それにつけても カネの欲しさよ
どんな上の句にも付けられる、万能無敵の下の句です。
連歌でどうしようもなくなった時の、最終手段ですね。一回だけならギリ許されます。仲間内なら。
そうではない、外向きの、仕事などの付き合いでの連歌だったら、まあ、アウトかなって。
でもそういう場だったら、宗匠というジャッジ兼コーチ役がいるはすなので、その人にヒントをもらいましょう。
パスはできませんが、順番を後回しにして、ちょっと考える時間をもらう事はできるので、何も思い浮かばなくても頑張りましょう。
また、流れを乱す行為ではあるので、この順番を変化させる『待った』も連発は控えましょう。
そんな室町ビジネスマナー連歌偏を実践しつつ、一条家に取り入りました私です。
目的は、お金です。
というのも、京での生活、お金掛かりすぎなんですよ。
公家たちが相変わらず、定期的に文化カツアゲしてきますが、その費用はこっち持ちですし。
義興くんの食費、はまあいいんですが。
なんかそこに長慶さまとか、松永サンとか、新顔の三好長逸と石成友通も、たまにご飯食べに来るんですけど。
義興くんの屋敷での事ですが、以前に料理番に勝って、彼を私の弟子にしてしまったので、上の者として材料費などを払わせにくいのです。
三好家所属の面々にあいさつ回りをしていますが、手ぶらで行くというわけにもいきませんし。
美濃に作っている禅林寺の建造費もありますし。
京で披露しちゃったんで、尾張に無いとなると説明に困る。という理由で、五号店のウナギ屋と、六号店のウドン屋も作らなくちゃいけませんし。
でも尾張の儲けを京まで持ってくるのも、面倒。
尾張大番頭に出世させた、長秀(豊臣秀長)から報告を受けて、指示出しをしているとはいえ、利益だけを大きく持っていくオーナーは嫌われますからねえ。
不満を溜めて会社乗っ取りとかされたら、困ります。
長秀ほどの人材は、斬ったら替えが見つからないのです。
将軍義輝の遺産を売り払った金の一部を得ていたので、それでやりくりはしていますが、というか甲賀衆が半分ほどをこちらにくれたので余裕ですが。
減る一方というのはよろしくありません。稼がないと。
とりあえず正露丸と 麻黄湯と葛根湯の量産体勢を整えて、半井さんの紹介で曲直瀬道三に卸して、売りさばいてもらいました。
お薬は、信用のある所からじゃないとまず売れませんからね。
だってこの時代、江戸時代もですが、医師免許ないんだもん。
「今日から俺は医者だ」
という宣言ひとつで、医者になれてしまう、恐ろしい時代です。
だから信用できる医者でないと、怖くてお薬を買ってくれないんですね。
チャレンジャーや、切羽詰ってるンジャーは除いて。
そう言えば国民的海賊マンガにいましたねえ。
『こいつは効くと思ったんだが……』と、ロクな知識も無しに、薬っぽいナニカを試しもせずに患者に注射していた、自称医者が。
ちょうど、あんな感じですね。
いや、金だけはしっかり取っていくあたり、あれよりもはるかに下です。
取り敢えずこの3つの漢方薬があれば、そんな医者に掛からずとも、大体の症状に効きます。
そして私も曲直瀬道三も儲かります。
自分にヨシ! 相手にヨシ! 世間にヨシ! これが近江商人の三方ヨシ!
自分が儲かって、相手も助かるか儲かって、世間に良い影響がある。そんな商売なら長続きするよ。という教えですね。
明文化はされずに、江戸時代に近江商人の精神として実践されて、第二次大戦後に研究者が言語化して広まりました。
つまりこれもまた、現代知識チート…!
なお量産体勢を整えるために、わりとおカネが飛んで行きました。
カネを得るために、カネを使うという矛盾。しかしこれは投資。投資だからセーフ、のはず。
なんせ麻黄湯の原材料の麻黄が、中国原産で、ほぼ日本に生えていないんですよねえ。
輸入しないといけないわけですが、明が確かそろそろ海禁といって、輸出入を禁じていたはず。
まあそうなったら密輸業者がチャンス到来! と大ハッスルする、大密輸時代になったわけですが。
密輸王とも言える王直って人は『全部許すから明に仕えなさい』って言われて、信じて出頭したら、騙して悪いがって処刑されましたが、別に宝は残して無かったらしいですね。
ともあれ、そんな事情は日本の朝廷は知ったこっちゃないわけで。
ついこの間見合いした家の、菊亭さまを経由して、麻黄の独占輸入権の朱印状を発行してもらいました。
それを長慶さまに裏書してもらって、権威に実行力を持たせまして。
そして実際に輸入してもらうのは、貿易業の天王寺屋。津田宗及さんです。
「大体の症状に効く万能薬の素ですよ」
って吹き込んだら、大体の人は協力的になってくれましたね。
病気は怖いですからねえ。
ついでに葛根湯の桂皮も、国内だけじゃ足らなさそうなので、輸入してもらって。
葛の根っこは、そこらに一杯生えてるから買い取りすればいいとして、甘草は、栽培してもらわないと。
近江が薬草で有名なんで、脅して汚れ仕事してもらったフォロー込みで、三雲家に相談しますか。
そうして原料を集めたら、量産です。
大事なのは、一定の品質を必ず保つ事。アタリとかハズレがあっちゃダメなんですよ。
そのための真面目な工員として、五山の臨済宗の坊主を採用。作業の手順を徹底してもらう契約で、外注します。
「品質が実績になって、信用とゼニを生むんですよ。あの人の言う事なら、あの店の品なら、そういうふうにね」
と説明したら、皆さんなんかすごい頷いていましたね。
『そうそう、そういう事!』みたいな感じで。手抜きされて、ひどい目にあった経験でも、皆さんあったんでしょうか。
仕入れた薬草は、まずはきちんと洗浄。確実に乾燥。そして大釜で、一気に大量生産。配合は器具で正確に計った分量を守る事。
保存には、必ず煮沸消毒をしたツボや竹筒を使う事。
そして曲直瀬医師の一部品質チェックを受けたら、出荷です。
一部は尾張まで、加藤さんが直で持っていっているようですね。海路ならさほど関銭は取られませんからねえ。
国人衆の代わりに、海賊衆が取り立てに来ますが。
『俺たちの縄張りを通りたかったら、カネか荷物を置いていけ』という、ガチの海賊です。
そりゃ史実の家康も、江戸幕府開いたら、ムダな関所も海賊行為も滅ぼしますよ。
ほんっきで、商売と流通の妨げでしかないですからねえ。
私も三好家の権力を使えるようになって、せめて京の周辺、三里(10km)程度の範囲の関所の廃止をできないかな、と検討してみたんですよ。
無理でした。
寺社や三好家、従う土豪は抜きにしてならイケるかな……
と思いきや、反発が大きすぎて、小領主や村が連合して一揆を起こしかねないのだとか。
長慶さまも、執権の地位は得たものの、元々の室町幕府の重役の管領の地位をどうするのか、などが未整理の上に、まだ各地の大名には認められておらず。
「大きく動くには、時が必要なのだ」
そう、長慶さまは仰られました。ただ、続けてこうも言っておられました。
「今のワシには、それが待てる。任せよ」
任せよ。つまり関所の大掃除は、いずれやる。そういう事でいいんでしょうか。
力強く言い切る長慶さまは、ちょっとカッコ良かったです。
で、冒頭の一条家のお話に戻りまして。
一条家ですが、この薬物関係の取引には関わっていません。
こちらは、また別の儲け話です。
そもそも土佐の一条家は、京の一条家の分家です。
それも当時の一条家の当主が、応仁の乱を避けて、乱が収まるまで土佐に避難しようとしたのが始まりの、まだ百年経っていない家ですね。
応仁の乱が終わらずに、戦国時代に突入しちゃって、帰れなくなったまま土着した結果、分家になったとも言います。
当初はブイブイ言わせていたらしいですね。のちの四国の天下取った、長宗我部家も救っていたりします。
代を重ねたら恩を忘れられて、攻め滅ぼされましたが。
3代目の房基の頃には、お隣の伊予の国(愛媛)にも手が出せる程の勢力になったそうです。
なにせ、元関白が開祖で、今も京の摂関家の一条本家とつながりのある、最高の権威を誇る家です。
京に比較的近い、四国という田舎では、誰も面と向かって逆らうとか、歯向かうとかはしづらかったと思われます。
そういう場合は、地元の人たちはどうするのかって?
そうだね。暗殺だね。
まともに相対できないのなら、こっそり闇に葬ればいいじゃない。
一応は自害と伝わっていますが、たぶん暗殺されたんじゃないかなって。
嫡男が7歳の時という、傀儡にするのはちょうどいい時期であったのも、暗殺を疑わせますね。
一条本家の人がフォローに動いて、嫡男を猶子にしたので、傀儡化は免れましたが。
そしてその嫡男。7年ほど前に、一年間だけ土佐に下向していた以外は、ほぼ京にいるんだとか。
土佐一条家とはいったい。
統治しろよとは思いますが、現地の土居宗珊に任せたままの方が、きっと皆が幸せかもしれないんですよねえ。
だってこの土佐一条家の嫡男、フルネームを 一条兼定 って言うんですよ。
もう分かる方には分かっていただけたと思いますが、説明しますと。
このお人、某歴史ゲームの登場キャラのうち、最低の能力を誇るネタキャラでございます。
もとい、その元ネタの人でした。
土佐一条家を支え続けた忠臣と言われ、讃えられる土居宗珊。
その土井さんからの『遊んでないで、働いて』という、心からの願いを『やかましい』と斬り殺してしまって、家臣にも民にも見捨てられた、絵に描いたようなバカボンです。
で、実際に京で会って確認した、その兼定は…… 狩りが好きでした。和歌と蹴鞠も好きでしたね。
酒宴も好きで、文化カツアゲの時に公家の1人としてやって来たのが、初対面でした。
完全に武家の自覚が無く、服装も他の公家と同じく、狩衣(かりぎぬ)に胴服(羽織の原型)で、言動も同じでしたねえ。
いや、まあ、まだ共通語という単語も、概念すらもないので、京に住むなら『都ことば』京都弁を使った方が、仲間意識を持ってもらえて住み良いのでしょうが。
あれはもう、何も考えずに京の公家の一員になっていましたね。
そりゃ武家の運営を任せても、上手くいきませんよ。
上手く転がすには、楽で良かったですが。
我が最強の、言いくるめスキルにかかればチョロいものよ。
まずは納屋の今井さんと天王寺屋の津田さんを巻き込んで、手形、為替の決済が出来るようにしてやりました。
つまり。土佐は三好家と堺の経済圏に取り込みました。
いやあ、京に居ながらにして、四国の経済に手を突っ込めるって最高ですね。
これは正直、かなり楽しい。口先と書類だけで、経済というカネとモノの流れと、ヒトが動いていますよ。
私が、動かしているんですよ。これはなんとも堪えられぬ快感です。
今井さんたちも、きっとこれが味わいたくて、商人をやっているんだろうな。
そう思って聞いてみたら『なにそれ、怖い』という反応だったのは解せませんが。
じゃあなんで日本一の交易都市の大商人なんてやってるんですか。
「単に、その方が儲かるから、出世したんやけどなあ。堺の会合衆でなかったら、回ってこん話も多いし」
「私は自分に向いとったんと、ゼニもまた力と気付いたからやなあ。力が無いのは、悲しいで?」
う~ん、人それぞれ。
しかしそれぞれ、儲けたい、という気持ちは同じなわけですし。
ここはひとつ、お力をお借りして、集めて欲しい人材が。漆器作りの職人たちです。
それと品質管理と、質を常に一定以上に保つ事で生まれる『格』という物が生み出す、信用とゼニについて。
そして林業。伐採、乾燥、保存技術、植林についてのお話です。
ゼニも力なら、知識も力。それを生かす人もまた力。
さあ、一緒に儲けましょうか。まずは土佐からです。
余裕が出来たら、三好家の本拠地、阿波にも手を加えましょう。なに、三好長逸さまにも、長慶さまにも許可は得ています。
亡き実休さまの嫡男、長治さまの教育を兼ねてなら、やってもいいと許可が出ています。
漆の次は藍です。なんと現地の職人も商人も、統一した組合すらないとの事。是非統一して、これも品質管理して格を上げねば。
そしてそこまで来たならば、出来ているはずです。四国から、淡路、堺、京とモノとゼニの流れる道が。
これを、京で止めていいものでしょうか?
陸を行けば、関所があります。しかし海から川ならば?
淀川、掘削しましょうよ。京から琵琶湖まで、船で行ける様に川をいじろうぜ。
それと。
「安宅冬康さま。あの方も、もちろん巻き込みましょうね」
長慶さまの最後に残った弟で、史実では、最期に謀反の疑いをかけて始末してしまった弟。
本当に謀反を企んでいたのか。それともウツ病からの、長慶さまの妄想だったのか。はたまた誰かの陰謀、讒言であったのか。
史実のそれは、永遠の謎でしょうが、今世の彼が今、何をどう考えているのか。それを確かめることは出来ます。
どうでもいいと言えば、どうでもいいんですが。
だって、何をどう思っていようとも、この儲け話に乗らない手は無いですし。
乗ってしまったら、三好家の中で海軍担当の安宅さんはクッソ忙しくなります。
輸送計画やルートの選定、利益の調節に関銭の可能な限りの回避にと、数年は動けなくなるでしょうねえ。
そうなってしまえば、その間に執権、三好長慶の権威はますます高まって、何をどうしようが安宅冬康では対抗できなくなります。
後継者の義興くんを消す、とかしない限り。
そっちの対策も、考えた方がいいのかなあ。
でもそれ、私の仕事じゃない気もするんですよねえ。
暗殺対策とか、どうすばいいのかよく分かりませんし。
やる方なら、なぜか分かりますが。なんでだろう。
同じくやる方なら分かりそうな、松永サンに今度聞いてみますかね。
名も無き、国一番の侍(作者:ファルメール)(原作:鬼滅の刃)を推してみる。
このサイトにあるよ!
兄上も生まれつきアザがあって、透き通る世界持ちで、鬼になったのは無惨さまと対決して、最終決戦での炭治郎のように血を注ぎ込まれたから。という世界。
鬼のまま、無惨さまから隠れて色々暗躍しっぱなし。原作世界線で進みます。
炭治郎にケイコつけて、早めにヒノカミ神楽にたどり着き
炭吉は約束を守ったのだな、と感動する兄上とか見れるよ。