尾張グダグダ戦国記   作:far

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前半はちょっとおふざけ。


【レベルを上げて】そんな装備で大丈夫か?【物理も強化】

 

「私は所詮はニセモノだ。ヒトではないのだ。それゆえに、居てはならないのだ!」

 

 顔にいくつか線を引き、人形らしくした、それだけ見れば滑稽な子供。

 その子供が、黒い着物を着て、足でドン! と踏み鳴らして見得を切りながら、そう吠えました。

 

「だからどうした! ヒトとは違う。それだけだろう。それだけでは、間違いでも何でもないわ!」

 

 一方でおかしな化粧をしていない、しかし同じ仕立ての白い着物を着た子供が、それに答えます。

 大きく手を振って同じく吠えてから、今度は対称的に、静かに語りかけるように話しました。

 

「なぜ自らを誇らない。お前は望まれて生まれたのだ。ならばニセモノだろうと誇れ。

 自分は、カラクリ桃太郎だと」

 

 なんだこれ。

 

 皆さんはそう思ったでしょう。私も思いました。

 これは何かと言えば、お芝居です。元はと言えば、私が孤児たちに仕込んでいたものですね。

 こんなものを教えた覚えはありませんが。

 

 事の始まりは、孤児たちの一部を、尾張に呼んだことですかねえ。

 ちょっとやりたい事があるので、ひと月ほど尾張に居る事にしましてね。それで思いつきで、奴らを呼んでみることにしたのですよ。

 ほら、あいつら、計算が出来るやつもちょいちょいいましたし。

 

 相変わらずのブラック労働な織田家の助けになるかな、孤児らの就職先のひとつになればいいな。

 

 そんな軽い気持ちだったんですよ。

 それが『ついでに地方公演でもやるか』と、劇団も呼んじゃった結果の、ご覧の有様ですよ。

 

 意外にも会場は盛り上がっていますが。ええ、なぜか。

 

 物語は、まずは普通の桃太郎と同様に、桃から生まれて鬼退治へ。という普通のオープニングでした。

 桃から生まれたと言っても、桃を食べて若返ったお爺さんとお婆さんが、普通に子作りして生まれたとか。

 鬼退治に行く理由が、鬼たちが悪さをしているからではなくて、財宝溜め込んでるらしいから奪いに行く。と直球だったり。

 お供が犬、雉、猿だけではなくてハチが入っていたりしますが、現代の桃太郎の形にまとまったのが江戸時代で、時代的にはこれが普通なので、そこは流します。

 

 そしてオープニングが終わると、次のシーンからいきなり独自展開が始まりました。

 

 鬼退治に行った桃太郎が中々帰って来ないので、不安になったお爺さんとお婆さんがカラクリ仕立ての桃太郎人形を作りまして。

 そうしたらそれがひとりでに動き出して、それをお爺さんとお婆さんは、桃太郎が帰って来たかのように扱いました。

 しかしそこに本物の桃太郎が帰って来て、カラクリ桃太郎と対面。

 当初は両者が『何だお前は』と対立、戦闘に。

 お爺さんとお婆さんに止められて、戦闘は中断。カラクリ桃太郎は一旦、その場から逃げ出します。

 逃げた先で、言葉を話す動物たちとの出会いが。勿論、桃太郎のお供だった動物達です。そして彼らから鬼退治の話が語られだして、回想シーンへ。

 

 黍団子をもらって家来になり、鬼と戦う犬と猿。雉はさすがに無理があると思われたのか、偵察と移動で頑張っていました。

 

「私と一緒なら、飛べるんですよ!」

 

 雉役の子が言った後に、子供達が扮した桃太郎一行が、両手を羽ばたかせながら舞台を端から端まで往復で走っていくのは、ほほえましかったですね。

 そうして鬼が島へと渡った後も、鬼役を担当していたのも子供なので、戦闘シーンがかなりほほえましかったですが。

 ハチ? ハチは後ろの方で、チクチク刺して鬼を少しずつ減らすという、地味な活躍をしていました。

 雉と違って戦えたのは、猿蟹合戦のイメージのせいでしょうか。

 

 しかし回想シーンが終わって元の場面に戻れば、そんなほほえましさから一転、シリアスな空気に。

 

「あいつは、先に生まれて、そんな立派な事をしたのか。でも俺は何もしていない。オマケに俺は人間じゃあない。

 ああ、悲しい。人間じゃないのが、お爺さんとお婆さんの子供じゃない事が、こんなに悲しい。

 なのに涙も流せないんだ!

 

 カラクリ桃太郎の血を吐くような独白に、観客はドン引きしていましたが、逆に言えば引き込まれていたとも言えます。

 そこからお爺さんたちの家まで取って返して、桃太郎に『俺を討て! 俺は居てはいけないものだ!』と叫ぶカラクリ桃太郎を、笑う観客はいませんでした。

 

 そこから桃太郎の反論、つまり冒頭のシーンにつながるわけですね。

 

 しかしこのニセモノの悲哀というテーマ、戦国時代という『過去に入り込んだ転生者』というポジの私に微妙に刺さって居心地が悪いのですが。

 誰だ、脚本考えたの。

 

 そして桃太郎たちのやり取りのあと、お爺さんとお婆さんが2人の前に出てきて『お前たちはどちらもワシらの子じゃ』と諭して。

 桃太郎たちも『そうか、お前は俺の弟だったのか』『に、兄さん…?』と和解して。

 鬼達から奪った財宝で、幸せに暮らしましたとさ。とエンディングだけは同じ着地点で結んだわけですね。

 めでたしめでたし。

 

 ってめでたしじゃねえわ。

 

 誰ですか、これを考えた奴は。

 転生者疑惑が濃すぎるんで、個人面談です。

 

 まあ、色々と引っかかりますが、ウケが取れたなら、まあ、いいです。よしとしましょう。

 このまま公演続行です。三河まで行くか、引き換えして近江や河内で公演するかは、あとでウチの大番頭の(豊臣)秀長と相談ですね。

 

 なんでかはわかりませんが。ほんとうにわかりませんが。

 思った以上に濃かったので、少し混乱しましたよ。

 

 いや、確かに事の始まりは私ですよ?

 孤児を集めたのも、芸や知識を仕込んだのも私ですけれども。

 まさか、こんな風に変な進化するとは思わないじゃないですか。

 

 どうしてこうなった。

 

 尾張での商売が上手く回っているかの視察が終わって、軽い息抜きのつもりの公演の見物だったんですけどねえ。

 予想外に、疲れる結果になってしまいましたよ、ええ。

 ですが脚本以外に罪は無いですし、子供らにはあとで差し入れでも手配してやりましょうか。

 

 さて。気分を切り替えて、次に行きましょう。

 居酒屋は、各店舗も仕入先まで含めておおむね問題なく回っていました。

 中抜き大きすぎとか、製法の横流しとかの国人問題は、適切に処理しましたし。

 他の細かい問題は、秀長に報告したので、あちらで対応してくれます。

 というわけで。

 

 現代知識チートのお時間です。

 

 何をするのかといえば、今回は武具、特に弓矢の改良ですね。

 すでに戦国後期モデルは作り上げていましたし、弦も絹糸に、ニカワで熊の腱を張り合わせて強化はしてあります。

 現状でも射程は400mはありますし、300mくらいまでなら狙えます。当たるかどうかは置いておいて。

 まずはここから、射程を延ばしていこうと思います。射程を延ばす=初速の増加でもあるので、長政対策には必須なのです。

 

 弦の強化前とはいえ、あいつ、矢を篭手ではじきましたからねえ……

 

 まずは弓です。竹をそのままではなくて、細く割ってからねじり合わせていますが、ここにさらに一工夫。

 竹同士なので、どうしても出来てしまう隙間。そこを鯨の背筋とニカワで完全に埋めます。

 これで弓本体は、この時代では限界の強弓になったはずです。

 

 そして弦にも更に工夫を。構造はもうこれ以上は思いつきませんが、塗るという手段がまだ残されていました。

 クスネ(薬練)という、弦に塗る滑り止めがあります。

 松脂などを煮詰めて油を混ぜたものですが、これをあえてねっとりとした濃い目に。

 これを吸った弦は、固く重くなって、元に戻ろうとする力も増して、矢をいっそう強く撃ち出してくれます。

 

 その分だけ、引く力も必要になるわけですが。

 

 そうだね。これから私に必要なのは筋トレだね。

 あまりに強い弓すぎて、引くだけで精一杯で、あまり狙いがつけられなくなっちゃったからね。

 

 そういうわけで、矢の改良もしたかったですが、そちらは職人さんたちに任せて、鍛錬に入ります。

 太刀魚を見せて、これを参考に作ってね。とだけアドバイスをして、依頼してあった先生の所へと移動しました。

 

 いや、私も一応は日置(へき)流を少しは学んだんですよ。それも有名な太田牛一殿から。

 まあ、あの人は弓の腕よりも、信長公記(しんちょうこうき)の作者として有名ですが。

 しかし弓の腕も確かなもので、史実では織田家主催の弓術大会で何度も優勝しています。

 今世だと、そんな大会を開いてる余裕が、事務的に織田家に無いので、まあ、ちょっと名声が低くなっていますね。

 でも腕は史実とそう変わりはない、はずです。比べようが無いのでわかりませんが。

 

 とはいえ、教わっていたのは、私が足軽から足軽組頭だった頃。

 柴田勝家さまの指揮下で、牛一殿と近かった頃だけですからねえ。

 それなりに腕は上がりましたが、目録とか免状とか、そういう話はありませんでしたし。

 そもそも正式に入門して教えを乞うていたとか、そういう本格的なものでもないわけで。

 だから一度、ちゃんとした指導を受けておこうかな、と思って頼んだというわけですよ。

 

 断られましたが。

 

 信長公記の作者だけあって、文官としてのスキルもあった太田牛一殿が、文官不足にあえぎ続ける織田家で、どんな状態なのかといえば……

 まあ、ブラック企業の社畜かなって。

 

 そら『そんなヒマがあったら寝るわ!』って怒られもしますね、うん。

 しかもその忙しさの原因の何割かは、多分私のせいな気がするので、大人しく引くのが上策でした。

 もし気付かれたらマズいし。

 気付かれた上で、文官仲間に広められてしまったら、織田家の中に居場所がなくなりますよ。

 

 冷静に考えたら、その忙しさは領土が増えたせいで、主家の領土を増やすのはいい事のはずなのですが。

 ですが、人間は感情の生き物ですし、ブラック労働という直接の被害が降りかかっていたら、まあ、冷静に判断するのは難しいでしょう。

 というか『アイツのせいだ』という、ストレスと憎悪のブツけ先が明確に出現しちゃったら、ストレスが溜まりまくっている社畜の人は、ノータイムで敵対してくるかなって。

 

 ですが、ただ怒られて帰るのも芸が無いので、代わりの人を紹介してもらいました。

 武官で弓術が得意で、更に文官スキルがあるなんてレアキャラは太田牛一殿くらいですからね。

 弓術オンリーの人を紹介してもらえばいいのです。

 

 それが今回教えてもらう先生役の、浅井政貞さんです。

 現在想定してるメインの敵、浅井長政と同じ苗字なので、紹介される時に、つい反応してしまいましたよ。

 

「えっ、浅井なんですか?」

 

「安心しろ。近江浅井氏の庶流だと言い出したのは、野良田の戦いで浅井家が有名になってからだ」

 

「それは、つまり?」

 

「ああ。ここだけの話、十中八九騙りだな」

 

 牛一殿から、そんな補足が即座に飛んできたわけですが。

 さすが一次資料として重宝される歴史書の著者。情報すごいですね。

 

 しかしそういう経歴や家系を盛ったり騙ったりは、武家のあるあるですけれども。

 そう言えば私もついこの間、家康さんにオススメした手法ですけれども。

 成功したら、知らない親戚が一族単位で増えるって、ちょっと怖いですね。

 

 そういうわけで、浅井政貞とは『今回限りの浅い付き合いにしておこう』と思って、ビジネスライクな態度で臨んだわけですが。

 あちらは何を思ったのか、妙に真剣に技を教え込んでくれました。

 

()()たらずんば、これ(しゃ)にあらず。*1当てるための工夫もしなさい」

 

「弓のここ、端の内側。これを関板と言うが、私はここに試行錯誤をした。それを伝えよう。

 弦を引き、放った弦が関板に当たって跳ね返る。材質と厚さと角度で、その跳ね返る機を調整できるのだ。

 つまり送り出す矢を、蹴り出すように強くできる」

 

弓返り(ゆがえり)を上手く使いなさい。射ると同時に、弓を前方へくるりと手の中で回すのだ。

 その時には、矢を押し出すように心がけなさい。すると矢はよく回って、遠くまで飛ぶ。これを射出(いだし)だすという。

 射る時に左手で握る部位を若干削るか、厚めの革をゆるく巻くなど、自分に合った工夫を試すことだ」

 

 『あれ、それ奥義って言わない?』みたいな事をポンポンと教えてくれるのですが。

 なにこのいい師匠。普通はそういうのはもったいぶって中々教えなくて、たまにもったいぶりすぎて失伝するか弟子が逃げるのが日本の技術のあるあるなのに。

 

 クソッ、素直に尊敬したいのに、できない!

 せめて見た目が『ん~? 間違えたかな~?』とか言い出しそうな、胡散臭い長髪でさえなければ!

 もうちょっと頑張ってキレイになって命は投げ捨てるものではない』とか言いそうな方に寄ってくれよ!

 

 ええい。せめて礼金は、はずんでおきますか。

 思っていたよりもずっとためになる授業だったのは、事実ですからね。

 感謝してない、ってわけじゃないんだからね! 勘違いしないでよ!

 

 そしてそんな修行から帰った私の前に、職人さんたちの手で魔改造された矢が!

 

 えっ、これ試作品1号とかじゃなくて、完成品なの?

 試作品は、もういくつも作って、自分達で試してみた。あっ、はい。

 

 その完成品という矢は、見た目からして普通の矢ではありませんでした。

 まず、何と言うか、太っていました

 まっすぐな直線ではなく、真ん中が膨らんだゆるやかな曲線で出来ていて、確かに私が見本に出した太刀魚のようではありました。

 

 真似てほしかったのは、そっちじゃなかったんですが。

 

 先端の、(やじり)。それを通常のように←ではなくて、キリのようにただ貫くように、空気抵抗を減らす形にして欲しかったのですが。

 そちらの要望は、なんかハンパに叶っていますね。円錐形ではなくて、尖ってはいますが平たくなっています。ここはリテイクですね。

 

 しかし魚がだいたいこういう、曲線のフォルムをしているという事は、この太った形の方が有効だったりするんでしょうか?

 これは実際に私も射ってみて、実験です。

 あと見て取れる工夫は……

 

「おや? これは木と竹を使っている?」

 

「気付かれましたか。前方には重く丈夫な樫の木を。後方に軽い竹を。()ぎっていう技でさあ」

 

 なるほど。軽い方が遠くまで飛びますが、重くなければ威力が足らず、鎧に防がれる。

 丁度いい塩梅を突き詰めたわけですね。

 しかし他の強化も合わせて考えなければ、最適の矢の重さは判別できません。これも後で実験です。

 

 いやはや、こちらでも私の予想以上の働きをしてくれるとは。

 これは職人さんたちにもボーナスを……

 

 と思っていたら、なんか最後にトンでもない事を聞かされました。

 

「それと金に糸目はつけねえってんで、矢羽根もオゴりました。鯨のヒゲを薄く削った、最高級品ですぜ」

 

 最高級過ぎるわ。

 基本使い捨ての矢に、何を使ってるんですか、あなたたち。

 『これなら湿気の多い場所や雨だろうと、水を吸わないから安定しますよ』って、採用せざるをえないじゃないですか。

 

 ああ、もう、しょうがないですねえ!

 採用!! カネで解決できるなら、してやろうじゃないですか!

 これも全部、お前のせいですからね! クビ洗って待っていてくださいよ、長政ぁ!!

 

*1
日置流の信念。太田牛一は実は流派不明で、当時有力な小笠原流か日置流か、どちらかだと思われる。動くものにも当てようと修行したらしいので、この信念の日置流と設定しました。




かなり昔のやる夫スレ作品を推してみる。序盤少し分かりにくい。以外の批判があまりないいい作品です。
やる夫が空を目指すようです
ttps://www.nicovideo.jp/watch/nm7410410 (ニコニコ動画でのまとめのプロローグ)
ttp://ansokuwww.blog50.fc2.com/blog-entry-297.html  (まとめスレの一つ)

ゲームオーバーから経験値持ち越しでニューゲーム、を繰り返さないとクリアが難しい仕様と、ちょっとアレなゲームシステムでワゴン行きになってたブレスオブファイアというゲームの推し活だったと思われる。
ゲームやマンガのストーリーをやる夫らを使って、色々いじりながら再現という二次創作手法だが、そこに愛はある。少なくとも、このスレ主はこのゲームを愛していた。それが分かる。
文明崩壊、シェルターの中で生まれ育ち死んで、どれだけの世代か過ぎたか。
伝え聞くだけの空を見たい、そう話す少女のためにも、管理社会に背いてただ上へ…
それで自身が削れて行こうとも。地上が再生していようといまいと。
ただそこに、空があれば…… それでいい。



確かそんな話だったはず(うろおぼえ)
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