鋼鉄の戸狩 異世界に行く…んなアホな!   作:おバカ先生

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 プロット?そんなの俺の辞書にねぇんだよ…
 でもハーメルンの読者は好きな作品がエタっても3回までなら死なないって小峠華太が言ってました。


はじめまして異世界、戸狩玄弥と申します。

 

 人っちゅーんは、見たくないもんを見ようとせぇへん。聞きたくないもんを聞こうとせぇへん。見たくないもんは隠して、聞きたくないもんは蓋をして、そうやって当たり前に生きとる。

 俺はそれを咎めるつもりはあらへん。それを他人に説教できるような真っ当な生き方なんてしてへんし、そんな高尚で高潔な魂なんて到底持ってへん。

 

 ただ俺は、そういう生き方をしたくないっちゅーだけの話…嫌なもんは隠したくあらへんし、蓋をしたくもない。まっ正面からぶつかってやりたいってこの気持ちはただの自己満足ってやつなんやろうな。

 

 せやけど、今だけは許してほしいねん。見たくないもん、聞きたくないもんから目を逸らし、蓋をさせて欲しい。

 仕方なかったっちゅーやつや…

 

 だってそうやろ?目が覚めたらこんな意味の分からん真っ暗な森のど真ん中にひとりぼっちで放置て…昭和のお笑い番組でももうちょい優しいボケするで…

 

「ほな、二度寝さしてもらおか、おやすみ〜イカ墨〜隅っこ暮らし〜」

 

 …渋谷のツッコミのありがたさを再確認させられたわ。いつもありがとう。

 

ーーーー

 

「夢ちゃうんかい…」

 

 俺の名前は戸狩玄弥。何でか森の中で爆睡してもうてた"大阪 天王寺で漢を磨いとる極道"や。

 なんで目が覚めたら森の中なんか全くもって意味は分かれへんけど、スマホで疲れ目の俺にとって森の緑は癒しやな〜、木漏れ日も程よく暖かくて気持ちええな〜、森林浴ってええもんやな〜、落ち着くわぁ〜。

…こんな状況でさえなかったんならなぁドアホォ!!

 

「酔っ払った…にしてはいくら何でもやり過ぎや」

 

 確かに昨日は渋谷と二人でサシ飲みーーもちろん割り勘でや当たり前やろ家爆破されて金ないねんぞーーには行ったけども…

 その後公園でホームレスのおっちゃん達と缶レモン酎ハイで酒飲んだ所までは覚えとるんやけどなぁ…ダメや!全っ然その先が思い出されへん!あんな長閑な公園からどうやったらこんな森に来んねん!ヤードラット星で瞬間移動できるようになった覚えないぞ!?

 

「ま、悩んどってもしゃーないわ、千里も道もまず一歩からや。とりあえず渋谷探そか、昨日一緒に飲んどったんや、近場には転がってるやろ知らんけど」

 

 切り替えの速さと一発ギャグだけは昔からよお褒められとってん。

 

 スマホ?あぁ、あいつならええ奴やったわホンマに、気づいたら俺の薄いお財布と一緒にポケットから居らんなっとったけどな。

 渋谷探すより先に交番探してお巡りさんのお世話になった方がもしかしてええんちゃうの。

 

ーーー

 

「あっっっっっかん!!何ッッも見つからへんぞ!!」

 

 あれから四時間は歩いた。絶っ対に歩いた!休憩もせんとこの大地をしっかり踏み締めた!にも関わらず何も見つけられへん。

 渋谷も、街も、交番も、お巡りの方も、道路やガードレール、それに人っこ一人会うてへん。

 

 目印もしっかりつけて歩いとるし、殺し屋しとった時には樹海での任務も当然あったから平衡感覚と空間把握の訓練も受けとる。

 現代日本、その令和の時代に、この戸狩玄弥が四時間も歩いて走って抜け出せへん森なんてこの世にあるわけあらへん。

 

「一体何が起きとるっていうんじゃ…ここ、ホンマに関西か…?いや、そもそもここ地球やろな?俺スピリチュアル苦手やぞ」

 

 周りの木、見たこともないやつや。

 俺は木のスペシャリストやないから適当やけど、よくあるクヌギやケヤキやない、殺し屋時代に教えられたどの木ともちゃう気がする。

 よぉ似てはいる、せやけど違う、葉の形や大きさに匂い、幹の太さや色の濃さ…それらに対する強烈な違和感がどうやっても拭えん。

 

 この"鋼鉄の戸狩"の勘が、警鐘を鳴らしとる。危険やと、そこからいち早く離れろと。もう551の豚まん食べられへんぞと。

 踵を返す。目印を辿って元居った場所に戻ろう。もしかしたら、渋谷がそこに居るかもしれんし、スマホやお財布があるかもしれん。

 

 やから、一歩踏み出そうとした。それは逃げ出そうとしとったのかもしれん。見たくなくて、必死に隠そうとしとったのかもしれん。

 

 せやけど、聞こえてしまったら…風に乗った求める声が、届いてしまったら…無視なんて、出来る訳あらへん。

 

「…助けて…」

 

 少女の微かな声が耳に届いた。あまりにも小さい、霞のような、朧のような声。

 やけど、充分や。この"戸狩玄弥"にとっては、よー繁盛しとる居酒屋でも、甲子園の会場でも聞き取れるほどの大声なんじゃ!

 

 瞬間、俺は全霊を込めて大地を踏み込む。

ーー疾走。

 俺が本気で踏み込めば、たった一歩でトップスピードなんじゃ。

 今いる場所を中心として正面が十二時の方角だとすると、場所は恐らく八時〜七時の方角。風が左から右に穏やかに吹いている状況を鑑みるに八時の方角寄り。

 

(声の様子から考えるに、あまり状況は良くなさそうや、罠の可能性も無いとは言えんやろうけど、それやったら正面から叩き潰したるだけ。んなやっすい罠でこの戸狩玄弥は獲れん。)

 

 ただ、走る。人の道なき鬱蒼とした森を、当たり前のかのように走る。

 そうして次第にはっきりと聞こえてくる。下卑た男の複数の、神経を逆撫でするような不快な嗤い声が。

 そうして次第にはっきりと見えてくる。一人の男に馬乗りにされ下敷きになる少女が。全てを諦めたかの様に静かに啜り泣く声が。

 

 俺の、観音様のより頑丈な堪忍袋、木っ端微塵に破裂したど。

 

「お前、死んどれや」

「うげぇえ」

 

 瞬間、鉄板を仕込んどる革靴の強烈な蹴りを下衆のこめかみに叩き込む。

 『ぐしゃっ』という何かが砕け、ひしゃげるような音を立て、豪快に錐揉み回転しながら森の中に消えて行きよった。

 女の子襲う様な下衆には、ちょっと華やか過ぎる死に様やったかもな。

 

「怖かったやろ、もう大丈夫やお嬢ちゃん…あとはおっちゃんに任しとき」

 

 俺は襲われて衣服を破られていた半裸の女の子に着とったジャケットを被せる。

 そのお嬢ちゃんは「本物の天使の方でっか?」と思わず言ってしまいそうになるほどに、どえらい別嬪な少女やった。

 

 まるで絹の様な白い髪に、最高級の陶器の様に美しい白い肌、日本人離れした整った顔立ち、僅かな木漏れ日でキラキラと輝く透き通った紅い瞳。

 そうや、今こういう容姿を色々褒めるのもセクハラやった。セクハラで極道クビになるとか洒落にならんぞ!

 

「ま、ええわ」

 

 そん時はそん時や、俺も男、そん時が来たら腹括ったろやないかい。

 

 俺はお嬢ちゃんを背に、残り二人の外道を睨みつける。そいつらは放心した様子でぶっ飛んでったお仲間の方を見とった。流石に今の蹴りを見て、すぐには動かれへんかったみたいやな。

 

 一人は金髪の大柄な男。タッパは俺より少し高いくらい…図体はまるで殺し屋時代の同期"オリオン"を彷彿とさせる程の恵体や。右手にはサーベル、左手にはマンホールみたいな盾を構えとる。

 もう一人は黒髪の小柄な男。何ともいやらしい、生理的な嫌悪を刺激する、女の敵です!と言う顔をしとる。そして両手でクロスボウを抱えとる。

 

 背後にはえらい別嬪なお嬢ちゃん、そして目の前には外道が二匹も居るんや。映画のワンシーンみたいやし折角やから、格好つけさしてもらうでぇ。

 

「天王寺組の"戸狩玄弥"と申します…名前だけでも覚えて、地獄に行ってください」

 

 さぁ、せいぜい俺を楽しませてくれやぁ…

 

 





 関西住みではないので、変な関西弁等ありましたらご指摘お願いします。
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