尾張グダグダ戦国記   作:far

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サブタイトルは、だいたいテキトーに投稿前に考えていたりします。


【突撃】事前の打ち合わせ(なお相手は)【隣の宿敵さん】

 

 はい。私は今、これから美濃へと攻め込もうという、浅井家の軍勢の、その本陣に居ます。

 あっ、違いますからね?

 別に、いきなり長政を暗殺に来たわけじゃ、ありませんからね?

 

 やるなら、隠れて遠距離から狙撃します。こんな真昼間じゃなくて、失敗しても逃げやすい黄昏時に。

 

「三好家からの使者と聞いて、まさかとは思ったが」

 

 室町男子の平均身長よりも20cmは高い、180cmの身長に筋肉を満載。

 その体躯に相応しい、大柄な甲冑を身につけた長政が、呆れた表情でそう言いました。

 いやはや。戦の前に、直接顔を見せに来た私に向かって、冷たいじゃないですか。

 

 いや、お前、なにやってんだって?

 ただの宣戦布告ですよ。あと、最後になるかもしれないので、ちゃんと話して、サヨナラを言っておきたかったのです。

 

「三好家の使者というのも、ウソではありませんよ? ほら、こうして三好権中納言(ごんのちゅうなごん)さまよりの書状も、こちらに」

 

 権中納言は従三位。室町幕府の執権になった事で、長慶さまがもらった官位です。

 史実の長慶さまの最高位が従四位下の修理大夫なので、史実越えです。やったね。

 この間、若狭に飛ばした北畠パイセンと同じ官位なのが少し気になりますが、まあ、そのくらいはスルーで。

 そういう細かい嫌がらせをするのは、公家の、いや、京都しぐさとして延々と続く、京の都の悪癖なので。

 

 なお書状の内容ですが、あまり意味はありません。

 『こっちには殴りかかって来ないよな?』という確認くらいですかね、たぶん。

 だってこの書状、私が三好家の使者という肩書き、身分を手に入れるためだけの、口実みたいなものですから。

 

 こういう身分保障でもないと、さすがに生きてここから出られないでしょうからねえ。

 長政自身は、こうして最後の挨拶に来た、それも単身敵陣へ乗り込んできた私を、殺すようなマネはしないでしょう。

 世間の評判も下がるし、誇りが傷付くでしょうから。

 

 でも家臣たち全員が許してくれるかというと、かなり怪しいかなって。

 

 そこで三好家という権威を盾に取るわけですよ。

 『私に何かあったら、三好さんが黙ってねえぞ』という虎の威です。

 なんでそこまで浅井家の家臣たちを警戒するのかと言えば、はい。え~…… その、ですね。

 

 私の、世間での評判。ですかねえ…?

 

 天狗とか妖怪とか、実は商人だとか、謎の文化人とか。あまりにあちこちに出張るせいで、空が飛べる仙人とか。

 怪しげなウワサがいっぱいありすぎて、不審人物なので『念のため、ここで斬っておこうか』と考える武士が出てこないとは限らないという、ね?

 

 天下人の長慶さまや、公卿クラスの高位の公家たちとも上手くやっているので、一部では 九尾の狐 疑惑まであるらしいです。男なのに。

 

 甲賀衆の情報網を使ってエゴサした結果、知った事ですが。正直、知りたくありませんでした。

 自分の名前で検索したらロクな結果が出てこないという教訓は、前世で得ていたはずなんですけどねえ。

 でもまさかこの戦国の世でも、この教訓が生きるとか思わないじゃないですか。

 

 なお私が九尾の狐だった場合だけ、丹羽様が利用されている被害者ポジになります。

 それ以外はって?

 妖怪を操る陰陽師とか、生け贄を捧げて悪魔を操る悪人とかの、まあ、つまりはまとめると、暗黒宰相ですね。

 

 今までの評判と変わらない結果に落ち着くのは、なんか笑いました。

 気付けばだいぶん図太くなっていた、丹羽様本人も笑ってそうなので、私が笑ってもセーフで。

 

 おっと、長政が書状を読み終えたようですね。

 微妙な顔をして、困惑しているようです。

 

「なにやら、途中からお前の勝手な行動についてのグチしか書いていなかったのだが、これは何が言いたいのだ?」

 

「さ、さあ…? あの方も、色々と大変でお疲れですので……」

 

 長慶さま、なに書いてるの。

 確かに『内容は何でもいいです』って丸投げしましたけれども。それでも、なに書いてるの。

 

 仕方ない。誤魔化すために、ちょっと情報を漏らすとしますか。

 

「三好家が書状を送ったのは、浅井家にだけではありません」

 

「不破か?」

 

「いいえ、諏訪家です」

 

 三好家が、この戦を止めようと、浅井家と、現在の美濃代表の不破家の両方に使者を送ったのか?

 そう思っただろう、長政の簡潔な問いに、私も簡潔に答えました。

 そしてこう、付け加えました。

 

「来ませんよ。朝倉家の援軍は

 

 ザワッ。

 

 周りで黙って見ていた武士たちが、気色ばむのがわかりました。

 私を『三好家からの使者で、長政の知人』から『浅井家の敵』へと見方を変えたようですねえ。

 

 いやあ、懐かしいですねえ。こうして周りを取り囲まれて、舌先だけで生き残らないといけない状況。

 近江の蒲生家を思い出します。

 

 さて。あの時のように言いくるめスキルに身を任せる前に、少し状況を整理しましょうか。

 

 今回の浅井家の美濃攻めの一手として、長政は朝倉家へ援軍を頼んでいました。

 そして朝倉家の当主の義景(よしかげ)もそれを了承して、実際に援軍を送り出したのです。

 

 しかしその総大将として送り出される朝倉景鏡(かげあきら)が、それを私に事前にリーク

 

 当主の義景としては、若狭に手を伸ばして領土拡大を企んでいたのが、北畠具教がやってきてポシャッた。

 なので、今回の浅井家の戦を手伝って、少し美濃の土地を得たい。そういう思惑で。

 

 景鏡としては、それで兵力を損なったり、戦が長引いたら加賀の一向宗が来ちゃうでしょ! という懸念があって。

 それで寺社ネットワークを通じて、私に連絡を取ってきたのです。

 

 さすがに大きな話なので、私だけの判断で事態を動かしちゃダメかな、と思って長慶さまも巻き込んで……

 と思ったら、ちょっと具合が悪そうだったので、代わりに松永サンと長逸さまを巻き込んだ結果。

 

 よし。じゃあ朝倉家の援軍は、諏訪家に軍を出してもらって、にらみ合いを。

 にらみ合いだけをして、お茶を濁してもらおうか。

 

 そんな策に落ち着きまして。それが現在、実行中というわけです。

 いやあ、どこで何が生きてくるのか、本当に分かりませんね。

 まさか朝倉景鏡が戦略的にこちらにプラスの、意味がある動きをしようとは。正直、思っていませんでしたよ。

 

 おっと、そろそろ刀に手が伸びそうな人も出て気ましたね。

 出番ですよ、弁舌スキル先生。お願いします。

 

「とはいえ、誤解しないで下さい。諏訪家が動いた理由は、三好家からの要請ではありません

 諏訪家の同盟相手となった、尾張織田家と美濃不破家、それに三河徳川家からの要請です」

 

「なっ」「聞いておらぬぞ」「虚言では?」

 

 う~ん。否定の声が漏れてきました。

 でも、今私が話しているのは、あなたたち相手じゃないんですよ。

 長政だけです。長政を説き伏せなければ、意味がありません。

 

「今、三好家は乱世を終わらせようと、各地をそれぞれ1つの有力者に抑えさせようとしています。

 三好家が同盟相手として選んだ有力者を、ですけどね。すでにいくつもの家が参加していますよ。

 不破家、織田家、徳川家に、関東の北条家に、中国の毛利家。それに少し前に、甲斐の武田家と信州の諏訪家も」

 

 なお近江は後藤家と進藤家が、どちらがトップかで揉め始めた模様。

 それが決まるまで、同盟には参加してくれないようです。内乱まではしないといいなあ。

 最悪、蒲生家を志摩に出したように、どちらかを伊賀・甲賀の大名にする手もありますが。それでも確実に揉めますね。

 近江と伊賀・甲賀だと経済格差がエグいですからねえ……

 

 まあ、そんな近江の事情は触れないでおくとして。

 

「三好家を名目上だけでも、上位と認める事。同盟同士で戦はしない事。たったそれだけのつながりです。

 ですがつながりがあるのなら、助け合う事も出来る。諏訪家が動いたのは、そういう事ですよ」

 

 突然出された情報に、周囲の雑音は消えました。

 長政もじっと考え込んでいます。

 ここで手を引き、浅井家も同盟に加わって、琵琶湖周辺の覇者として戦国を終わらせる側に付く。そういう選択肢もあります。

 その前に美濃を削り取り、より大きな領土で同盟に加わる選択肢も。

 あるいは同盟全てに挑んで、戦国時代の覇者を目指す選択肢も。

 

 さあ、どうしますか?

 

 無言で答えを待つ私に、長政はゆっくりと静かな声で、まずは確かめてきました。

 

「このまま美濃を叩く事は、同盟全体への敵対となるか?」

 

「なりませんね。まだお互いの不戦であって、他家の敵も自家の敵と見なす、攻守同盟ではないので。ただ…」

 

「時間の問題、か」

 

「そうなりますね」

 

 あっ、こりゃダメだ。長政の顔に、獰猛な笑みが浮かんでいます。

 なら今のうちだな。と、全力で戦に臨む決意しか見えない顔です。

 

「ハァァァァ…… やっぱり、そうなりますか。ではこの先の蓮華寺までご一緒しましょう。

 そこに酒樽が届くように、手配してあります。茶は飲みましたが、酒は酌み交わしていなかったでしょう?

 将の方々も飲んでください。私のオゴリです」

 

「「「「おおぉぉーー!!」」」」

 

 ため息と苦笑で提案した、私の飲み会の誘いは、歓声を持って了承されました。

 さっきまでの敵対ムードはどこへやったお前ら。

 毒殺とかの心配は一切無しなのも、大丈夫なのかお前ら。

 

 やりませんけども。いや、マジで。

 さすがに顔と身元と三好家の看板使っておいて、騙まし討ちはやったらダメですよ。

 暗殺というのは、コッソリと殺す事を言うのですからね。

 誰が殺ったのかは、極力知られないように。できうるのなら、殺人だとバレる事すらないように。

 それが暗殺の基本です。別に誰かに習ったわけでもないので、私が勝手に思ってるだけですが、たぶん合ってる。

 

「それは良いが、来てくれるのだろうな?」

 

 そのあたりの事情を、わかっているのかどうなのか。

 家臣らと同じく、毒殺の心配などカケラもしていない長政は、戦には来てくれるのか、と別の心配をしていました。

 

『いま一度、戦場にて会えないか?』

 

 かつての1対1の茶会で交わした、あの約束が守られるのかどうかを心配していました。

 でも直接答えてしまうと、また家臣さんたちが殺気立っちゃうので、長政と同じく気を使って返答しないと。

 さて、何と言ったものでしょうねえ? ああ、そうそう。確かあの時は……

 

 私は無言で、長政に向かって拳を突き出しました。

 長政も立ち上がってこちらへと歩いてきて、拳を突き出して、お互いの拳がぶつかりました。

 お互いに、笑顔でした。

 

 私たちは殺し合いの約束をしたというのに、心には穏やかな喜びがありました。

 まるで友人同士で、遊びに行く約束をしたように。

 これが戦国の、戦士の、武士同士の付き合いというものなのでしょうか?

 

 悪い気分ではありませんが、やっぱり正気で戦などするものではないのでしょうね。

 やはり戦の世は、終わらせないといけません。だから。

 

 サヨナラです。長政。楽しかったですよあなたとの友人関係は。

 




1年ほど更新が止まっているが、復活しないかなと希望を込めて、推してみる

小説家になろう より 悠夜 氏の 討ち死になんて勘弁な

554話あるので、充分と言えば充分か。戦国への転生もの。
ただ織田の森家に、それも蘭丸でも戦国DQN四天王の人でもなく、父親と一緒に討ち死にする長男に転生という珍しいポジに。
いや蘭丸も珍しいか… ヤクザが転生したら森蘭丸だった件 というマンガが検索したら出てきたけど、なんかBLものっぽいな。まあ蘭丸ならそっち必須だし…

この転生者、刀剣や当時の人物に詳しく、手紙を出しまくってコネを上手くつないだり、普通に鍛えて戦で活躍したりするが、言動が何処となく小市民臭がして、妙に親しみを感じるんだ。家臣にスカウトする時、めっちゃヨイショするし。
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