尾張グダグダ戦国記   作:far

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章のタイトルどうしよう…?


【ロマンスダウン】日常への回帰。あれ? 普通の日常ってどんなだっけ?【生活開始】

 

 はい。伊勢からお船に乗りまして、ちょっと堺に顔を出しつつ、帰蝶に観光とショッピングさせて。

 やっと帰って来た。ええ、なぜか帰って来たという気分になる、京へと到着しました。

 

 そして行われる、披露宴パート2

 

 純粋に結婚をお祝いしたい。という方や『私の嫁の顔が見たい』という()()

 そういう方々が大勢いらっしゃったので、三好家が気を利かせて、会場まで抑えて開催してくれたのです。

 

 費用は半分持ってくれるそうです。

 なにこれ、文句言いにくい。全部持ってくれたら感謝できるし、全額こっち持ちなら文句言えるのに。

 

 公家衆からお祝いにと、めでたい句を選りすぐった句集をいただきました。

 どんな句を選ぶのかは、なんと陛下も参加されたとか。

 

 つまりこれ『天皇陛下の勅撰和歌集』です。

 

 家宝じゃねーか。

 

 さすがこの戦国の公家たち。カネをかけずに、それでいていい物を贈ってきますねえ。

 これにはかなりビビりましたよ、私も。まあ勅撰和歌集は公的に作るものなので、私に送る1冊だけじゃなくて量産されるでしょうけど。

 なおその私への1冊を書き上げてくれたのは、近衛 前嗣(まえつぐ)。現代だと、近衛前久と知られている人です。

 

 足利義輝の父の足利義晴と親交があって、1文字もらって晴嗣と名乗っていたものの。

 幕府の情勢の悪化を見て距離を置こうと、晴の字を捨てて前嗣に名前を変えた人です。

 

 近衛家は足利将軍家に、婚姻で近付いていた家だったんですけどね。

 具体的には、前嗣の祖父が、娘を義晴の嫁に出しています。子も生まれて、それが義輝として将軍を継ぎました。

 前嗣は義輝の従兄弟に当たり、京から逃げる時も随行して、父親の稙家が元服の立髪役*1も勤めています。かなり親密だったと言えるでしょう。

 

 でも義輝はずっと京にも帰れずに、やっている事と言えば、平たく言うと反政府ゲリラだったから……

 それは距離を置きたくもなるよねって。

 

 史実では、関白のくせに京を飛び出して、物理的にも距離を置きました。

 

 飛び出した後は、上杉謙信と組んで関東に侵攻したり、謙信が越後に帰った後も関東に残って情報を送り続けたりとかなり行動的。

 

 まあその後、謙信が何度も川中島に略奪、もとい村上氏らが武田から信濃を奪還するお手伝いも始めてしまって。

 関東への出稼ぎ、もとい関東制圧に注ぐ上杉家のやる気が明らかに減ったのを感じ取って、トボトボ京へと帰還しましたが。

 

 それがだいたい2年前ですね。

 その頃の京も、通常通りに混沌としていまして。

 

 二条と九条が、神輿としてとっくに使い終わって、阿波の細川家のヒモになって生きてる足利 義維(よしつな)を『また使えるかな』と、つついていて。

 三好長慶さまが天下人として、京を抑えてはいましたが、弟2人を亡くしてウツ状態。

 その政治的空白を自分が埋めようと、三好家の重臣らや松永久秀サンが水面下で色々やって対立を深め始めていて。

 義輝も、上洛して三好を戦で負かして、助けてくれ。と各地に手紙を出していました。

 戦国時代がもっとヒドくなるけど、自分が助かってデカいツラできたらいいんだ。という、代々の伝統と信頼の足利将軍家ムーブですね。

 

 力を失った古い権威が、復権を求めて周りをかき回しながらあがいていて。

 新しい勢力も力を失おうとしていて、その内部での権力争いが始まろうとしている。

 そんな中に、無力さと、何年も合力していた勢力がモノにならなかった虚しさを胸に帰って来た近衛前嗣は、何を思ったでしょうか。

 

 まあ、気が付いたら、私がだいたい 全部ぶっ壊してました が。

 

 なりゆきで。マジでほぼ なりゆきだけ で。

 

 残ってるのは、足利義維とその息子の義栄(よしひで)くらい?

 でもあれを次期将軍として担ごうって人、いますかねえ?

 二条家は突然当主を、それも明らかに呪いっぽいナニカで殺されて、マジメに家門存続の危機を迎えていて、それどころではありません。

 跡継ぎの子が9歳で、奇しくもまた『年齢ヒトケタで人生ハードモードな幼児』の一人になっています。

 

 そしてそんな二条家を見た九条家は、空いたポストの摂政・関白の順番争いに注力中です。

 余計な事をするつもりは無いらしく、二条家に養子を送り込んで乗っ取ろうという動きすらありません。

 

 また二条家は、私や三好家が作っているゼニの流れに食い込めておらず。

 それでいて荘園は横領されていて、旧来の収入源も途絶えていっているそうで。

 

 なんでそういう事情を知っているのかといえば、京で再会した菊亭さまに教えてもらったからです。

 

「このまんまやったら、ほんまに滅びますけど、どうするつもりやの?」

 

 それで、長々と説明された後に、菊亭さまにそう聞かれたわけですが。

 そもそも何故私に、貴族の家の存続を尋ねるんでしょうか?

 

「えっ、私って、それを左右できるほど偉いんですか?」

 

 って聞き返したら、なんかすごく答えに困っていました。

 そこまで怖がって、気を使わなくてもいいのに。別に気に入らない動きだろうと、むやみに殺したりしませんよ。

 状況は壊しますけど

 

 ともあれ、私が京へと来た結果、閉塞した状況が政治的にも文化的にも、なんなら戦略的にも吹っ飛んだわけで。

 それを見ていた近衛前嗣さま。だいぶ私を気に入ってくれていたようでして。

 

 勅撰和歌集の製作の発案から、実際の製作まで。この人の仕掛けなんだそうです。

 行動的な性格に似合わず、和歌集の字は『都で3本の指に入る』と自慢するだけはある美しさでした。

 

 しかし勅撰和歌集かあ…… 陛下が、動かれちゃいましたか。

 日本人的に、勤皇の気持ちは持ってはいるのですが、でも身銭を切るかというと、ためらう程度の軽い気持ちなんですよねえ。

 

 お住まいが、わりとズタボロらしいと耳にはしますが、実際に見たわけでも、見ることが叶う身分でもないですし。

 朝廷そのものに、ある程度の金が流れるようにはしているので、その予算で何とかして欲しかったんですけどねえ。

 これで内裏を直してね。と献金しても、実際に仕事にかかるまでに中抜き中抜きで、最終的には『関われるだけで名誉だろう』と、担当する大名の誰かがタダ働きとかになりかねませんし。

 

 もう必要な木材を、京の民衆にも分かるような場所に積み上げて、内裏の修理にお使い下さいって現物で納めましょうかねえ?

 それが減らなかったら、いつまでも工事にかからない公家らへの、京の民衆の目とウワサがヒドい事になりそうですから、多少は効果があるかな。

 そうしてからでないと、安心して工事費用を渡せません。

 こっちで工事を仕切って、予算や手配もやっちゃえば、そういう問題は解決するのですが、面倒くさいという大きな問題がですね。

 

 助けて丹羽様。

 

 長慶さまに任せると、過労死しそうなんです。お仕事が一杯で、ロバの背骨を折る、最後のワラの一本になりそうなんですよ。

 ワラよりはかなり大きくて重そうなお仕事ですけども。

 

 とりあえず、ざっとした見積もりと、木材の手配と、その木材の置き場を洛中のどこかに探してもらうとしまして。

 

 長慶さまからの結婚祝いに、新居をいただいたので引越しの準備と。新居を確認しての、家具やら小物の買い出しと。

 新居がお屋敷と言えるほどなので、使用人を探す…… のは、孤児院から引っ張ってくればいいか。

 

 私生活方面はそんなものとして、仕事の方は、どうですかねえ。

 お薬関係は、製造面は私の手を離れていますが、流通面では甲賀衆との協議がそろそろ必要ですか。

 流通と言えば、四国と堺、京の海上輸送は現状どうなっているのか。安宅冬康はどうなのかも、三好長逸さんに聞かないと。

 

 ああ、そうそう甲賀衆といえば、消していい京都周辺の国人リストって出来てるんでしょうか。

 それと結局使い道が思いつかなかったので、消してよしってなった六角親子はもうお墓に入ったのか。

 他にも近江に、というか、蒲生家か進藤家か後藤家。どれかに志摩に入って大名やってもらいたいので、相談に行きたいので、ついでに甲賀にも顔を出しますか。

 

 ああ、もう、やる事が多いですね!

 この辺を纏めたり、スケジュール調整してくれる秘書が欲しいですよ。

 長秀や円融さんなら出来たんでしょうが、それぞれ尾張と美濃での私の手先というか、代理人なので動かせませんし。

 京都でも、ちょうどいい人材はいないものでしょうかねえ?

 

 候補だった冷泉さまには逃げられてしまいましたし。

 帰蝶は、色んな意味で無理そうですし。

 ああ、もう、本当に誰かいませんかねえ?

 

 そんな悩みを抱きつつ『住まいの事なら、嫁の意見は聞いておいたほうがいいだろう』と、だいたい帰蝶の意向を優先して、新居を整理していた時です。

 菊亭さまが、例の9歳児。二条昭実を連れて、訪ねてきたのです。

 

 よりによって親の仇の私の前に。

 

 流石に気まずいものを覚えますが、間接的な毒殺だったので、実は二条晴良とは直接会った事さえないので、罪悪感も軽めです。

 だからすっとぼけて、知らん振りして、何食わぬ顔で対応する事が出来ます。

 

 というか、やってみたらわりと余裕で、そんな自分が人でなしみたいで少し傷付きました。

 

 そして菊亭さまの言う事には、この子の面倒を見て欲しい。とのこと。

 

 いや、なんでですか。

 私はその子の親戚でも何でもないんですけども。

 

「カネは持っとるやろ?」

 

 いや、そうですけども。

 

「摂関家に相応しい教育ってな? ゼニがかかるんよ……」

 

 で、だいたいの公家が今は貧乏で、急にそんなのを出せと言われても困るだけ、と。

 だからって、なんで私が。

 

 しぶる私に、菊亭さまは扇子で口元を隠して、私だけに見えるよう意味深な笑みを浮かべて、こう言いました。

 

「きゅうちょう ふところに とうず」

 

 九兆円を懐に投げ込むぜ! という意味ではありません

 

 窮鳥懐に投ず。江戸時代以降は、窮鳥懐に入らば、猟師もこれを撃たず。と知られることわざですね。

 まだ鉄砲が入ってきて浅い時代なので、後半のフレーズはまだないのです。

 鉄砲持ってる猟師とかいないので、撃てないという意味で。

 

 窮鳥、という単語自体が一般的ではないし、このことわざ自体も、三国志で登場するほど古くはありますが、まだ有名ではありません。

 そんな言葉をわざわざ、それも意味深に使ったというのは『深読みしなさいよ』という事です。

 

 この場合、窮鳥=ピンチの小鳥は、連れてきた二条昭実でしょう。

 彼が危うい立場、状況なので匿ってくれ。という表の意味と、たぶんですが、窮地に追い込んだのお前だよな? という裏の意味があります。

 知ってるぞ? 責任は取れよ? という……

 

 あれ? これ、脅迫では?

 

 だとすると、素直に屈したら、ナメられますねえ。

 でもここで開き直ったり、お前も呪い殺したろかって脅したら、昭実くんにも犯人だとバレますねえ。

 

「分かりました。彼はうちで預かりましょう。では、帰り道は、くれぐれもお気をつけて

 

 えっ、ちょっと、と慌てる菊亭さまを無視して、自室へと向かいます。

 

「待って! 待ってくれんか! ワシが悪かったから! そんなつもりじゃないから!」

 

 メチャクチャ慌てながら、後を付いて来た菊亭さまに、冷たく言い放ちました。

 

「何がでしょう? 私はこれから、少々『弓の手入れ』をしないといけなくなりましてね」

 

 ガチやん。と更に焦る菊亭さまですが、実はこれ、茶番だったりします。

 

 はい、茶番です

 双方承知で、お茶らけているだけですね。

 脅されたので、脅し返して、それでもうお相子。手打ちにしましょうという、確認であって、ただのじゃれあい。

 菊亭さまの方が圧倒的に官位と身分が高く、私の方が圧倒的に暴力の実績が高いのと、個人的な付き合いがあったので成り立った、茶番劇です。

 

 でも必要ではあったのですよ。あのままただ要求を飲んだら、私は一方的に利用されても飲み込んだという、イヤな実績が出来てしまいますからねえ。

 そういうふうにナメられたら、際限なく利用され倒して、大損するのが京の公家社会。

 まあ既にだいぶん、メシやら文化やらをタカられている気はしますが、コネにはなっていますし、大損ってほどではないからセーフで。

 

「こんなもんでええかなあ?」

 

「いいんじゃないですか?」

 

 わちゃわちゃやっていた私達を、追いかけてきて、でもどうしていいか分からずあわあわしていた昭実くん。

 その姿をしばし堪能した私と菊亭さまでしたが、満足したので、茶番を終わりにして部屋へと戻りました。

 

「ええええ…… 何やったん、今の」

 

 あなたはまだ分からなくてもいいことですよ昭実くん。

 これから色々と覚えて行きましょうか。さしあたっては、そうですねえ……

 

 内裏の修理のための、責任者。やってみますか?

 

*1
烏帽子を被せる前に、髪を整え(髻を結い)、烏帽子の紐を結ぶ役。室町将軍の立髪役は、伝統的に近衛家の仕事。




小説家になろう より 幕末香霊伝 吉田松陰の日本維新 作者:ロロサエ 氏
を推してみる。

現代人が吉田松陰に生まれ変わるも、その現代人には未練があった。
カレー食べたい。彼はスパイスから調合する本格派だった。
今世でも食べたいから、開国してクダサーイ。

転生前の死亡が、刺されて… と思わせておいて、一件落着からの転んで後頭部強打。とか、一味違うよ。239話とボリューミー。完結済。
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