主人公の掘り下げ回?
「聞いているのか、弾正小忠」
「勿論聞いていますよ。で、なんでしたっけ?」
「それは聞いていないヤツの言う事だ!!」
ちょっとした冗談だったんですけどねえ。なんかガチギレされてしまいましたよ。
一行で矛盾する物言いは、さすがにアウトだったようです。
はい。ただいま絶賛、説教中の私です。弾正小忠は、私の持っている官位ですね。
最初にもらった時には従六位下だったんですが、長慶さまの正式な執権就任の時と、私が結婚した時と、位が2回上がりました。
結婚の時はなぜか2段上がって、今では正六位上です。
私は知らなかったのですが、弾正忠の位はなぜか弾正大忠よりも弾正小忠の方が上で、正六位上が本来の定位置なんだとか。
つまり、ここまで昇進させるのは規定路線で。しかしここまでで打ち止めにするつもりだったっぽいですね。当初の予定では。
殿上人たる従五位の手前でキャップをかけておこう。という意思を、すごく感じます。
元が農民からの成り上がりでしたからねえ。
まあ皆さん、口を揃えて『お前のような農民がいるか』と信じてくれていませんでしたが。
それでも下の方からの成り上がりなのは確かなので、官位の昇進に影響は出てしまっていたようです。
なんか今は、別の意味でストップがかかっているみたいですけどね。。
誰が陛下に会わせるには、刺激が強すぎる劇物だ。
室町幕府も戦国時代も、まとめて
本来その仕事をやるはずだった英雄を、うっかり討っちゃった責任をちゃんと取ったんですよ?
分かってくれとは言いませんが、誰か私を誉めてくれてもいいと思うんですけど。
そこのところ、どう思います? 私を説教している明智光秀さん。
「はぁぁ~~……」
自分のお説教が、私に全く響いておらず、サッパリ堪えてもいないと悟った光秀さんは、大きなため息をついて、頭を一つ振って気分を入れ替えて。
それから私の問いに答えてくれました。
さすが苦労人。アンガーコントロールはバッチリですね。
「武家の、いや武家のみならず世の常識やコトワリを壊して、それでいて不思議と得をしたり、幸福になる人が多い。
戦によってではなくて、戦国の世から太平の世へと近づけているというのに、別に坊主でも神官でもない。
不都合どころか、好都合だが、どうにも不可思議だ。『まるでキツネに化かされているようだ』というのが、畿内での最近のお前の評判だ」
う~~ん、微妙。
持ち上げられるでもなく、けなされるでもなく。
「うん? キツネ? もしかして九尾の狐呼ばわりされるのって…」
「まあ、それもあるだろうがな。みんな評価に困ってるんだよ。今回も、わざわざ単身で浅井の、それも本陣まで行って来たとか、何やってんだ」
いや、それは、ほら。アレですよ。
敵陣のド真ん中までひとりでホイホイ出歩くのは、長政もやってたし……
私の結婚式の時に。いや、敵陣どころか敵国の奥深くなので、長政の方がヒドいな。
だから私はまだセーフという事に…… あっ、どっちもどっちですか。セーフには、なりませんか。はい。
さて。なぜ光秀さんがこうしてここにいるのかと言いますと。
というか、ここがどこで、私が何をしているのか、から。いえ、前回の続き、長政と話した後の事から言いましょうか。
まず浅井軍と私は、現代で言うと滋賀県から岐阜県へと続く中仙道を進んで、その途中にある蓮華寺へと入りました。
鎌倉幕府の滅亡時に、執権の北条一族432人が自害した場所と伝わるお寺です。
まあ、その名刹でしたのは、昼間っからの酒盛りですが。
複数の酒樽の配達を頼んでおいたんですよね。情報収集や伝達だけじゃなくて、配送までやってくれるとか。寺社ネットワーク、マジ便利。
それで浅井家の主要な面々と飲みながら、もろ肌脱いで鍛えた筋肉を見せびらかしたら、向こうも対抗して脱いでポージングをキメてきまして。
だいぶ暑苦しい光景になったものの、場が盛り上がってきたところで、追加の料理と芸者の集団が到着。
飲めや歌えや踊れやと、更に宴会が盛り上がり、気付けばもう日が傾いていて、その日は行軍停止。
明日も二日酔いでろくに進めないかなあ。でもまだお酒残ってるし、飲んじゃわないと。
そんな困った面々を横目に、私に『やってくれたな』という顔をする長政に。
『さあて、何の事やら』と知らん振りをして、最後の杯を交わして、寺を後にしたわけです。
なお芸者の手配も、寺社ネットワークで出来ました。
便利だけど、コンパニオンの派遣業まで手を出してるのはどうかと思うぞ、寺社ネットワーク。
最初は白拍子という、私が源平関係の作品でハンパに知ってた種類の芸者さんを呼ぼうとしたんですが、なんかもう廃れちゃったらしくて、呼べませんでした。
鎌倉時代から南北朝時代までの流行だったみたいですね。白拍子って。
どんなのかというと、刀を差して男装したタイプの芸者さんです。歌うし、踊るぞ。お酌もおしゃべりもするぞ。
今の流行は
あれ? コスチュームが変わっただけで、出張コスプレキャバなのは、変わっていないのでは…?
いや。よく考えたら、現代でも多様化しただけで、その辺はあんまり変わっていないな???
人類って、思ったよりも進歩しない生き物なのかもしれません。
たぶん現代から更に五百年が過ぎても、オッサンが芸者さんとお酒飲んで、グチったり武勇伝話してドヤッてる気がします。
そんな楽しい会場の外も、それなりに盛り上がっていました。
流石に酒は抜きですが、大なべの雑炊ですが腹いっぱい食べられるよう、大規模な炊き出しが行われていたからです。
無論、これも私の依頼した結果です。食糧も燃料も料理人も、近隣の村々から。
もちろん、寺社ネットワークのお仕事です。寺社ネットワークが、本当に便利すぎる。
カネさえあれば、たいていの事はやってくれますね。カネはかかりますが。
ふうむ。一向宗を始めとする宗教勢力の対策に、これは使えるかもしれません。
こうしてカネで殴って、運送業などブラック労働の沼に叩き込んで『一揆なんてやってる余裕は無い!』という状態に追い込む。
まあ、追い込まれるのは末端の信徒で、上層部の坊主たちは相変わらず一揆を企むかもしれませんが。
その場合はきっと、余裕が無いドライバー、もとい信徒達がストライキを起こしてくれる事でしょう。
起きなかったら、起こせばいいですし。
余裕が無い、ストレスが溜まっている集団をそそのかすなど、簡単でしょうからねえ。
それに物流に寺社ネットワークを巻き込むと、一つ良い事があるんですよ。
私設の関所を勝手に作って、物流を妨げ、関銭を取ってコストを上げる国人たちを叩き潰すための、力強い味方になってくれるのです。
ほんともう、商売や流通に少しでも関わってるとね? あいつらがどんどん嫌いになっていくんだ。
死ね。殺す。と、呪いたくなるんだ。『この世から無くさないと』という使命感すら抱いてしまうんだ。
寺社の皆さんも、運送業に携わる事で、その境地にね?
一部の寺には、関銭を取れなくする特権がありますが。
日常的に、大々的に荷物を運ぶようになったら『それは話が違うなあ』と、あいつら絶対ゼニをむしろうと動き出します。だって国人だもん。
すぐ目の前の事しか見えない、考えない生き物なんだもん。
相手がどれだけ大きいかとか、後で問題になるとか、そこまで考えません。明日より今日なのです。今しか見ないし、見れないのです。
まあ、まともな法律って、ない ですからね。国家の法律? なにそれおいしいの?
強いて言うなら、律令制度がそれに当たるかもしれませんが。大宝律令って確か、701年に出来たやつで、今って1564年なので……
863年前の法律ですね。官位や儀式の決まり以外はほぼ死んでますねえ。
室町幕府に何かないのか、と調べもしましたが、そちらもほぼ死んでいるという悲しい結果に。
建武式目っていうんですが、内容を知って、私はこう思いました。
「これは 法律 ですか?」
その内容は『質素倹約に努める』『賄賂を禁じる』『裁判は公平に行う』というもので。
これはもう法律じゃなくて、努力目標だと思うんだ。
しかも歴代の室町将軍はだいたい破りまくってるし。義昭なんか全部破ってるぞ。
そりゃ滅ぶわ、室町幕府。むしろよく十五代目まで続きましたね。
武家の法律としては御成敗式目がありますが、それでいいんなら鎌倉幕府のままで良かったんですよ。
その御成敗式目も、寺や僧は大事にしろ。壊すなよ、殺すなよ。とか。
集めた年貢はちゃんと上に渡せ。着服するな。守護が勝手に土地を没収するの禁止。とか。
相続のルールや、殺人など若干の刑法以外は、だいたい当たり前の事を明文化したもので。
逆に言えば、その当たり前を守ってない奴らが大勢いたという、恐ろしい事実が見えてきてしまって、ね?
しかもそれを罰則を与えて取り締まっていた鎌倉幕府はもう無くて、代わりの室町幕府は代々の将軍たちによってグダグダの極みだったわけで。
そんな感じで法がガバガバなので、国人たちも自力救済が基本で、法による守護やリカバリーが期待できなくて。
裁判なんか無い場所の方が多いし、揉め事の裁定をしてくれる場所や人すら貴重で、あったとしてもそいつは公平でも無いし、ワイロで動く。
おまけに戦国時代で、大名クラスの戦乱に巻き込まれたら家ごと滅ぶ。
問題:そんな末法の世で、目の前の事だけじゃなくて、理性的に先を考えて動きなさい。(なおそんな教育は受けていないとする)
この試験を突破できる国人って、どれだけいるんでしょうね?
毛利元就を始め、各地で成り上がった国人たちがいるあたり、皆無ではありませんが。まあ、極少数かなって。
だから国人たちが、国人な行動をするのも、まあ、仕方が無いのかもしれません。
なら私たちが、それを処分するのもまた、仕方が無いですよね。
もうね。彼らへの殺意とストレスが、青天井なんですよ。
国人の粛清。そのために天下を整理しているまであります。
えっ、信長さんの代わりだったんじゃないかって?
あんなもんは建て前です。
その意識が無いわけではありませんが、メインではありません。
というか、そんな使命感で戦に参加するとか、マジですか? それで人を目掛けて武器を振るうとか。
なにそれ怖い。
ヌルい決意で、覚悟したつもりになって戦場へ出て、だいたい心が折れるパターンじゃないですか。
いや、それでも俺は! とか覚醒しなかったら、バッドエンドなやつですよ、それ。
戦をするには、戦をするだけの。戦に参加するのには、参加するなりの。
そういう何かが必要なんだと思いますよ。
まあ、私は無くても何とかなりましたが。
私は戦に参加済みの足軽に、前世の意識が上乗せされた特殊例なので、例外という事で。
おかげで序盤は、なりゆきだけで戦に参加したり、人を射っても耐えられました。ありがとう今世の私。
とまあ、そんな戯言は置いておいて。光秀さんとの話に戻りましょうか。
蓮華寺を夕方前に出た私は、東へと進んで美濃と近江の国境、寝物語の里にある長久寺へ向かいました。
私は京から独りで出てきたわけではありません。少数ですが甲賀衆と、私の目付け役の光秀さんも一緒です。
光秀さんにいたっては、正直巻き込んだ感が強くて、少しばかり申し訳ないですが、まあ、諦めてもらうとしましょう。
私にも彼にも、どうにもできないので。
だって戦とか大きなイベントに私が突っ込むのなら、お目付け役の光秀さんは、なおさら見てなきゃダメですからね。
これはもう一蓮托生ですよ。ただ居るだけっても勿体無いんで、ちゃんと働いてね光秀さん。
でもさすがに『浅井長政に会いに本陣まで行くんで付いて来て』とは言えなかったので、別れて先に行って、待っていてもらったんですよ。
その合流ポイントが長久寺だったわけですね。
それで最初姿を見せた時は『心配したぞ。無事でよかった』って喜んでくれていたんですが。
移動してから宴会に突入して、酔った状態で連歌会やって、上手くなかったり歌が出てこなかったら一杯飲むなど楽しく遊んだ所まで話が進んだら、ストップがかかりまして。
『おいちょっとカメラ止めろ』
みたいな感じでしたねえ。
それでそこからは、お説教が始まりました。
「お前は、我々に心配をかけておいて、何をやっているんだ」
そう言われては、何も言い返せませんでした。さすがの言い訳スキルも、自動失敗です。なんも言えねえ。
とは言え、私には必要な事だったので、反省も無かったわけですが。
今回の浅井家と美濃勢との戦に、私が参加する必要はありません。
ただ長政との『戦場で今一度会おう』という約束だけです。
だからこそ、もう一度会って、話して、サヨナラをする必要があったのです。心置きなく戦うために。
それを口に出して、誰かに説明するのは、何かイヤなのでしません。
しかし後悔も反省もしていないのに謝罪するのも、それはそれで失礼。
というわけで。
ちょっと雑にスルーしますけど、ごめんね光秀さん。
もう9ヶ月ほど前になりますか。去年の7月の1~11日に投下されて、ここ、ハーメルンで日刊ランキングで上位を駆け抜けていった作品を推してみる。
異能を使った凶悪犯罪ランキング作ったwww(作者:鳥野ケイ)
その人独自の異能が生えてくる世界での、掲示板上で話が進んでいく。
掲示板ものなのに、説明が上手くて世界観がよくわかる。伝わってくる。
その文章力は、そういう世界なら本当にありそうだな、と思わせる表現力にも繋がっている。
そしてスレ主の語る凶悪犯罪がランクング10位から語られていき、最後の1位は……
全12話 文字数56,712 サクッと読めるぞ。
ただ凶悪犯罪についてなので、それで不快になる人は回避。そこまで詳しい描写は無く、ニュースで出てくる程度と思うけど、感性は個々人で違うからね。