決してマネをしないで下さい。リアルを大事に!
信行さまは、清洲城にて暗殺されたわけですが。
なんとこれ、史実と同じ死に様なんですよね。
史実のほうだと、仮病を使った信長さんのお見舞いに来て斬られた、という違いはありますが、結果は一緒なのです。
場所も同じく清洲城です。城のどこでだったかは、史実も今世も、さすがにわかりませんけれども。
やっぱりあるんでしょうか。歴史の修正力。
なんだか中途半端にしか働いていない気がしますが。織田家とかもう、グダグダですし。
信行暗殺は、信長さんにとってちょっと特別だったようです。
暗殺されそうになった事は数知れず。死に掛けた事も複数回。でも抹殺に成功したのは明智光秀ただひとり。
そんな信長さんが逆に暗殺した、とても珍しいケースなのです。
処刑や粛清や、カッとなっての殺害は多々ありますが。それらとは一味違う、計画的な犯行です。
「ここまで出世なされる信長様に謀反をするとか、信行様は見る眼が無かった」
そう口にした茶坊主を「お前に何がわかる」と刀を抜いて追い掛け回し、厨房まで追い詰めて。
棚の下に隠れたところを、そこかぁ! と斬りかかるも、棚にはばまれ斬れず。
横から突くなりすればいいものを、頭に血が上っているので、そのまま叩き切ろうと力を込めて。
とうとう棚ごと斬り捨てるや、それでスッキリしたのか。
「いい刀だな。よし、これを圧切(へしきり)長谷部と名付けよう」
人ひとりを斬り捨てておいて、上機嫌で刀の命名するような。
そんな軽い殺害とは、重みが違うのです。
失礼。
信行さまについて語ろうとしたら、信長さんのエピソードが濃すぎて、そちらに流されました。でも是非もないよね。
ところで今世での信行さまと私は、あまり接点はありませんでした。主従ではありましたが、社長と1社員ですからね。
しかも信行さまは、行儀の良い、常識的なお方。
父親の葬式で位牌めがけて抹香ブチまけるような信長さんと違って、粛々と喪主が勤まった人です。
つまり『片手間での事』と言い訳して、商売に手を出している私は、好みではなかったようです。
古代から中世では、手数料を取るというのは今以上に嫌われていましたので、商売自体が汚い手段と見る傾向があったんですよ。特に東洋では儒教がそう設定しちゃったせいで、商人が下に見られていました。
武士もモロにその影響を受けていて、信長さんや三好長慶、松永久秀など一部例外を除いて、ゼニ儲けなどもってのほかなのです。
九州の大友家などでは、銭がいかに汚いものかを嫡男に教えるために、目の前でクソに銅銭を叩きつける、という謎の教育が行われたりもしたそうです。
その嫡男はのちに、博多を巡っての戦いに明け暮れ、朝廷に献金しての工作を得意とする、立派に銭に執着しつつ使いこなす男に育っています。
あれ、ある意味教育失敗してるな…? いや、逆に成功なんだろうか。
その嫡男、大友宗麟っていうんですけどね。
江戸時代。年々増産されていく米の価値は下落していき。給料が米払いだった武士たち、特に御家人などが生活に困って。
片手芸と称して、バイトや副業、商売に励んでいたといいますが。
さすがに時代を先取りしすぎたようで、この言い訳は通じなかったようです。
あっ、だから微妙に連絡網からハブられてたのかな? むしろ丹羽様は私のとばっちりだった…?
信行さまから直接説教されたり、たしなめられたりとか、そういう事は無かったですね。嫌味とかも無かったです。
野鳥の肉の安定供給のために、猟師たちを組織して組合を作らせた時などは、判断に困って、話し合いの場がセッティングされましたが。
勝手を怒るべきか、いざという時に戦に使えそうなので、誉めるべきか。それを張本人の私に聞きましたよ、あの人。
「別に私の配下というわけではなく、商人らの作る座のようなものです」
あくまで民間の組織ですから。
そう説明する私に、わかったようなわからないような。という表情をしていましたっけ。
顔と名前を知っていて、言葉をかわしたこともある。
そんな人がいなくなってしまう。もう、会えなくなる。
これほど寂しい事は、やはりありませんね……
数えるほどしか思い出の無い信行さまでも、少しばかり心が締め付けられるようです。
っと、いけない。いけない。危険な作業中に考え事はいけませんね。気を付けないと。
少しこぼしそうになった 濃硫酸 のビンを垂直に戻して、安定させます。
はい。濃硫酸です。
まず硫黄はあるので、これを燃やして、二酸化硫黄というガスを作ります。
S+O2 → SO2
そしてこの時代の硝石(硝酸カリウム)は、不純物が多いので、一旦お湯に限界まで溶かして冷まし、再結晶で得た高純度の硝石を用います。
これを触媒として二酸化硫黄、水蒸気、酸素と一緒に加熱することで、硫酸ができるわけです。
2SO2+O2+2H2O → 2H2SO4
更に濃硫酸に硝石を投入して過熱、蒸留する事で硝酸の液体を作成します。
KNO3+H2SO4 → HNO3+KHSO4
硫酸の方はかつて中学だったかで、理科の実験でやりました。ツンと鼻に来るニオイが記憶を刺激して、かつての理科の先生の顔と、理科室の風景が思い浮かびます。
あの黒い長机にガスバーナー、試験管、乳鉢。実に懐かしい。
あれらほど便利な道具はありませんが、それでも酒の蒸留のために作らせたアレコレはあります。
何とか代用して、やってみましょう。
「フッフ フッフフ♪ フッフ フッフフ♪ フフフフフフー♪」
つい、記憶にあるあの懐かしいメロディが、鼻唄で出てしまいました。でもこんな物騒な○きるかなはイヤだな。
ノッPさんが濃硫酸作ってたら、ゴンTくんも引くわ。
しかもこれから、濃硫酸と硝酸の混酸を木綿にかけて、綿火薬にしますからね。
はい、綿火薬です。
最適な配合率もわかっておらず、硝石の質も低く、そもそも威力が低めな今の黒色火薬の、ざっと十倍は強力な火薬です。
330gで、1m四方。1平方メートルは吹き飛ばせるんじゃないでしょうか。
清洲城を包囲している美濃の軍を全部吹き飛ばそうとしたら、何kg必要になるのかもわかりませんが。
ちょっと偵察してみたところ、本陣だけでも200平方メートルほどでした。
それを吹き飛ばすのなら、66kg。絶対に作ってる途中で事故って、こちらが先に吹き飛びます。
そもそもそんなに木綿がありませんし。三河の国で少量。渥美半島でも極少量、生産されているのを除けばあとは遠方、海外からの輸入品です。
三河は荒れてるし、そもそも尾張との国境は鳴海で閉鎖されていますし、本気で入手困難でした。
なぜそんな手間隙と予算をかけて作っているのかと言えば。武器にするからです。いや、兵器かな。
まずは50㎝くらいの棒の先に、綿火薬をニカワでくっつけます。
次に火縄、導火線をさして、油紙で包みます。
完成。
やはりあの曲が聞こえてきますね……
なら少し、方向性を変えまして。
「て~な~げ~だ~ん~」てってけてってーてーてーてー♪
手投げ弾です。
ライターもマッチもないので、火のついた炭を灰を入れた小さな筒で持ち歩かねば、着火に不便ですが。
それでも、この時代にしては大変強力な兵器と言えるでしょう。
また、火をつけてから投げるまでのドキドキするスリルが、実にたまりません。
まあ、そんな趣味は置いておいて。
もし私が、足軽大将という地位に相応しい数の軍を持っていたなら、この手投げ弾を可能な限り量産して、包囲網突破に取り掛かったでしょう。
たぶん。
ですが、足軽大将になってから、さほどたっていないので、そんな用意はできていないわけで。
いやー。残念だなー。今後もやる予定も、やる気もありませんが。
正面突破とか、とっても危ないけれどもカッコいい事ができなくて、本当に残念だー。
まあ、そういうわけです。
兵力が無いのならば、ある所まで行かないと。
何とか作った、綿火薬10kgを背負って。戦力になるかもしれない織田家残党のいる、清洲城へと潜入です。
単独で逆転の手段を用意しました。次は自力で清洲城へと運び込みます。そうしたら独力で丹羽様を見つけ出して、説得して。
そこからやっと他の人たちとの協力プレイが始まるわけです。
おかしいな。あの世界一有名なスパイでも、チームやバックアップやヒロインがいたのに。私には1人もいないんですが。
この戦国ミッション・インポッシブル。難易度が高すぎませんか。しかもここまでやって、左右できるのは尾張一国の命運くらいという。
とはいえ、今世のこの流れ。どこから始まったのかと問われれば、私が信長さんをヤッちゃった所から。と、答えるしかないわけで。
このクソゲーのスタートボタンを押したのって、私なんですよね。
もう、色んな人にゴメンナサイしないといけない気がしてきました。謝られても、もう遅い上に意味が理解されないでしょうけども。
でも一応、心の中で謝っておきましょう。私の心の平穏のためにも。
真に申し訳ありませんでした。
だから修正力なるものが本当にあるのなら、もっと頑張って下さい。
これ以上の知らない流れは、勘弁して下さい、お願いします!
残酷な描写タグは、このお話に必要なんだろうか、たまに気になる。