尾張グダグダ戦国記   作:far

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三連休更新って書いたけど、金曜から更新始めたので一回足りないと気づいて
朝3時に起きて、出勤前に仕上げて、昼に帰宅してチェックして頑張って更新。

寝たのは夜6時だから9時間しか寝れませんでしたよ。HAHAHA


【一見すると】都の 大物たち【人がいい】

 

 何事も程ほどが肝心。って言いますよね。

 今、あの言葉を実感している私です。

 

「結構なお手前で」

 

 抹茶を飲み終えた茶碗の、飲み口を指でぬぐって、指をハンカチ代わりの懐紙で拭く。

 それから茶碗の向きは…… ヤベェ、どっちだ…… 勘で行くしかないですね。向こうに向けて、と

 

 そんな感じで、前世での知識をうろおぼえで実行しております、私です。

 場所はこのところ通っていた、京にある三好の屋敷の一つ。茶室が無かったので、書院造りの床の間を使っています。

 

 さすがは天下人の持ち物というか、柱や壁も格式高い檜造りで、畳の縁にも凝った模様の刺繍が。

 飾られている掛け軸ひとつとっても、私が自分で描いて飾ってある、店の物とは格が違うなとわかります。

 もう見るだけで頭の中で『いち、じゅう、ひゃく…』とケタが上がっていく、あの鑑定番組の電子音声が勝手に流れましたもん。

 

 そんな豪華でありながらも静謐な部屋に負けずに、メンバーも凄いですよ。

 

「なかなかどうして。人だけではなく、道具への感謝も見える。良き所作ですな」

 

「ありがとうございます。我流ですが、お目汚しにならなかったならば、幸いにございます」

 

 まずは今、私を誉めてくれた千の宗易さん。魚屋と書いてトトヤと読む、貸し倉庫業を営む堺の商人です。

 後の世には、千の利休と伝わります。

 

 彼が誉めてくれた所作は、そもそも彼が開祖になって後世に残して、洗練されていった果てのものですからねえ。そりゃ琴線に触れる部分もあるでしょう。

 なお利休というのは、当時の天皇陛下より賜ったお名前で、まだこの時はもらってないみたいですね。

 

 ですがそんな茶道の大物が、亭主、茶を点ててもてなすホストをやっていません。

 この屋敷の持ち主が、この場にいるからです。

 

「すでに尾張にまで、茶の湯の楽しみは広まっているとはな。そう言えば武野紹鴎(たけのじょうおう)が亡くなって、もう10年近いのか。時の流れは、早いものよ」

 

 三好長慶(ながよし)。室町将軍、足利義輝が亡くなって、将軍不在の今。もはや止める者無き天下人です。

 彼が豪華なメンバーその2ですね。その3とその4の、今井宗久と津田宗及の、堺の大商人も茶室の中にいます。

 これでいわゆる、三茶人というか、堺の三宗匠が揃いましたね。なんだこの豪華な茶会。

 

 その豪華な茶会での、一服を強いられている私です。誰か代わって。

 手が震えないように、ゆっくり息を吸って、肺がいっぱいになったら止めて、またゆっくり吐く呼吸法ももう限界なの。

 

「納屋はもう三好を見限ったと思っていたが、考え直したのか?」

 

 だからそういう危険球を、唐突に投げるのやめて。私への危険球じゃないから、まだ耐えられたけど。わりともう、一杯一杯よ?

 

 そんな危険球を投げられたのは、今井宗久。納屋は彼の使っている屋号で、婿養子として武野紹鴎から受け継いだものですね。

 業種は皮屋。鎧はもちろん、馬の鞍や刀の鞘、矢を入れるエビラ、足袋に巾着、羽織に太鼓の皮まで。意外と取り扱う品は多かったようです。

 

 全く関係ない、火薬で財を成しましたけどね。

 

 鉄砲伝来のわずか5年後に『あ、これ流行るわ』と悟って、即座に火薬の材料の独占に走ったらしいですからね。

 しかもその後も、独自に鉄砲を生産して各地の大名に売り込み、火薬で大儲けできる市場そのものを形成するという辣腕ぶり。

 時代の先読みが出来て、その読みを生かす行動力。これは堺の大商人。

 

 それが今回、裏目ったわけですが。

 

 『三好家の唯一の後継者はん、死にそうやなあ。ほな荒れるわなあ。距離取っとこ』と、いち早く三好家を見限ったら『なんか後継者助かりそう』ってなっちゃったんですね。

 はいはい。私のせい私のせい。

 

 それで即行で土下座しに来た今井さんに、長慶は軽くイヤミを飛ばしたわけです。

 そんな軽いジャブでも、私にはヘヴィー級のストレートになるのでお控え下さい。

 

「内輪でゴタゴタしそうやなあと読んで、ちょっとの間。ほんのすこ~し距離を置かせてもらおうか、と思っただけでして。そんな見限るなんて大げさな…」

 

 そんな強力なジャブも『慣れたもんよ』と愛嬌たっぷりに言い訳をする今井さんを、長慶はため息一つで許しました。

 

「…フン。まあ、ワビの品は確かに受け取った」

 

 そう言って、床の間に飾ってあるツボを見て、ニヤリと悪い顔をする長慶。

 あのツボは、松嶋のツボ。コブが多いので、松島の景色になぞらえて名付けられた逸品です。

 私がやりこんだ歴史ゲームでも、最上級の茶器として非常に高額だったのを覚えています。

 あと信長さんが上洛した時に、今井さんが献上した品でもありますね。信長さんはよほど気に入ったのか、誰かに褒美に渡す事も無く、終生愛用したそうです。

 

 つまり本能寺で焼失したわけですね。

 

 今世ではどうなるかなあ。戦のあれこれで失われる茶器などの文物、割と多いんですよね。

 権力者が持つ物なので、宿命みたいなものですが。

 そういうものを回収しようにも『重要歴史イベントで、名物ゲットだぜ! 人はスルーなんでイベントはそのまま!』とか意味不明すぎますからね。

 やるにしても、あくまでサブの目的で、余裕があったらついでに。程度でいいでしょう。

 

「お師匠(武野紹鴎)さんと言ったら、息子さんは、もういくつでしたかなあ?」

 

 ここで話に入ってきたのは、津田宗及。屋号は天王寺屋で、九州四国と強いつながりを持った貿易業

 

 堺の商人たちは、屋号で商売がわかるようにしちゃダメというルールでもあったんでしょうか。こう、直接的なのは雅ではない、とか。

 

 そういうルールがあったかはわかりませんが、茶道や連歌などの文化を身につけるべし、というルールはあったと思われます。

 商売自体が下賎なものと見られがちなものだったので、高尚な文化人という側面を持つ事で、社会的な評価と地位を手に入れる必要があったからです。

 

 舐められないために。

 

 やはり舐められたら死ぬのは、この時代では武士だけではなくて、万人に共通のルールのようです。

 

 まあ、そういう芸の道だけに力を入れると『唐様(からよう)で 売り家と書く 三代目』という、江戸時代の川柳そのままになってしまいますが。

 唐様は、中国風の文字ですね。書道のスタイルのひとつです。

 つまり『達者な字で売り家って書いてあるぜ。真面目に商売しないからだ』という皮肉、からかいですね。

 

 なお津田宗及さんも三代目です。川柳と違って、むしろ全盛期を築いたデキる三代目ですが。

 そして彼も、今井さんも、千の利休も。その全員が武野紹鴎の弟子なのです。

 

「こないだ14になったで。お師さんが亡くならはったんが、8年前や。そん時に、まだ6つやったからな」

 

「ちなみにお師さんの享年は 55 や」

 

 そう付け加える今井さんに『えらい歳で子供作ったな』と黙り込む一同。

 この豪華メンバーを黙らせる武野紹鴎、ある意味さすがの大物。

 

 そんな豪華メンバーを相手に、この調子のまま、空気のままでやりすごしたい気持ちは山々ですが。マジで動きたくありませんが。

 さすがにこの機会を逃すのは、もったいなさすぎますので、動こうと思います。

 せっかく武野紹鴎効果で、間ができた事ですし。

 

「そのお子さんに、先程の茶菓子はいかがですか? 皆さんにもお土産にどうかと用意してあるのですが」

 

 茶会をする、と前もって言われていたので、茶菓子をこちらで用意させてもらったのです。

 なにせ久々の、現代知識チートを輝かせられる好機ですからね!

 

 用意したのは、最中(もなか)です。

 

 餡子(アンコ)は、すでにありました。

 饅頭というのは、諸葛孔明の逸話でちょっと有名ですが、肉まんが本来のスタイル。

 ですが日本は肉食禁止。それに困った来日中国人が、肉の代用としての煮た小豆を入れた饅頭、アン饅を発明。

 それが流行して、そこから甘味を入れて…… という形で、この室町時代に開発されたのがアンコの始まりです。

 

 しかし餡子をパリパリの餅米の皮で包んだ、もしくは挟んだ菓子というのは、まだありません。

 砂糖自体が輸入品オンリーで高価なので、まだ試行錯誤されていないのです。煮物などの料理に入れるとかも、まだ無いんじゃないかなあ。

 

 しかも皆さんにお出ししたのは、イチゴ大福にヒントを得た、フルーツ入り最中。

 しかし季節が夏で、時代のせいか甘い果物が中々見つからずに、苦労しましたよ。

 ユズはありましたがまだ青くて酸っぱすぎたし、夏みかんはまだ無いし、ウリは水気が多すぎる。

 (だいだい)というのはありましたが、見栄えがいいだけで使えない=橙武者という言葉があるように、マズくて使えない。

 蔵で貯蔵されていた柑子という、たぶん温州みかんの原種っぽい柑橘類の、種を取り除いて使いました。

 

 豪華メンバーの反応は良かったですが、正直、苦労と予算に見合ったものかは謎ですね。

 

「ホンマか!? あれは美味かった。嫁には教えられんで、こっそりいただきますわ」

 

「確かに。また持ってきてと言われても、困りますわなあ」

 

「濃茶の方にこそ合いそうだと思っていましたが、これで試せますな」

 

 皆さん、自分で食べる気しかなくて草なのです。

 さすが大商人、強欲ですね。

 茶にも目が向いているあたり、利休の発言だけなんかちょっと違いますが。

 

「それと、もう一度。熱田の加藤への協力を天王寺屋さんが。他の皆さんが官位を賜るための協力をしていただける、という事でよろしいのですね?」

 

 ここで念のため、もう一度確認を取りました。

 これがこの茶会での連絡事項だと聞いてはいましたが、いかにも都合が良すぎるので。

 

 まずこの時代の茶会というのは、現代で言うとゴルフみたいなものです。

 ホール周りながら、仕事の話とか人の紹介とかする、接待もある、純粋に趣味でもある。そんな感じのアレです。

 凝りだすと道具の値段が天井知らずなのも似てますね。

 

 そんな場所へ、しかもこの豪華メンバーの中に、いきなりお呼ばれするとか。

 

「きみ、茶は好きかね?」

 

 この一言で招待されるには、場が大きすぎるんよ。

 

「きみ、ゴルフはやるかね?」

 

 という一言で、大企業の重役と総理大臣のいるゴルフ場へご案内。とか怖すぎるでしょう?

 しかもこちらの立場は、せいぜい地方公務員。

 

 そうなったのが、私です。

 今回、さんざん怖がっていた私に『なに今更ビビッてんだコイツ』とか思っていた人たちは、反省してください。

 『そうなってもミスショットなんてしねーよ』という人だけが私に石を投げなさい。

 有望な部下として、スカウトしに行きますから。

 生まれ変わったら、私の子供だったりするかもしれませんよ?

 

 それと三国共同で、というのが朝廷の『前例センサー』に引っかかってしまったらしく、予想外に手間取りそうだったのを助けてくれる、というのもまた都合が良いのですが。

 なぜ急に、ここまでの大物が出てくるのか。

 いや長慶は分かりますよ。本当に助かるかどうか気になって、見舞いに通っているうちに、ちょっと仲良くなった三好義興の父親という繋がりがありますからね。

 でも、そこになんで今井と利休が出てくるんですか?

 今井は下手を打った分の三好家への点数稼ぎで、まだわからなくもないです。

 公家に顔は利きそうだけど、どっから出てきた千の利休。茶会だから呼ばれた、というだけにしてはビッグネームすぎる。

 ……気になるから、聞いちゃうか。ついでに、みたいに紛らわせればイケるイケる。たぶんイケる。

 

「美濃の不破光治様に左衛門尉を。尾張の坊丸さまに弾正忠。諏訪の諏訪勝頼さまに信濃守を。そのためのご助力、いま一度伏してお願い申し上げる」

 

「うむ。信濃守だけは厳しいかもしれんが、やってみよう」

 

「やはり信玄ですか。もしやその為の、魚屋さんですか?」

 

 信濃守は、武田信玄が先に申請してるんですよねえ。

 まあ、その後に長男と内乱起こしちゃって、今に至るもグダグダしてて、資金も滞りがちになって手続きが止まってますけど。

 それでも源氏という武家の正統で、名門ですから、それだけで政治工作に強いんですよ。

 もしやそれを解決する人脈を、利休が持っているのでは? と問いかけました。

 

「うむ。こいつは山科卿とは友人でな」

 

 あっ、そういう繋がりが。

 官位ゲットに抑えるべき3家。観修寺と山科と菊亭。菊亭晴季が山科言継の義兄なので、これで2つ一気にイケますね。

 そして観修寺だけなら、三好長慶でイケる、と。

 

 これは光明が見えてきましたね。

 ならもう少し、ちょっと欲張ってみましょうか。

 

「そういうことならば、もうひとつ官位をねだっても、よろしいか?」

 

 なに、ちょっとしたお土産ですよ。お土産。

 皆さんに渡した最中(モナカ)のようなものです。イケるイケる。

 

 




百日魔王も消えてるなあ… 青の魔術師も。と思ったら青の魔術師は、小説家になろうにあった。百日魔王の かなん 氏も、トカゲなわたしという書籍化作品と魔王は消えてるけど、小説家になろうで発見。引退済みっぽいけど。

風羽洸海 氏。異世界召喚だけど、ファンタジー世界 → 別のファンタジー世界 という一味違ったもの。冤罪で捕まった囚人に呼び出されるのもそう。主人公が見習い魔術師なのは、まあ。
ネット黎明時の、個人サイトが乱立していた頃の古典ファンタジーを思い出したい、知りたい方へ。

魔王の刻印だったか、ルパシカという主人公の小説、どっかで見つからないかなあ…
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