尾張グダグダ戦国記   作:far

49 / 91
今回、ちょっと主人公がラインを越えます。
自分のために。でも自分のためだけじゃないから。マジで天下に必要だから。
詳しくは次の話で言うから! だから明日も読んでね!
今日モヤったり、どうかと思ったはずなのに、明日は同じ要素が笑いに変わるはずだから!


【暗躍】セルフ ミッション【暗殺】

 

 さて、ここで少し時を巻き戻して、私が六角家にいた頃の話に成ります。

 

 いや、いい加減松永久秀出せよ、いつまで引っ張るんだ。と言いたいお気持ちはわかります。

 ですが、今回ばっかりは必要な前置きにもなりますので、どうかご辛抱下さいな。

 

 六角の幹部らの家で、私が唯一、触ろうとしなかった家があるのは、お気づきでしょうか?

 

 三雲家です。

 

 甲賀五十三家のひとつなので、甲賀衆を紹介してもらうのなら、本来は後藤家よりもこっちでしょうね。

 ではなぜスルーしていたのかと言えば、まあ、よくわからなかったからです。

 

 流石に滞在してほぼ間を置かずに、観音寺騒動に巻き込まれましたからねえ。

 情報が集まっていなくて、判断できる根拠が『私の穴のある歴史知識』と状況証拠だけという、ズサンな物でして。

 後藤家と進藤家は、当主を殺されているから確実に味方してくれる。平井家も、六角親子への好感度は低いだろう、という程度の読みでした。

 

 なのに蒲生家に顔を出したのは、まあ、ネタが受けるのに浮かれての、調子に乗った結果、ですかねえ……

 どうせバランサー気取りで、大したことは出来ないだろう、と高をくくってもいました。

 

 その結果、ムダに命をかけた言いくるめ判定をする事になりましたが。

 

 今思い出しても、シビレますね。

 周りの蒲生家の家臣たちがチョロくて、こっちのトークに乗ってきてくれたので、逆に助かりました。

 アウェーなのにホーム。みたいな。

 逆に文字通りのホーム(実家)なのに、自分以外全部敵に回ってた蒲生賢秀さん、かわいそう。

 

 怪我の功名というか、瓢箪から駒と言うか。この一件で、蒲生家を味方に出来たのは、本当に助かりましたね。

 でももう一回、命を賭けた言いくるめ判定をしたくないので、三雲家に行くのはやめておきました。

 

 いや、本当にね? 判断が難しいんですよ、三雲家って。

 

 なにせ史実だと、当主と嫡男が死ぬまで六角家に従って、織田家と戦い抜いているんですよ。

 なら敵だと判断していいかというと、そうとも言い切れなくて。

 

 彼らが守ろうとしたのは『六角家じゃなくて自分たちの利権』だった可能性が、かなり高いんですよね。

 

 というのもこの三雲家。何をどうやったのか、中国、この時代では明と独自に交易していたんですよ。

 

 無論、密貿易です

 

 しかも朝廷も幕府も、なんなら六角家すらも通さずに、単独でやっていました。

 この海無し県の滋賀県で

 

 三雲家の領地が琵琶湖に近い南近江にあったので、間違いなく琵琶湖から淀川水系を通っての、堺とのルートを掌握していたのだと思われます。

 そんなもの、信長さんが見逃すわけがありません。降伏したら、絶対に、必ず、確実に取り上げられてしまいます。

 そりゃ武士として、一所懸命しますね。そんなオイシイ利権は、必死になって守ろうとしますよ。

 

 というわけで、三雲家が六角家への忠義が高いゆえに付いていったのか、自分たちのために戦ったに過ぎないのか。

 判断できなかったので、保留にして触れてこなかったわけです。

 

 私としては、そのままスルーでも良かったのですが、三雲家としてはそうではなかったようでして。

 将軍暗殺の手筈は整ったし、もう観音寺城下から出発しようかという時に、向こうから接触して来ました。

 

 まあ、将軍暗殺とまではわかっていなかったようですが。

 それでも『蒲生家と後藤家が組んで、何かするらしい』とは、甲賀衆のつながりで察知したようでしたからねえ。

 『確実に何かに巻き込まれる』と思って、情報を持っていそうな私に接触してきた、という様子でした。

 

「今のままなら『知らなかった』という立場で、言い訳にも使えますが、その権利を手放してもよろしいのですか?」

 

 大物を仕留めに行く、という事で殺気立っていた当時の私は、そんな風に三雲家の次男、成持を冷たく突き放しましたっけ。

 

 当主でも嫡男でもなく、次男坊? と不満に思ってもいましたね。自分の身分もわきまえずに。

 ここのところ、大物とばかり交渉やら交流をしていたので、驕っていたようです。これは自省して、以降も注意しないといけません。

 驕れるものは久しからず。金言ですよねえ。

 

 そんないい気になっている私に反発したのか、成持は「かまわん、聞かせよ」と強く出てきましてね。

 それで調子に乗ってた私も、ノリノリで全部教えちゃったんですよ。

 

「~~と、いうわけです。お解かりになられましたか?」

 

「お、お前たち正気か? 将軍暗殺だと…!? おまけにその後継者まで…!」

 

 さすがにビビッてましたね。思ったよりも大きくてヤバい話なので、それはそうなります。

 でも、知った以上は巻き込まないと、損ですよねえ?

 

「和田是政、という方が幕臣にいますが、仲はよろしいですか?」

 

「我らになにをさせる気だ? ……良くはないな。我が家はあくまで六角家臣であろうとしたが、和田家は将軍家に近付きすぎている。かつては離反した事もあった」

 

 ほうほう。なら、使えますかね。

 そう思った当時の私は、アドリブで彼らに仕事を任せて、強制的に共犯に仕立て上げました特に深い考えも無く

 

 はい。通常運転です。いつも通りですね。

 

 わかってはいるんですけどねえ。もっとちゃんと考えて動かないと、痛い目を見るぞって。

 でも状況が許してくれないんですよねえ。

 いつだって現実は突然で、残酷なんですよ。だから他人にも、多少残酷になってもいいよね。

 

「公方さまの遺品となる、名刀などの武具、茶器。これを盗み出していくつかを売りさばいて下さい」

 

「なぜ我らがそのような事をせねばならぬのだ!?」

 

 反射で断られたので、東京名物冷たいリアクションで返しました。

 

「あ、じゃあいいです。甲賀衆にやってもらいますね。いいお金になったのになあ…… あと犯人役、よろしくお願いします(キミらのせいにする)

 

「だから、なぜ!!」

 

 混乱する名門の次男坊に、笑顔で教えてあげました。

 

「秘密の、大事を成そうという時に、知ってるのに横で何もしないヤツはもう味方じゃないんですよ。だから、そうですね。こうなるんじゃないですか?」

 

 ここで刀をゆっくりと抜いて、中段に構えてから少し引いた、中段の霞の構えを取って言いました。

 

「怪しいヤツめ。成敗いたす」

 

「!?!???!?」

 

 いやあ。面白いくらいに狼狽していましたね。

 私より年下でしょうが、もうとっくに初陣も済ませたであろう、二十歳を越えた武家の男が、刀に手をやる事すらできずに、ひたすら混乱していましたからねえ。

 超楽しい。思わず、そのままスパッといきたい誘惑に駆られましたよ。

 

 チンッ

 

「ま、冗談ですけどね」

 

「ハ?」

 

 刀をしまってサラッとそう言ったら、混乱は抜けたものの、一緒に思考も抜けてしまって間抜けな顔をしていました。

 その後、深呼吸をさせて落ち着かせてから、あらためて説明と説得して仲間に加えたわけですね。

 

「蒲生家と進藤家と後藤家。同じ蒲生郡の住人たちは、六角家を追い出し、近江を手にするために組みました。その状況で三雲家の取るべき動きは?」

 

「三雲家も、六角家を見切って、仲間に加わる?」

 

「はい、正解です。では家に帰って、お父上を説得してくださいね」

 

 説得が成功したのはいいですが、イマイチ頼りになら無さそうだったので、蒲生さんに一報入れておきますかね。

 あちらからも手を回してもらった方がいいでしょう。

 なにせあの次男坊、最後は私を妖怪でも見るような目で見ていましたからねえ。

 私を排除したいあまりに、敵対する可能性も無いではない、かな。まあその場合は、宣言した通りに排除するだけです。

 

 さて。

 これで和田是政という、将軍家の力になってしまいそうな、有能な文官の評判と、将軍家からの評価はガタ落ち。

 できれば公家の、将軍家に近いのは二条家でしたか? その辺りにも手を打ちたいところですが、幕臣程度ならともかく、公家のトップクラスはなあ。

 動いてもらうにも、対価が大きくなり……

 

 あっ、そうだ。義輝の遺産を売り払った分け前、要求しないと

 実際に動くわけではありませんが、思いついて提案したのは私ですからね。発案者ボーナスくらいはもらわないと。

 そういう意味でも、蒲生さんちに行かなければ。

 

 と、そうやって出かけて、話を付けて。

 実際に動くのは甲賀衆で。と決まっていたので、杉谷善住坊が裏切った件の落とし前も、すぐには言い出せなかったんですよね。

 事のさなかにコジれて、実行してくれなかったら損ですから。

 連絡する人手や手段が、臨済宗のネットワークを使用できるようになるまで無かったのも事実ですが。

 

 のちに分け前として、私に不動国行と薬研藤四郎の二振りの太刀と、かなりのゼニをもらいました。

 でもこの二振りって、確か松永がパクッて信長さんに九十九ナスだったかと一緒に渡したヤツじゃありませんでしたっけ。なにこの因縁

 

 それでも刀はいい物でしたし、ゼニは私の京での活動を大いに助けてくれました。

 刀はいい物過ぎるので、坊丸さまに献上するはめになるでしょうが、それまでは腰に刺しておいてもいいでしょう。

 

 献上する理由? 上司よりもいい車を乗り回してる部下とか、ゴルフで上司よりいい道具を使ってる部下は空気読めてないって言われて叩かれるからです。

 

 それはさて置き。

 

 京に着いて、手書きの地図を用意して、冷泉さまに聞きながら、ここは一条屋敷で、近衛家はここで、今出川亭がここで、と書き込んでいた時です。

 

「なんでこんなもんを用意しとるんや」

 

「いざという時のためです。観音寺城の時みたいな」

 

「ああ、うん。せやな…」

 

 そんな会話をしていたら、閃きました。

 

 そうか。頼んだら費用が高くなるなら、自前でやってしまえばいいんだ。

 二条晴良。五摂家のひとつの当主で、幕府に近く、義昭と松永の味方になりそうな大物。

 どうも放っておいたら、朝倉家やら毛利家やらとつながって、やっかいな敵になりそうなので、初期消火させてもらいましょうか。

 

 まずお住まいは、上京と下京を結ぶ、室町通りに面した二条殿。

 

 ヤバいです。くっそ目立ちます。京のど真ん中じゃないですか。忍び込むとか逃げ去るとかが、超難しくなりますよ。

 何かのイベントで出かけるのを狙おうかと思いましたが、名代を出すとか結構やってるので、確実性が無いし。

 

 そこで料理人に目をつけました。

 

 この時代の公家の例に漏れず、二条家もお金に困っています。つまり使用人は、かなり減っています。

 貴族としての格式から、料理人は必須ですが、それも減っているわけです。

 

 わずか3人。それを無力化すれば、一服どころか、好きに盛りまくった食事を、二条晴良に馳走できます。

 

 さて、まずはひとり外に出ている時に、こっそり一服トリカブトを少量盛って、嘔吐、発熱など体調を崩してもらいましょうか。

 ちょうど夏風邪をこじらせたように見えるでしょうから、不自然には見えないはず。

 そいつに成りすまして、入り込んでからが勝負ですね。

 

 う~ん。なんというか。

 暗殺結社だか蛇だかの、別ゲームが始まった気分ですねえ。今までにはない、独特の緊張感が走りますよ。

 

 身バレしたら、各方面に多大なご迷惑をおかけしてしまうので、自爆の用意だけはしっかりとしておいて、と。

 ミッション、スタートです。

 

 

 

 ……と思ったら、いきなり終わりました。

 ミッション、コンプリートです。って、早過ぎるわ

 

 何が悪かったのかと言えば、最初に接触した、外出した料理人が悪かったですね。いや、都合が良すぎたのか。

 たまたま買い出しに出た、最年少の料理人。人のいい商人風に変装してから、彼の隙を伺うために声をかけたのですが。

 少し話しましたところ、自分の身元をペラペラと話してくれまして。

 

 いわく、京の貧しい出で、家を助けるために奉公している。だが高位の公家なのに給金は上がらない。

 これは金に困っているのは、明らかでした。

 

 そこで、わずかな金と引き換えに、ある『珍しいキノコ』を料理に混ぜるように頼んだのです。

 薬の売り込み、宣伝に使うとウソをついて。

 

「これは夏場の暑気あたりに効く薬になる。少量ならば、お公家様(晴良)の気力も、食欲も増進させるだろう。

 ただし、使いすぎると、効き過ぎて高熱が出てしまうが、それも身体には悪くは無い作用なので、大丈夫だ」

 

 キノコの名前は伏せますが、食べてから効果が出るまで少し時間差のあるタイプの、幻覚などの症状が強く出るヤツです。

 

「タタリじゃ! タタリじゃあ!」

 

 二条晴良はそう叫んで、屋敷中を暴れまわりながら、最後は心臓が止まって倒れたそうです。

 

 心臓? あれ、そんな効果あったかな…?

 

 怖いですね。

 怖いので、少し京を離れましょうか。ちょうどお茶会に呼んでくれた方もいますし、大舞台の公演を手がける予定もありますからねえ。

 

 いやあ。乱世乱世。

 




へいじつや という個人サイトの 俺と魔王の四十七戦 が残っていたので推してみる
短編連作。1話あたりは短いのでサクッといけるかな。
ジャンルはラブコメかなあ。前世がファンタジー世界の勇者と魔王で、今世が男女の高校生。でもなんか幼い感じ。

多分読んだの、二十年以上前じゃないかなあ。サイト移転してたけど、生きてた。良かった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。