悲報。美濃の人材、ちょっと削れる。
事件の、いえ事件ではないですね。戦の結果がようやく届きました。
半兵衛どのからではなくて、美濃の私の寺の円融さんからですが。
まあ、そこは戦後のあれこれの処理を行いながら、詳細をまとめて。
それを同盟相手に流せる程度に精度を落として、場合によっては少し盛ったり書き換えて。
などとしなければならない半兵衛どのに比べて、『だいたいこんなもんらしいですよ』と、そのまま伝えればいいだけの円融さんとの仕事量の違いでしょう。
それでも半兵衛どのの事ですから、明日か明後日にはあちらの知らせも届くでしょう。
見比べてみるのが楽しみですね。
きっと『ああ、この情報を隠したかったんだ~』とか、意図が透けて見えたり。
はたまた『やっぱり戦果は盛るものなんだ』とか、この時代の常識を再確認できたりするでしょう。
実に楽しみです。
手紙が届くのをワクワクして待つとか、いつぶりでしょうか。
そんな私の浮き立つような気持ちとは違って、今回の戦の結果はいいものではありませんでしたが。
いや、さすがに半兵衛どのが討ち死にした。とかは、ありません。
半兵衛どのは『同類』で友人ですからね。そんな存在が亡くなったら、普通に悲しみますよ。
楽しみに手紙を待ってる場合じゃありませんよ。もし半兵衛どのが亡くなっていたり、重傷だったりしたら、私はすでに美濃に向かっています。
稲葉さんは亡くなりましたけどね。
稲葉一鉄。安藤守就 氏家卜全とセットの西美濃三人衆で。その最後の生き残りでした。
安藤守就は、半兵衛どのの嫁の父親で後ろ盾でしたが、斉藤義龍が最後に尾張へと攻め込んだ時に討ち死に。
私が提供した綿火薬の手投げ弾での爆死だったようなので、たぶん丹羽様の暴走の犠牲者の一人かなって。
氏家卜全は、私が最初に美濃へ来た時に、ちょうど長政が攻め込んできて討ち取られました。
浅井軍の帰り道に待ち伏せて、奇襲をかけたら返り討ちにあっちゃったんですよね。
私も奇襲に参加していて、思えばあれが長政との因縁の始まりでしたね。
氏家さんが討ち取られちゃったのは、奇襲部隊の大将だったせいで、狙われたからでしょう。
そう思うと、あの時もし私が大将を務めていたら、死んでいた可能性が割りと高いですね?
しかも当初の予定だと、指揮官が足りないので、私が奇襲部隊の大将をするはずだったという。
まだ身分が部将程度で、他国人。しかもこの間戦ったばかりの織田家の家臣だったので、兵らに拒否された結果、氏家さんが出張ってくれたわけですが。
実は氏家さんは、私の身代わりになった、命の恩人だった…?
……今度美濃に行ったら、線香の一本でもあげておきますか。
いや、三人衆全員の死因に、私が何か関わっていますから、他の二人の墓にもお参りした方がいいですかね?
なお亡くなった安藤家と氏家家の領地は、だいたい半兵衛どのが懐に入れました。
安藤家はまだ娘婿として、当主が亡くなった後に助けている感じですが、氏家家は、没収みたいな感じでして。
まあ、ほぼ横領かなって。
単に自分の権力強化とか、私欲を満たすとか、そういう方向のためではなくて。
バラバラになりつつあった美濃の国を、何とかつなぎとめて、他国からの侵略に対抗できるように……
そんな思いからの、力を求めての正義の横領でした。
……正義?
いや、正義はないですね。大義はありましたが。
何せ当時の美濃の政府というか、行政機構は『半兵衛どの+成り行きで加入した不破さん+なぜか美濃トップになった帰蝶』というモロい物でしたからねえ。
美濃の国人らが従う正当性を、斉藤家の血を持つ帰蝶がかろうじて保証していたものの、実力が全然足りていない状態です。
だから横領する必要があったんですね。まあ、それでも全然足りなかったんですが。
つまり、言う事を聞かずに好き勝手する国人たちが、主に東美濃で多々出ちゃったわけで。
『取って代わろうと反抗する=統治にバチクソ苦労しているのも取って代わる』
という公式と、国内に散らばった一向宗を急いで掃除する必要があるのは、皆が理解していました。
なので、下克上を企む者は出てきませんでしたが、進んで協力する殊勝な国人衆もほぼいなかったという悲しい事実。
それでも浅井家・朝倉家の脅威を訴えたり、一向宗の仕業に見せかけて特に面倒な家をツブしたり、統制の利かない東美濃の一部を織田家に売り渡したりと。
地道にコツコツ頑張って、今回の長政の侵攻に対抗できるだけの軍勢を集めて、防衛できるだけの体制は整えられていました。
それでもヤバそうだったのと、何より長政との約束があったので、私が個人的に援軍に出たわけですが。
「先の徳川への援軍もそうだが、なぜ少数での援軍だというのに、真っ先に、それも単独で事に当たるのだ」
そう丹羽様に叱られてしまいましたよ。
言われてみれば確かに、それはそう。
しかも『援軍とはそういうものではないぞ』と常識を諭されましたが、何も言えませんでした。
『実際、有効だったし成果も上げましたよ』って言いたい気持ちは有りましたけれども。
丹羽様があまりにも疲れた目をしていたので……
前々から『長政が動いたら、止めに動きます』とは言ってあったんですけれでも。
まさかあそこまで少数で、木砲無しで行くとは思っていなかったようでして。
『いつになく、心配をかけてしまったのだな』
そう思うと、何も言う事は出来ませんでした。
でも『もうやらないよな?』と問われれば『次はもっと上手くやります』って答えたでしょうけども。
この戦国時代、やるしかないんですよ。戦国の世を終わらせるためには、やむをえないのです。
だって太平の世になって、政策を強行できるだけの強力な政権の下でないと、 国人衆を滅ぼせない から……
奴らを掃討して、道と港と流通を整えて。
やりやすくなった商売の、大きくなった利益で、私は楽隠居するんだ…!
おっといけない、いけない。つい夢を熱く語ってしまいました。
何でしたっけ。
私がある程度以上の損害を与えたのに、長政が全く引かずにそのまま美濃へ侵攻して、稲葉一鉄を討ち取った話でしたっけ。
稲葉一鉄は実は六男で、長政の祖父の代の浅井家相手に、父親と五人の兄がまとめて戦死して家督が回ってきた人です。
そら浅井家相手にはハッスルするわな。
なお、その時の年齢は、たぶん9歳。彼も年齢ヒトケタでの人生ハードモード勢の一員だったようです。
また今まで一鉄と言っていましたが、そう名乗るのは出家してからで、今世ではまだ出家していなかったので、稲葉一鉄は存在しなくなってしまいました。
お名前は稲葉
三条西家出身の正室の嫡男が18歳なので、半兵衛どのから領地を守れるか、たいへん微妙なので、せめて名前くらいはね。
氏家さんの息子さんは25歳だったけど守れなくて、残った少ない領地で頑張ってたけど、今回戦死したらしいぞ。
君は、生き延びる事ができるか。(ガチ)
ふぅむ。
こうして見ると、半兵衛どのは私の夢である国人衆の削減を、サクサク進めていますねえ。
私の先を行くとは、さすがは『同類』の友。実に素晴らしい、
かなり強引に事を進めているあたりが気になりますが、それがどういう結果を呼ぶのかも含めて、参考にさせてもらいますね。
えっ? 友人なら、助けろ? もしくは、助言しろ?
いえいえ、半兵衛どのですからね。恨まれるのも、反発されるのも、計算に入っていますよ、きっと。
ここは信じて見守るところです。
だってヘタに手を出すわけにもいかないんですよ。美濃って、私の手の外なので。
いや、手の外でも敵地だったり、関係の無い土地なら、好き勝手できるんですけどね。越前とか。
でも味方や同盟者の土地で、好き勝手やったら、その影響にも責任というものが発生すると言うか。
その後始末せずに放っておいたら、丹羽様に怒られると言うか。
私が手を貸して、追い詰められた美濃の国人衆がヤケになって反乱を起こしたりしたら、確実に怒られますよね?
まだ尾張での反乱なら、前もって説明さえしてあれば、むしろ誉められるでしょう。
何なら、説明していなかったとしても、許してくれるかもしれません。
延々と続いてきた尾張でのグダグダっぷりの主原因が減るのは、丹羽様たちも大歓迎なので。
ですが『お隣の同盟国相手にやらかしました!』と判明しちゃったら、それは怒られるよねって。
だって、その隣国から確実に文句言われちゃいますからね。
関係悪化からの同盟破棄まで、見えちゃいますからね。せっかく見えてきた太平の世が遠のいてしまいます。
そもそも自分の管轄の外に手を出すな。そう言われれば、普通はその通りなのですが。
その普通を守っていたら、私もこの今世も、この場所にまでは来られなかったでしょう。
それに何と言うか、あまりにも今更ですし。言うのが遅すぎます。
現在は土の下だと思われる、六角親子くらい手遅れです。
まあ『大人しくしていろよ。絶対に大人しくしていろよ』と丹羽様に念を押されている現在は、守らざるを得ないわけでして。
それで、その上で何が出来るのかを、このところ考えていたわけですが。
とりあえず、将来の流通量の向上のために、車輪の軸受けにベアリングを採用。
するために、まずは鉛の真球を大量生産する方法を考えました。
しかし現代ではどうやっているのか知らない上に、この時代でも可能な方法とか、独りで思いつける気がしなかったので。
例によって、職人さんたちと色々と試す事にしました。
結果。溶かした鉛を少量、ある程度の高さから水に落とすと、だいたい球になる。と発見できました。
ただ鉛だと、柔らかすぎてすぐ変形してしまうので、錫を混ぜてコストと引き換えに問題を解決。
落とす高さも、20mくらいまでは試せましたが、そこまでの実験結果では、高ければ高いほど良いという、これまた手間とコスト問題に。
しかし崖を利用する事で、問題自体は解決。
溶けた鉛のしずくを同量、大量に作るために、底に3mmの穴をいくつも開けた、金網を敷いたナベ。
そのナベに溶かした鉛と錫を注ぎ続ける、火にかけたままの別の大ナベ。
2つのナベを用意する事で、すぐに冷えて固まってしまう鉛の性質の問題も解決。
ついでに、ナベを常に揺らしておくと、いい感じに鉛が落ちるという発見もありました。
壁で覆って、風の影響も排除して。水も1mほどあった方がいいとわかって、掘って。
いちいち水を入れ替える作業が面倒くさかったので、何とかサイホンの仕組みを思い出して、ホースも作って解決。
他にも規格外品をはじくために、いちいち一個一個チェックするのが面倒なので、フルイにかける事を思いついたり。
斜めにした板の上を転がして、止まったり曲がったらアウト。というチェック方法を思いついたり。
「もう、円柱状に木を削ったコロで良くないか?」
という『今更そんな事に気付くな!』と、気付いてはいけなかったことに、気付いちゃった発言者が袋叩きに合ったり。
そんなあれこれを乗り越えて、私たちは『やたら回転する車輪』をようやく開発しました。
なお開発後。
「これは火縄銃の弾ではないのか?」
「あっ、そっちでも使えますね」
という会話をした、上司と部下がいました。
丹羽様と私です。
「他に使い道は無いのか?」
「門の軸に使えば、開け閉めが楽になりますね。腕一本どころか、指一本でいけるくらいに。あとは……
滑車にも使えますね。ほら、この間、城に作ったアレです。あれがもっと速くなります」
「おお、あのジップラインというやつか。あれは面白かったな。よし、やれ」
という会話もしたそうです。
いや、自分たちの事ですけども。
怒られなかったという事は、これでも丹羽様としては、私は大人しくしているという判定になるようです。
地味に産業的には、革命に近いと思うんですけどねえ。
木工所とかの工作機械にも使えば、効率大幅上昇ですよ。
丹羽様でさえ、こうだとは。
人は目に見えない、大きな働きには中々気が付かないものですねえ。
ふむ。
そう思うと、まるで私のしてきたアレコレのようでもありますね。
よし、名前をあげましょう。ベアリングではなく、これからこの球は
私の名前だけとか、一緒に作った職人さんたちには、少し悪い気もしますが。
まあ、上司でスポンサー権限という事で。
小説家になろう より 長谷川凸蔵 氏の
【簡易版】俺は何度でもお前を追放する~ハズレスキルがこのあと覚醒して、最強になるんだよね? 一方で俺は没落してひどい最期を迎えるんだよね? 知ってるよ、でもパーティーを出て行ってくれないか~
を推してみる。簡易版だから、13話。完全版も完結してるけど長いぞ。
追放ものの追放する側、しかも追放しないといけない理由が有って、そこにループものも噛ませてある。
ループを終わらせるために試行錯誤するのがループものの醍醐味だけど、終わった後もちょい続く。続かなくて良かった気もする。