尾張グダグダ戦国記   作:far

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一応最終回までのあらすじはできていたり。


【決戦】丹後と堀は犠牲になったのだ…【前夜】

 

 はい。京へと戻ってきました私です。

 実は結婚式以来、実父の林という家名を名乗りだしたのですが、やっと馴染んできた気がします。

 

 えっ? その前の苗字はって? フフフ、なんでしたっけ。

 

 で、まあ、結婚式の後、京には少しだけ居ましたけども、一週間も居なかったので。

 新しい名前になりましたし、結婚もしました。どうぞよろしく。と、あらためて挨拶回りをしたわけですね。

 前に戻った時は、もらった屋敷の整理とか、仕事の調整とかで手一杯だったので。

 落ち着く前に『覚慶の居場所が掴めました』って報告が来たんで『OKすぐ消してくる!』って、越前に出立したんでしたっけ。

 

 そりゃ帰蝶も追いかけてきますか。

 最低限の手回しはしておきましたが、あくまで最低限でしたからねえ。

 

 実はまた今回、帰蝶を置いて出張するんですけど、大丈夫でしょうか。

 今回はちゃんとした戦に行くんで、付いて来られたら本当に困るんですが。

 誰か止めてくれそうな人っていたっけかなあ……

 

 不安ですが、帰蝶を信じて、話を戻します。

 

 それで挨拶回りとは言え、皆さん忙しいので会えない方もいるわけですよ。

 ちょっと関東まで、北条家と商売に行った今井宗久さんとか。

 『あちらで革の需要が増えそうですよ』と、ちょっとお手紙しておいただけなのに、さすがのフットワークです。

 

 代わりに息子さんと会いましたけど、正直あの人苦手なんですよねえ。こう、露骨に権力が好きすぎるというか。

 商人と言うよりも、武家の立場、世界で自分の力を振るってみたい。そのために権力者に近付いて、意見できるようになりたい。

 そんな感じの人です。

 私へも、長慶さまやら松永サンへの仲介やらを頼んできますからねえ。

 史実で納屋の跡継ぎが務まった人ですし、実際に能力はありそうなんですが、なんか違うんですよね。

 

 こう、芸風の違いというか。

 

 男だったら、なにか企画があるとしたら、権力者に渡りをつけて実現してもらうのではなくて。

 まず自分で動いて実現して、上に報告するのはそれからだ。くらいの独立独歩の気風をですね。

 

「いや、あらかじめ相談しろ。今井の息子の方が、はるかに胃に優しいわ」

 

 有力者(の息子)からの頼まれ事なので、一応は長慶さまに話を通そうとしたついでに、ちょっと力説したのですが。

 私の持論は、どうやら受け入れてはもらえなかったようです。

 

「そうですか。ならばちょうど良いですね。長慶さま、ご相談があります

 

 ご希望通りに相談したというのに、なぜそこでビクゥッと怯えた反応をするのか。これがわからない。

 特に大きな被害を出したとか、そういう覚えは一切無いんですけどもねえ。

 ただちょっと、大きな障害を2つ3つ取り除いて差し上げたくらいだと思うのですが。

 まあ、いいでしょう。本題に入りますか。

 

 以前は飯盛山城などに詰めていて、京には常駐しなかった長慶さまが、京に構えた三好屋敷。

 その中にある、書院造の執務室。そこで向かい合っている長慶さまへ、私は居住まいを正して宣言しました。

 

「御所の修復をしようと思います」

 

 実際は既に動き始めていたりしますけどもね。

 予算と人手が必要なので、とりあえず堺の豪商ズを巻き込むべく、今回の挨拶回りでほぼ根回し済みです。

 ただカネを出せ。では、乗ってきてくれないので『ご覧のスポンサー』式を採用。

 

 ほら、あれですよ。ご覧のスポンサーの提供でお送りします。ってアレです。

 この御所はご覧のスポンサーの提供で修復しました。という感じで、御所の外周の塀の石柱に屋号が刻める権利をね?

 

 高く、売れましたねえ。

 いや、元は私の物でもなんでもないんで、売ったという表現でいいのかは分かりませんが。

 

 あと本願寺にもタカる予定です。

 私にはツテがないですが、トップの顕如が三条家の娘を嫁に貰っていましたし、誰か公家を介せば紹介してもらえるでしょう。

 資金を引っ張るところまで公家任せにすると、絶対に手数料を持っていかれるので、紹介だけで止めるのがコツです。

 

 王法為本ですよね? この世の秩序や法のため、主上に貢献しないといけませんよねえ?

 

 などと言っておけば、多少は出してくれるでしょう。出してくれなかったら、あとで弾圧する材料にでもしますか。

 本願寺は長慶さまにとって親の仇なので、関わるといい顔をしないかもしれませんが。

 カネを引っ張るか、叩く材料を手に入れるかというだけなので、その辺を説明すればわかってくれるかなって。

 

「というつもりですけど、ダメですかね?」

 

「堺だけでは、足りぬのか?」

 

『なんなら、三好家で出すぞ』

 

 そう言いたいけども、言えない長慶さま。

 末期の室町幕府という、超不良債権を抱えてしまった三好家に、今それほどの余裕はありません。

 それも、一時的なものですが。畿内をほぼ征した上に、色々と整理を始めた三好家の経済力は強大なのです。

 

 でも今はキツい。

 だからこそ本願寺に私が手を伸ばせるというわけです。

 

「本願寺に出させたいのですよ。そして、興福寺や根来寺などは、声もかけません」

 

「後々叩くための、大義名分か」

 

「ええ。武家を叩くよりも、宗教組織というのは、よほどに面倒くさい」

 

 というのも、ウソではありませんけれども。

 本命は、本願寺とのコネですね。

 

 一向宗というのは、各地の支部は殲滅するべきですが、本部はさすがに滅ぼしきれませんからねえ。

 となると、弱らせるか、分裂させるか。あとはどれだけ上手く利用するか、です。

 とりあえず元々本拠のあった山科の寺を再建して、大阪の本願寺と元祖 vs 本家のバトルでもしてもらいましょうか?

 それとも史実通り、京に東と西の本願寺を作って対立してもらうか。

 まあ、近場に似たような大きさの寺を2つ作れば、勝手に対立を始めてくれるでしょう。商売敵みたいなもんなので。

 

 ああ、そうそう。

 

「武家を攻める大義名分で思い出しました。長慶さま。丹後の一色家、攻めちゃいましょうよ

 

「『お昼は鮎にしよう』みたいに軽く言うな。戦は国の大事であるぞ」

 

 私が孤児たちに仕込んだ話芸のひとつ、漫才の技法ツッコミと、孫子の兵法の一節の引用を同時に繰り出すとは。

 さすがは長慶さま。文化的なたしなめでございます。

 でもこれは必要な事なんですよ。だって御所修復のために、いいヒノキが欲しいから。

 

 あと丹後って京都の北部あたりなんですよね。具体的には若狭のお隣、左側。

 おまけに一色家っていい感じに弱ってますから、攻め時なんですよねえ。

 どれだけ弱っているかと言えば『若狭武田家のライバル』というくらい弱ってます。

 

 今の三好家の財政でも出せるだけの兵力でも、余裕で勝てるくらい。

 

 それに丹後は細川氏の領国だったので、細川氏がほぼ滅んだ今、その後継の三好家に渡せ。とか。

 天子のおわす京の近くで物流を妨げるな(関所作ってんじゃねえ)とか。

 将軍(周暠)がお前を気に入らないってさ。とか。

 いくらでも殴りかかるための大義名分が立ってしまう相手でもあるのです。

 

「丹後一色家は、三好家の新たな力を見せ付けるのに、ちょうど良い相手かと思いまして。

 ここはひとつ『天狗の術』の正体の、お披露目(木砲ブッパ)といきませんか?」

 

 ひと月あれば、城を3つは落として見せますよ!

 ってどうしたのですか、長慶さま。頭と腹を押さえて、苦しそうな顔をして。

 え? 急に具合が悪くなったから、あとは義興に任す?

 

 ああ、まあ、はい。わかりました。お大事にどうぞ。

 でも落とした後に丹後をどうするかは、考えておいて下さいね。

 

 

 

 

「そうして手に入れてきたヒノキがここにあるだろう?」

 

「すいません。ちょっと展開が早すぎるんで、待ってもらっていいですか?」

 

 大量のヒノキの木材を前に、メタなツッコミを私にしている少年。

 彼は私が丹羽様に無理を言って派遣してもらった、堀 久太郎 秀政くんです。

 史実では13歳で信長の小姓、16歳で足利義昭の仮住まい、本圀寺の普請奉行をこなし、信長の側近となった早熟のエリート。

 

 まあ、今は更に若い11歳なんですが。

 

 深刻な文官不足の織田家で、年齢ヒトケタの頃に丹羽様に見出されて、以降使い倒されてきたとか。

 戦国の過酷な状況の年齢ヒトケタ勢、織田家にもいましたか。

 そんな彼を一時的にとは言え引き抜いてしまったので、今の織田家のブラックさは更に上昇してるんだろうなあ……

 

 いや、まあ、そんな私にはどうしようも出来無い事は置いておいて。

 

「もう一度説明します。このヒノキの山は、丹後をシメて巻き上げてきたものです」

 

「いや、言い方。もっとちゃんとして下さい」

 

 今まであまり直接の接点は無かったはずですが、私に何か思う所があるらしく、久太郎くんの私へのアタリが強いですね。

 でも無視して話を進めます。今、ちょっと急いでいるので。

 

「用途は、天皇陛下のお住まいの修復です。あなたにはその総指揮、の補助をしてもらいます」

 

「ハ?」

 

 『マジですか? でも補助なら……』そんな顔をする久太郎くんに、追加攻撃。

 

「なお総指揮者は、二条昭実という9歳の子です。仲良くしてくださいね」

 

「ハァ!?」

 

 よし、驚いてる驚いてる。

 じゃあ、この隙に最後のネタを投下っと。

 

「それと三好家が動いた、と見た浅井家が『今だ!』とばかりに、美濃へと攻めかかったので、私は援軍に行ってきますので、後はヨロシク

 

「ハァァァァァ!?」

 

 いやぁ、元々手はずを整えた後は、昭実に任せるつもりだったんですよね。

 でもそろそろ長政が動きそう。というのが物資の流れで見えてきちゃって、後見する余裕が私に無くなってしまって。

 いや、一色家を攻めたのは、長政への誘いでもあったんで狙い通りと言えばそうなんですが。動くか動かないかは、向こう次第ですし、五分五分だったんですよ。

 

 それで別の誰かを昭実に付けようかって思ったんですが、年齢が近いほうがいいかなと気を利かせた結果、白羽の矢が立ったのが久太郎くんというわけです。

 

 天王寺屋の津田宗及の息子さんも候補だったんですけど、15歳と微妙に年が離れていたので、わざわざ尾張から呼ぶ事に。

 ……いや、彼も混ぜてもいいかな?

 秀吉の茶頭を勤めたのに、千利休とも古田織部とも違って、切腹させられなかった傑物ですからね。

 

「他に仲間が欲しくなったら、天王寺屋へ行くといいよ。あとで手紙を出して、話は通しておくからさ」

 

 待ってくれ。いや、待てよ! と叫ぶ久太郎くんを振り切って、家へと向かいます。

 京でも、道中でも続けた筋トレは効果を発揮してくれました。筋力量は足りたと見ていいでしょう。

 あの高くついた矢も、私専用ですが量を揃えましたし、弓の手入れもバッチリです。

 革に鉄を貼り付けて補強した、というかそうしないと指が弦で千切れるので作った、特製のゆがけ(手袋)など、装備も充実した。

 

 つまりは、準備万端です。

 さあ、行きますよ浅井長政。

 

 約束の時です。

 




このたび書籍化が決定した◆2sRGUbBO9j2n 氏の、書籍化じゃないやつを推してみる
やる夫スレだけど、主人公はやる夫じゃなくてFGOのエドモン。まあ、舞台がワンピースなのでFGO関係はないけど。

【あんこ】エドモンは大海賊時代で復讐者になるようです【ONE PIECE】

ttps://himanatokiniyaruo.com/blog-category-459-2.html

アドレスはまとめサイト。かなり精力的にあんこスレを続ける作者さん。
ダイス結果次第でストーリーがブレるので、バッドエンドたまにあるけど、ミラクルも稀によくある。大作をいくつも完結していて、これもそのひとつ。白ヒゲと海軍の頂上決戦とその少し後まで。エドモンが復讐者として独自の海賊団を作ってワンピ世界を航海する。
この作品が面白いと思ったら、この作者さんの作品を辿るのもいいだろう。でも時間が足りるかな?
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