにきます。
ですが、今回はその君主が、父親を殺した仇になっているわけで。
むしろ「ですよね!」と共感を呼んだらしくて、史実では跡を継いでいた弟さんと一緒に盛り上がっています。
盛り上がるよね、上司の悪口。
それも実害があると、なおさら。しかもそれが特大で、おまけにその父親の義賢も上司としてはダメな方。
弟さんも、史実では後藤家を継いでから、本能寺の変の後に光秀側に付いちゃって、家を潰しているダメな人ですが。
しかも確か生き残っていて、蒲生氏郷が親戚だったので、そっちに家臣として転がり込んでたような。
さすがに後藤を名乗り続けるのは恥ずかしかったのか、名前は変えていましたが、なんて名前でしたっけ。
そんなダメなギャンブラー後藤も、史実では4年ほど六角親子を許さず、観音寺城へと入れませんでした。
許した翌年に信長さんが攻めてくると、アッサリと寝返って織田側に付いているので、おそらくすでに六角家を見限っているのではないでしょうか。
謀反した後の光秀に付くヤツに見限られるって、相当ヤバいですね。
後藤家で盛り上がった後は、進藤家にも行ってきました。
史実の観音寺騒動の時にはすでに病没していたのに、イベント発生が早まってしまったせいで巻き込まれて死亡した、進藤さんの家に。
もちろん、後藤家と同じように『事情説明』をするためです。絶対にウケが取れる、滑らない旬のネタですから。
弁舌スキルも絶好調です。当然、煽りも入れておきました。
ついでに城下町や道中で、今回の騒動について井戸端会議をやっていそうな場所へと顔を出しては、義治をディスるトークを思う存分に披露しました。
いや、ウケるのが気持ちよくて、つい。
これが売れっ子芸人の気持ちでしょうか?
これだけ『事実』に基づくウワサが広まってしまえば、六角親子へと手を差し伸べる家臣や人々もずいぶんと減る事でしょう。
そして減った分だけ、この六角家のグダグダな状態は続きます。
それは六角家以外の利益となって、きっとなんかいい感じに物事が転がってくれるでしょう。
さし当たっては、この近江の国の朽木に滞在中の将軍、足利義輝の護衛についている六角家の兵が、少しでも減ってくれたらいいですね。
もしくはこの騒動の情報が伝わって、混乱が広まってくれても好都合です。
なぜって?
勘のいい方は、すでにお気付きだと思いますが……
暗殺 しやすくなるからです。
いや突然将軍殺そうとするな、と思われたかもしれません。
唐突に、なんだ。というご意見。ごもっともでございます。
でもこれ、依頼なんですよ……
美濃の不破さんからの。
「お前を凄腕の暗殺者と見込んで、頼みがある」
とかガン決まった眼で語りだした、あの時の不破さんには、さすがに恐怖を感じましたね。
逆らいがたいものを感じて、断ろうとしても、断れませんでしたからねえ。
滅茶苦茶にキレてました。いつぞやの丹羽様よりもキレてました。殺意すら感じましたよ、ええ。
でも誰が凄腕の暗殺者だ。
そんな依頼受けたのは、今回が初めてですよ。
それでバチクソにキレちらかしている不破さんに、いったい何があったのか。断片的にだけ、聞きだせましたが。
私に頼るのをどうかと思ったので、忙しい中どうにか独自に官位を得ようと、京から朽木谷に避暑に来ている将軍の義輝に願い出た。
非常に高圧的な態度で、これっぽっちのゼニで、など次々と銭を要求され、露骨に田舎者扱いで無礼な言動をわざと取られ続けた。
しかも朝廷に願い出るなどの手続きをやった形跡は一切無い。今現在にいたっても、何も無い。
問い合わせると、追加のゼニの要求が高圧的に来る。
と、いう事らしいです。なにかの詐欺事件の調書かな?
でもこれ、不破さんもだいぶ間違えてますねえ。
そもそも将軍や側近に官位の要請をしたって、手続きできないからそもそも無理で無駄です。
そういう事務系のお仕事は、ほぼ全部が京に残ってる伊勢という一族の職分なので、そっちに頼まないと話が進まないというか、始まらないというか。
発行するのは市役所なのに、市長に「住民票ください」って言っても、意味が無いというか。
不破さんの場合は、この市長が「なら料金を振り込め」と詐欺を働いた上に、散々パワハラを仕掛けてきたわけですが。
そこを不破さんが分かっているのかどうかは、分かりません。
しかし『舐められているな』という事を、不破さんは理解してしまったんだろうな、というのは分かります。
そして舐められたら、武士は行動せねばならないのです。
……いや、それでなんで『私に暗殺させよう』って結論になったんですか。
ぶっ殺してやりたいけど、忙しくて京まで行けないのは変わらないので、これも任せる事にしたんでしょうかね?
皆さん、ちょっと私に色々と任せすぎじゃないですかねえ?
やりますけど。
実はちょっと、私も「将軍、殺しちゃダメかな」って考えた事はありましたので、はい。
だってアイツ、朝廷への献金から中抜きするんだもん。
武士が朝廷から官位をもらう時、必ず幕府を通してでなければならない。そういうルールがあるのです。
これは源義経が、兄の頼朝を経由しないで、法皇から直接官位をもらった事で粛清されたのが発端だと思われます。
武士は武家の棟梁の統制下になければならない。そのために、このルールは厳格である。というのはわかるのです。わかるのですが。
なんで朝廷に払う、官位の謝礼の中に、幕府の取り分があるんですかねえ。
手数料にしては、取りすぎだと思うのですが。
しかも財政難だから取り分アップするね、とか安易にやりますし。なんだその増税。
そこで私は、考えました。
「いっそ将軍なんていなければ、幕府なんて無視して、直接朝廷から官位をもらえるんじゃないか?」
今回申請する官位は、織田家、諏訪家、斉藤家と3つ分です。
義輝ひとりを暗殺するだけで、なんと数百貫のゼニが浮く。これは驚きの節約術ですよ。
さすがに私も、冗談でした。
冗談のつもりでした。だって、さすがに将軍暗殺とか、個人でそうそう実行しませんよ。
でも依頼が来ちゃったわけで。
しかもちょっと調べたら、なんかイケそうなんですよ。
来年あたりには、たぶん将軍襲撃とかが起きて、義輝の警戒度も上がっていそうですが、現在はそんな事も無く油断した生活をしているらしいですし。
むしろ余裕のある暮らしをして、将軍の権威が傷つかないように見栄を張っている感じなんですよね。三好家や六角家のカネで。
それと後藤さんの息子さんに頼めば、甲賀忍者とか紹介してもらえそう。
甲賀は朽木の近くなので、周辺の地理情報も一緒にゲットです。
あとはついでに援軍も頼んで…… うん。やっぱりイケそうですね。
というわけで、まあ、行きましょうか。
将軍チャレンジです。
……あっ、その間、冷泉さまどうしよう。
…………え~っと、寺格を買うのを、完全にお任せして動いてもらったらいいかなあ?
島流し令嬢 を推してみる。作者は、他にも複数の作品を完結させている、もちもち物質@布団 氏。このサイトにあるよ!
魔法の存在するファタジー世界で、ゴーレムが作れる、操作できる。という魔法のみを仕える、辺境伯の領地のお隣の、小さな領地のご令嬢が主人公。
隣国に攻め込まれ、それを跳ね返して。軍に入り将軍にまで出世して、隣国を押し返して和平を結ぶ所までいくも、その条件に、令嬢の排除が入っていた。
用済みだし。と安易にOK出す王国首脳部。軍や民衆から叩きつけられまくる助命嘆願。
首脳部は、妥協案として令嬢を無人島送りに。
という所から始まる、令嬢のサバイバル。普通に木をこすって火熾しに数時間かけたり、スコップがわりにただの枝を使ったり、普通の追放令嬢とは方向性が違うぞ。
目標はアイアンゴーレムを量産して、王国に殴りこむのが最終目標だ。現在52話まで連載中。