尾張グダグダ戦国記   作:far

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おおう、ちょっと嘆いたら、前回だけここすきが10倍くらいに… ありがとうございます。


【ワーキング】お休みですがオシゴトです【ホリデー】

 

 いやあ、気付けばひとり、ブラック労働から解き放たれていた私です。

 京でやる事はもう、全てやり終えましたからね。後は結果待ち。つまりは自由時間です。

 

 公家たちからの文化カツアゲも、一旦落ち着きました。

 音楽、料理と提供したら、次は和歌を要求された結果『連歌は普通やな』という評価になって、テンションが落ち着いたようです。

 

 まあ『普通やな』というのは、意訳です。

 実際には『鄙から来られたにしては、ええんちゃいますか』という京都しぐさでしたよ。ええ。

 そんな中世京都人たちからも開放されての、自由です。素晴らしいですね。

 

 これで京が壊れて廃れて、治安が終わっていなかったら、もう最高だったんですけどねえ。

 

 ついこの間も『お、余所者がひとりで居るやんけ。殺して身ぐるみ剥いだろ!』と五人で襲ってきた地元民がいましたからねえ…

 

 煙り玉使って、逃げましたけど。五人相手は勝てませんよ、普通に。

 何で地元民だとわかったのかと言えば、三好義興くんの屋敷に勤めている兵の人たちに、一杯おごるからっで頼んで動いてもらったからです。

 

 いつも通る道での事だったんで、また彼らに見かけられる事もあるでしょう。そうしたらまた襲われてしまいます。

 だから危険を排除しておかないといけなかったわけですね。

 襲われた現場近くで、ああいうヤカラがたまり場にしそうな、現代で言うとコンビニ前とか、潰れたゲーセンやガソリンスタンドに相当する場所を探せば三発でした。

 

 一発じゃないんかい。と思われたかもしれませんが、実際3回目だったんで仕方が無いのです。

 1回目と2回目も、ちゃんと不良はいましたし、退治したのでヨシッ!

 

 まあ退治と言っても、皆殺しにしたわけではないので。

 そのほうが後腐れは無いかもしれませんが、彼らも地元民。何か有力者に繋がりがあったら面倒ですし、死体の処理とかもまた面倒。

 なのでヤキを入れて『三好がバックにいるぞ』とワカラセて、私に手を出さないようにすれば十分なんですね。

 

 京の治安改善とか、別に私の仕事でもなんでもないですし。むしろ三好家の仕事では?

 

 長慶さまも、本来は京に滞在するのは必要な時だけで、だいたい大坂のほうの飯盛山城を居城としていたらしいですが、将軍不在となった後は京に入り浸っていますし。

 そろそろ手をつけた方が、良いのでは?

 

「つまり、先程の要領でバカどもをシメて回って、京の都を制覇すれば良いのだな?」

 

 三好家の兵のまとめ役の人に、素朴な疑問をぶつけたら、大変に脳筋な答えが返ってきました。

 でも合ってそうだから困る。ところでお名前を伺っても?

 

 え? 進士晴舎? あれ、確か幕臣の方ではありませんか?

 

「左様。しかし公方様が亡くなられ、我ら幕臣も散り散りよ。自分は公方様と三好家との申し次(もうしつぎ)役であった縁で、こうして義興様の傍仕えをさせてもらっておる」

 

「仕官が叶いましたか。それは良かったですね」

 

「うむ、本当にな」

 

 私が少し大げさにお祝いを言って、彼も重々しく頷いて、それを受け入れました。

 と、いうのも。

 

「同じ幕臣の、いや同じとは思いたくも無いが、和田是政という者が、亡き公方様の残した武具を持ち去り、売りさばきよったせいで、元幕臣の評判は地に落ちたからな…」

 

 そんな事件があって、実際いくつかの刀などが流出しているので、すでに京中にウワサとしても広まってしまっているのです。

 それでなくても、主君を暗殺されてしまったせいで、もとより評価は下降していましたからね。

 そりゃ再就職が難しくなるわ。

 

 しかし多分この人、史実だと永禄の変で義輝と一緒に死んでるタイプかな。(正解)

 ある意味、私が生かした人ですか。(正解だけどなんか違う)

 

 でもその元幕臣の人の出した、京の治安改善案が『ヤンキーの地方制覇計画』と同レベルのシロモノって……

 そりゃ乱世終わりませんよ。室町の将軍家に、そんな全てをなぎ倒して解決する豪腕はありません。初代の尊氏を除いて。

 

 少数で九州に逃げ延びて、九州丸ごと味方に変えて戻ってきました! とか意味不明な事やってますからねえ……

 それを真似ようとしたのか、地方に落ち延びて~ とか夢見ちゃった大名や将軍もいますが、実行できたのは尊氏独りだけです。

 だから鎌倉幕府ができるまでとか、江戸幕府ができるまでが様々な作品になっているのに、室町幕府ができるまでは数が少ないんですよ。よくわからないから

 共感を呼べない物語とか、盛り上がらないのです。

 

 歴史の物語で、史実通りにやると『なんでそうなるの?』となってしまうとか、そうそうありませんよ。探せば、たまにありますけど。

 現実はいつだって、幻想を超えて進んでいくものですねえ……

 

 そして三好家の中で、ケンカしたい有志がそれぞれ群れては京の市中へ散らばって。

 エモノを探してうろつき回っては暴れて、治安が回復してるのか悪化してるのか、これはもう解からなくなりました。

 

「どうしてこうなったんでしょうね?」

 

「始めたのは、たぶんキミだよね?」

 

 義興くんに聞いてみたのですが、欲しかった答えはもらえませんでした。

 そうだけど、そうじゃない、もっと違った私に優しい答えをください。

 

「そういうのが欲しかったら、 ……わかるよね?」

 

「オヌシもワルよのぅ……」

 

 別に衆道的なアレでも、ワイロ的な黄金色の菓子でもありません。

 要求されているのは、ただのごはんです。

 なんで三好家の重要人物の食事に、他家の家臣の私が関わっているのかと言えば、まあ、ちょっと医者の半井(なからい)さんに、意見しちゃったからです。

 

「いや、病人だからって、カユだけじゃダメでしょ」

 

 つい言っちゃったんですよね。黄疸(おうだん)という、肝臓系の何かの病気なのは確かなので、普通の食事はいけない。それはわかります。

 でもカユだけだと、それはそれで栄養が足りない…… 足りなくない?

 

「薬食同源*1か。確かにそうかもしれんけど、内臓のうち肝の臓は気と血を作り、消化を助ける。五行では木気で、味では酸味。ゆえにカユに梅干しを乗せておる」

 

「もう少し回復したら、ほうれん草とかを足す感じですか?」

 

「せや。胡麻和えでな。更に回復したらニラとか、ウナギもええな」

 

 う~ん。私も前世で肝臓関係は身をもって学んだので、少し知っていますが、だいたい合ってますねえ。

 すごいね漢方。ちょっと侮ってましたよ。

 

「ウナギでも、白焼きなら大丈夫ですかね?」

 

「半人前くらいなら、まあええかなあ。というか白焼きってなんぞ?」

 

 半井さんについても少し聞いて回ったら、なんだか凄い先生でしたし。

 

 歴史ゲームでよく出てくる、この時代のナンバーワンの医者、曲直瀬(まなせ)道三と同門の兄弟弟子なんだとか。

 しかも生まれが朝廷の厚生省っぽい部署、典薬寮の最高位の御典医の家系の出というエリート。

 歴史ゲームに出てこないのは、朝廷に直接仕えているのと、偉い人専門の医者だからですね。

 

「う巻きはダメですかね?」

 

「なんや、それ。知らんけども」

 

 曲直瀬道三は京在住の、日本初の医学校を作った人ではありますが、民間の医者なので、そこが違います。

 大名や公家どころか、天皇まで診察した医聖と呼ばれる凄腕の医者なのも間違いありません。

 

 この2人の医者の大家。どんな関係だったんでしょうか。

 同じ師匠に学んで、同じく名声を得た、同じ道を行く兄弟弟子。

 

 曲直瀬道三が朝廷内でも活動できたという事は、間違いなく半井さんの協力あってのものでしょうし。

 共同で研究したりもしているようですし。

 

「じゃあ茶碗蒸しに入れて…」

 

「だから知らん料理を言われても困るんやけど」

 

「なんでもいいから、私にカユ以外も食べさせなさい」

 

 直接聞いてみたところ、半井さんは味わい深い笑顔を見せてくれました。

 単純な好意だけではありえない、しかし悪感情は感じられない、人生で深く掘り下げられたような笑顔を。

 無言でしたが、その顔で充分理解しました。一言では言えない、色々とある。でも悪いものではないのだな、と。

 

「いやウナギは泥抜きしないと美味しくないですから、3日はかかりますよ?」

 

「シジミやアサリも肝の臓にエエけど、その辺で売っとるやつは鮮度がなあ……」

 

「海が遠いからか…… くっ、阿波の国であれば」

 

 いつの間にか患者の義興くんが話に入ってきていました。

 もっといい物を食べたい。食欲があるのはいい事ですが、ちょっと欲望が強めかなって。

 

「そう言えばこの時期、わずかな間だけ取れる幻のキノコ、タモギタケというのがあったはず」

 

「幻のキノコだと!」

 

「いや、まあ、キノコの類はだいたい体にエエけども、毒キノコも多いし、見分けも難しいからお勧めはせんよ?」

 

「かまわん! そのための毒見役よ!

 

 違うと思うんですけど。ほら、あっちの方で、たぶんその毒見役の人が『!?』って顔してますよ。

 なんかキミ、急に食いしん坊キャラ出してきましたね。

 

 ……あれ? これ私が取りにいく流れですか?

 タモギタケの見た目とか、知ってるの私だけかもしれませんから、そうなる、のかなあ。

 

「では頼んだぞ! ウナギの用意もな!」

 

 やめてくださいよ。三好家の御曹司が「頼んだぞ」なんて言ったら、断れないじゃないですかヤダー。

 

 そしてウナギの泥抜きを厨房の人に頼んで、ついでにタレを一緒に開発してから山へと旅立ち3日間。

 砂糖の代わりに水あめ、ミリンはあるけど高級酒扱いなので出汁汁と米粉で代用して、醤油と煮込んでタレは出来たのですが……

 

 タモギタケが生えるのは、東北と北海道だというのを忘れていた私が、タモギタケを見つける事は当然無かったわけで。

 

 案内役の地元の猟師さんの協力の下、ウスヒラタケを採取して、生米と炒めて、昆布と干し椎茸の出汁をかけながら煮込んだ和風リゾットで許してもらいました。

 なお干し椎茸は、厨房にあったのを勝手に使いました。でもひとり分だから、そうそうバレない、といいな。

 

 そしてその後も、他のウナギ料理を出せやら、貝も干したやつならいいだろうとか、料理関係で色々わがままを言われ続けるハメになったわけで。

 あれ? 私は自由を手に入れたはずですよね?

 なんで三好義興くんの家臣みたいな事になってるんでしょう。

 

 どうしてこうなった。

 

 仕方ない。こうなったら三好家も計画に巻き込みますか。

 ここまで動いて、何も収穫が無かったら損した気になりますからね。

 ふうむ。現在の天下を取った状態の三好家を、どう使うのか、か。

 

 あれ? これは存外、面白そうだぞ?

 

 ただそうなると、避けて通れない男たちがいるんですよねえ。

 三好家側で動くとなると、あの公家とかが敵に回るので、そっちは手を打つとして。三好家側にも、対応を考えないといけません。

 三好長慶は勿論のこと、特にまだ会った事がない、あの男。松永弾正久秀の対応を、です。

 

 いや、長慶さまはいいんですよ。私には大変好意的で、この間の『官位もういっちょ』の注文にも『へいお待ち!』とばかりに軽く応えてくれましたし。

 なんなら私にも官位くれましたし。弾正大疏(だんじょう だいさかん)。あまり聞かない役職ですが、正七位上の正式な官位です。

 弾正台という省庁の、下級役人のまとめ役で、定員は一人だけ。

 

 長慶さまの問題点としては、義興くんが持ち直した事でいきなり回復しましたけども、なんかウツ病だったみたいなんですよ。

 去年にも一昨年にも、頼りになった弟達が亡くなったそうで、気力と共に身体も衰えて、寝込みがちになっていたとか。

 それは堺の豪商も見放すわ。

 でもなんか生き返ったみたいに元気になったそうで。病は気からって本当ですねえ。

 

 ……でもこれで。ここで、もし、また義興くんに、何かあったとしたら……

 

 ちょ~っと、天下がヤバいですねえ。

 

 勝頼さまたちへの官位が正式に下りたところで『楽しかったですよ、あなたとのトモダチごっこ』とかやったら畿内は大混乱で、しばらくは何も対策を考えなくていいですねえ。

 

 さすがにやりませんが。

 やりませんよ、そんな。一緒にご飯食べた友人を傷つけて、何も感じないサイコパスじゃあるまいし。

 ちょっと策として考えはしますけど。実行するかどうかは別ですってば。

 

 とらすと・みー。

 

 さて、私を信じてもらったところで。松永久秀を信じるかどうかを、考えてみようとおもいます。

 松永久秀は現在、大和の国を攻略中との事。

 そして今、三好家の親子が倒れれば、大和はそのまま松永弾正の手の中に残り、彼は三好家の家臣から戦国大名に成り上がる事が出来ます。

 

 そのために主君を裏切るかどうか? 確認する方法は、何かないものでしょうか。

 

 協力関係にあったはずの義興くんの料理番と料理勝負するハメになって、うっかり勝ってしまって彼を部下にしたりと、サブイベントをこなしながら、考えをまとめていたのですが。

 そうしている間に、先手を打たれてしまいました。

 

「弾正大疏殿。松永弾正少弼様より、茶会へのお招きにございます」

 

 進士晴舎さん、元将軍の申し次役だったからって、そんなお知らせを持ってこなくても。

 爆弾正のお茶会とか、見てみたいけど行ってみたくないです。

 誰か代わって。

 

*1
医食同源は近年の造語。当時はこう言ったし、これが最先端の医学理論で、半井と曲直が師から教わった事でもある




1月からアニメの3期、劇場版が公開中の呪術廻戦
このハーメルンにある二次で23話で一旦完結してて読みやすいやつを推してみる。
[本編完結]オサレ詠唱の申し子(作者:山吹乙女)
ブリーチの藍染のガワと、呪文唱えたらそれっぽいのが発動する言霊呪法を持って、五条らの二年先輩になる年齢の転生者さんが、鬼道開発と自己改造の果てにグッドエンドを目指す。でもガワと声と言動がヨン様なので胡散臭いw
途中にある、この作品が連載されているジャンプの読者らによる掲示板ネタが面白い。
24話以降もあるけど、そちらはオリ展開かつ長くかかりそうなので気長に待つのじゃ…
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